倉庫街の戦いが一段落した事で、拠点へと戻ってきていたバーサーカー陣営は休憩を取っていた。
「臓硯も底意地が悪い、あの男が居るのは知っていただろうに・・・」
今はもう傷が塞がっているが撃ち抜かれた首をさすりそう言うアナは箱を担ぐ。
「あの男って誰なんだ」
「昨夜の戦闘の後に冬木ハイアットホテルが爆破テロを受けただろう。あんな魔術師らしからぬ手管を使うのは、魔術師殺し衛宮切嗣。彼くらいしかいない。この聖杯戦争、ちょっと気が抜けなくなったね」
まるで知己であるかのように語るアナは出掛けるからついてこいと雁夜へと合図を送る。
釈然としないながらもついて行った雁夜は、向かう方向が郊外だと察する。
「この先には森しかないぞ」
「・・・本気で言って、いや君は知らないか。これから向かう森はアインツベルンの拠点だ。あのセイバーのマスターである、ホムンクルスが衛宮切嗣に狩られてしまう前にセイバーをしっかりと記録しておきたい」
「昨夜の写真じゃ駄目なのか」
「あれは戦時のセイバーだ。私は平時のセイバーも欲しい。欲を言えば、セイバーを我が物にしたい所だけど」
それは難しい所だとぼやくアナと口を閉ざした雁夜はアインツベルンの森へと侵入していった。
◎
決壊を通った所でアナは速攻を仕掛ける為に自身と雁夜をバーサーカーに担がせ城へと走らせる。
城が見える辺りに辿り着くと窓からマズルフラッシュが見える。
「既に始まってるか・・・。突っ込んでバーサーカー!!」
「待ってくれ、俺はどうなるんだ!?」
「我慢!!」
「なぁ!?」
「Ooooooooo!!!」
蹴りを放ったバーサーカーによって城の壁が破壊される。
「貴様はバーサーカーのマスター!」
「その声はランサーのマスター、いえ貴方はロード・エルメロイ。何故聖杯戦争に?」
「武勲の為だ。今は薄汚い鼠に誅を下す所である。邪魔をするでない」
銃声直後に金属音。
それによりこの場に居るもう一人をはっきりとアナに近くさせる。
「やぁ衛宮切嗣、昨日のお礼に来たよ」
「・・・」
「無視か・・・」
切嗣からの返答こそないが、冷めた目でこちらを見てくる彼の銃を握る手にアナは令呪の気配を察知する。
「なるほど、ちょっと話し変わってくるな。衛宮切嗣、君はセイバーのマスターかい?」
「・・・」
「沈黙は肯定と相違無いぜ。・・・その令呪貰おうか!!」
「ッ!」
駆けだしたアナへと向け切嗣は銃撃を行うが、アナは壁や天井さえも足場にして彼に接敵すると握っている銃を蹴りつけ手から離させる。
がしかし、ピンっと音がしたかと思えば切嗣が粘着式手榴弾をアナへと貼り付けていた。
「おっと・・・」
爆破圏外へと切嗣が退避すると共に手榴弾が爆発しアナを爆破するが肉片等の代わりか毒蛇を始めとした魔獣が溢れる。
(バーサーカー、銃を拾いセイバーを探してきて。雁夜くんを連れてね)
「Aaaaaaaa!!!」
雁夜の首根っこを掴み銃を拾い上げたバーサーカーは、悲鳴を上げる雁夜と共に窓を突き破りサーヴァントの気配を察知し森の中へと突入していった。
「バゥッ!」
「クッ!!」
襲い掛かる魔犬を撃ち抜くも飛び散った血肉が魔獣へと変成し切嗣へと襲い掛かる。
「ロード、そのスライムは貴方の礼装でしょう。衛宮切嗣へ攻撃をせずに良いのですか?」
「少々君に花を持たせた迄だ」
切嗣を襲わせるのに十分な魔獣を残して身体を再生させたアナからの言葉により、ケイネスは月霊髄液を指揮し切嗣に攻撃を仕掛ける。
(こいつら、僕の令呪を狙っているのか!)
