間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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キャスターを追え②

 指図を受けてやると言ったアーチャーはその言葉の通りにしていた。

 

「貴方、なんでお父様の事を知ってるのよ」

「なに、奴が我の威光を求めたが為だ。子どもはこのような事など気にせずとも良い」

 

聞かれた質問には答えるなどである。

 

「して娘。友を探すと言っていたが当てはあるのか?悪い奴に捕まっていると言っていたが、その悪い奴とは何処に居る?」

 

アーチャーにそう言われたが、手がかりなど何も持たない凜が言葉に詰まっていると、こんな夜中だというのに数人の子どもを連れて歩く男を目撃する。

 その男、龍之介は先ほどアナから襲撃を受けたにも関わらず懲りずに子どもを誘拐しているのである。

 

「あ、あいつよ。きっとあいつがコトネも連れて行ったのよ」

「可能性は高いな。さてここからどうする」

「きっと此処で問い詰めても何にもならないわ。だから、後を着けるの」

「妥当な所と言えるな」

 

尾行をするからにはバレては面白くないと、アーチャーは自らの宝物庫より隠密に特化した宝具を取り出し、それを自身と凜に使用する。

 

「何かした?」

「どうだろうな。ほれ、離れていっているではないか」

「気づいたならもっと早く教えなさいよね」

 

己の事を何も知らぬとは言え此処までの物言いをしてくる凜に対して、アーチャーは自然笑ってしまう。

 

「ちょっと!!そんな大声あげないでよ!!気づかれちゃうじゃない!!」

「フハハハ、いやなにお前はやはり見所があるとな。お前がマスターであればこの聖杯戦争も少しは楽しめたやもしれんな」

「よく分からないけど、褒めてくれてるのは分かったわ」

 

凜からしてみれば不思議な程に龍之介に気づかれることなく彼を尾行できていた。

尾行している間にも龍之介はどんどん子ども達を集める、その様はまるでハーメルンの笛吹き男が如くである。

 

(庭に湧いた毒虫を駆逐するは庭師の務め。全く時臣めは何を見ているのやら)

 

冬木のセカンドオーナーを名乗りながらも、未だにキャスターのマスターを見つけることができていない時臣にアーチャーは嘆息する。

暇潰しの散策でキャスターのマスターと思われる存在を見つけてしまったが故に、アーチャーからの時臣への評価がまた一段階落とされる。

 半地下のバーへと子どもを引き連れて入っていった龍之介は、数分後に彼一人だけとなり再び街へと躍り出る。

 

「どうやら、あの毒虫めはまだ喰い足りんらしいな」

「あいつも懲らしめないといけないけど、今はあそこに連れて行かれた子達を助けなきゃ」

 

龍之介が万が一にも戻ってきていない事を確認して、凜はアーチャーを連れバーの中へと入る。

そこには先ほど龍之介が連れていた以上の人数の子どもが虚ろな目をして一カ所に座らされていた。

また、子ども達の中には凜の友達も居たのである。

 

「コトネ!!」

「良かったではないか、お前の友はまだ生きているぞ」

「こんな状態全然良くないわよ。みんな立って此処から逃げるの!!」

 

呼びかけにも応じず虚ろな目のまま動かない子ども達に焦っていると、入り口の方から物音がする。

 

「今日は厄日なのかな、変なお姉さんには絡まれるし、不法侵入者はいるしさ。全く俺が何をしたんだよ、ただパーティをしようとしただけじゃないか」

「パーティ?」

「そ、パーティ。旦那が言ってたんだよ。恐怖は鮮度、だから俺も鬼ごっこをやろうと思って」

 

龍之介がそう言うと、バーの奥から海魔が現われるといの一番にアーチャーを拘束する。

 

「貴様、このような汚物で我に触れようなど。余程死にたいらしいな」

「いやいや、死ぬのはお兄さんだよ。君の悲鳴がスタートの合図なんだから」

 

腕輪を通して龍之介が海魔に命令を送ると、海魔はアーチャーを殺そうとするが逆にアーチャーに縊り殺されてしまう。

 

「は?」

「不快が過ぎて笑いが込み上げてくるわ。では覚悟は良いな毒虫。光栄に思えこの我が手ずから誅してやる」

 

アーチャーから発せられた威圧に龍之介が思わず後退ると、凜は羅針盤が強烈に反応していた腕輪を掴む。

 

「お前ッ!何してるんだ!!」

「みんなを、コトネを私が助けるのッ!」

 

以前父から教わった魔力を込めすぎれば触媒は爆発してしまう、と言う事を応用し凜は自らの魔力を全力で腕輪に込めると、腕輪が甲高い悲鳴を発し砕け散る。

 

「やった!!」

 

腕輪が砕けた事で子ども達が正気に戻ると、混乱し始めるが凜が即座に落ち着かせ皆をバーから逃げ出させる。

 

「ほんとッ!なんなんだよッ!折角旦那が俺にくれたのにさッ!・・・ホント、君ら人でなしだ」

 

自身の事を棚にあげ龍之介は凜とアーチャーに怒りのままに脈動する肉塊を放る。

 

「またぞろ不快な物を・・・」

「なによこれ・・・」

「あまり見るでない。あれはお前のような子どもには応える」

 

正気を奪う鳴き声を上げながら出現した大海魔の後ろで龍之介は逃げ出したが、アーチャーはあれを駆除するのは己ではないと考える。

 

「全く世話の焼ける娘よな」

 

