転生ELダイバー×デュビアスアルケー 作:ガンプラオナシャス!センセンシャル!
高笑いを上げるプロヴィデンス改め、ムスペルプロヴィデンス。
ムスペルヘイムは北欧神話における灼熱の国。
かなり有名で、中には灼熱地獄として扱われる作品もあったりするから、恐らくはそこから取ったと思われる。
さしずめ……摂理の獄炎と言ったところか。
改めてムスペルプロヴィデンスを見つめ、まるで地獄の炎を表しているかのような機体カラーに目を細めた。
「それでェ?どうするってんだよこっからさァ!」
「……」
真面目にどうしよう……
相手の技量は嘘ではないし、勝ち目は薄そうに思える。かといって逃げきれる見込みも少ない。
大人しく負けを認めようにも、得体の知れないチートによって、どんな代償を支払わされるか分からないのがネックとなってくる。
どう考えても、詰んだ。
……でも、だからといって諦めるのも癪である。
「普通なら、こんなことせずに運営に助けを求めるべきなんだろうけども」
今の時期が分からない以上、軽々しく運営を頼るのは避けたい。
それこそゲームマスターの胃がストレスマッハで崩壊しそうな時期だったら最悪だ。
「来ねぇのならこっちから行くぜェ!」
ムスペルプロヴィデンスが、複合兵装防盾システムからビームサーベルを出力しながら迫ってくる。
ったく、少しくらい考え事させてくれてもいいんじゃない!?
ライフルモードにしていたバスターソードをソードモードに戻し、刀身の腹でサーベルを受け止める。
射撃はまだ慣れてないけど、剣の扱いなら多少はマシにはなったと思うけど……それもいつまで持つか。
「安心してるとこ悪ィけど、ッな!」
「ああもう忘れてた!?」
すぐさま動いたムスペルプロヴィデンスが、呼び戻したドラグーンを再び全基射出。
自分ごと"私”を囲むように配置するや否や、砲撃を開始した。
「ええいッ!」
咄嗟にGNファング1基をデュビアスアルケーとムスペルプロヴィデンスの間に滑り込ませ、自爆させる。
”私"が距離を取った直後、ドラグーンの砲火を浴びたムスペルプロヴィデンスが爆炎に包まれる。
「これで終わり……な訳ないよね」
「あたりめェだろ」
予想通りに煙から飛び出してくるムスペルプロヴィデンス。
その機体は各部をドラグーンのビームに穿たれボロボロだったが、全くもって安心できない。
というか、こういう時って大抵……ですよね。
ボロボロだった筈のムスペルプロヴィデンスが、次々と再生して行く。
この感じ、ゾンビとかとは違う。考えられるのは……
「健常な状態なデータまで巻き戻してる?」
「惜しいな。置き換えだァ」
「そりゃ残念。でもチートの内容なんて聞いたって」
嬉しくないっ!
バスターソードをライフルモードに切り替え、ムスペルプロヴィデンスを狙う。
「へっ、お前まだ慣れてないんだろ?その前にぶっ潰してやんよォ!」
「速い!?」
「当てれるもんなら当ててみやがれェ!」
狙いを付けようとした"私”を嘲笑うかのように、ムスペルプロヴィデンスが高速移動を始めた。
光にでもなったかのように、瞬間瞬間で移動を繰り返すムスペルプロヴィデンスに、"私”とデュビアスアルケーは翻弄される。
これどう考えても普通じゃない!?
さっきの再生といい、あのガンプラが悲しんでたのって、まさかこれのせい?
「どこ見てんだよォ!」
背後からのユーディキウムの一撃で、右肩のアーマーに穴が空く。
直撃部位が溶解し、バチバチと火花を散らすそれをパージし、爆煙の中に身を隠す。
……やっぱり、強い。
「そりゃ悪手だ」
「ッ」
ハッとした。何してるんだ"私”!?
オールレンジ攻撃できる相手にこんなちっぽけなスモーク意味ないのに!
