間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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キャスターを追え①

 遠坂凜は幼いながらも聡明な少女である。

父、時臣より教えられた遠坂家家訓『常に余裕を持って優雅たれ』を胸に抱く。

学校においては授業を良く聞き成績は優秀、また弱いものいじめは見逃さず事態を収めるのだ。

 凜には一つ下の妹が居た。妹は既に遠坂では無くなっている、故に凜にはもう妹だった少女に家族面をして会う権利などない。

だからこそだろうか、凜は自身では割り切っていると思っていても、心の何処かではこれ以上親しい者を失いたくないと思っていたのだろう。

母になにも告げずに凜は家を出た、時刻は既に日没。子どもが一人で出かけるには遅すぎる時間帯。

時間など凜には関係無い、現在冬木を騒がせている児童連続失踪事件に友達が巻き込まれたかもしれないのだから。

数日前から連絡がつかなくなった友達を探しに凜は今、夜の冬木に立つ。

 

「これが夜の冬木・・・」

 

自身の知る冬木とは違い薄ら寒い空気を凜は感じる。それが決して季節のせいで無いことは彼女が誕生日プレゼントとして父から貰った魔力に反応して動く羅針盤が示していた。

 

「何これ・・・。こんな動きをするなんて絶対おかしい、早くコトネを探さないと!」

 

幾ら魔術師とは言え未熟な少女は今、魔窟へと足を踏み入れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 キャスターを探すためにフクロウを放ったアナは、青白い顔を更に青ざめさせた雁夜を見やる。

 

「飲み過ぎたかい?」

「酒を飲んだのはアンタだけだ。俺は素面だ。・・・凜ちゃんが冬木に居るんだ」

「凜?・・・他家の者だろう。君が気にかけるべきは間桐桜だけじゃなかったか?」

「違うッ!凜ちゃんも葵さんの娘なんだッ!だったら俺が助けないといけないんだ!!」

「・・・なぁるほど。ならば、貴方は凜という者を保護しに行きなさい。ただ、万が一キャスターかそのマスターを発見したならば私に知らせること。使い魔を一人つけておくわ」

「ありがとう・・・」

 

雁夜の様子を見て、あぁ今のこいつは使えないと判断したアナは雁夜にインコを付けると、自身はキャスター陣営を捜索しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 まず凜は羅針盤が魔力を示す方向へは赴かずに友達を探していたが一向に見つかることは無い。

無論、友達の自宅へと赴いたが居たのは両親だけであった。自身が今冬木に居るなんて事が万が一にも己の両親に知られてはいけないため、凜は不本意ながらピンポンダッシュを敢行したのである。

 

「やっぱり、コトネは巻き込まれたんだ。聖杯戦争に・・・」

 

父が執り行っている大儀式に友達は巻き込まれたのだと凜は推測する。

ならば、自身の行く道はこの羅針盤が導いてくれるのである。

 

「お願いお父様、私を導いてください」

 

尊敬する父に祈りを託し、凜はより大きな魔力反応を示す方向へと足を進めていく。

 そして、凜の前にその男は姿を現した。

 

「なるほど、確かに時臣めよりは素質があると見える」

「何者なの・・・貴方・・・」

「何者かとな、まあ良い。幼子であるならば知らずとも許そう」

 

凜の目の前に現われたアーチャーに対して彼女の持つ羅針盤は尋常ではない反応を示す。

それを見たアーチャーは自らが発する魔力を抑えると、羅針盤は途端に静まる。

 

「答えよ娘。お前は何を求めこの地獄へと足を踏み入れた」

 

この質問には答えなければいけないと凜の直感が働く。

 

「行方不明になった友達を助けに来たわ!!きっと悪い奴に捕まってるのよ!!」

「だから、その者から友を救うと」

「文句でもあるわけ!」

「いやなに、えらく原因を断定している故にな」

「貴方も聖杯戦争の関係者なんでしょ!!だったら一般人を巻き込んじゃいけないわ!!」

「ふむ、道理であるな。この世の全ては我の物。ならばそこに住まう者は全て我の民か。この現代においては、甚だ認めがたい事であるがな」

「だから一緒にコトネを探しなさいよ・・・」

 

