間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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開かれる瞳

 ライダーより宴会に誘われた事もあり、アナは予定を前倒しにしてキャスターの捜索を再開していた。

時間はあっという間に過ぎ昼下がり、アナは覚えのある不快な魔力を辿って行く。

そして下水道に犇めく使い魔に処理させながら進んだ先にて。

 

「見つけた」

 

既に声帯を取り除かれてしまったのだろう、身に走る激痛に悶えながらも声を上げることができずに居る少年少女に、アナは包帯に隠されている瞳を自然鋭くしてしまう。

他家の魔術師には触らぬ神に祟りなしと無関心を貫くアナであるが、昨夜の少年のように魔術を知らぬ一般人が、魔術師の手によって命を弄ばれるのは見ていて反吐が出そうになる。

 血に刻まれた怪物がアナに血を啜り肉を貪れと囁いた気がした。

 

(こんな光景久し振り過ぎて、臍が熱くなる・・・)

 

だがそれを魂でもってねじ伏せる。

怪物としての彼の存在にも敬意は持つ、だがアナ・クレメットが魅せられたのは女神としての存在である。

 

「貴方、随分と良い趣味をしているわね」

 

話しかけられた事で、子どもを繋ぎ合わせオルガンを作製していた龍之介が手を止める。

 

「あれ、お姉さん。俺の事追いかけてきたんだ」

 

振り返りざまに骨の鍵盤を龍之介が叩くと、オルガンから音階に沿った悲鳴が轟く。

 

「すっごく綺麗でしょ、これ。お姉さんも分かってくれるんだ、だったら俺達は同志だよ!!」

「同志・・・」

「この美しさが分かるならお姉さんも同志に決まってるッ!」

 

アナが良い趣味と言ったことで、皮肉を素直に受け取った龍之介がアナへと歩み寄ろうとするが、実体化したキャスターが彼の肩を掴み止める。

 

「いけません龍之介」

「だんな?どうしてさ、お姉さんは褒めてくれたんだぜ?」

「あの女の目をご覧なさい、口先だけに決まっているでしょう」

「目って・・・。旦那、お姉さんは目なんて見えて・・・」

 

そこまで言ったところで龍之介は気づく、じゃあ何故アナには今自らが作り上げていた美術品が分かったのかと。

 

「アンタ・・・何者?」

「観光客よ」

 

包帯が解かれアナの瞳が外界を捉える。

 

「砕け散りなさい・・・『キュベレイ』!!」

 

宝石が如き輝きを放つ魔眼『キュベレイ』。

それは神代に在りし怪物ゴルゴーンの持ちし物と同一の物、代々クレメット当主が受け継ぎし物の一つでもある。

人の身においては魔眼の力を最大に解放することは敵いはしないが、それでもサーヴァントに対しても痛手を与えることが可能な手段である。

サーヴァントに十分以上に通用するとなれば、それは当然人間に過ぎない龍之介を殺す事など造作もないだろう。

 

「いけない!!龍之介ッ!」

 

レジストなどできよう筈もない龍之介は、彼からしてみれば突然平衡感覚を失い前のめりの倒れる。

 がしゃりと砕ける音が龍之介の耳朶を打つ。

痛みは無い、だが彼の視界には粉々になった己の腰から下が映る。

流血も無い、ただ石になっていくかのように龍之介の身体が黒く染まっていく。

 

「すっげぇ・・・」

 

だが、龍之介には恐怖は無い。

自らの知らないまた別の美しさによって屠られるのならば、まあ己の終わりとは納得は完全にいかないが良いだろうと、龍之介は受け入れる態勢に入る。

だが、それを認めないのキャスターである。

彼はまだ忌まわしき神より、彼の聖処女ジャンヌ・ダルクを解放していないのだから。

 

「おお・・・おお・・・、なんと言うことだ龍之介ッ!貴方はこんなところで探求を終えると言うのですかッ!」

 

高ランクの精神汚染スキルによってキュベレイによる、精神破壊の幻術を無効化したキャスターは螺湮城教本(プレラーティズ・スペルブック)を開くと龍之介の幻術が解放する。

