【TS】クラス全員ドラゴン娘にされて異世界転生したった!【共学】 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
ルシア師匠がスタートと言った瞬間に野村の左肩から右脇腹にかけてをコニーが握っていた木製の短剣で斬り裂いた。
コニーがやった事は単純だ。
一瞬で近づいて斬り、そして離れた……ただこれだけである。
倒れた野村を俺達が慌てて介抱し、回復魔法をかける。
コニーは
「おお、木剣とは言え私の剣を受けて死なないか……滅茶苦茶頑丈だね」
そう言ったのだ。
クラスで一番体力のある野村が一撃……これが勇者……。
「まぁ私は勇者の中でも上から数えた方が早いくらい強いからね……伊達に公国最強の勇者と言われてないよ」
知らなかった……公国最強の勇者なんて……。
「ふぅ~ん、ここに居る竜人って殆どが勇者の素質を持っているって事は将来私と戦えるかもしれない人達ってことだよね……5年後、10年後が楽しみだなぁ……」
俺は恐る恐る勇者コニーにレベルを聞いてみた。
「私のレベル? 今350だよ」
……そりゃ勝てませんよ……ステータスが全然違うと思うし……。
ルシア師匠はこの様子をニヤニヤしながら口を開く。
「勇者は勇者、英雄はあくまで勇者と戦える人って意味だからそりゃ上位の勇者はレベルが違うよ……マエダの仲間達は幸運だぞ。自分より明確に上の人の戦いを間近で見れたのだから……」
傷を回復した野村は目を白黒させながら斬られた箇所を滅茶苦茶触っている。
野村が着ていたドレスも自然と修復されて元通りになっていた。
「生きてる……生きているのか……?」
「大丈夫か野村」
「か、金やんか……目で追えていても体が反応できなかった。そしたら斬られていた……木製の短剣で……」
「おい、本当に大丈夫か?」
「これが……勇者……勇者と同じ素質があるから戦えると思ったが……土俵にすら立ててなかった……」
「いや、ノム、舞台に立つことができない奴はあれで死んでいる。素質は十分にあるぞ」
コニーがニコリと笑いながらそう言う。
野村は立ち上がると頭を下げ、ありがとうございましたと礼をした。
俺達も何処かで驕りがあった。
迷宮深層に潜って毎回大金を稼いでくるし、ルシア師匠から素質があると言われて魔法を教えてもらって……しかもドラゴンの体に美人、美少女の顔だ。
自分達が最強なんじゃないかという驕りが芽生えていた。
しかし、本物の強さを目の当たりにするとそれは驕りだったことがまじまじとわかる。
調子に乗っていた。
ただそれだけだ。
「へぇ……悔しそうな顔をするんだ……てっきり恐れるかと思ったけど」
「ビリジラさん」
俺の横に立っていたビリジラさんにそう言われた。
「悔しさ、後悔が出てくるんだったら大丈夫だね。カネやお仲間は強くなるよ。もし王宮魔法使いになるような事があればよろしくな」
「あ! ビリジラ王宮魔法使いへの勧誘じゃなくて軍に入れてくれよ! この若さであの強さなら軍でも将軍になれる! 是非とも軍に来てくれ!」
バンブービッグさんとビリジラさんが揉めだしたが、コニーは笑っていた。
その後勇者一行に俺達竜人の仲間がやっている食堂があるという話になり、豪炎寺のジャパンを夜の部門貸切にしてもらい会食することになった。
「わぁ! 凄い美味しい! 王都の食堂と遜色ないわ!」
「コニーこのスープは王宮でも味わったことない味だぜ!」
「竜人の仲間は料理の才能も勇者級かよ」
勇者一行もとても喜んでくれている。
俺はルシア師匠と前田先生と同じ席に座り、ルシア師匠に今回勇者との模擬戦は俺達に本物の強さを教えるためですかと聞くと
「刺激が無いと中弛みする。異世界に転生してろくに苦労とか苦い経験をしていないからマエダから人間的に成長させるために刺激を与えさせてほしいと前から言われていてな」
「前田先生!?」
「ちょっとルシアさん言わないでくださいよ」
「ハハハ、マエダは精神的に成熟しているから必要無いが、幼いお前達は失敗できる経験が不足していると思ってな……前に王都に行った時に私の元弟子と相談してな。そしたら気を利かせてコニーを送ってくれたって寸法だ。コニーの呪いを解くのは前から決まっていた事で、コニー達も私の弟子からある程度聞いていたんじゃないかな?」
「はぁ……仕込み済みだったわけか……」
「でもいい経験になったろ? そして王国が魔王に負けない理由だ。こんな勇者が80人も居れば負けないだろ?」
「それはそうですね……ただ勇者コニーの圧倒的な強さを見ちゃうと俺達がああなれるのか疑問を持ちますが」
「おいおいカネ達はドラゴンだろ? 寿命がそもそも違うじゃないか。コニーはどんなに長くても100年は生きられないし、老人になれば弱体化する。ドラゴンの成体は数百年単位だ。それこそエルフと同じ様なスパンで生きるだろう。この世界に来てたった1年じゃかいか! 10年、100年の単位で考えなよ。生きてりゃ必ずコニーを超えるよ……サボってなければってのが付くけどね」
「あはは」
「でも金田君、良い経験になったでしょ」
「そうですね前田先生……これで軍や王宮魔法使いを目指すってなった場合目指すべき強さがよくわかりました。クラスメイトもどの様に動くかわかりませんが視野は広くなったと思います」
「せっかく他の人より優れた才能を持ったのですから活かさないと勿体ない。私はどこまでも教師なんでしょうね……生徒が育つ時が一番嬉しい」
「前田先生……」
ルシア師匠も前田先生の言葉に頷いている。
「弟子には大成してもらいたいからね……才能あるのに腐っていくのを見ると逆にすごい辛いけどね」
とも言っていた。
勇者達は迷宮に潜ったり、町のお偉いさんと喋ったりして休めているか不安になるが、息抜きはそれでもできているらしい。
そんな日々が1ヶ月ほど続くと、勇者一行は南の危険地帯に向けて旅立って行った。
まだ魔王が産まれた情報は無いらしいが、危険地帯でモンスターが活発に動いているという情報から復活の時が近いと判断したらしい。
俺達も勇者が出発する時はお世話になったので出立式に参加し、盛大に見送るのだった。
「コニー! 魔王倒したらまた戻ってこいよ!」
「負けるんじゃないぞ!」
「頑張れコニー!」
町人達の声援を受けてコニー達は手を振り、またねと言って出発したのだった。
秋の収穫期が近くなった頃に吟遊詩人がコニー達が新しく産まれた魔王を瞬殺したという詩が歌われ、無事に任務を達成したらしいことがわかるのだった。