間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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あけましておめでとうございます
ギリ元旦投稿です


未遠川血戦

 虚数世界に固有結界を展開するなどと言うとんでもを行ったアナによって、アサシンが今度こそ完全に敗退してより数時間後。

ライダーのせいでアインツベルンが保有する森に仕掛けられている結界が破壊されたことで、アイリスフィール達は切嗣が用意した武家屋敷を次なる拠点とするために移動していた。

 

「アイリスフィール、どうかしましたか?」

 

武家屋敷の中に万が一にも敵がいないかを久宇舞弥が確認しにいった所で、セイバーはアイリスフィールが何やら思案していることに気づく。

 

「何でもないわセイバー、気にしないで」

「・・・であれば良いのですが」

 

絶対に何かはあると気づきながらも、アイリスフィールが言わないとするならば今はまだそこまで大きな問題ではないと、セイバーは無理矢理納得させた。

 

(本当に何もないなんて有り得ない・・・。アサシンは確かに消滅したはずよ・・・)

 

こちらを心配するように見てくるセイバーの視線を受けながら、アイリスフィールは未だ空のままの小聖杯に対して底知れない不安を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 酒の勢いで固有結界を展開したアナは、爆睡した為に雁夜に背負われた状態で拠点へと戻っていっていた。

 

「救える・・・。こいつが居れば、桜ちゃんを・・・!」

 

蟲によって食われていく身体の痛みを、桜を地獄から救い出せる、自分だけが彼女に笑顔をくれてやれるのだと、雁夜の胸中にある黒い炎が大きくなる。

 

「あまり揺すらないで・・・」

「悪い」

 

軽く嘔吐きながら目を覚ましたアナにそう言われたことで、雁夜が謝罪を返す。

 

「まだ溶かし切れてないの」

「溶かす?」

「さっきのおつまみ」

 

仮にも英霊であるアサシンをおつまみ呼ばわりするアナは、雁夜の背から降りる。

 

 ぶわりと、嫌な魔力の波が流れる。

 

「キャスターね」

「向こうから出てきたのか」

「そうみたいね、ただ今のキャスターは窮鼠よ。やけっぱちになっている可能性は捨てきれない」

 

大鷲を呼び出し背に乗ったアナに続き、雁夜も乗ろうとするが止められる。

 

「雁夜くん、来たら貴方は死ぬ」

「アンタは記録が欲しいんじゃないのか」

「尽きかけでも急ぐことは無いと、私は思うぜ」

 

そう告げると、アナは魔力の発生源である未遠川へと向かっていった。

置いていかれた事に加えて警告も受けたとあって雁夜は間桐家に戻ろうとしたが、空を黄金の光が駆けていくのを見てしまう。

 

「アーチャーか・・・!」

 

雁夜の足は自然、光の向かった先でもある未遠川へと向かう、討伐対象のキャスターがこれほどの騒乱を引き起こしたのだ。

故に、時臣はきっとアーチャーに同行していると。

 

 

 

 

 

 

 他の陣営が未遠川にて宝具を発動したキャスターを察知したように、セイバー陣営もまた未遠川にやって来ていた。

 

「おぉジャンヌゥ・・・!貴女もこの饗宴に加わってくださるのですか。それはなんともまぁ、喜ばしき事です」

「何を言っているキャスター、そのようなものを催させるものかッ!」

 

キャスターの言う饗宴、それはきっと恐怖と絶望が巻き起こるものであるとセイバーは確信している。

故にこそ、彼女はそのような事を許す事などできよう筈がなく、剣を抜く事など自明の如し。

 

「大人しくしていてくだされば良いモノをッ!神に玩弄されし貴女には通じぬかッ!ならば物言わぬ骸となり、神が玩弄される瞬間を持って貴女に真のジャンヌとなって頂くッ!」

 

令呪によって与えられた魔力を使用し、腕に抱く龍之介ごと自らを海魔と同化させていく。

 