最後の方は尻すぼみになる凜の頭をアーチャーが乱暴に撫でつける。

 

「俯くな娘。お前の勇気に免じ今の一時のみ、我は貴様の指図をある程度聞いてやろう」

「指図を聞くって。それって一緒にコトネを探してくれるの?」

「愚問だ。なに貴様は父親より見ていて楽しい故な」

「ちょっとどういう意味それ!」

 

笑いながら歩を進め始めたアーチャーの後ろを凜は警戒しながらもついていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 使い魔の母であるアナにのみ聞こえる魔力が込められたフクロウの鳴き声が夜空に木霊する。

 

「居たか」

 

最短距離で迫るためにアナは壁を蹴り上げ屋根に上ると獲物の元へと一息に駆け出す。

 やがて彼女の肌が令呪特有の魔力を感じ取るとそれを持つ者の背後へと音もなく着地し回し蹴りを放つ、だが獲物である龍之介は殺人鬼あるいは美の探求者としてか背後のアナを察知すると、蹴りが当たる直前で回避する。

 

「危ないな、何君。俺達これからパーティするところなんだけどさ。ねぇ」

 

龍之介が自らの横に居る少年にそう問いかけると、彼は虚ろな瞳で頷く。

 

「・・・とても同意を得たとは見えないわ」

「納得付くさ。ちゃんと手を取って頭を下げたよ」

「へぇ、それ以上喋らないで良いわ。耳が腐る」

「ひっどいなぁ。でも俺、お姉さんが気になってきちゃった。折角お近づきになったんだ、お互いの事を紹介しあおうよ。俺は雨生龍之介、今は聖杯戦争って言うCOOLな事やってんだよね。次お姉さんの番ね?名前は?それと目も見たいな俺」

「喋るなと言ったわよね」

 

龍之介の身につける腕輪から腐臭のような魔力を感じ取ったアナは、必要でなければ絶対にいやだが龍之介に近づくと彼を蹴り飛ばし少年を自身にたぐり寄せる。

 

「いってぇ・・・」

「さっきのは紛れってわけか」

「もしかしてお姉さん旦那が言ってたマスターって奴?だったらごめんね、俺はまだ本当に綺麗な物を見てないからさッ!」

 

こんな所で尽きるわけにはいかないと言う龍之介の感情に呼応し腕輪が海魔を召喚する。

海魔を召喚したことで少年に掛かっていた暗示が解けると、彼は目の前に広がる化け物に腰を抜かす。

 

「君、死にたくなければ私から離れるなよ」

 

恐怖しながらも頷いた少年を見たアナは海魔へとバーサーカーを差し向ける。

 

「殺し尽くしなさいバーサーカー」

「Aaaaaaaa!!!」

 

実体化するなり道路標識をもぎ取り武器にしたバーサーカーは、あっと言う間に海魔を全滅させる。

だが、既に龍之介はそこに居ない。

 

「居ないか・・・」

「アンタ達一体なんなんだ・・・」

「君、名前は?」

 

バーサーカーを霊体化させたアナがへたり込む少年に、目線を合わせるかのようにかがみ込む。

 

「し、士郎・・・」

 

思わず名前を答えてしまった士郎にアナは微笑みを返すと、自身の瞳を覆う包帯を片目だけ取る。

 

「士郎、今夜の事は忘れなさい」

「待ってくれ・・・。アンタ達は結局・・・」

 

トラウマが残らないように瞳を通し念入りに忘却魔術をかけるアナは、どうせ忘れるからと何の気なしに士郎に疑問に答える。

 

「正義の味方とでも思いなさい」

 

そう返答を受け取った所で士郎は今起きたことを記憶から消され、真っ直ぐ自宅へ戻るようにと暗示をかけられる。

帰り始めた士郎に折角助けたのに死んでしまうのは寝覚めが悪いからと、アナはヘビに彼を守るように告げるのだった。




ギルガメッシュは子どもには寛大だからね
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