「TimeAlter doubleaccel!!」
固有時制御を使用し加速した切嗣が魔犬を斃すと、月霊髄液が切嗣を切り刻まんと迫る、だが鋭利な刃と化したそれを躱した切嗣はトンプソンコンテンダーを取り出すとケイネスへと向ける。
(チェックだロード先生)
「学ばぬか愚者め、もはやそれは通じはせぬと知れ!!」
「ついでだ私も守ってくれ」
全ての月霊髄液を集約し最大防御をケイネスが行うが、知ったことでは無いと切嗣は引き金を引く。
確かにケイネスの行った防御は魔術強化されたトンプソンコンテンダーによる銃撃と言えど容易く防いだだろう、だが今放たれた物は魔術師殺しの切り札である起源弾。
被弾した者に衛宮切嗣の起源『切断』と『結合』を発言させる。
「がッ!ぁぁああぁああ・・・」
故に魔術回路を最大励起させていたケイネスは自らの魔術回路を破壊されてしまう。
「壁役ありがとうロード」
どういう原理でケイネスが狩られたかは見当がつかないが、アナはトンプソンコンテンダーの放つ弾丸に当たらなければ良しと考えると、ソードリザードと言う長剣サイズの蜥蜴の使い魔を手に取ると切嗣へと斬りかかった。
◎
時は少し戻る。
セイバーは森へと侵入してきたキャスター撃滅の為に、ケイネスと共に森へと来ていたランサーと共闘していた。
本来ランサーはセイバーを討ち取れと命じられていたが、自らの悦楽の為に子どもを殺したキャスターに対する義憤からセイバーと手を組むに至っていた。
「倒せど倒せどキリがないな・・・」
「無駄!!無駄なのですよ!!我が海魔は無尽ッ!貴様のような匹夫など取るに足りないのですッ!お待ちくださいジャンヌ、今にこの不埒者を排して見せましょう」
焦点の定まらぬ瞳で狂乱するキャスターはバーサーカーかそれ以上に来るっていると見ても良いのだろう。
「ランサー、見たところこの無尽の使い魔の発生源はキャスターの持つ魔本だ。貴公の魔槍であれば」
「なるほどな、確かに俺の破魔の紅薔薇であれば術式を破壊できるが。道はどうするセイバー」
「風に乗った事はあるか?」
「風か・・・無いができんことはないだろう」
ならば話しは早いとセイバーが構えを取ろうとすると、咆哮が轟いて来る。
「何やつ!!」
「・・・aaaaaaaAAAAAA!!!」
木々の間から飛び出して来たバーサーカーは雁夜を地面に放るとセイバーへと向け銃撃を行う。
「バーサーカーッ!」
「Aaaaaaaa!!!」
撃ちながらセイバーへと襲い掛かろうとしたバーサーカーであったが、海魔が巻き付くことでセイバーへの攻撃を止めさせられる。
「・・・」
「聖処女は私の物だッ!貴様のような奴が触れて良いと思っているのかッ!」
「Aaaa・・・Gaaaaaaaaa!!!」
邪魔をされた怒りに任せ海魔を引きちぎると、バーサーカーは手近な枝をへし折るとキャスターへと襲い掛かる。
「おのれぇッ!」
「Luooooooooo!!」
殺到する海魔をその身で轢き潰しながら迫るバーサーカーにキャスターの背に冷や汗が走る。
そして到達したバーサーカーによって枝で殴られたキャスターは偶然にも魔本を打ち据えられその手から離してしまう。
「今だッ!穿て破魔の紅薔薇ッ!」
投擲された破魔の紅薔薇によって穿たれた事で魔本の施していた魔術が解除される。
それに伴い海魔は生け贄の鮮血へと還る。
「おぉぉぉぉのれぇぇぇぇえええ!!!我が友より贈られし魔道書をよくもッ!」
「Aaaaaaaa!!!」
「ぐぁばッ!」
叫ぶキャスターであったが容赦なく攻撃を仕掛けてバーサーカーによって吹き飛ばされると、セイバーが転がって来たキャスターの背を踏みつける。
「キャスター・・・」
「じゃ、ジャンヌ!!何をなさる!!」
「己が悦楽の為に殺した子らに詫びながら逝くが良いッ!」
一息に首を刎ねんと振り下ろされた剣であったが、キャスターが転移して消えた事で空を切る。
「令呪だと・・・」
此処までお膳立てされた状況でキャスターを取り逃がしてしまった己にセイバーは憤慨するが、油断無くバーサーカーを見据える。
「来るが良いバーサーカー。ランサー、悪いがこの者との果たし合いに助けは無用だ」
「Aaaッ!」
無言で頷き退がるランサーが下がると、どこか喜色ばんだ声を上げたバーサーカーがセイバーへと襲い掛かる。
元は唯の木の枝であったそれがセイバーの振るう剣に耐えきれる筈が無く砕かれる、しかしバーサーカーは振り下ろされた剣を白羽取りにするとセイバーに蹴りを放ち彼我の距離を開ける。
体勢を整えたセイバーが駆け出す前にバーサーカーは地面に斃れる屍から脊髄を引きずり出すと鞭のように振るう。
「バーサーカー貴様ッ!」
「judgemeeeeeeeeent!!!」
剣に脊椎が巻き付き奪い取られそうになるがセイバーは剣に纏わり付く風を解放する。
「唸れッ!風王鉄槌ッ!」
脊椎が粉砕され、猛る嵐がそのままバーサーカーを襲い木に叩きつける。
「Aaaa・・・」
だがダメージなどどうでも良いと言わんばかりに、バーサーカーの視線はただ姿を晒した剣へと向けられる。
「Excaliburrrrrrr!!!」
怨嗟の込められた咆哮があがるとバーサーカーは何も持たずにセイバーへと疾走する。
(落ち着けバーサーカー!!勝てるものにも勝てないだろッ!)
