チリちゃんに堕とされたはがね使いの弟分   作:おねショタいいよね。

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チリちゃん の なやみのタネ

 

 ……ここはパルデア地方。不思議な不思議な生き物、ポケットモンスター、略してポケモンが数多く暮らす地方の一つ。

 

 場所は、そんなパルデアの中にある砂漠地点ロースト砂漠とパルデア一大きな湖、オージャの湖に挟まれた西2番エリア。

 

 その一角で、この度も一つのポケモン勝負が行われようとしていた。

 

 軽く息を整えるのは、はがねの様に光沢のある髪――全身を厚着に纏い、まるで何処かの鍛冶屋にも見えるその姿……ヘビーボールをその手に濁り締めて、少年は一匹のポケモンを繰り出した。

 

「頼むぜ……ナカヌチャン!」

「ナカンヌッ!!」

 

 繰り出されたはハンマーポケモンのナカヌチャン。

 相対するは、ただでさえ10歳程度の幼子に見える少年よりも、半分以上も年の離れていそうな少女だ。

 

「何度来ても負けませんの!ダイオウドウ!」

「ドウッ!!」

 

 繰り出すのは、どうぞうポケモンのダイオウドウだ……明らかな体格差だが、少年もナカヌチャンも一切引く気無し!寧ろ、やってやると言わんばかりに瞳を燃やしていた。

 

「へへっ、相変わらず良い手入れされたダイオウドウだぜ……けどな!今日は秘策があんだよ!ナカヌチャン!」

「ナカンヌッ!」

 

 少年の声を聞けば、待ってましたと言わんばかりにナカヌチャンは目の前のダイオウドウへと飛び掛かり……わざを放った。

 

「いけっ!『かわらわり』だ!!」

「ナァァァカンヌッ!!」

 

 繰り出されるのは、かくとうタイプのわざ『かわらわり』。はがねタイプであるダイオウドウには効果は抜群だ!!

 

 ……しかし……

 

 

 

 

 

「ふっふっふっ……ききませんの!ダイオウドウ!10まんばりき!」

「オウ……ドウッ!!」

 

 少女は、とびかかったナカヌチャンが空中で身動きができないタイミングで、ダイオウドウに指示を出す。

 

 効果抜群の技を食らっても尚平然とするダイオウドウは、その鋼鉄の鼻を振り回して、文字通り10万馬力の一撃をナカヌチャンへとお見舞いした。

 

「ナカヌッ――」

「ナカヌチャァァァァン」

 

 ナカヌチャンは地面へとバタリと目をぐるぐると回しながら倒れる……そして、そのタイミングで二人に声がかかる。中性的な女性の声だ。

 

「ナカヌチャン戦闘不能!ダイオウドウの勝利!……よって勝者『ポピー』!」

「ふふん!ですの!」

「ちくしょぉぉぉぉ!!」

「ナカヌゥゥゥゥゥ!!」

 

 少年とさっきぶっ飛ばされたばかりのナカヌチャンは、膝をついておもいっきり地面を叩いて悔しがる。そのシンクロ率は「あぁ、トレーナーとポケモンなんだなぁ」と察せられる。

 

 そんな少年に駆け寄るのは、試合の合図を務めた緑髪のポニーテールをした長身で中性的な女性だ。

 

「『サイカ』、ナカヌチャン、そりゃあ無理があるわ……」

「くっ『チリ』姉ぇ……今日こそは、今日こそは行ける気がしたんだ……!」

「ナカヌッ……!」

「……因みに、なんでなん?」

「今日のテレビの占い絶好調だったから……!!」

「ナカヌッ!!」

 

 自慢げに目を輝かせながらそう語る少年サイカとナカヌチャン。そんな彼らを見てチリは頭を抱える。

 

「あんな、ポピーやチリちゃんはこれでも四天王。一時の運程度で勝てる相手やないで。」

「分かってる……けど、日和ったら負けな気がして!」

「負けたやん自分。」

「うぐぅ!」

「ナカヌゥ!」

 

