「先生と生徒を困らす外道は丸焼きじゃあああぁぁ!!」“うわぁ、この人でなしィ!!”   作:サンタが轢き逃げ

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0-3.ストームワーカー出動!(2)

 

 七神リンは悩んでいた。

 

 

「あの、先生、そちらはどういう体勢で・・・・?」

 

「……タコのポーズ」

 

 

 外から来たという『先生』とやらが、まさかこれ程の変人だとは思ってもみなかった。体は柔らかいを通り越して軟体動物、頭にはサメをかぶってぐにゃり、ぐねりと踊り狂うSAN値直葬な暫定人間。

 

 近縁種は怪異か、是非に特異現象捜査部へ…。といった方向に思考が飛躍しかけたリンは頭を横に振り、目の前で繰り広げられるヨガマジックから目を逸らす。

 

「あの、お話を――」 

 

「うぎぅ!」

 

 タコがエイリアンになった。セルフ卍固め状態である。

 

「・・・・??・・・・・・・!?!?」

 

「……っと、ごめんね。お話どうぞ」

 

「えっああ、はい。では、わかりましたので・・・」

 

 

 七神リンにとって先生とは、未確認生物さながらな未知の存在だ。

 

 

 奪還作戦当時、嵐の如く暴れた星元姉妹と顔を合わせた際、お互いの共通の話題で会話を弾ませていた『先生』。その表情からは予想できなかった狂気というか本性というかが、ここ最近になって急に現れ始めた。

 

「・・・今の何?」

 

 シャーレには当番制度があり、これによって様々な生徒が訪れる。実際、今日もユウカが居る。

 そしてその眼前で、エキセントリックヨガをやっているのが先生である。

 

「あの、先生?」

 

「ちょっとまってね、戻らなくなっちゃって」

 

「先生!?」

 

 もう何も考えたくない。と思考を放棄した代行が外を見やると、壁とガラスを伝いながら、二名の少女を乗せた巨大な何かが地上へと降りていく。

 

『____!___、____!?』

 

『______!!__、______?!』

 

 操っている者等は口論の真っ最中。お互い操縦桿を手放しており、徐々に壁から巨影が剥がれていることにも気が付いていない。

 

「ええ……?」

 

「アレは…!?ってかあの子たち、星元姉妹じゃないの?!」

 

 愕然とするユウカをよそにクモのような本体、その胴体部両側面に設けられているコクピットのハッチが開く。

 

「ちょっと馬鹿あの子たち何するつもりあーもう危ない危なすぎるってばなになに気でも狂ったの!?!?」

 

 双方とも近くのはしごやハンドル(手すり)なんかを掴んでは、まるでジャングルジムで遊ぶ子供のような身のこなしで距離を縮めていき、ついにとうとう両者向顔。

 『何も起きてくれるな』と必死で見守るユウカをそっちのけで、愚か者は睨み合う。

 

 不安定な足場の上で――――

 

『____!!!』

 

『______!!!!』

 

 

 大乱闘、勃発――!

 

「あ、ええっと、え・・・??」

 

「おっ、やってるやってる」

 

「やってるやってるじゃないですよ先生!?!」

 

 初めに撃ちだされたるは、キヴォトス人の肉体すら容赦なく貫きそうなスピアガン。続いては弾丸を吐き出すサブマシンガン。

 

 ついに弾が尽きたか。などと見物人たちを安心させる暇もなく、飛び掛って相手を落下させんとする蹴り技の応酬にもつれ込む。

 

 

 だが、忘れてはいけない。

 

 

 馬鹿が二匹で争っている戦場は、もはや足場と呼べない物であるのだと。

 

 

「――落ちた!?」

 

「うそっ、大丈夫でしょうね?」

 

 

 大丈夫ではない。

 

 

 いくら二人の中身がレスキュー戦闘エトセトラを生業としていたストームワーカーであろうとも、この高さからの落下というのは流石に命が危ない。

 

「すごいわね。死ぬんじゃないかってヒヤヒヤしてたけど、まさかパラシュートをあんなにも素早く展開するだなんて・・・・・!」

 

「あまりにも手馴れていますね、先生。あの姉妹はいったい何処で、どの様な理由であれほどの技能を習得したのですか?」

 

「ドンク島の上空があの娘たちの庭だったからね。取りつかれた戦闘機のパイロットはほとんどがヘッ……いややめとこう、縁起でもないね」

 

 しかし無策ではないのがストームワーカー。

 錨を掴んだハクトウワシの描かれた黒地のパラシュートを展開し、器用に空中でギャースカ喧嘩しつつ降下する。

 

 降り立ったバカ姉妹は上空から降ってきた先のクモ型マシンを華麗に回避、喧嘩は胸ぐらをつかんでの罵り合いにもつれ込む。

 

「あぁ、言い忘れてたけど、今日は当番の娘が()()()()()()()()()

 

「それって、まさか――――」

 

 

 

 

 

 

「んだテメェ!!俺の作った最高峰のエンジン諸共オシャカにしやがったのは他でもないテメーだろうが、ぶっ殺すぞこの思考回路チンパンジーヤロウ!!」

 

「うるせえよこンの顔面偏差値テングザルが!!だいたい姿勢制御をジャイロに頼りっきりなのが悪い、アウアウいってる赤ん坊でもジャイロ教はクソだって理解できるに決まってらア!!」

 

「なんだテメーそんなにミンチになりてえか、上等だよクソッたれが、表に出ろヴァルキューレやSRTが嗅ぎ付ける前にブチのめしてやる!!!」

 