 

「あれ・・・?」

「お目覚めになりましたか、龍之介」

「旦那・・・俺は・・・」

 

何か凄く綺麗な物に溶け込んでいけそうだった気がしていた、龍之介であるが自らのパートナーであるキャスターはまだ膝を折っていない。

 

「ごめん旦那、俺・・・俺の美学を捨てる所だったよ」

「目を覚ましたならそれで良いのです龍之介」

「抵抗するか、悪霊共・・・。貴様らは勇者に非ず、挑む資格無き有象無象だ。故に此処で私の糧になりなさい」

 

キュベレイにレジストされた事で、分かりやすく怒りを露わにしたアナは大蛇を召喚すると共に、バーサーカーに全力の魔力供給を行う。

 

「潰しなさいッ!バーサーカーッ!!!」

「Scraaaaaaaap!!」

「おのれ匹夫めがぁぁぁあああ!!」

 

大蛇に騎乗し己の宝具へと染め上げたバーサーカーが、キャスター達へと襲い掛かる。

子ども達を贄に生み出される海魔の軍勢を大蛇に任せたバーサーカーは、銃を抜き放つと共に発砲するが、キャスターが肉の壁を産み出し防ぐ。

 

「Aaaaaaaa!!!」

 

壁に着地したバーサーカーが身を屈めると、ミサイルが如き肉の壁を貫きキャスターの眼前に躍り出ると、銃身を持ち手にしてキャスターの頭部を全力で殴りつけ吹き飛ばす。

 

「旦那ぁッ!」

「こっちを見ろ、屑肉」

 

待避していた龍之介へと接近していたアナが彼の首を掴み、瞳を覗き込む。

 

「我が虚ろに沈め・・・」

「あ・・・」

 

魔眼が煌めき龍之介の魂を純粋な魔力として分解しアナへと還元し始める。

後数瞬で龍之介の魂が死ぬとなった時に、アナの立つ広間への入り口から雷鳴が轟く。

 

「チッ!!」

 

空間を舐める稲妻に絡め取られればただでは済まないと、察したアナが龍之介を放り捨てると海魔が龍之介を絡め取りキャスターの元へと連れて行く。

 

「逃がすと思ってか!!キャスターッ!!!」

 

キャスターを追おうとするが稲妻に阻まれる、またキャスターへと追撃を行おうとしていたバーサーカーはアナを守る為に、彼女の元へと戻ると床を掴み上げると宝具とし稲妻を塞ぎきる。

キャスターが龍之介を連れて逃げていくのを見たアナは、大蛇を心象神殿へと格納する。

 

「坊主、どうやら先客がおったようだぞ」

「ライダー・・・貴様・・・!!」

 

魔眼を晒した状態でライダーを睨み付けた事で、彼の直ぐ傍にいたウェイバーにも魔眼の効果が及ばんとする。

 

「ぬぅッ!」

 

だがライダーがウェイバーをアナの視界から外すことによって、ウェイバーが死んでしまうことをさける。

 

「よう分からんが謝る!!すまんッ!だからの、その瞳を閉じてはくれんか?」

「・・・・・・。良いでしょう」

 

唸りをあげるバーサーカーを制し霊体化させると、アナは包帯で瞳を覆う。

 これ以上此処に居ては要らぬ戦いが始まってしまうと、アナは立ち去ろうとする。

 

「な、なぁ!!バーサーカーのマスター、何があったんだよ!!」

「キャスターを倒せそうだったのよ。まぁ、貴方達のお陰で仕留め損なったけれど」

「てことはキャスターの真名も分かったのかよ!!」

 

遠慮なく聞いてくるウェイバーに対して、アナは軽く舌打ちをする。

 

「君は自らの顔立ちの可愛らしさに感謝しなさい」

「な、なんだと!?」

 

思いがけない言葉に憤るウェイバーを無視して、アナは使い魔を呼び出し跨がるとキャスターの工房より去って行った。

 

「確かに・・・坊主。お主、まだまだ童のようななりであるしな」

「お前までそう言うことを言うのかよ!!」

 

