「先生と生徒を困らす外道は丸焼きじゃあああぁぁ!!」“うわぁ、この人でなしィ!!”   作:サンタが轢き逃げ

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1章 キヴォトス ⇒ アビドス
1-0.サイ、トラック、トラッキング、亡霊をトッピング


  ≁StormWorks支部 "Old Eagle Garage"≁

 

 

 

 助けるべくを助け拠点を奪還し、魚介類を捕り宇宙を目指し、ありとあらゆる業界へと進出してきたレスキュー・ベンチャー企業の『StormWorks』。

 

 その支部の "Old Eagle Garage" では、今。

 

 

「そっち持ってくれ、いちにのさんでコイツを上にあげる」

 

「りょーかい!・・・・ところでこいつさ、ぶっ壊れないよな?」

 

「壊れやしないさ。実際どうなるか知らんが、まぁ万が一があったらカイザーに文句垂れりゃ良い」

 

「あいよ、そんじゃ気をつけろよ?」

 

 

 

 

 新たなビークルが開発されていた。

 

 

 

 

「時間は十分ある、ゆっくりやろう」

 

「まっ、オレたちなら十分もかからないけど」

 

 

 「乗り物を作る余裕なんてどこにあるんだ」と疑問に思うだろう。

 

 実はあの会議が終わってから幸いにも『ぜんそく薬』の件が急を要する内容ではないという事実が判明し、こうして丸一日つぶせる余裕があるのならと、二人は一時凍結されていた新規軸の開発計画を再開したのである。

 

 

 ――Desert-Rhinoceros(砂漠のサイ) MK.1(第一号)

 

 

 分厚く大きいタイヤと鈍重そうな装甲、それから車体上部に取り付けられた四連装機関銃とボートの先端さながらに尖った形状のエンジンルームが特徴であるこの戦闘車両は、本来ならば「お蔵入り」の憂き目にあう筈だったシリーズのひとつ。

 

 だが、今回の任務においてカタログスペックに似合わぬ活躍を遂げ、遂には販売用車種の開発におけるベースとしても注目を浴びる……というのはまだ先のお話。

 

「でけーしおせーしどーすんだこいつ」

 

「知るかよそんなの、できたものは使うしかないよ」

 

 現状の注目度はこの程度。

 

 とはいえ、「駄作」のイメージはすぐに消え去った。

 

「兄弟、シートベルトはしたな?」

 

「オーケーだ。こいつでどんだけかかるか知らんが、さっさとアビドスへ向かっちまおう」

 

「先生もアビドスに向かってるらしい、でも徒歩だなコイツあほだろ。とりあえず早いとこ着かなきゃマズそうだ」

 

 キャンピングカーからもぎ取って付けた鍵穴に、ユイは勢いよく鍵を差し込んだ。

 

「よぅしレッツご――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブヴウゥンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まてまておかしいだろ加速が!!こんな出るか普通、こいつの重量トン単位だぞ!?」

 

「やばいぜ兄弟、コイツ並み以上の速度出してやがる!!バケモンだバケモン!!」

 

 

 一言でいって狂気的。

 

 

 サイの獰猛さを表すかの如き速さを前にしては、もはやカタログ通りの鈍重の鈍の字もあったものではない…とセイが歯を食いしばりながら考える。

 

 とはいえ、それだけであるならまだ良い。

 

 問題は、これだけ早いとなると、様々なパーツや部品なんかが即座に悲鳴を上げる恐れがあるという点。当然エンジン温度も無視できない。

 

「エンジン温度は?!」

 

「・・・・・良好!!」

 

 セイは自身の目と耳を疑った。エンジン温度は良好、乗り心地から察するにどこも壊れていない、けれども一体こんなに早い乗り物の何処が良好なのか。

 

「カーブも機敏に曲がれる、操縦性も抜群、惜しいのは想像の倍くらい早いってとこだ!」

 

「サスペンションも強い、ってかこれ、日が暮れる前に着くんじゃないの!?」

 

 全てにおいて完全良好と云わざるを得ない。これ程よく跳ねずよく動く車、そうそうお目にかかれないのだから。

 

荷台(ケツ)だって埋まりきってないのにしっかり安定してる、しかもこいつ四輪駆動ときた!!」

 

 四輪駆動にしたのはお前だろうというツッコミは置いておくとして、確かに安定感が桁違いなだけでなく駆動系も異様に強力。

 

 

 はたして何を欠点と評すればよいのか分からない。というのが結論といえよう。

 

 

「相棒、船だ、隣を船が走ってる」

 

 今は使われていない古いハイウェイ(高速道路)の上を一頭のクロサイが我が物顔で進んでいく姿を、近くの海域を偶然通りかかった オデュッセイア海洋高等学校 の船が出迎えた。

 

「デカいなありゃ、あっちの連中が乗ってたイージス艦くらいのデカさだ!」

 

「俺達もいつか……海に出ねぇとな!」

 

 船の存在に気付いた星元姉妹が手を振りながら感嘆を漏らす。

 

