間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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未遠川血戦・裏

 それは、アーチャーが凜と出会う少し前の事であった。

 

「堅実なのは良いが、あの男には面白みが足りん」

「人生を賭した儀式だ。遊び半分でやれるものではない。アーチャー、我が師の何が不満だ」

「は。たった今口にしたではないか、時臣には愉悦がないのだ」

 

召喚されてより、時臣からのどうしてもと言う用事がない限り、教会にある綺礼の自室に入り浸っているアーチャーは、つまらなそうな顔をしながらワインを口に運ぶ。

 

「愉悦か・・・」

 

アーチャーの口にした愉悦、それは綺礼がアーチャーより自覚しろと言われたものである。

 

「そうだ綺礼。貴様は既に、己が愉悦を自覚しているのではないか?」

「ふざけるなアーチャー。あのようなものが、私の愉悦だとッ!」

「だと言っている。どのようなものであれ貴様の魂はそれを求めるのだ」

 

他者が幸福と感じるものでは、決して幸福を感じることのできない綺礼は、数年前に妻が自身の眼前で自殺した事で悦楽を感じた。

 その結果、自らに対してより深い絶望を抱く事となった、己は生きていてはいけない人間であると。

だが、今そこに居る英霊はそのような己を受け入れろとほざく。

ならば、その傲慢な鼻を少し明かしてやろうと考えると、綺礼の口角は無自覚に上がる。

 

「ギルガメッシュよ、貴方はこの儀式をどう捉えている?」

 

クラスではなく真名を発しての問いかけに、アーチャーは目を細めながら綺礼に返答する。

 

「七騎の英霊を呼び出し、六騎を杯にくべ、万能の願望器を得る実にくだらん茶番だ。このような些事に、王たる我を呼びつける事自体、不敬極まりないが、なに王の光輝に縋られたのだ。茶番と言えど、勝たせてやるまでよ」

「では、我が師の望みも承知の上か」

「時臣の望みか、どうせつまらん事であろうよ」

「お前からそうなのだろうな、根源へと至ると言う望みは」

 

ふ、とアーチャーが鼻を鳴らし時臣の望みを小馬鹿にする。

 

「では、その根源へと至る為には七騎全てのサーヴァントが聖杯に捧げられる必要があるという事も知っているな」

「何だと?」

 

アーチャーの表情が変わる。

先ほどまでのように、気を緩めていた状態から一気に殺気立つ。

 

「なるほど、時臣め。我を謀っていたか・・・」

 

苛立つアーチャーを見て綺礼の溜飲は少し下がった。

 

 

 

 

 

 

 ライダーの固有結界に巨大海魔が取り込まれた頃、時臣はビルの屋上に降り立つ。

 

「さて、居るのは分かっているのだよ。衛宮切嗣」

 

隠れても無駄だ、さっさと出てこいと自らを狙撃した下手人である切嗣へと、時臣は告げるが辺りはシンとしたまま何も動かない。

ならば仕方が無いと時臣は魔術を使用し、切嗣を炎でもって炙りだそうとする。

 結論から言えば、対峙した相手が魔術師殺し衛宮切嗣であるというのが、敗因だったのである。

時臣が炎を繰り出した瞬間に、高温に反応するように作成された爆弾が起動し、床が爆破されたことで時臣は階下へと誘われる。

 

(チェックメイトだな)

 

落下していった時臣を確認した切嗣が、スイッチを押すと時臣の居るフロアから無数のガトリングが起動し自動で斉射を始める。

 ガトリングが撃ち尽くされた頃に、切嗣は確実にトドメを刺すためにトンプソンコンテンダーを構え、時臣の元へと向かう。

 

「アインツベルンも・・・落ちた物だ・・・」

「ッ!」

 

不意を突かれた事で血塗れになりながらも、迎撃を行った時臣に驚きながらも冷静に、切嗣は固有時制御を使用しトンプソンコンテンダーを放つ。

 

「ぐッ!!」

 

ガトリングを防いでいたのであろう炎の防御壁を構えるが、トンプソンコンテンダーにより放たれた弾丸はそれを貫通し、時臣の脇腹を抉る。

 

「さよならだ」

 

二射目が構えられているのを見た時臣は、先ほどよりも防御壁に魔力を回しトンプソンコンテンダーを防ぐ。

だがそれは、アインツベルン城におけるケイネスと同じ轍であった。

 故に、時臣の魔術回路はもう二度と魔術を行使できぬほどに破壊しつくされる。

しかし、聖杯を求める御三家の一つ遠坂の執念が為したのか、魔術刻印は奇跡的に損傷は少なく済む。

そんな事は認識していないのだろうが、時臣の生存本能が逃走を選択し、無意識が令呪を行使しアーチャーに救援を求める。

 裏切られていると知っているにも関わらず、アーチャーは何の気まぐれか、切嗣の前に時臣を守るように現われた。

 

「アーチャーッ!」

「疾く失せるのであれば、命は取らんが?」

 

