麦わら一味の〝光る!走る!不思議動物!〟   作:光る!DXスーパータイラントこがねむし!

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2024/12/18 オリ主の言語を人語→ピカ語に変更 ピッピカチュウ!


ピカチュウ、目覚める

 おはようございま~す。

 ケツをあげて、両手をつき伸びをする。いわゆる猫の伸びポーズである。安心して欲しい。わたしの見た目はピカチュウだ。ぷるぷると顔を振って、ぱっと目を開ける。よく寝た。隣にはいびきをかくゴンベのたら丸がいる。ここはどこだろうか。船内のようだが……。

 

 外がワイワイと騒がしい。

 

 さまざまな〝声〟が聞こえる。わたしは産まれながら人の心が聞こえ、気配を感知することができる。空島編で登場した「心綱(マントラ)」と同じ能力だ。ちなみに、ワンピースはエニエス・ロビー編が終わる頃まで読んだ。風の噂ではエースが死んだと聞くが、まあ実は生きていた展開だと思っている。

 

 わたしは地球人だが、いろいろあって現在、このワンピースの世界にピカチュウの姿でいる。

 

 寝起きの頭で判断するに、外で起きているのは「Mr.2ボンクレーがメリー号から去るシーン」のようだ。

 

 ???

 

 混乱する。眠る前、ルフィはまだフーシャ村いた。なんせまだ8歳で、旅立つのは9年も先の話だった。そのはずが、アラバスタ編に突入している。

 

 ここがメリー号で、その中でも女部屋にいるのだろうことはすぐに分かった。たら丸とわたしは壁際のソファで眠っていた。考えても分からないことはさておき、準備運動を兼ねて歩き回ることにした。宝箱を覗いてみたり、本棚を眺めたり、小さなバーに飛び乗ったりした。そうしている間に、たら丸が目覚める。

 

「ベ」おはよう、とたら丸。

「ピカ。ピカピカ」おはよう。ずいぶん眠ってたみたいだ

「ゴンゴン」ずっとたら丸の〝ここ〟で寝ていたんだぞ、という。

 

 たら丸は、自分の毛の中を指差す。ゴンベは体の長い体毛に食べ物を隠す習性がある。そしてポケモンには狭い所で体を縮める習性がある。眠った際に無意識の内に縮んで、たら丸の毛の中に入り込んだせいで何年も眠ってしまったのだろうか。分からない。

 

「チュウピカ……」

 とりあえず挨拶しに行こうかな……。

 

 部屋の隅にある階段の先に、甲板への出入り口がある。

 

 少しドキドキしてきた。

 例えるなら、転校生の気分である。

 

「ピカ……」

 第一声はどうするかな……無難に『おはようございます!』かぁ? 無難だが……新顔のセリフとしては違和感があるな……『お世話になっております』? 硬すぎるか……。

 

 階段の上でもだもだと考えていると、大きい生物が接近する気配を感知する。そいつは船の側で、海中から浮上しようとしている。このメリー号が気になって近づいて来たようだ。

 

 ――こりゃ船が大揺れするぞ。

 

 咄嗟に階段を降りて、揺れに備える。

 ずずん、と腹に響く波のうねりが船を左右に揺らす。

 こんな襲撃、原作であったか!? Mr.2ボンクレーと遭遇した後は何事もなくアラバスタについていなかったか!? そう考えていると、巨大生物の鳴き声が轟く。

 

 ニ゛ャーーーー!

 

(あ、これ……何だっけ、猫神さま? 猫と魚がくっついてるヤツが出てきたっけなァそう言えば!)