 またもやショックを見せてオーバーリアクションしてへこむサイカとナカヌチャン。

 

 そんな一人と一匹を見ながら、なんとかニヤニヤを抑えようと顔を抑えるチリを、先程までサイカと勝負していた少女、ポピーは叱咤する。

 

「こらっチリちゃん!いじめちゃメッ!ですの!」

「いやぁすまんすまん。サイカのあまりに反応がおもろかったもんでなぁ!」

 

 そう言ってチリは、サイカの頭をポンポンと撫でる。

 

「ま、昔よりは随分強くなってんけど、まだまだ足りんもんだらけや。逆に言えば伸び代はまだまだある!こんなええ事はないで?」

「足りないって何が……?」

「うぅん、手持ちとか持ち物とか色々あるけど……一番はレベルやな。」

「ぐっ……やはり()()()()()()()()()()()()でポピーのダイオウドウに挑むのは無理があったか……!」

「無理やでそりゃ。」

 

 因みに、数値的な話をすれば、現在のサイカのナカヌチャンのレベルは26、ポピーのダイオウドウはレベル58である。…………そりゃあ無理である。

 

「ナカヌッ!」

「けど、ナカヌチャンは今度こそは行けるって!」

「そのナカヌチャン昔からそんな感じの性格やったろ。」

「『じしんかじょう』ですの!」

「?『かたやぶり』だぜ?」

「そういう話じゃありませんの!」

 

 そんな二人を見てまたケラケラと笑うチリ……ナカヌチャンと同じ様に、彼も昔から変わらないものだとサイカを見る。

 

 

 パルデアに引っ越してから、ご近所さんとして最初に仲良くなったのがサイカ、及びそのご両親である。

 

 サイカも含めてこの一家が中々愉快でフレンドリーな人で……コガネシティ出身であるチリも、その波動に親近感を覚え、仲良くなるまでは時間は掛からなかった。

 

 その縁や家がご近所なのもあって、幼いサイカの面倒を見たり、ポケモンや勉強を教えたりしていた。

 

 サイカは何時でもハイテンションでオーバーリアクションで声がデカい。一緒に過ごしてても楽しい人であった。簡単に言うのであれば、馬が合う……と言うべきか。

 

 少し年の差はあるが、チリとしては弟分ができた様で中々楽しい日々だった。

 

 そんな日々は、チリがリーグ職員になって、パルデアトップクラスのポケモントレーナーである四天王になっても変わらなかった。

 

 一つ変わった事があるとすれば、新たに妹分として同じく四天王のポピーとも行動を共にするようになった事だろうか。

 

 奇しくも、ポピーははがね使い、サイカもまたはがねマスターを目指す者である。

 

 その事から、サイカは猛烈にポピーをライバル視しているのだ、時偶……と言うには高頻度すぎるほど、ポピーに対してポケモン勝負を行うくらいには。

 

 まぁ、毎回結果はご覧の有様なのだが。

 

 

 

 三人がそんなふうにてんやわんやしていると、……すると、ナカヌチャンが突然サイカの肩をいてアピールする。

 

「……!ナカンヌッ!」

「えっ?腹が減った……まぁ、たしかに。」

「っ!ポピーもお腹が空きましたの!」

「あっはっはっ!そやな、そんじゃチャンプルタウンまで飯でも喰いにいこか?」

「「わーい!」」

 

 やったぜと手を挙げて喜ぶポピーとサイカ。年齢が比較的近いのと、サイカの背が低めなのも相まってますます幼い兄妹に見えてくる。

 

 そんな二人を見て、チリは心の中で(かぁわいっ!)と悶絶しながら、二人の前を歩く。

 

 チャンプルタウンに行くには高レベルのポケモンが多いオージャの湖を横切らなければならないため、念の為年長者のチリが前に出るのだ。

 

 

 

 前を行くチリの後ろをトテトテとついていくポピーとサイカ。ナカヌチャンを連れ歩くサイカにポピーは一つ、耳元でそっと問いかける。

 