円卓の欠片と言う特上の触媒で呼ばれた故に、セイバーの持つ剣に一際強く反応したバーサーカーに対して雁夜はそう思うも、マスターではない彼にバーサーカーを止める手立ては存在しない。
「貴様は何者だバーサーカーッ!!」
「Gaaaaaaaaa!!!!」
斬り付けられも倒れる事なく向かってくるバーサーカーに対してセイバーが叫ぶが、バーサーカーは咆哮を返すだけである。
「ッ!セイバー!!我が主が危機に瀕した故に、一つだけ言っておく倒れてくれるな!!」
「無論だランサー!!早く行くが良いッ!!」
新たにバーサーカーが手にした枝と鍔迫り合いながらそう言ったセイバーに、礼を告げランサーはケイネスの元へと向かうのであった。
◎
切嗣に蛇を巻き付きせ拘束した所でアナがソードリザードで斬り付けようとするも、切嗣が拘束されながらも放った爆弾により回避をよぎなくされる。
「ロード手早く治癒して起き上がってください」
「かはッ!」
「・・・駄目ですか」
この様子ではもう駄目かとアナがため息をつく。
(バーサーカー・・・かなりの勢いで魔力を吸ってるね。後五分で打ち止めだな)
自らもそろそろ限界が近いとアナは悟る。
もう今の魔力残量では箱の中の物を余裕を持って使えないとして切嗣打倒の選択肢から外し、ソードリザードを再び構えると、ランサーが現われる。
「あら、ランサー」
「バーサーカーのマスター!!・・・そして魔術師かッ!その場から動かない事だ、我が槍は即座に貴様らの首を刎ねるッ!」
焦燥するランサーにそう言われたことでアナはソードリザードを自らの内へと戻す。
ケイネスの脈を量りまだ生きていると安堵したランサーだが、それでも一刻を争うとランサーは彼を担ぐ。
「この失態いずれ貴様らの首級を挙げることで雪ぐぞッ!」
「やったのは私じゃない、あっちだぜ」
アナにそう言われランサーは切嗣へと視線を向ける。
「詳しくはロードに聞いてくれ」
その言葉を背にランサーは窓から飛び出すと撤退していった。
切嗣が銃を構えた事で戦いが再び始まるかと思ったが、アナが多数の小鳥を放ち目くらましとする。
「続きは今度だ」
一言残しアナは切嗣を前にして逃げおおせた。
「バーサーカーのマスター。アナ・クレメット、魔獣使いは伊達では無いか・・・」
朝日が昇った事で戦いの終わりが告げられた。
◎
下水道の中にあるキャスターの工房では、キャスターのマスターである雨生龍之介は凄く興奮していた。
「凄ぇよ旦那!!ワープもできるなんて最ッ高にCOOLだよ!!」
「いいえ、龍之介あれは私だけの力では無いのです」
「そうなの?」
「ええ、貴方の力があったことで私は今もこうして此処に居るのです」
キャスターのその言葉に龍之介は目を輝かせる。
「てことは俺にも旦那みたいに魔術って奴を使える才能があるってことでしょ?そうなれば今以上のCOOLが見えてくるよ!!」
「ええ、ええ。魔術は我らの美を更に高めるでしょう。時が来れば龍之介も魔の道を今以上に知るでしょう。ですが今はあの匹夫どもを駆逐さねばッ!」
「その匹夫がジャンヌさんを騙してるなら、駄目だよね」
「そうッ!駄目なのですッ!ジャンヌは奴らによって惑わされているッ!私が目覚めさせてあげねばならないッ!」
「旦那、きっと最高のCOOLを見せてあげればジャンヌさんも目を覚ますよ」
「龍之介・・・。ならば、もっと子ども達に協力して貰わねば」
「だったら俺がボランティアを集めてくるよ旦那」
会話を交わすキャスター主従の周囲は子ども達が元となった家具や楽器で溢れていた。