大海魔の鳴き声によって意識を奪われた凜を小脇に抱えたアーチャーは黄金の波紋を一門開く。

 

「時臣よ、この子守代高くつくぞ」

 

自らの宝具を一つ使い捨てることでアーチャーは、不遜にも己に襲い掛かる大海魔を滅ぼした。

 

 逃げ出した龍之介を探すでもなく凜を小脇に抱え遠坂邸に帰ろうとするアーチャーを雁夜が呼び止める。

 

「止まれアーチャー。その子をどうするつもりだ」

 

威嚇からか蟲を展開する雁夜を、アーチャーは鼻で笑う。

 

「なに、子は親の元へ帰る物であろう?それとも何か、雑種貴様は己が懸想している相手の代わりをこの娘で果たそうと言うか?」

「ふざけるなッ!お前に俺の何が分かるって言うんだッ!」

「貴様程度、一瞥で推し量れると言うものよ。自己犠牲に見せかけた憐れな自己愛者よ」

「アーチャーッ!」

「フハハハハハハハッ!そう憤るなそこまで言うならば貴様が届けておくが良い。ほれ、駄賃も共にやろう」

 

蟲など気にするまでもないと雁夜に近づき凜を受け渡したアーチャーは、稲妻のような形の短剣を半ば無理矢理に押しつける。

 

「さて、その駄賃は裏切りの象徴だ。せいぜい踊れよ雑種」

 

暇つぶしは終ったとアーチャーは霊体化して姿を消した。

 

 酷く魘され眠り続ける凜を雁夜は背負うといつも葵らと会っていた公園に来るようにと、葵へと電話をする。

一足早く公園に着いた雁夜は凜をベンチに寝かせると、自身は木にもたれかかる。

 

(裏切りの象徴・・・。そうだ、時臣は桜ちゃんを裏切った。奴は報いを受けるべきだ。そうすれば凜ちゃんも桜ちゃんもまた姉妹に戻れるんだ)

 

短剣を眺め雁夜が思考に耽っていると、公園に誰かが焦った様子で駆け込んでくると、ベンチで眠っている凜に駆け寄る。

 

「凜ッ!」

「心配することはないよ葵さん。凜ちゃんは疲れて寝ちゃってるだけなんだ」

 

背後から声を掛けた雁夜へと振り返り、彼の顔を見た葵はヒュッと息を呑む。

 

「雁夜くん・・・なの?」

「驚かせちゃったか。ああ、俺だよ。葵さん、これは間桐の魔術の成果だ」

「間桐の・・・」

「でも安心して欲しい、桜ちゃんはまだ俺みたいな目にはあってないんだ。俺が協力を取り付けた人とそのサーヴァントは最強だ。時臣のアーチャーなんか比じゃないッ!」

「何が言いたいの雁夜くん・・・」

 

凜を抱きしめ微かに震える葵を見て雁夜は数歩退く。

 

「臓硯は聖杯を間桐にもたらせば桜ちゃんを解放すると言った。だからもうすぐなんだ、桜ちゃんと葵さんはまた親子になれるんだよ。それまで凜ちゃんと待っててくれよ、葵さん」

 

言うだけ言うと雁夜は昇り始めた朝日に背を向け、葵の元から去って行った。

 

 凜に取って短くとも長い一夜は終った。彼女は日常へと戻るのだ。

大海魔の鳴き声によって一夜の冒険を殆ど忘れてしまった凜であるが、彼女の記憶には黄金のサーヴァント・アーチャーの姿は残っているのであった。

 

 

 

 

 

 

 結局あれ以降、龍之介を見つける事ができなかったアナは、雁夜に連絡をとり彼の懸念事項は解消された事は知った。

 

「朝か・・・。一晩中動いてお腹減ったな」

 

どこか適当な店で空腹を満たそうとアナが活気づき始めた街を歩いていると、目の前にライダーとウェイバーがひょっこり姿を現す。

 

「ライダーと、ちょっと喧しいマスターじゃない」

「喧しいって何だよ」

「おお、バーサーカーのマスターではないか!!・・・そうだ!!」

 

何か良いことを思いついたとライダーがニヤリとすると、彼はアナに要件を伝える。

 

「バーサーカーのマスター貴様、今夜は相手おるか?」

「ごめんなさいライダー、私流石に貴方は好みじゃないわ」

「それはちと残念だが。そういう誘いじゃないわい。貴様は王ではないが、余が誘いをかけてやろう。今宵アインツベルンの城に来ると良い」

「また唐突ね」

「なに、折角英雄がこうも一度に顔を突き合せたのだ。酒を酌み交わし語らうのも悪くなかろう」

 

一杯引っかけようやと言う、ライダーの言葉にアナとウェイバーは揃って呆れる。

 

「お前、予約してたワインを買いに行くってそういうつもりなのか!?」

「でなくてどうなる小僧」

「てっきりお前が飲むと思って許し――ぎゃぁッ!」

 

騒ぎ出したウェイバーがデコピンをくらい蹲ると、ライダーはアナの返答を待つ。

 

「酒は百薬の長よ。勿論参加させて頂きます。ドレスコードなどは?」

「そこまで堅苦しい物ではない。楽にしてくれば良い」

 

満足そうに頷いたライダーはウェイバーを連れてワインを買いに向かっていった。

 

「英気を養いましょうか」

 

宴会は戦場であるとして、アナは朝からガッツリいこうと決めた。

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