再びドラグーンの全砲門が開く。
ビームの光が到達するよりも早く、”私"は切り札を切ることに決めた。
「1番、トランザム!」
"私”の前に出現したモニターが、エルドラ文字でTRANS-AMと表示すると同時に、"私”に見える筈もないが、頭部バイザーパーツにも同様にエルドラ文字でTRANS-AMと表示され、ツインアイが光輝く。
胸部の擬似GNドライヴが発光し、開放された高濃度圧縮粒子が真紅の機体を更なる赤へと染め上げ、その出力を3倍に引き上げる。
残像を生み出すほどの高速移動が可能となり、デュビアスアルケーがムスペルプロヴィデンスに追い付く。
「アルケーの癖にトランザム持ってやがんのかッ!」
「大体の人が持ってると思うけど!」
「それもそうだなァ!」
空を駆け抜けながら、バスターソードと複合兵装防盾システムをぶつけ合い、時に腕部装甲で受け止める。
カウンターを繰り出そうし、ユーディキウムに阻まれる。
それに加えて……
「ちっ、あのドラグーンの動き……いちいち嫌なとこを突いてくる」
まるで置きバズーカのようなドラグーン、これが厄介。
正直、この体がただの人間だったらとっくの昔に撃墜されているとしか思えない。
攻めあぐねている間にも、ムスペルプロヴィデンスはビームの暴威を撒き散らし、デュビアスアルケーにダメージが蓄積して行く。
それでもとバスターソードを振り上げたところで、モニターが警告を発する。
「クッ、トランザムの限界時間が!」
圧縮粒子を放出しきり、トランザムが強制的に解除されてしまう。
それに加え……トランザムの過負荷に耐えきれず、胸部の擬似GNドライヴが強制停止した。
「どうやら時間切れみてェだな。終わりだァ!」
ドラグーン全基に加え、ユーディキウムと複合兵装防盾システムによる全砲門のフルバースト。
相手はこれで決めるつもりらしいが、そうもいかない。
まだ"私”とデュビアスアルケーは戦える!
「2番、トランザム!」
「んな!?」
強制停止した胸部の擬似GNドライヴに代わり、右脚の擬似GNドライヴが発光し、トランザムを発動する。
これこそがこのデュビアスアルケーに搭載されたトランザムシステム[T]の特殊機能。
オリジナルの長時間トランザムを再現しようと手を加えたことで、3基同時ではなく、1基ずつトランザムを行う所謂”連続トランザム"が可能になり、それにより結果的には擬似的な形ではあるが、長時間トランザムの再現に成功したのである。
完全再現できなかったお陰で、オーバーロードによる自壊は免れて、強制停止に留まったのは皮肉だけどね……
「おいおいそれ成功させるとか本当に初心者かよ」
「れっきとした初心者ですが!?」
「……へぇ。気が変わった」
高速移動していたムスペルプロヴィデンスの纏う気配が鋭く変化し、急制動をかけその場に制止する。
「なにを……」
「モードチェンジ、『スルト』」
相手が何かのコマンドを唱えるとムスペルプロヴィデンスに変化が生じる。
プロヴィデンスの象徴的な兵装であるドラグーンプラットフォームが丸々パージされ、凄まじい速さで飛び交っていドラグーンが次々と地に落ちた。
複合兵装防盾システムのライフルパーツが展開し、サーベル発振装置と一体化。
ドラグーンプラットフォームと接続されていたエネルギーケーブルが、兵装下部にあるジョイントパーツとドッキングした。
改造されたユーディキウムを構成していたパーツがバラバラとなって弾け飛び、中から一本の大剣が姿を現す。
「ライフルから、剣」
「驚くのはまだはえェよ」
もう既にお腹いっぱいなんですが……という”私"の嘆きは軽々と無視され、ムスペルプロヴィデンスが大剣を複合兵装防盾システムへと近付ける。
「このレーヴァと、テインをくっつけたら、どうなっちまうかねェ……」
「スルト…レーヴァ、テイン……もうやめて」
「ところがぎっちょん!」
接続された二つの武装は、過剰な出力を発しながら超大なビームサーベルを形成した。
「コイツがオレの切り札。レーヴァテインだ」
過剰エネルギーの光が生み出す、揺らめく炎の如きオーラに包まれ、高らかに告げるその姿は正しく炎王。
天帝と炎王が合わさって最強に見える(白目)
「チートなんてくだらねぇモン使うのもやめだ。こっからは本気で潰してやんよ」
いやそれが当たり前なんだけどね?
