間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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倉庫街にて①

 遠坂時臣により召喚された黄金の英霊であるアーチャーによって遠坂邸に侵入したアサシンが瞬きの間に討ち滅ぼされた。

 

「茶番だな。全くつまらん」

 

自らが呼ばれた時代がこうまで醜悪であるならばいっそ霊薬を飲み子どもに戻ってしまおうかとも考える。

しかし、それは自らに対して臣下の従をとる時臣に報いる形ではないとしてアーチャーはひとまず霊薬の服用を取りやめると霊体化し姿を消した。

 

 雁夜に使い魔を使わせ遠坂邸にて起きた一幕を監視させていたアナは唖然とする。

 

「アサシンがもう脱落した!?」

「ああ、憎たらしいが時臣は天才だ。あのレベルのサーヴァントを呼んだならアサシンなんて赤子の手をひねるみたいな物だろうさ」

「出鼻折れたじゃん!!まだアサシンの写真撮ってない!!」

「アンタが分からないよ。サーヴァントが脱落して喜びこそすれ嘆くなんてな」

「脱落するのは良いんだ。ただ、私が記録する前に落ちるのは・・・こう、肩透かしだ。アサシンと言えども英雄なんだ、少しは期待してたんだぜ」

 

心底残念そうに言いながらアナはベッドに沈み込む。

そんなアナから視線を外し雁夜は間桐邸へと戻ろうとする。

 

「幾ら俺が急造の魔術師と言っても気を許しすぎに見える」

「君程度、変な気を起こされたところで何もさせずに殺せるさ。ところで何処に行くんだい?」

「桜ちゃんの所だ。少しでもあの子の側に居てやらないと、臓硯が何をするか分かったもんじゃない・・・」

 

雁夜が側に居たとしても無駄でしか無いのにと思うがアナは雁夜を見送る。

 

「桜ちゃんか・・・。私も見てみたいな」

 

ふとそう呟くとアナは徐にナイフを取り出すと腕に突き刺し血を溢れさせる。

するとどうだ、溢れた血が蛇を象ると命となる。

 

「雁夜くんについててくれ」

 

桜が誰かは分からないが雁夜に付かせていれば分かるだろうとアナは蛇を送る。

傷は既に塞がっていることを触って確認した、アナはシャワーでも浴びて眠るかとベッドから起き上がるとバーサーカーが命令も無しに実体化する。

 

「どうかしたかい?」

「Arrrrthurrr・・・」

「そうか、何かを感じたか。だけど今じゃないよ」

 

魔力の供給を断ち切った事でバーサーカーは強制的に霊体化する事になった。

 

 眼帯代わりの包帯をシャワーを浴びたことで付け直しているとアナの視界に蛇の見ている景色が送られることで色が付く。

 

「へぇ、この子が桜か・・・。良い色の瞳をしているけど、心が死んでるな。こりゃ駄目だ」

 

臓硯は一体この少女に何をしているのやらと考えるが、所詮は他家の魔術事情であるので自身には関係ないとして眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 あからさまに気を放ち誘いをかけているらしき存在を確認したことでアナは雁夜を呼びつけ合流していた。

 

「アンタ、使い魔が居るなら何故俺に出させた」

「1年間文字通り死ぬほど修練を重ねたんだろう?だったら使わないと勿体ないってもんさ」

「魔術なんて・・・関わりたくも無かったさ」

「へぇ・・・。あ、今日はシャッターチャンスあると思うからよろしく!」

 

この女こちらの話しなど毛ほども興味が無いのかと思うが、ただ写真を撮るだけで聖杯が獲れる言うならそれにこしたことはないと雁夜は黙ってカメラを受け取る。

 

「その箱みたいな奴はなんだ?」

「これかい?当家の継承物その2とだけ教えておくよ。親戚故の親切さ」

 

背に背負う箱についてアナがそう言うと金属音が響き渡る。

 

「おや、出遅れたか。雁夜くん、君はシャッターチャンスを逃すなよ」

「分かっている」

「私は入り込む隙が無いか見てくる」

 