 

 すぐに揺れは収まる。

 たら丸は船内でピンボールのように転がっていたが、厚い体毛で被ダメージなしだ。何事もなかったように立ち上がると、わたしのケツを押すように頭突きして来る。

 

「チュ、チュウ! ピカピカ! ピッカチュウ!(ま、待てって! 心の準備ってモンがあるだろぉ! 緊張してきた!)」

 

 麦わら一味はアラバスタ到着間近と言うのは分かる。

 つまり、顔見知りのルフィ以外に、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、ビビ、チョッパーがいる。あ、あとカルー。

 

 こちらからは漫画を見て一方的に良~く知っている相手とは言え、初対面に違いない。初めましての年下がいっぱいいる空間は本当に久しぶりで、柄にもなく緊張している。何より親愛なるルフィの仲間たちだ。いい印象を与えられるだろうか心配だった。

 

 ひょいひょい、とピカチュウボディで階段を登る。あまりの緊張に手のひらに汗がにじんできた。大丈夫、大丈夫、上手クヤレール。上手クヤレール。

 

 ああ、ついに船内から出てしまう――!

 

「ピ(あれ)」

 

 階段の先は、まだ船内だった。恐らく倉庫だ。大きな水樽が横に詰まれ、塩漬け肉やチーズなど食糧の匂いがする麻袋と木箱があった。ピカチュウ姿では、嗅覚が鋭くなるのだ。

 

 左右に扉があり、一方からは石鹸の匂いがした。きっと風呂場だ。

 甲板はもう一方の扉だろう。人の声がかなり近づいて来た。

 

 大砲を横目に、レバーハンドルのドアノブに飛びつく。

 

「ピカ(おわ)」

 

 外側に開くと思っていた扉が、内側に開いた。

 ドアノブを引く手が、重力に従って下がっていく。わたしがドアノブから手を放して着地しようとした瞬間、たら丸が扉に体当たりしながら外へ出て行く。

 

「ピ!(ちょ!)」

 

 ピカチュウのぷにぷにボディが壁にぶつかり、バウンドする。勢いが良すぎて、わたしが落下する前に扉は再び閉じるのであった。

 

「ゴベンベ~」ご飯まだ~。

 

 ……き、気まずい……。

 

 羞恥のあまり思わず気配を探ってしまう。許してくれ!

 今ほど心綱(マントラ)が使えてよかったと思った時はない。ゴンベが人の輪に向かっていくのを感知した。どうやら皆、後方の甲板に集まっているようだ。先ほど猫神だか猫魚だかが浮上した方向だ。

 

 良かった。ゴンベが出て行ったのに、一緒に出て行かず、わざわざ登場を遅らせて出て行く気まずい姿を見られる展開にはならなかった。もう少ししたら出て行ってみようかな……いや、わたし……緊張しすぎだァ……。

 

 どきどきが止まらねェ!! ドン!! つってな……。

 

 現実味のないふわふわとした感覚で、もう一度ドアノブに飛びつく。まだ皆、後方にいる。手汗で滑り落ちそうになりながら、何とか扉を開ける。

 

 吹き込む潮風。

 眩い青空。

 鮮明に聞こえる波音。

 

「ピカっチュウッ(うおっ眩しッ)」

 

 シパシパする目を慣らしていると、ハッキリと声が聞こえた。

 

「――おい、あれ全部バロックワークスのマーク、入ってんじゃねェか!」

「社員たちが集まり始めているんだわ……! あれは恐らく『ビリオンズ』! オフィサーエージェントの部下たちよ……」

「敵は200人は硬いって訳だ……」

 

 おお。分かるぞ!

 ウソップ、ビビ、ナミの声だ!

 

 周辺を探ると、後方にいくつかの気配がまとまった、船に乗った人々と思しき気配がある。船は複数あり、方向からしてアラバスタに向かっているようである。

 

 ウソップが何やら先制攻撃するかどうかで騒いでいる。

 

 ……ど、どうしよう。出るタイミング……。

 ここでバロックワークスと交戦した記憶はないが、そろそろMr.2ボンクレー対策に、あの有名な――たぶん、有名――仲間の印と包帯を巻くシーンが来るはず。その前に合流したいところではあるが……。

 

「バカ。気にすんな、ありゃザコだ!」ゾロの声。

「そうさ! 本物の標的を見失っちまったら終わりだぜ。こっちは8人しかいねェんだ」サンジの声。

 

 ………………8人?

