間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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四画目の令呪

 回収した龍之介の頭を布に包んだ状態で教会へと赴いたアナは、監督役である璃正からは凄まじく苦々しい視線を向けられた。

 

「なによ」

「いやなに、キャスターのマスターの頭部を持ってこなくとも良かったのだがね」

「気を遣ってあげたの」

 

時代を考えてくれ、今は戦国時代ではないと考えるが、決まりは決まりであるが故に、璃正は自らが保持する預託令呪より一画をアナへと移植する。

 

「ん、ありがとう。頭は置いていくわ。殺人鬼とは言え弔ってあげないと化けてくるかもしれないもの」

 

死後の魂の安寧を祈れと言うならば、それは本職であるからして断る理由など無いが、こちら側の都合を一切気にする素振りのないアナへと、璃正は視線でもって非難を送る。

 

「そんな目を向けないでくれる?息子を使って遠坂と手を組んでいたじゃない」

「はて、私には与り知らぬ事だな」

「たぬきね」

 

アサシンがあの酒宴に姿を現した時点で、監督役と遠坂が手を組んでいた事は酒宴に参加していた陣営にとっては、知るものとなっている。

しかし、その事を知ってなお教会に姿を現し、キャスター討伐の報償である令呪を受け取っていった事は褒めるべきであろう。

 

 宣言通りに布に包まれた頭部を置いていった事に、璃正はため息をつきつつも神父としての仕事はこなすのだった。

龍之介に対しての弔いを終えてより小一時間後、扉が開く音がしたために璃正は講堂に姿を現す。

 

「綺礼か。何をしに来た、お前には聖杯戦争中は教会への接近を禁じていた筈だが」

 

聖杯問答の後に、使い魔を通して伝えて事を早速破った綺礼に対して璃正は訝しむ。

 

「父上、私はどうにも醜悪な存在だったようです。貴方は犬畜生とでも交わったのでしょう」

「何を言っている綺礼・・・」

 

璃正から見て様子のおかしい綺礼に、彼が警戒しいつでも迎撃ができるように心構えていると、講堂の長椅子に座っているアーチャーを見つける。

 

「アーチャー、何故ここに居る」

「サーヴァントがマスターの側に居るのがおかしいか神父?」

「何を言っている。貴方のマスターは時臣くんの筈だ」

「なんだ、知らんのか。死んださ、あのつまらぬ男は」

「なッ!」

 

アーチャーの言葉を信じるのであれば、璃正には綺礼が時臣を殺害しアーチャーを奪ったようにしか思えない。

 

「貴方は老いてしまった・・・」

「ぐぁッ!」

 

その動揺がつかれたのだろう、綺礼の一撃をくらい璃正は吹き飛ばされる。

 

「実の父を殺めるなど、私はとても心苦しい。ですが、聖杯を得る為には貴方は障害でしかない」

「惑わされたか綺礼・・・!」

 

今まで誠実であった自慢の息子が、聖杯によって堕落してしまったと感じた璃正はカソックを脱ぎ捨て、上半身を晒す。

 

「来なさい、その曇った瞳を晴らして――」

 

構えを取り綺礼を相手取ろうとした璃正であったが、綺礼が合図を送った事で宝具を射出したアーチャーによって四肢をもがれ崩れ落ちる。

 

「綺礼・・・」

 

事切れる寸前まで、己を恨むことなく憂う顔をしていた璃正を見て、綺礼は表情を歪める。

 

「どうした綺礼、父殺しは堪えたか?」

「なに、父はどこまでも清廉な男であった」

 

最後の瞬間まで他者の慈しみを持っていただろう男に、綺礼は己はそうはなれんなと改めて確信し教会を去ろうとする。

だが、足元に転がっていた預託令呪の刻まれている璃正の腕が目に止まる。

 

「令呪・・・」

 

聖杯戦争がどう進もうと、己は衛宮切嗣と相見えると確信を持っている綺礼は、魔力源としては破格の性能を誇る令呪は、あるだけ良いと思考する。

だが、監督役であった璃正が死んだ今、預託令呪を移譲する方法は無い。

 いや、方法はある。

強引であり、普通は考えもしない方法であるが、綺礼は己と腕の魔術回路を無理矢理に接続する。

 