そう言うとアナは雁夜が何かを言う前に戦場へと近づいていった。

 

 バーサーカーに抱えさせ屋根の上に上ったアナは眼下にて行われているランサーとセイバーの戦いを感じ取る。

 

「これは無理かな?漏れる会話からして乱入したらツーショットが夢の向こうだ」

「Aaaaaaaaaa・・・!!!」

「まだと言っているだろう」

 

吸い上げられそうになる魔力を抑えバーサーカーを支配下に押しとどめていると戦場の空気が変わる。

 

「どちらも此処で決めるつもりか」

 

セイバーが踏み込み不可視の剣を振り上げるがランサーの蹴り上げた短槍がセイバーの左手の腱を断ち切る、それによって軌道が変わりランサーは頬を斬られるのみに留まる。

 

「やるぅ。に加えて、あの英霊、良い造形だ。欲しい」

「UuuuAaaaaa!!」

「君もか!!私たち気が合うなバーサーカー!!」

 

向ける感情のベクトルは違うがバーサーカー主従の当面の目標がセイバーへと定まった。

 

 腱を斬られた事でランサーから距離を離したセイバーは共に戦場へと立つアイリスフィールへと治癒の魔術をかけるように促す。

 

「どうしましたアイリスフィール、早く治癒を」

「やっているわセイバー・・・!貴女はもう完治している筈、でもどうして!?」

 

動揺を隠せないアイリスフィールへとランサーは短槍を見せつける。

 

「我が必滅の黄薔薇は穿った者に不治の傷を与える。故にその傷癒やしたくば、この俺を討ち取ることだな。セイバーのマスターよ」

「そんな・・・」

「案ずることはないアイリスフィール。例え左手が使えずともランサーを討ち取って見ましょう」

 

先ほどまでの様には剣を振れないにも関わらずとも、自らの不調をおくびにも出さないセイバーを見てランサーの口角が自然と上がる。

 

「その意気や良し。さすがは騎士王か」

「なに、決闘においての負傷は誉れだ。私の足を引く事など無い」

 

再び戦いが始まるかと思った時セイバーが屋根に佇むバーサーカーを捕捉する。

 

「新手か」

「どうしたセイバー。来ないならば行かせて貰うぞ!!」

 

ランサーが踏み込もうとした瞬間に雷鳴が鳴り響くと豪快な勝鬨が轟く。

 

「Alalalalalalalalai!!!双方そこまで王の御前である!!矛を収めよ!!」

 

落雷と共にセイバーとランサーの間に戦車ごと降り立った存在が二人へと語りかける。

 

「我が名は征服王イスカンダル!!此度の聖杯戦争においてはライダーの位で限界した。騎士の決闘を邪魔立てしたことは先に謝っておく、スマン!!」

 

謝罪はするが頭は下げはしないライダーにその場の全員が呆れていると、戦車の荷台から彼のマスターであるウェイバー・ベルベットが跳ね起きる。

 

「何をやってやがりますか!!このバカチンはぁぁぁああああ!!」

 

真名を自ら暴露したことを咎めるウェイバーであったがライダーにデコピンを喰らわせられもんどり打ちながら倒れ込む。

 

「真名を告げたことには感服するが、貴公は何をしに来たのだ」

「おお、そうよな。余は問いたい、貴様等の聖杯に託す願いはそれ程までに大きいのかと!!そこでだ、此処は余の軍門に加わらぬか?さすれば世界に覇を唱える栄誉を共に浴びる事を約束しようではないか!!」

「軍門に降れとは貴公を主と認めた上で聖杯を譲れと言うことか、征服王」

「おう、そうなるな」

「では無理だな。この俺が今生において槍を託した主はマスター唯一人だ」

 

ランサーにとりつく島も無く断られたライダーは勧誘の矛先をセイバーへと向ける。

 

「では貴様はどうだセイバー?」

「愚問だな征服王。彼の大王と言えども聖杯を渡すなどできようはずが無い」

「そうかぁ・・・。待遇は応相談だが?」

「「くどい!!」」

 

