間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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倉庫街にて②

 深紅の瞳が黒い靄に包まれたバーサーカーを見下すとアーチャーが黄金の波紋より宝具を射出する。

 

「最強だと?たかが盗人がつけあがるなよ狂犬ッ!」

 

マスターであるアナ諸共消し飛ばす軌道で放たれた宝具の内の一つである剣を掴み取り己の宝具へと染め上げたバーサーカーは、自身らへと被害をもたらす物のみを砕くと咆哮を上げながらアーチャーへと跳躍する。

 

「王たる我と同じ地平を望むか、不遜が過ぎるッ!」

「Aaaaaaaa!!!」

 

放たれる宝具を足場にアーチャーに接敵したバーサーカーは斬撃を浴びせようとするが、アーチャーが盾を出現させた事で斬撃は防がれるが、アーチャーの立っていた街灯はバーサーカーの攻撃による衝撃に耐えることができずに半ばからへし折れる。

 

「アイツ、本当にバーサーカーなのかよ・・・」

「理性が無くともあの武芸、ありゃ狂戦士で呼ばれたのが残念だなぁ。バーサーカーのマスター!!あいつにゃ他のクラスがあっとりゃせんか?」

 

ウェイバーの呟きに自らの感想をこぼしたライダーはアナへと話題を振る。

 

「いいえ、狂う事を望んだのはバーサーカーよ。ならあれで良いの、何故かと言われれば英雄は最強だ。私がマスターであるなら尚更さ」

「にしてはお主、ちときつそうだな」

「そうかい?」

 

戦闘開始当初に比べ顔色を少し悪くしているアナであったが声色にはそのような事はおくびにも出さない。

 壊れた幻想をバーサーカーが使用した爆発音でライダーの意識が再びアーチャーとバーサーカーの戦闘へと戻る。

 

「おのれ狂犬、我の宝物を盗み取るだけで足りず、目眩ましに使うとは。あまつさえこの我を貴様等雑種と同じ地平に立たせるなど。・・・万死に値するッ!」

 

怒髪天を衝いたアーチャーの背後には先ほどとは比にならない規模の黄金の波紋が浮かびあがり数多の宝具が顔を覗かせる。

それに対して身構えるバーサーカーであったがアーチャーが一瞬虚を突かれたような顔をすると苦々しくも黄金の波紋を納める。

 

「命拾いしたな雑種。・・・今宵は此処までにしておいてやろう。次に我と矛を交わらすのは真たる英雄のみで良い。して狂犬の飼い主、貴様躾は行っておけ」

 

そう言い霊体化して姿を消していくアーチャーへとアナが思わず声をかける。

 

「写真を撮らせてくれるのでは」

「くどいぞ、今宵は此処までよ。イカロスにでもなりたいのか貴様は」

「それはちょっと・・・」

「であろう」

 

今度こそアーチャーが霊体化すると、バーサーカーがおもむろにセイバーを見据える。

 

「Aaaaaa・・・」

「まだ昂ぶるのかい?」

「待てバーサーカーのマスター!!セイバーとはこの俺が決着を取り付ける!!それまでは待ってくれないか!!」

「ランサー、貴方の騎士としての姿勢は良いと思うが。これは無法の聖杯戦争だ。獲物は取り合うが必定だ。つまりは、心に従って良いよバーサーカー」

「Gaaaaaa!!」

 

咆哮をあげたバーサーカーは先ほど破壊した街灯を掴みとり武器とするとセイバーへと向け疾走を開始する。

 

「Aaaaaaa!!!」

「貴様にセイバーはやらせはしない!!」

「ランサー、貴方は」

 

邪魔をされた事で怒りを燃やすバーサーカーを双槍でもってランサーが防ぐ。

 

『ランサー何をやっている。そこなセイバーは手負いだ。バーサーカーと共闘し討ち取らんとせんでどうする』

「我が主ッ!お待ちください、このランサー必ずやセイバーを討ち取って見せます!!故にこの場においてはバーサーカーを撃退させてください!!」

『何をふざけているランサー。貴様はこの私を主と仰ぐのであろう。であればこの私に唯々諾々と従えば良いのだ』

「主よ!!ご理解してください!!」

 

バーサーカーの猛攻を凌ぎながらケイネスを説得しようとするランサーに彼がため息をついた気配を感じさせる。

 

「我が主?」

『令呪を持って我が傀儡に命じる』

「おやめください!!」

『バーサーカーと共闘しセイバーの首を獲るのだ』

「ッ!!」

 

令呪が行使された事でランサーがバーサーカーより飛び退くと、セイバーへと槍の穂先が向けられる。

 

「すまん、セイバー・・・」

「気にすることはないランサー。二対一などちょうど良いハンデだ」

「すまない・・・」

「Uuuuuuuu・・・Gaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

邪魔する者は何も無いとバーサーカーはセイバーへと鉄柱を叩きつけるが不可視の剣によって防がれると、そのまま剣を滑らせたセイバーがバーサーカーを斬りつけんとするがその斬撃はランサーの槍によって押し止められる。