従わなければ死ぬなど明白であるが故に、切嗣は大人しく退却していった。

 

 助けを乞うた自覚などないのだろうが、時臣はアーチャーを縋るような目で見る。

 

「お、王よ・・・。どうか、治癒の宝具を・・・」

「まあ、そう焦るな。此処では煤を被ることになる」

 

アーチャーはそう言い時臣を担ぎ上げ遠坂邸に連れて行った。

 居間のソファにて横たわる時臣は、アーチャーから与えられた傷を癒やす霊薬を口に含む。

魔術回路こそ元に戻りはしないが、肉体的な傷はみるみると癒えていく。

すると、ゆっくりと部屋の扉が開く。

 

「綺礼か?」

 

弟子の名を時臣は溢すが、次の瞬間に大きく目を見開く。

 

「間桐雁夜ッ!?」

「時臣・・・」

 

恐らく綺礼を使ってアーチャーが呼びつけさせていたのだろう、雁夜はふらつく時臣へと一気に駆け寄る。

 

「桜ちゃんの受けた苦しみをッ!その僅かでも思い知れッ!」

 

稲妻のような形をした短剣が時臣へと突き立てられると、彼の最後の令呪が霧散し雁夜の手の甲へと移る。

 

「契約を奪ったのか・・・!?」

「死ねぇぇぇぇぇええ時臣いぃぃいぃいいいい!!!」

 

刻印虫に食われることでバランスがおかしくなっている精神から、今まで妬み嫉んでいた時臣へ、雁夜の八つ当たりと言って良い恨みが吐きつけられる。

それは、時臣の腹部が挽肉のようになるまで続いた。

 恨んでやまなかった相手を遂に殺したというのに、全くと言って良いほどスッキリしない雁夜が、時臣の遺体を前に呆然と立っている。

 

「なんとまぁ、醜悪よな」

「見逃してくれアーチャー・・・」

「まあ、元よりそやつは背信者だ。どうしようかと悩んで居た所よ。だが、貴様そのような面で愛を囁くのか?」

「は?」

 

冷酷な笑みでそう言うアーチャーの視線を辿ると、そこには此処に居るはずの無い遠坂葵が居た。

 

「な、なんで・・・」

「やめてって言ったのに、どうして・・・」

 

どうやら、途中から見ていたらしい葵が青い顔で雁夜に疑問を投げかける。

 

「どうしてって・・・それは、葵さんや桜ちゃんに凜ちゃんの為に・・・」

「・・・!!そう、雁夜くんこの人からサーヴァントを奪ったのね。これで間桐のサーヴァントは二騎、良かったわねこれで聖杯は貴方の物ね」

「違うッ!そんなつもりじゃ、だって時臣が居るから桜ちゃんと凜ちゃんは引き離されて、葵さんは悲しんだ!!・・・俺はただ葵さんの笑顔が見たかったんだッ!」

「魔術から逃げ出した貴方が、時臣さんを悪く言わないでッ!」

「葵さん・・・」

 

ただ初恋の人の為を思ってした行動を、その当人に否定された事で雁夜の精神に罅が入る。

 そして様々な罵倒が投げつけられた事で、物理的にもよろめいた雁夜に致命的な一言が届く。

 

「アンタなんか、誰も好きになったことなんかない癖にッ!」

「好きになったことが・・・!?なんで・・・なんで・・・。アンタが否定するんだッ!!」

 

獣のような叫びを上げる雁夜の皮膚を突き破り刻印虫がこぼれ落ちる。

 

「殺せアーチャーッ!!」

 

溶け落ちた理性の最後に残った、何故己を選んでくれなかったのだという怨嗟が、令呪を通しての命令としてアーチャーに届けられる。

 

「令呪の強制力だ、これは仕方が無いなぁ・・・」

 

黄金の波紋より、殺人に特化した宝具が放たれ葵の命を一瞬にして刈り取った。

 

「は?」

「貴様が殺したのだ。間桐雁夜」

 

アーチャーより告げられたその言葉を、脳が理解しようとして拒み雁夜は叫びながら、遠坂邸を飛び出していった。

 静けさが戻った遠坂邸に、足音が響く。

 

「綺礼よ、貴様己の愉悦は受け入れぬのではなかったのか?」

「もはや、受け入れるしかなくなったのだ。妻の愛は否定してはいけない、あいつは私に幸福になってくれと祈っていた女だ」

「そうか」

 

朝日が昇り始める。

 

「見ろギルガメッシュ、主はこのような男も愛するとお言いだ」

 

綺礼の手の甲に再び令呪が浮かび上がる。

 

「やはり貴様は面白い」

「折角己が愉悦を自覚したのだ。まだ付き合ってくれるなギルガメッシュ」

「良かろう、貴様を新たなマスターとして認めてやろう。精々励めよ」

 

新たなアーチャー陣営が此処に成った。




Q.おじさんに救いはないんですか?

A.在庫が切れております
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