 手で数える。ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、ビビ、チョッパー、カルーで8人。おや?

 

「ゴンベ?」たら丸もいるが?

「お、そうだったな、すまねェ」

 

 チャ――チャ~~~~~ンス!!

 

「ピ、ピッピカ~~ッ!!(わ、わたしもいるぜ~~ッ!!)」

 

 階段を駆けあがり、後方の甲板に飛び出す。

 

 ざっ! と集まる視線。

 どきっと心臓が跳ねる。うおー! うおー! 言っちまった! 出ちまった! 頭が真っ白になりそう! だ、誰か反応してェ~~!!

 

「シカヌ! おめェ、よ~~やく起きたのかッ!」

 

 成長した、漫画で知っている姿のルフィが、わたしの胴を掴んで掲げる。

 

「ピ、ピカチュウ……ピチュ、ピピカピ……!」

 お、おはようございます……ルフィ、だいぶ大きくなったな……!

「シカヌが小せェままなんだよ! みんな、シカヌが起きたぞ!」

「ピ、ピカピ、ピカカピ、チュウ」

ど、どうも、シカヌです、よろしく

 

 気分は面接である。

 たぶん、タメ口で距離を縮めていいと思われるが、変な緊張感がわたしをかしこまらせていた。そんなわたしに対して、クルーたちは明るく自己紹介してくれた。

 

「シカちゃん、元の姿おっきいのね!」

 愛称呼び!? う、嬉しい……。

 ナミ曰く、わたしは人差し指と親指で作った輪くらいのサイズで眠っていたと言う。

 

「頑丈なたら丸の毛皮で寝てた方がいいんじゃねェか?」

「いや、シカヌは強ぇから大丈夫だ!」

「チュ、チュウ!」

 お、お気遣いどうも!

 

「こんな黄色いウサギだかイヌだか分からん小さいヤツが強いのか~?」

「ウソップより強ぇぞ!」

「ピっ、ピカ、ピカピカ……!」

 えっ、あの、何と言えばいいのか……!

 

「どうしてこのタイミングで起きてきたのかしら……」

「分からない……いちおう、健康診断しよう!」

 

 ビビの疑問はわたしも気になるところだが、今考えても答えは出ないだろう。そんな気がする。チョッパーの健康診断はありがたいな。なにせ9年間も寝ていた。

 

「待て! 上陸まで時間がない。先にすべきことをするぞ」

 

 ゾロがわいわいと話すクルーたちに声をかける。

 すべきこととは、Mr.2ボンクレーへの対策だった。き、きたぞ……。たら丸が起きて皆の側にいたとは言え、新参者も同然のわたしも仲間扱いしてもらえるのだろうか。一抹の不安が過る。ちょっとカッコつけた言い方をしたけど、わたしは転校生だぞ!? しかも年上の転校生が初対面のグループに入って「仲間の印つけようぜ!」と言うシーンに出くわしたら何か微妙な感じになるだろ!!

 

「腕に印をつける」

「印?」

「何でもいい。おれたちが仲間だと分かるようにつける印だ」

 

 何でもいい、とゾロが言えば、ルフィがすかさず「印ならバツがいい!」と言う。

 

「何で」とナミ。

「海賊だろ」

 

 ルフィの頭には海賊旗が浮かんでいるのだろう。わたしの世界で海賊旗と言えば、大抵〝黒地に頭蓋骨と、交差した2本の大腿骨〟のデザインを差す。ルフィはその交差した2本の大腿骨からなるバツのことを言っている。

 

「でもありゃ本来、相手への〝死〟を意味するんだぞ」とウソップ。

 

 そこまで過激な意味があるとは思わなかった。

 