「……サイカ兄ちゃんは、なんで何時もポピーに勝負を挑むんですの?」

「そりゃあ!ポピーがパルデア1番のはがね使いだから……超えようと…………」

 

 だんだんと声が小さくなり、いつもの自信がなくなってくる。ポピーもさすがに目ざとく、そこに気づいた。

 

「なんだか吃って怪しいですの!白状するですの!」

 

 そう言ってサイカへと迫るポピー、サイカはぐいぐいとくるポピーに頭を抱える。

 

 咄嗟にナカヌチャンの方を見ると、なぜか妙に澄ました顔をして、肩を叩く……白状しろということなのだろうか。

 

 サイカは改めてチリの方を数度見て、ある程度離れたのを確認してから、顔をダルマッカの様に真っ赤にしながらもポピーに耳打ちする。

 

「……そのっ、誰にも言うなよ……別にポピーに勝ってパルデア1番のはがね使いに成ろうとしてるのは本当だよ……で、でも……」

「でも?」

「そのっ……最近チリ姉ずっとポピーに構ってばっかだから、こうでもしねぇと関われないって言うか……ちょっと寂しかったっつーか……」

「……なるほど!サイカ兄ちゃんはチリちゃんが大好きなのですね!ポピーもチリちゃん大好きなのです!」

「うぇ!?……ま、まぁ、その……大好き……かな……?」

 

 当のポピーには深い意味は全くないのだが……サイカは言ってて恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながら顔を振るう。

 

「だぁっ…!チリ姉にはバラさないでよな!」

「ふふっ!大丈夫ですの、バラしたりなんかしませんの!」

 

 そう言ってポピーは自慢げに胸を張る。そんなポピーの様子を胸を撫で下ろすサイカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、サイカの声はデカい。たとえ当人的にはコショコショ声で言っていたつもり……

 

(……全部筒抜けなんよなぁ……)

 

 チリには全部筒抜けだったのだ!とんだ誤算だ、サイカはもっと自身の声のでかさを把握すべきだった……チリは、頭を抱えながらどうしたもんかなと考える。

 

 いや、どうするもこうするも、大人としてはここは何も聞かなかったことにしておくのが普通なのだが……問題は、チリの心の中の問題だ。

 

(……こりゃ、チリちゃんの方が隆起してまうわ……)

 

 改めて聞かされるサイカの心情に、チリは心の中が乱されていくのを感じる……チリはサイカを見て、軽く頭を掻くと、なんとか心を静めて……静め……静めて……

 

(……アカン心が隆起しっぱなしや。なんやあれ可愛すぎんか?)

 

 普段はギザ歯を見せて豪快に大笑いする様な野生児みたいな奴なのに……今は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに頭を掻きむしっている。

 

 これがギャップと言うやつかと、チリは何か大切なものが壊れていくのを感じていた。

 

 ……いや、そもそも向こうがそういう気持ちがあると決まった訳では無い。

 

(ふぅ……落ち着け、落ち着くんやチリちゃん。こんなんは気の迷いや、そう……そうに決まっとる。)

 

 気の迷いに決まってる……だが、そう思うと何故だか淋しく感じる自分がいることにチリは心底驚いた。

 

――うぇ!?……ま、まぁ、その……大好き……かな……?――

 

(だぁぁぁ!変な事言いおってからに!年の差考ぇ!)

 

 チリはなんとか思考の波を振り切って、何の気もないように2人に声を掛ける。

 

「ほらぁ、行くでー!」

「「はーい!」」

 

 チリは何ともいえぬ心の支えを感じながら、チャンプルタウンへと脚を急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 この後滅茶苦茶(ご飯を)食べた。




サイカ:はがね使いのショタの方。チリは姉貴分で幼馴染。チリちゃん大好き(意味深?)。

ポピー:はがね使いのロリの方。チリちゃん大好き(意味浅)

チリ:弟分と妹分が可愛すぎてしんどい。弟分の矢印に気づいてどうしようか考えている。

サイカのナカヌチャン:バトル大好き。サイカの心情は何も分かってない。兎に角バトルできれば良い。
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