「ぐッ!」

 

痛みが走るがこの程度は無視すれば良いと、綺礼は腕に根付いている令呪の術式を自らの腕に移し替える。

 

「器用な事をする」

「なに、聖杯も私を望んでいるのだ」

「かもしれんな」

 

弔う事もせずに綺礼はアーチャーを連れ教会を去って行った。

 

 

 

 

 

 

 何もできなかった、いや何もできていない。

聖杯戦争に召喚され、この生こそは主へと忠義を果たそうと決めた筈なのに。

その主に誇れる戦果を挙げるどころか、取り返しのつかない傷をつけてしまう始末。

これでは騎士など名乗れる訳がない。

 

「何を憂いているのランサー」

「ソラウ様・・・」

 

今は魔力供給だけでなく令呪さえも持つソラウ。

彼女こそがもはやランサーのマスターであろう。

 

「貴方はケイネスの為に良くやっているわ。だから悲しまないで良いの・・・」

 

熱に浮かされた瞳で自らにしなだれかかりながらそう言う、ソラウをランサーは押しのける。

 

「我が主の様子を見て参ります」

 

明らかに己の黒子によって魅了されているソラウと二人きりになりたく無い、と言う心情でランサーはケイネスの元へと向かっていった。

 

「ランサー、私のランサー。どうして私だけを見てくれないの・・・」

 

ランサーは間違いを犯した、本人にとっては認めがたくとも今のマスターであるソラウを一人きりにしてしまった事を。

この間違いを彼は深く後悔する。

 

「そうだ、武功よ。彼が倒すに相応しいサーヴァント・・・」

 

ランサーが自らを真の主と認め、更には愛してくれる未来を思い描くソラウの頬に、飛沫が掛かる。

一体なんだと思い、飛沫を拭おうとして失敗する。

 

「あ!」

 

無いのだ手首から先が、それも令呪の刻まれた右手が。

 

「令呪ッ!」

 

ソラウの意思に反し、未だ金網を掴んだままの右手を彼女が回収しようとするが、首に腕が回され絞め落とされる。

 

「まさか、ランサーを追わせてた使い魔に気づけないなんて・・・」

 

時計塔が誇るロードエルメロイが聞いて呆れると、ソラウを襲撃したアナは彼女を担ぐとどこかへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 ケイネスは激怒した、己の元に令呪が帰ってきたのは喜ばしいが、それを上回る怒りが、彼の動かなくなっていた足に再び大地を踏ませる。

 

「ランサー、今すぐにでも貴様を自害させてやりたいが。全てはソラウが優先される・・・」

 

語気は穏やかであるが、ケイネスはソラウを誘拐した犯人を殺すと決めた。

 

「私は良い、覚悟はある。だがソラウは許さん。彼女だけは駄目だ」

 

ならばこんな場所に連れて来るべきではなかったとケイネスは自省するが、全ては過去。

今は未来にて、ソラウが生きている事が大事なのである。

 ソラウの右手の下に記されていた、港の倉庫街へとやってきたケイネスとランサーは、ソラウを誘拐した下手人を知る。

 

「セイバー・・・!何故、何故だ!!」

「・・・」

 

無手にてランサーを見つめるセイバーに、ランサーは怒りの視線を返す。

 

「騎士では無かったのかお前は!!それほどに聖杯が欲しいと言うのか!!」

 

セイバーが居るという事に、ケイネスはそのマスターである切嗣も近くに居ると察し警戒する。

 

(不味い、あの男だとするならば。このままではソラウが・・・)

「ランサー、お前はセイバーを討ち取るが良い。私はあの男を此度こそ屠ろう」

「承知。今宵こそ貴方に勝利を」

 

もはやろくな魔術は使えぬが、それでもとケイネスは切嗣を探しに行く。

 

「もはや、お前を騎士と認めんぞセイバー。此処で討つッ!」

 

双槍を構え向かってくるランサーに対し、セイバーは黒い剣を構えると破魔の紅薔薇に触れようとせずに立ち回る。

 