「マスターごと、食われたのか!?」

 

慄くセイバーと同じく、その場に居るアイリスフィールは膨れ上がっていく海魔の姿に恐怖を覚える。

 

「違うわセイバー、あれがキャスターの宝具なのよ」

 

なんとおぞましくも醜悪か、法則の異なる異界より招かれし巨大海魔は正気を奪う声をあげ、自らの存在を確固たるものにするために捕食を始めようとする。

 

「マズイッ!」

 

受肉をさせてしまえばそれこそ、聖杯戦争が破綻してしまうと、セイバーは水面を駆け巨大海魔の触手を斬り捨てていく。

だが、どれほど切り捨てようとも触手は無尽蔵に湧き出し、遂にセイバーは触手に捕まってしまう。

 

「ぐぁぁぁああぁあああ!!!」

「セイバーッ!!」

 

このまま握り潰そうと言うのだろう、セイバーは徐々に潰されていく。

 

「はぁぁぁぁあああああ!!!」

 

だが、そこにランサーが救援に駆けつけた事でセイバーは、巨大海魔からの拘束より解放される。

 

「無事かセイバー」

「すまないランサー」

「気にすることはない、俺達は果たし合うと約束したからな」

 

共に騎士として果たし合おうと誓い合った仲であるが故に、謝辞は要らぬと言いランサーは巨大海魔へと双槍を構える。

 

「さて、あれがキャスターの宝具ならば、我が槍が魔本を捕らえることができれば容易いが・・・」

「肉の壁が阻むと言うことよねランサー」

「そのとおりだ。何か一息に抉ることができるものがあれば良いのだが」

 

アイリスフィールからの確認に肯定を返したランサーは、火力で言えば対城宝具並のものがあればとぼやくのだった。

 

 

 

 

 

 

 攻めあぐねるセイバーとランサーを眼下に、アーチャーは宝物庫より取り出したヴィマーナを駆っていた。

 

「王よ、あの怪物は御身の庭を汚す害虫です。どうか貴方の力を持って――」

「時臣よ、まさか貴様。この我に庭師の真似事をせよと言うか」

「いえ、そのような事は」

「であろうがたわけめ。虫の駆除は庭師に任せれば良いのだ。だがまあ、仮にも臣下の頼みだ。が、どうするものか・・・」

 

真下にて暴れる巨大海魔を視界にも入れたくないのか、アーチャーは心底気怠そうにしてそう言う。

 

「王よ!!あれが受肉を果たせば臣民にどれほどの被害が出るか分かった物ではありません!!どうか慈悲をッ!」

「ええい、小うるさいわ。どれ、少し助力をしてやろう」

 

玉座に座ったままにアーチャーは、黄金の波紋を四門開くと宝具を射出し巨大海魔の触手を全て断ち切る。

 

「これで子守代を含め五つだ。重いぞ時臣」

「子守・・・?」

「なんだ貴様、娘の動向を把握しておらんのか」

「凜が何かしてしまったのですか!?」

「なんだ貴様、少しは面白みがあるではないか。まあ安心せよ、母の元へと帰ったわ」

 

冷たい魔術師としてではなく、人の親としての面を時臣が見せたことでアーチャーは僅かに口角を上げた。

 アーチャーより凜に大事はないと聞いた時臣であったが、大地より放たれた銃弾が彼の右肩を穿つ。

 

「これは・・・!」

 

王たる自身が座す玉座を不届きにも狙ったとして、アーチャーが狙撃手を葬ろうとするが、時臣がそれを制する。

 

「王よ、この程度の事で貴方の力を振るう必要はございません」

「そうか、ならば疾く駆逐せよ」

「御意に・・・」

 

自らを狙撃したものを葬る為に、時臣は地上へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

 上空からのアーチャーからの射撃によって、巨大海魔が再生に注力しているところに、稲妻を伴って現われたライダーが巨大海魔を戦車でもって体当たりし転倒させる。

 