「もう出てんだよ娑婆(オモテ)に!!やってやろうじゃねえかクソガキ、今日という今日はその腕粉々に砕いちまうぞ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 熾烈ここに極まれり。

 

 

 燃え盛る巨大なスクラップの処理もせず、只管に「人としたくないケンカ」の見本市のような大喧嘩を、人目もはばからず白昼堂々公衆の面前でぶっかましているユイとセイ。

 

「あの、先生?・・・本当にあの子たちで間違いないんですか?」

 

「間違いないよ。間違ってるのはあの娘達の倫理観くらいじゃないかな、多分」

 

「・・・・本当に?……先生、本当にあってますよね??」

 

 

 先生は「ほんとほんと」と笑って、二頭の猛獣に近寄った。

 

 

「やぁどうも。ところでさ、銛は流石にやりすぎだとおもうんだけど。」

 

「「あっ・・・・・・・」」

 

 

 人間というものは、時に見て見ぬふりをしてほしい瞬間があるものだ。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 キヴォトスとは都市であるからして、いつもどこかで誰かが困っている。

 

 

「……それで、どう責任を取るおつもりで。」

 

「「本当に申し訳ない」」

 

 

 しかし万が一に、その困り事を解決する側が原因の困りごとが起きた場合。果たして行政はどのように沙汰をどうすればよいのだろうか?

 

 

 ――当然そんなもん、()()()()()()()以外に術ないだろう。

 

「後ほど始末書をお願いしますね?」

 

「「イエッサー」」

 

 シャーレの部室。正座した綿あめ頭の猫耳共が、首から看板をぶら下げていた。

 

「では罰も決定したことですし、それに今回の件の主犯格がユイさんであることもわかりましたので、改めて依頼内容を読み上げさせていただきます」

 

 『わたしは巨大な機械でシャーレのビルをクライミングしました』、『わたしはシャーレ前の道をスクラップで封鎖しました』と書かれた看板が揺れる。

 

「現場はアビドスの一軒家です。要求は患者一名の救護および依頼者の目的の医薬品、いわゆる「ぜんそく用の薬」の輸送。破損等は許されず、手遅れとなった場合も…わかりますよね?」

 

 リンは依頼内容を読むうえで、少し内容を付け足した。

 『破損等は許されず、手遅れとなった場合も…』という言葉は不信感の表れであると共に、既に問題を起こしたばかりの問題児に対する牽制でもあるが…。

 

 ではその"脅し"にストームワーカーが畏縮するのか。

 当然しない、むしろ「今日の夜はステーキでも食うか」と上の空。

 

 ならば人名も軽く見ているのか、それは断じて否である。

 

 というのも彼ら・・・・というか彼女らは、テキトーな割に人の命がかかっている任務はかなり真剣に取り組む()があるらしく。

 

 前世でも色々と本気を出し過ぎた結果、脱法カニ漁こと究極の金策のおよそ二倍はいく合計報酬額を重要な救助活動で、さらにその四倍を、べつに本気を出さなくったっていいような小規模救助作業込みで叩き出している。

 

 とにかく命を丁寧に扱うのが流儀だという彼等。

 

 

 まぁ、ぶっちゃけそうでもない時もあるのだが。

 

 

『なんてこった兄弟、今年のサンタのソリはN●S●の最新ロケットだ!!』

 

『相棒ゥ~……この要救助者、運ぶのダリィからミサイルで飛ばそうぜ?』

 

 

 ・・・命は軽い。

 

 何はともあれ、患者の無事は確定したも同じである。

 

 

「だったら丁度いいや。前の作戦で使ったガンシップをまだ分解(バラ)してなかったから、あれを改造して輸送機に変えよっか」 

 

「ユイ、そりゃいい考えだ!・・・・あー、ところでそのガンシップっての、ワカモに胴体ブチ開けられたんじゃなかったっけ?」

 

「あっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユイの意識が過去に沈む。

 

 

 

 

 

 

 

「地上のアリ共に向けてFOX1, FOX2, FOX3!」

 

『どれなんだよバカ!!』

 

「全部だアホ、シャーレの奪還作戦で出し惜しみしてんじゃねえ!!!!」

 

 

 

 

『なぁおい、ロケラン来てるって!!!』

 

「F@#K!!」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・そういやデッカい穴開いたな」

 

 ぼんやりと天井を見上げた少女は溜息を吐いた。

 

「工期だけで計算した感じ大体五日、上手い事やっても丸三日はかかる」

 

「そうか、()()()()だな」

 

「…あのキャンプカーそろそろ変えてくんない?」

 

 あからさまに顔をしかめたセイも、溜息を吐いて頭をかきながらコーヒーに手を伸ばす。しかし『例のキャンプカー』の現状を思い出したのか、より酷く顔をしかめて声を荒げる。

 

「なんでだよ?別にいいだろ死ぬわけでもないし!」

 

「死なないけど嫌なの!!わかるかあんなッ……あんな狭い室内でパソコンいじりながら運転のサポートもするオレの気持ちが!!」

 

「なぁ、エンジンの一部分が貫通して助手席と部屋のちょびっとを占有してるだけだろ!!」

 

「ああそうだよお陰様であんたもオレもエンジンの真横で寝る羽目になった、毎日がパーリナイだクソッ!!!!」

 

 姉妹揃ってああだこうだと口論を激化させるなか、完全な外野となっていたリンはついに強硬手段を使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いくらストームワーカーとて、強烈な物理攻撃(げんこつ)を耐えるのは難しかった。

 

 

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