「いいんだ。バツがいい。なァビビ! カッコいいもんな!」

「うん。わたしもそれがいい」

「何でもいいから描けよ。本題はそこじゃねェんだ」

 

 諸事情で割愛する。察してください。わたしも描いてもらえたぜ! ピカチュウの黄色い左腕に、バツがしっかりと入っている。へへへ。

 

 さらにゾロの指示で包帯を巻く。

 わたしの左腕にはナミが包帯を巻いてくれた。

 

「いいか。あのオカマ野郎の変身は完璧だ。いつ、この中の誰かになりすましてビビの命を狙ってくるかも知れねェ。仲間を少しでも怪しいと感じたら……」

 

 ゾロは左腕を見せながら、巻いた包帯を取る。

 

「この包帯を取って〝印〟を見せあう。それができなきゃニセ者だ」

 

 ゾロの説明を聞きつつ、自分の左腕に目を奪われる。

 みんなはどう思っているのか分からないが、わたしはまだ宙ぶらりんの存在だ。仲間として信頼できるほど人となりは知られていないが、ルフィが仲間だと言っているから仲間と認識してもらっている立ち位置。

 

 そのためか、ビビから何か言いたそうな視線を受けている。目覚めたばかりの何も知らないわたしがバロックワークスと事を構える状況に罪悪感を覚えているのだろうか? うっかりすると船番にさせられそうだ。

 

 とにかくタイミングがいいのか悪いのか、船上でゆっくり詳しい説明を聞く暇はない。道中でわたしの覚悟をビビや仲間たちに示すしかないぜ……!

 

「そんなに似ちまうのか? その……〝マネマネの実〟で変身されちまうと……」

 

 わたし以外にMr.2ボンクレーと遭遇していないサンジが聞く。

 ウソップは〝似る〟どころか〝同じ〟だったと言う。結構面白い光景だったようで、その時に起きられなかったことが悔やまれる。

 

「なあ、おれは何をすればいいんだ!?」とチョッパー。

 

 それはわたしも知りたい。作戦でもあれば聞きたいところ。

 チョッパーの問いに、ウソップが答える。

 

「できることをやればいい! それ以上はやる必要ねェ。勝てねェ敵からは逃げてよし! 精一杯やればよし!」

「お前それ、自分に言ってねェか?」

「クエ!」

 

 サンジがカルーに包帯を巻きながら突っ込む。

 そう言えば、たら丸は誰に包帯を巻いてもらっているんだろう、と振り向くと「ン」とわたしに包帯を差し出すたら丸がいた。仕方ない弟分だぜ。

 

「おれにできることか……わかった!」

 

 わたしにできること。人の心を聞く、気配を読む。あと、戦う。

 やるぞ……やるぞ……と意気込んでいると、船は港に近づいていた。

 

 ルフィがクルーを呼ぶ。円陣を組み、それぞれ左腕を見せあう。

 

「よし! とにかくこれから、何が起こっても……左腕のこれが、仲間の印だ!」

 ごくり。

「――じゃあ、上陸するぞ! メシ屋へ!!」

 あとアラバスタ。

 

 ついでかよ!! クルーの突っ込みがさえわたる。

 事態の深刻さを理解していなさそうなルフィに、ナミが言い聞かせる。

 

 しかし、船を入江につけた途端、ルフィは「メーシー屋~~!」と叫びながら町へと飛び出していったのだった。

 

 みんなには悪いが、眠りから覚めたばかりのわたしはそれほど腹は減っていなかった。つまり他のみんなより体力が残っている。買い出しの手伝いはしたいものの、ピカチュウボディでは小さな荷物を一個しか持てない。しかし、わたしには「心綱(マントラ)」がある! バロックワークスと鉢合わせないようにナビゲートすることができる! そのことの説明をしておいた方が良さそうだ。

 

 熱風に頬を撫でられ、ついにアラバスタに上陸する。

 わたしの冒険は、ここから始まったのである!

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