しつこい勧誘に二人が怒声をあげた事でライダーはこれは無理かと諦める。

 

「こいつは残念だ。勿体ないことをしたなぁ」

「何やってんだよライダー!!なんで真名をばらしたのさぁ!!」

「物は試しと言うではないか。それにな坊主、余は王だ。名を隠してどうする」

「お前、これは聖杯戦争なんだぞ!?」

「分かっておるわい」

『そうか・・・。君だったか、ウェイバー・ベルベット君』

 

風に乗せられた事で倉庫街に響く声にウェイバーはビクッと背筋を震わせる。

 

「せ、先生」

『そうかそうか。私の聖遺物を盗み出してまで聖杯戦争に参加したのか。であれば、この私が特別講義をつけてあげよう。魔術師らしく苦痛を刻み、恐怖を植え付けてあげよう』

 

声を聞くだけで震え縮こまるウェイバーを引っ張り上げたライダーは声の主ケイネス・エルメロイ・アーチボルトへと声を張り上げる。

 

「おう魔術師よ!!貴様おそらくはこの小僧に成り代わって余のマスターになる腹積もりだったかもしれんがな!!余のマスターになりたかったのであれば声だけではなく身を晒せ!!余のマスターは共に駆ける勇者で無くてはならん!!」

 

サーヴァント風情がと歯噛みしながらもケイネスは挑発に乗ることなく闇に潜み続ける。

 

「こうまで言って出てこんか。飛んだ腰抜けよ」

「そこまでにして貰おうか征服王。それ以上の我が主への侮辱は許さん」

「おうそうか」

 

片手をあげランサーを軽く流したライダーは一つ咳払いをすると、唐突に天に向かって叫ぶ。

 

「聞けい英雄達よ!!よもやセイバーとランサーの決闘に惹かれ現われた英雄が余一人ではあるまい!!今この場にて姿を現さなくばこの征服王イスカンダルの侮蔑を免れんと知れ!!」

 

こんなあからさまな挑発に乗る奴など居るはずが無いとウェイバーとアイリスフィールは考える。

だが、場に出る機会をライダーのせいでなくしていたアナにとっては好都合であった。

 

「いやぁ、侮蔑されるのはちょっと困るな。そんな事になったら傷つくよ」

「Aaaaaa!!Aaaaaaa!!」

「どうどう」

 

今にもセイバーに襲い掛かりそうなバーサーカーを宥めながら現われたアナにその場の視線が集まる。

 

「良くぞ、姿を現した。で、貴様は余の軍門に加わるか娘」

「冗談。貴方の軍門に加わらずとも私が聖杯を手にするさ」

「ほう?」

「なに?」

 

ライダーはその大言に笑い、セイバーは眉をひそめる。

 

「聞き捨てならんな」

「結果だよ、可愛いセイバー」

「可愛いだと!?」

「なにせ私のバーサーカーは最強だ」

 

アナがそう言った直後街灯の上から爆笑が轟く。

 

「フハハハハハハハハハ!!!笑わせてくれるな雑種、王を僭称する者が二匹も現われたと思えば。その薄汚い狂犬が最強だと?」

「貴方はアーチャーさん」

「笑わせた褒美だ、我を仰ぎ見る不敬。この一度は許してやろう」

 

アーチャーの背後に黄金の波紋が浮かび上がる。

 

「雑種、そこな狂犬が最強だとな。では試してやろう」

「良いですよ、ただ時間があるときで良いので写真に撮ってもよろしいですか?」

「何故我が雑種如きに時を割かねばならん」

「せっかくの聖杯戦争です。英雄の輝きは残しておきたいのです」

「そうか、であれば。この場にて貴様が輝きを記すに足るものか示してみるが良い」

「ええ、是非とも。そう言うことだから、やっちゃってバーサーカー。次はセイバーだからさ」

「Aaaaaaaa!!!」

 

魔力が回された事でバーサーカーがアーチャーへと駆け出すと同時に黄金の波紋が煌めいた。




この間に雁夜おじさんはずっと写真撮ってます
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