 ユイは決意を言葉にしたついでで、あろうことかアクセルをベタ踏み。次第に速度が上がっていって、とうとうある現象が発生してしまう。

 

「クソッたれ、ウィリーだ!!また名物の『透明』*1か!?!?」

 

「違う、スピード出し過ぎなんだよ!!」

 

 などと喧嘩をしつつ、それでも冷静であるべき時はどこまでも冷静なのがストームワーカー。

 

 一緒に座席を立ったかとおもえば、同時に勢いよく座りなおして――――

 

 

「よぅっし戻った!!」

 

「いつものパターンね、もう慣れた」

 

 

 ドスンッと大きな音を鳴らし、首を(もた)げていた車体の角度が元に戻る。

 

 

「さて、どうするよ?」

 

「そりゃもちろん、こっちで学んだ新パーツ!カーナビの出番だろ!」

 

「だったらCD入れとけ、しばらくつまんねー景色ばっかだからなァ!!」

 

 

 旅はまだまだ続くのだ。

 こんな所でしょうもない事故は止してほしい。

 

 


 

 

  ≁アビドス砂漠≁

 

 

 

 それから一度シャーレ指定の合流ポイントへ向かい、トリニティの救護騎士団からぜんそく薬を受け取ったユイとセイは

 

 げんばをもくげきした。

 

 

 

 

 

 

「先生、そりゃねェな。明日はヴァルキューレが大騒ぎだ」

 

「どーすんだよこれ、出るとこ出ないとダメなやつじゃないか?」

 

「いや違う、や、違わないんだけど、なんというかこう・・・・ねっ!?」

 

「おいそっちのウルフガール、はっきり言ってどうだ?」

 

「べつに、気にしてない…。」

 

「ヒュー!見ろよ、やっちまったなコイツぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 曰く「のどが渇いており、間接キスなんてものを気にする余裕がなかった」という先生。

 

 曰く、別に気にしていないという砂狼シロコ。

 

 

 そのどちらの声も、馬鹿二名はまるで気にしちゃいなかった。

 

 

 しかも最悪なことに二名の正体は、早い話が乙女属性を盛られたメリケン野郎共。よって、話が碌な方向に向かわないのは必至。

 

 先生はシロコのためにも、バカ騒ぎ大好きコンビが色々と茶化すまえに手を打つ必要があった。

 

「なあ、これってよ――」

 

「それ以上何か変なことを口に出すともれなく君らの初恋絡みの恥ずかしい話が漏れる。」

 

「「ネカマ事件は終わった話だろうが!!」」

 

 効果は抜群だ。もはや何をやったって、前世の『ネカマ事件』という名の巨大な当たり判定が亜空間タックルを仕掛けてくる。

 

 

 なお余談ではあるが、この「ネカマ事件」の内容・・・・・・果てしなくキツい。

 

 なにがキツいって、お互いの初恋相手がお互い間抜けを釣るために作った "ネカマのすがた(ネカマアカウント)" だったという、「よく分かんないけどなんかイヤ」の具現めいた詳細である。

 はっきりいって思い出すだけでもかなりキツい。肥満気味の成人男性ふたりして、なんつーオフザケをやっている。

 

 乙女となった双方は過去の自分を呪った。

 

 

 そんな地獄はさておいて(閑話休題)、紳士協定はしっかりと結ばれた。

 先生は(これ以上の野次馬根性は出してこないだろう)と安堵し、普段の態度に戻る。

 

「えーっと・・・・・・君たちはどういう用事でこっちへ来たんだっけ?」

 

「んあぁ、このトラックに積んである物資と、あとは患者に医薬品を届けにな」

 

「そうえいえばこの前もいってたね。届ける人は誰かわかる?」

 

「もちろんだ!確かここ最近で唯一入ってきたアビドス生だって聞いたんだが…あ、待てよ?」

 

 途中まで言いかけたセイがトラックの荷台に上がって積み荷のボックスを漁り、なにを見つけたのか笑顔でシロコに紙とペンを手渡した。

 

「はいこれ書いて!!いちおう必要そうな物資も持ってきたし、薬の方もアビドス名義だからきみが書いてもな~んも問題ないんだわ」

 

「本当?」

 

「うん、ほんとうほんとう。もってくのめんどいからいますぐてめーがここでかけとかじゃない、せいちゃんしょーじきおーけー?」

 

「まぁ書くけど…。でも、本当に私でいいの?」

 

「うるせえかけ」

 

 

 半ば強制(?)され、しかたなくアビドスの関係者としてサインを書いた書類を返そうとして……それをユイが横からひったくる。

 

 

「・・・・なぁセイ、俺の金使った?」

 

「HAHAHA冗談キツイぜ相棒、オレはしっかりと自分の小遣いを――――」

 

「その割に俺の貯金も減ってたんだよな。おかしいよな、ん?」

 

「…ゴメン・・・ほんとは姉ちゃんのぶんも使った」

 

 

 砂上で皮膚が痛いだろうに、セイは姿勢よく土下座を披露した。

 