 

「ぐぁッ!」

「Buuuuuureeeeeeeakッ!」

 

壊したいと言う気持ちが言語として結びついたバーサーカーは、その勢いのままに鉄柱を手放すとセイバーを殴りとばす。

そして背から地面に落ちたセイバーが起き上がろうとするのを防ぐように剣を握っている右腕を踏みつけると、首を掴み右肩を掴むと剣を腕ごと奪おうとする。

 

「ああああぁぁぁああぁあああ!!!」

「Hoooooooo!!」

 

その光景にアイリスフィールが声にならぬ悲鳴をあげていると、アナが前触れなく血飛沫をあげ倒れる。

 

「Ga!?」

 

それを察知したバーサーカーはセイバーを放り捨てると鉄柱を掴み取りアナの前に立つと暗闇から飛来した銃弾を叩き落とすと、狙撃手が居るらしき場所へと向けて一息に跳躍していく。

 

「あぁ、油断してたな」

「ヒィッ!」

「怯えないでくれよライダーのマスター」

 

こぼれ落ちた血液が蛇となりアナの内に収まると傷も塞がっていく。

 

「娘、貴様人をやめておるのか」

「私が?いや、区分で言えばまだ私は人さ。仕組みは教えないよこれは当家固有と言っても良い魔術だからね」

 

バーサーカーに対して銃撃をしている者をバーサーカーの視界を通して視たアナは、その者衛宮切嗣へと少し仕返しを行う。

 

「お礼だ」

 

アナがそう言うと切嗣の左手から感覚が消えぶらんと垂れ下がる。

 

「直接でなくばこの程度だよね。帰るよバーサーカー」

 

バーサーカーを霊体化させ帰路につこうとするアナはランサーの攻勢を辛うじて防いでいるセイバーを見やる。

 

「言えた義理じゃないが、頑張ってね可愛いセイバー」

『待てバーサーカーのマスター。まさかこの状況で帰るとでも』

「そうだけど?今夜というよりももう朝だ。というよりも貴方はこんな前哨戦で手札を見せびらかすのか?」

『ふむ・・・。ランサー今宵はもう良い』

 

アナの言葉にも一理あるとケイネスがランサーにそう告げると令呪の強制力が失せる。

 

「セイバー、貴公とは騎士としての決着を必ず」

「無論です」

 

血の滲む右肩を押さえながらセイバーが去りゆくランサーへとそう返す。

 

「待ちなさいバーサーカーのマスター。貴女は何を望み聖杯を望むのですか」

「知りたいかい?」

「・・・」

 

無言を肯定と受け取ったアナはセイバーに対して微笑む。

 

「無理矢理聞き出してみなさい。私達はいつでも貴女を歓迎しますよセイバー」

 

アナはそう言うと背を向け去って行った。

 

「ううむ、お開きか。まあ良いか。ではなセイバー、近い内にまた会おうではないか!!」

 

ライダーが雷鳴を轟かせ天を駆け倉庫街から去ったことで、この場にはセイバーとアイリスフィールが残された。

 

「セイバー右腕は無事?」

「ええ、軽く痛むだけですので。後少しで治るでしょう。所で先ほどバーサーカーのマスターを襲った者は」

「きっと切嗣ね。あの人もきっとセイバーの事を気にかけてくれているわ」

「切嗣が・・・」

 

セイバーにはアイリスフィールが言うように切嗣が自らを案じているとは到底思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 雁夜と合流し彼が撮影した物を確かめながらアナは首を撫でる。

 

「アンタ、なんで生きてるんだ・・・」

「私は生き汚いのさ。と言っても痛いのは痛いんだぜ?言っとくが私はあいつみたいに人間やめてないからな」

 

魔力を使いすぎた眠い、などとぼやくアナへと向ける雁夜の視線はこの女も大概な存在だと言う感情が籠もっていた。

 

「なんだよその目は」

「何でもない・・・」

 

深く関わるとろくな事がないと雁夜は視線を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 敗退したと見せかけていたアサシンの視界を共有していた言峰綺礼は師である時臣へと疑問を投げかける。

 

「師よ、バーサーカーのマスター。あの女は何者なのですか?」

『彼女は臓硯氏によれば間桐の遠縁に当たるクレメットの現当主との事だ。そして記録によれば伝承保菌者であるらしい。綺礼、代行者であった君には無いと思うが油断はしないように』

「心得ております」

 

伝承保菌者、神代から連綿と魔術等を受け継ぐ存在。

 

「なるほど、彼女と同じか。であれば気は抜けんな。・・・ふ、戦う訳でもないのに何に気を張っているのやら」

 

綺礼はそう呟くと椅子に腰掛ける。

 

「私は、答えを得なければならない。衛宮切嗣、貴様は聖杯に何を望むのだ・・・!」

 

彼の向ける執着は唯一人へと注がれている。

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