「カッコつけてるとこ悪いけど、チート辞めたところで何もカッコよくないからね」
「ハッ。そりゃそうだ、なッ」
「いきなり来るじゃん……でもね」
トランザムしてるんだから余裕で避けれるんだよ。
スーパービームサーベルとでも言うべき、長大なビームサーベルが振るわれるが、トランザム発動中のデュビアスアルケーには掠りもしない。
「高速移動できないんじゃトランザムには勝てな――え」
これまでの鬱憤を晴らさんと煽ろうと口を動かす"私”だったが、正確に進行方向に割り込んで来たレーヴァテインに口を閉ざす他なくなった。
「馬鹿が、蚊トンボ一匹落とすのに速さなんて要らねぇよ」
「ぐっ!」
咄嗟にバスターソードをぶつけることでレーヴァテインの軌道を逸らし、反転。
「速いからなんだってんだ?当たりゃいいんだよ当たりゃな」
「ご尤も!」
ライフルモードに変形し、ムスペルプロヴィデンス目掛け引き金を引く。
単なる勘でしかなかったが、間違いなく直撃弾あるいは至近弾だという確信があった。
しかし……
「フン!」
レーヴァテインの刀身から、豪炎の如き光の波動が放たれ、ライフルの光弾が掻き消される。
「絶対チート使わない方が強いじゃん」
「そもそも使いたくて使ってた訳でもねぇからな」
「どういう意味?」
チートにどっぷり浸かってたからガンプラが悲しんでたんじゃないの?
今は喜んでるように感じるし絶対そうだと思ってたんだけど。
「復讐だよォ!」
レーヴァテインを両手で構えての薙ぎ払い。
迫り来るレーヴァテインに、速さでは勝てないと悟った”私"が考えた手段。それは
「ツヴァイトランザム!」
強制停止中の1番を覗く2基同時にトランザムを行うことで、劇的な出力の向上を測ったのだ。
……ただ、この同時トランザムには致命的な欠点が存在する。
ツインドライヴシステムのように、太陽炉同士が同調している訳ではない為、互いに互いを干渉し合い、ダメージを与えやがては自壊してしまうという点だ。
うまい話には裏があるということわざをこれでもかと体現したシステムで泣けてくる。
正直これがあるからあまり取りたくない手だったんだけど、そんなことも言ってられない。
第一、ここまで来て何もせずに負けるなんて癪だしね!
「何があったか知らないけど、チート使って初心者狩りなんてしてる時点で恥ずかしいことこの上ないって自覚してる?」
「あ?誰が初心者狩りだよ阿呆が。見境ないに決まってんだろォが」
「それはそれで問題なんだけど」
「一回垢BANしたからってやめると思うか?それもチート使うような奴らがな!」
そう吐き捨て、降り立った大地にレーヴァテインを突き立てるムスペルプロヴィデンス。
放出される熱により、周囲が炎に包まれていくが、”私"が注目したのはそこではなかった。
なるほどね…大方粘着質なチーターに目を付けられでもしたんだろう。
実際の戦争がないビルドシリーズにも、ガンプラマフィアといった闇組織があったりする以上、そういう事をする人も中にはいるんだろうけど……運が悪かったとしか言えないのかな。
「さっきも言ったけど、チート使ってる時点で同じ穴のムジナだって理解してる?」
「分かってんに決まってんだろ。オレはその上で復讐するつってんだ!――GBNへの復讐をな!」
「えーいきなり飛躍してんだけどー」
ダメだーさっきから思ってたけど、この人根本的な部分で話通じないわ。
「片っ端からダイバーを引退させりゃあいつかはGBNだってサ終すんだろ!」
「人の事言えないけどすっごい脳筋思考!」
ほんのちょっとでも同情した"私”が馬鹿だったよ!
でもチートやめてガンプラは喜んでるよ良かったね!
「お前で37人目だァ!」
「なんでそんな微妙な数字なの!?」
ドロドロに溶けた地面から引き抜いたレーヴァテインを手に突撃してくるムスペルプロヴィデンスに、ツッコミながらも応戦する。
「行って!ファング!!」
相手がドラグーンを捨てた今なら、数で負けていたファングも役に立つ……と思う!