「よおセイバー、先ほどぶりだな。ランサー貴様、少し見んうちに覇気が落ちたではないか」

「今は俺の事は良い。キャスターが先決だ」

「ま、そうだなぁ」

 

起き上がるよりも再生を優先したのか、巨大海魔は倒れ込んだままに触手をあらぶらせ辺りを薙ぎ払いにかかる。

 

「ら、ライダー!!」

「これくらいで泣いておっては、男が泣くぞ坊主」

「無茶言うなよぉ!!」

 

戦車を走らせるライダー、そしてアイリスフィールを抱え触手を足場とし躱すセイバー、とこちらも同じくランサーがセイバー同様に触手を躱す。

 

「Gaaaaaaaaaa!!!」

 

するとそこに、咆哮と共にチェーンソーを携えたバーサーカーが空から落ちてくると、襲い掛かる触手を逆に切り刻みキャスターの居る本体を目指すが、圧倒的密度となった触手に殴り飛ばされ水切りの石のように水面をバウンドする。

 

「Aaaaaa・・・!」

 

チェーンソーのエンジンが再始動し、バーサーカーは魔力放出による加速で再び巨大海魔に突貫していった。

 

「さて、セイバーよ。バーサーカーによって思わず時間ができた故に問う。王とは孤高か?」

「まだ先の問答を続けるか征服王。だが答えよう、王とは孤高の存在だ」

「成っておらんなセイバー!!だからこそ、余は見せよう!!王のなんたるかをッ!」

 

ライダーに魔力が集っていくと共に、場に砂塵が舞う。

 

「これってまさか・・・!お前も出せるのか固有結界ッ!」

「応とも!!だがこれは、余だけの世界に非ずッ!臣下全てと見た我らが夢よッ!」

 

世界が塗り替えられる。

 

「見よ!!これこそが我が無双の軍勢ッ!王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)よッ!」

 

果ての見えぬ砂漠に今、征服王イスカンダルがかつての軍勢と共に降り立つ。

 

「諸君らに問おう!!王とは孤高なりやッ!」

「否!!否!!否!!」

「そうとも、王とは誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!全ての勇者の羨望束ね、道標となる者ッ!故にこそ王は孤高に非ずッ!」

「然り!!然り!!然り!!」

 

背後に展開された軍勢を察知した、バーサーカーが影より飛び出した黒いワイバーンに乗り上空へと逃れる。

 

「見ておれセイバー!!これこそが王よ!!」

 

愛馬ブケファラスに跨がったライダーが駆け出すと共に、彼の軍勢もまた巨大海魔へと駆けだしていく。

 

(私は・・・。私は、これほど迄に信頼されていたのだろうか・・・)

「セイバー?」

「すみませんアイリスフィール、少々圧されていました」

 

軍勢によって再生の隙を与えられない巨大海魔へと、バーサーカーが突撃しチェーンソーでもって肉を抉りキャスターを表出させる。

 

「己貴様ッ!この匹夫めがぁあぁあぁあああ!!!忌まわしき神の使いめがぁぁぁぁあああぁぁぁああ!!!」

「Gaaaaaaaaa!」

 

絶叫するキャスターの胸にチェーンソーが突き刺さる、バーサーカーはキャスターを切り刻み肉片へと変え、最後に魔本を破壊した。

 自らを現世へと繋ぐ楔が消えた事で、巨大海魔は異界へと帰って行った。

固有結界が解除された事で、全員が現世へと戻ってくる。

 

「凄いのねライダー、貴方も固有結界を使えるなんて」

「全く貴様、美味しい所を持って行きおってからに」

「元々奴は私の獲物だもの」

 

いつの間にか場に現われたアナの側に龍之介の頭部を回収してきたバーサーカーが現われる。

 

「私はこれから教会に行くつもりだけど、戦いたいなら応じるわ」

「遠慮しておくわ。もう夜明けだもの」

「そうね」

 

アイリスフィールの言葉通り、日が昇り始めていた。

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