ライダーからも追撃を貰った事で、ウェイバーは拗ねると戦車より降りる。

 

「坊主、バーサーカーらにより大方はぶち壊されておるが、それでもお前にはちときついぞこれは」

「馬鹿にするな。僕は魔術師だッ!」

 

これ以上馬鹿にされて堪るかと、ライダーの警告を無視したウェイバーは工房に明かりを灯した。

 

「な・・・なんだこれ・・・。こんなのが工房だったのかよ」

 

先ほどまではバーサーカーは暗闇にて戦っていたが故に、ウェイバーには分からない事ではあったが工房内には、首だけになっても生きている否まだ生かされている子ども達が転がっている。

柱の陰に隠れ、胃の中身をぶちまけるウェイバーは、真名が分からずともキャスターは英雄などではないと確信する。

 

「坊主、余は安心したぞ」

「こんな光景を見てか!?」

「ああ、お主が真っ当な人間であると分かった故にな。キャスターは下衆よ。バーサーカーのマスターが苛立つ意味が分かるわ」

 

ライダーはそう言うとウェイバーに戦車に乗るよう促す。

 

「この子達はどうするんだよ」

「仮に助け出してもそれは救いでは無いと、お主にも分かる筈だ」

「ああ・・・。僕じゃ、助けようがない」

 

助けを求める視線から目を背けたウェイバーはライダーが、戦車を牽く牛に鞭を打つ音を聞く。

 

「ならばこれこそが余の慈悲であるッ!」

 

稲妻と共に駆けだした戦車によって、キャスターの工房が完全に破壊された事によって子ども達は苦痛から解放された。

 

 

 

 

 

 

 月が空へと昇る。

木々を薙ぎ倒したライダーがアインツベルン城に乗り込み、庭園にてセイバーと膝を突き合わせ互いにワインを柄杓一杯飲んだ頃に、雁夜を伴ったアナが大鷲に乗って庭園に降り立つ。

 

「おお!!バーサーカーのマスター!!こんかと思ったわ!!」

「酒に罪はないでしょ?」

「貴様、相当な酒好きだな?してその男はなんだ」

「記録係よ。ほら、カメラ持ってるでしょ」

 

そう言ってライダーとセイバーの中間地点で座り込んだアナは、彼から柄杓に注がれたワインを受け取る。

 

「何故に柄杓を・・・」

「なんでも、この国伝統の酒器らしいぞ」

「なるほど」

 

基本的に日本国外に居を構える故にアナは納得するが、雁夜は心の中で否定していた。

 

「バーサーカーのマスター、問答をすると言うのなら。バーサーカーの殺気を潜めて貰いたいものだ」

「ごめんなさいセイバー、これでも抑えて貰ってるのよ。攻撃はしないし、させないと誓うわ」

「違えば斬ります」

 

カツカツと足音がすると、庭園にアーチャーが現われると、彼は雁夜を見て微かに笑うとライダー、セイバー、そしてアナを見るとアナと対面するように腰掛ける。

 

「お主が一番遅かったなアーチャー!!ま、徒歩では仕方ないわな。どれ駆けつけ一杯」

「貴様征服王、オマケが居るとは言えこのような安酒が王の宴に相応しいとでも?」

「ここらの市場じゃ、一番の品だがな」

「であれば、この現代人のレベルは随分と落ちた物よ」

 

アーチャーはそう言うと、宝物庫より仄かに輝く酒と黄金の杯を四つ取り出す。

 

「貴様らに本当の酒を教示してやろう。ほれ、貴様も飲むが良い」

「感謝しますアーチャー」

 

杯に注がれた酒をアナが口にすると、その瞬間今まで飲んだ酒が泥水だったかのような錯覚に襲われる。

 

(怖いくらい美味しい・・・)

「どうだ、美味いだろう。これも悦楽の一つよ。して征服王、確か聖杯に相応しき格を決めるとの事だったが、最早決まったも同然だな」

「待て待て、確かにこれは天上の美酒であるが、これだけでは格は決まらんわ」

 

酒を飲み干したライダーがにやりと笑い高らかに告げる。

 

「では、聖杯問答を始めようではないか!!」

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