サイドスカートから飛び出した残り3基のGNファングが、あえて滅茶苦茶な軌道を描きながらムスペルプロヴィデンスを狙うも、ムスペルプロヴィデンスの卓越した剣捌きにより、発射したビームを全て防がれてしまう。
「なんなんだぁ今のは……」
無駄に威圧感のあるセリフを無視し、ファングに更なる指示を出し、同時にバスターソードを構えスラスターを吹かす。
同時に、集まった3基のファングがバスターソードの刀身に張り付き、バスターソード自体の補助スラスターとなった。
オールレンジ攻撃が通用する見込みが薄いのなら、もう素直にパワーイズパワーで行くしかないという諦めの境地に至った故である。
「力こそが正義!!!」
というか、速さによる撹乱も無意味!オールレンジ攻撃も無意味!初戦がこれとかどんな罰ゲーム!!
「甘ェ!」
レーヴァテインによる的確な突きを、あえて指を開いた左手で受け、破損した左腕アーマーを即座にパージする。
「何ッ!テメェ!」
「いくらPS装甲といえども、衝撃までは殺せない!」
「上等…だっ!」
アーマーをパージしたことで多少バランスが悪くなったが、バスターソードの柄を両手で握り、胸部に狙いを定め横に一閃。
対するムスペルプロヴィデンス。
PSに回していたエネルギーも全て注いだらしく、フェイズシフトダウンを起こす本体と、流石に過剰過ぎたのかビキビキとひびが入っていき、破損箇所から異音を発しながらも、超大なビームサーベルを出力し続けるレーヴァテインを、力の限りに振り下ろす。
「ウォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
「はぁァァァァァァァァァァ!!!!!!」
激突する2本の剣。お互い決して引くことはなく、その一刀に全てを賭ける。
頭部バイザーが、バックパックが、サイドスカートが、擬似太陽炉ごと右脚が余波によるダメージに耐えきれず爆発し、機体状況がほぼほぼ『ERROR』と『DELETE』の警告表示で埋まってしまう。
「もうちょっと耐えてね……相棒!!」
……だがそれは
むしろ、PSをオフにしている以上、被害はあちらの方が甚大である。
各部の連鎖爆発により更なるダメージを負いながらも、エネルギーをレーヴァテインにのみ注ぎ込み続けている以上、相手もこの一撃で決めるつもりなのだろう。
もうここまで来ては、トランザムだとか、核エンジンだとかは関係ない。
勝敗を決めるのは、ガンプラの完成度と己のガンプラへ注いだ情熱、或いは愛そのものに違いない。
だからっ!
「”私"は”私の愛機"を信じる!」
「最後まで、絶対諦めない!」
「だからさ――応えて、デュビアスアルケー!!」
"私”の叫びに呼応するように、半壊したツインアイが瞬き、同時に唯一残った左脚の擬似GNドライヴが一際強い輝きを放ち――バスターソードがレーヴァテインを打ち破る。
「ッ!!」
「ッくしょうが…!」
レーヴァテインだった残骸の雨が降る中、ムスペルプロヴィデンスの胸部を切り裂く。
「"私”の、……勝ちだぁぁ!」
―――”私"がこれからもこの世界で生きることができるのか。それはまだ分からない。
でもこれだけは言える。
これからの"私”達の運命を決定付けるのは……
| ムスペルプロヴィデンスガンダム | |
|---|---|
| 型式番号 | MSPL-X13A |
| 機体名 | ムスペルプロヴィデンスガンダム |
| ビルダー | オディウム |
| 武装 | ピクウス76mm近接防御機関砲 超出力ビームライフル「レーヴァ」 複合兵装防盾システム「テイン」 ドラグーン・システム「ダムナーティオー」 近接格闘モード「スルト」 |
※damnatio=断罪
ELダイバー達が大手を振って生きられるキッカケになったのって、やっぱりあのヒロトがひたすらに辛い一戦だと思うんですよね。
あの戦いのおかげでELダイバー達が認められる下地ができたようなものですから。
……ちなみに、誰も悪気もなんもなく全ての行動及び言動がヒロトに致命傷与えまくってる上に、それら全てが"偶然”なのが酷過ぎて、そういう意味でも好きな一戦です(笑)