「ふぅ・・・!」

「ぐッ!だがッ!」

 

必滅の黄薔薇が押さえつけられバランスを崩すが、ランサーは必滅の黄薔薇を手放し腕をバネに跳躍すると、回転蹴りをセイバーの側頭部に放つが容易く躱される。

 

「誇りを捨てはしても、技は落ちんかッ!」

 

続けざまに振り抜いた破魔の紅薔薇をセイバーは掴み取ると、ランサーを引き寄せ剣でランサーを貫こうとする。

だが、身を捩ることで躱したランサーは、着地し距離を取ろうとする。

 しかし、破魔の紅薔薇を掴んでいた手を蹴りつけられ破魔の紅薔薇を手放してしまう。

これにより先ほどとは逆に無手になったランサーの目の前で、セイバーは黒い剣を放り捨て必滅の黄薔薇を掴み上げる。

するとどうだろうか、セイバーの掴む双槍は共に黒く染まり赤い線が走る。

 

「Aaaaaaa」

「まさか・・・貴様は・・・!」

 

セイバーであるはずの者の正体をランサーが察した時には、既に遅く彼の物であった筈の双槍が、彼の霊核を穿つ。

 

「忠を果たせぬのが、俺の定めなのか。なぁ、バーサーカー・・・。済まないセイバー、お前に見当違いの怒りを持ってしまった・・・」

 

光となりランサーは消滅したが、バーサーカーの物となった彼の双槍は依然バーサーカーの手の内に収まっている。

 

 切嗣を殺すと勇み、倉庫街を駆けずり回ったケイネスの前に縛られたソラウの隣で、酒を飲むアナが現われる。

 

「アナ・クレメット・・・!?」

「おかしい?でもねロード。これは聖杯戦争よ、討てる相手は討たないといけないわ」

「何故ソラウを拉致した」

 

切嗣で無いならば話は通じると、ケイネスは疑問を投げかける。

 

「余分な令呪が増えたから、普通は使えないバーサーカーの宝具を使ってみたくなったの」

 

唯それだけだと言いながら、アナは元の三画に戻った己の令呪を見る。

 

「それに、貴方令呪がもうないじゃない」

「なに?」

 

指摘された事で、手の甲を見るとそこにはもう令呪など無かった。

 

「うん、撮れてる」

 

連絡しても応答しなかった雁夜の代わりに、使い魔にカメラマンをさせていたアナは、セイバーに化けたバーサーカーがランサーを双槍で穿った瞬間が撮れていることに満足する。

 

「彼女の右手、くっつくようにしておいたわ」

 

そう告げアナは去って行った。

 

(帰ろう、ソラウ・・・)

 

もう彼女が無事で有るならばそれでいいと、ケイネスはソラウを抱き上げると、冬木からイギリスに戻る事に決めた。

 この後、無事に帰国する事はできたが自身の魔術回路のみならず一族の魔術刻印を八割方破壊したケイネスは、死ぬほどきつい目にあった。

主に妹によって。

 

 

 

 

 

 

 屋敷にて切嗣とこれからどう動くかを話していたアイリスフィールが突然倒れる。

 

「アイリスフィール!!」

「心配しないで」

 

心配し駆け寄ってくセイバーを制し、アイリスフィールは身を起こすと切嗣に告げる。

 

「切嗣、彼女を殺さないと聖杯は完成しないわ」

「そうか」

 

キャスター、そしてアイリスフィール達には知らぬ事であるが今倒されたランサーはアサシンと異なり、小聖杯である彼女へと魂が回収された。

だがアサシンは違う。

アナの固有結界によって消滅したアサシンの魂は、小聖杯へと回収されていない。

 

「アイリ、僕は間桐邸に向かう。奴は恐らくそこに居るだろう」

「分かったわ。私たちはどうすれば良いの?」

「君たちは・・・。ランサーを優先してくれ」

 

この後アイリスフィール達は、ランサーが既に敗退したことを知ることになった。




やったねケイネス!!未来があるよ!!
なおライネス激おこ
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