 

「よろしい。人命救助に救護、なんにでもカネは付き物だ。使うんなら理由もコミで俺にいえ、許容できるんなら許容する」

 

「人のお金を勝手に使うのは良くないけど、それだけ頑張って物資を用意してくれたんだね。ありがとう、先生としても助かるよ……で、どれがどのコンテナかな?」

 

「こっちがたぶん物資全般かな。んで、こっちが薬と依頼者が必要としてそうな物も入ってるやつ…であってるっけ?」

 

「おう、あってるあってる。シロコに先そっち持ってってもらえ」

 

「オーケー!」

 

 元気な返事を聞くまでもなく了解を把握したユイは、一度運転席に戻るとテキトーな場所をまさぐってボタンを押し、車体両側面に位置するアウトリガーを展開。

 これをセイが確認して手信号で合図を送ると、なにやら杭のような物体がアウトリガーの底面から出て、地面に突き刺さった。

 

「マグオールヨシ!!エンジン、発電切替!!」

 

「切り替えヨシ!!発電確認、燃料残量確認!!」

 

「発電量ヨシ、燃料許容値!!」

 

 

 マグオール。

 

 

 マグオールはストームワーカーの心の友。

 

 いついかなるものにでも接続される、磁石と言い難い性質の磁石。

 

 どんなに険しい壁だろうと、そもそも金属でなかろうと張り付くコレを使ったアウトリガー専用の固定装置は、星元姉妹の長年の研究による成果でもある。

 研究過程でガレージの壁がおもいっきり破壊されたり、危うく家がガレージ諸共倒壊しかけたりもしたが、そういったトラブルも今となっては懐かしい「おもいで」だ。

 

「そいじゃ先生とその物資は俺たちで運ぶから、シロコは……ああいや、やっぱ先生頼むわ」

 

「いやおかしいって、なんで君たちと私と物資じゃなくって私とシロコなの?」

 

「荷物持ちはオレ達がやってやる、安心しろ!」

 

「違うんだ、面識のある君たちが運んでって言ってんの。シロコが困るだろうから君らに頼みたいっつってんのわからない?」

 

「私は別にいいよ、ほんとに…いいよ?」

 

 あれやこれやと喋り込んでいるうちに物資の受け取りと交換を終えてやっと出発…とはいかず、シロコのスマートフォンが鳴る。

 

「ん、アヤネから電話だ」

 

「出ていいぞ?俺ら別に人の電話機にしないし」

 

「ありがと。ちょっと待っててね、向こうで――」

 

「いや~俺の勘だけどここで出た方が良いぞ、マジで野生の勘でしかないけど」

 

 

 言われたとおり、その場で出た。

 

 

「アヤネ?」

 

『あの、シロコ先輩。今どちらに?』

 

「いま?今はその、物資を届けに来てくれたっていう人たちと一緒に居て」

 

『――ッ、なら今すぐ戻ってきてください!!カヨリさんが!!』

 

「・・・・・カヨリっ!?………うんわかった、すぐ行く!」

 

 

 シロコは電話を切るや否や血相を変えて自転車に乗ろうとしたが、動揺するあまり上手く乗れない。

 

 

「づっ・・・・・・。カ…カヨリ、が待ってるのに!」

 

 

 カヨリという己とよく似た境遇の少女の抱えるモノが、決して一つや二つじゃ済まないのだと理解している。

 

 だからいつでも守れるように自らと同じ苗字を付けた。なのに苦しんでいる彼女のそばに、今の私は居ない。

 

 

「早く…!」

 

 

 急がなければ。

 

 

「はやく、行かない、と・・・・・?」

 

 

 焦燥感に駆られて気付かなかったが、いつの間にか見慣れたシルエットが自分を見下ろしていた。

 

 

「スポーツバイクは荷台に積め!こいつは四人乗りだ、さっさと行くぞ!」

 

「それも全部貸せ、コンテナに突っ込んどいてやる…っておい、傷できてんじゃねぇか!血は出てないな。とりあえずこのペットボトルの水で洗え、こぼれても気にすんな!!」

 

「・・・・ありがとう!」

 

 

 

 愉快な奴等が考えた「StormWorks支部」を示すシンボル――錨を持ったハリスホークを背負った一台のトラックが、広大な荒野を駆けていく。

 

 タイムリミットはどうだ。距離的に間に合うか。

 

 そんな心配事一つせず、できる限り最短のルートを攻めるクロサイの雄姿。

 

 

 

 その一方で。

 

 

 

 

 

 

 

『……□□□□□□(捜索中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 空を飛ぶ薄灰色の戦闘機が、まるで得物を追いかける猛禽類のような動きで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□(ターゲットを捕捉)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あるいは敵に近づく暗殺者のように、静かに轍を追いかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尾翼に描かれた錨を掴んだハクトウワシ。

 

 その消えかけのシンボルを光らせながら、「主」不在の亡霊は動く。

 

 

 

*1
StormWorksでは、ワールドの都合上見えない段差が存在する。

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