チリちゃんに堕とされたはがね使いの弟分   作:おねショタいいよね。

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顔面600族 の ふいうち

 

 パルデアの中央に位置し、最も大きな街と言える場所、テーブルシティ。そこには、私立グループアカデミーと言う、巨大なスクールがそびえ立っている。

 

 その麓には、無数の店が立ち並び……中には当然飲食店などもある。

 

 パルデア1番のはがね使い(になる予定)のサイカは、手持ちのナカヌチャンと共に、パラソル付きの座席でクレープを食していた。

 

 最近テーブルシティにカントー地方からやってきた屋台で、兎に角甘くて甘くて最高だ。

 

「うん、ウメェ!」

「ナカンヌッ!」

 

 おやつに何を頼むか迷ったが……これはクレープにして正解だったかもしれない。そんな事を考えながらとガツガツと甘ったるいクレープを頬張っていると、突然後ろから声をかけられる。

 

「なぁ。そこのカッコいい坊っちゃん?良かったら食事、一緒にしてもええかな?」

「ナンパみたいな物言いは辞めてくれよ……チリ姉。」

 

 サイカはそう言ってジト目で振り向いて、後ろでにははと笑うチリを見つめる。チリはサイカの頭を軽く撫でると、サイカの向かい側の関へと座る。

 

「まいど!チリちゃんやで〜。いやぁ、すまんすまん。リーグ帰りに見覚えのある背中があったもんで、ついつい……な?」

 

 ついついでナンパするのかこの人はなんて筋違いな懸念が生まれて、サイカは態度には出さないが少しムスッとする。チリはそんなサイカには気づかずに、その手元を見て問いかける。、

 

「何食うてるん?」

「クレープ、最近カントーからきた奴でよ。」

「あぁっ!あれか!チリちゃんも気になってん。」

 

 遠目から見れば実の姉弟のような気持ちのいい会話…………しかし、チリの心情は中々に穏やかではなかった。

 

(はぁ、アカンわ。この間のサイカとポピーの会話聞いてから落ち着かんわ……)

 

 チリは大人として、一時の感情に流されてはいけないと自分を律していた……あれから数日、考えれば考えるほど、なんだかソワソワしてしまう。

 

(あぁ、恋愛絡みでこうもムズムズするのは久し振りやな…………)

 

 何故だか上の空なチリをみて、サイカは小首を傾げながら問いかける。

 

「チリ姉?どうしたんだよぼーっとして。」

「いんや、なんでも……ん?ちぃと待ちぃ。」

 

 そう言ってチリはガタッと席を立つと、サイカへと顔を近づける……サイカは思わずビックリして反射的に身体を跳ねさせるが、チリは咄嗟に肩を掴んで捕まえて動きを止める。

 

「!?!?」

 

 完全な『ふいうち』を食らい、動きを止めるサイカ。

 

 ただでさえ顔が良いというのに、こんな事を急にされては何も感じない者の方が少なかろう。

 

「……ん。」

 

 困惑するサイカを他所に、チリはポケットからハンカチを熟れた手つきで取りだすと、サイカの顎をそっと掴んでその口元を拭った。

 

「クリームついとったで。がっつきすぎや。」

「うぇ……あぁ……うす……」

 

 サイカは完全に面食らい唖然とする。その傍らで、自分の分のクレープを食べ終えたナカヌチャンがサイカの分のクレープを『どろぼう』しても気づかないほどに……

 

「ナカンヌッ!!」

 

 美味しいそうです。

 

(いやぁ、幾らマセる様にはなっても、まだまだ子供やな〜。)

 

 この顔面600族、無自覚である。

 

 チリは子供らしいサイカの一面が見れて満足し、本人も気づかぬ内に心は落ち着いていた……やはり、長年弟分だった感覚は抜けないようである。

 

「ナカンヌッ!」

「……サイカの分のクレープ滅茶苦茶食われとるで?」

「………………はっ!?ナカヌチャンお前!」

「気づいとらんかったんかい!」

 

 サイカはクレープを取られたことに気づき漸くナカヌチャンを責めるが、もはやクレープは全てナカヌチャンの腹の中……サイカはがっくしと肩を下ろす。

 

「まだ半分しか食べてないのによぉ〜」

「……ナカンヌッ!」

「ドンマイじゃねぇよ!お前が食べたんだろーが!」

「あーはっはっはっは!!」

 

 そう言ってナカヌチャンのほっぺを引っ張るサイカ……チリは過呼吸になりそうなほど笑うと、思わず出た涙を拭って言葉をかける。

 

「まぁまぁ、落ち着きぃや……しゃあないなぁ。ここはチリちゃんが甲斐性見せたる!」

「?」

「チリちゃんも小腹が空いててな。けどあそこのクレープサイズ大っきいやん?食い切れるかなぁ思ってたけど丁度ええわ。サイカ、奢ったるから昔みたいに半分こしようや。」

「!!良いのか!?」

 

 途端に先ほどまでのしょぼくれた顔とは一転、顔を明るくしてまるでガーディに様に(見えない)尻尾を振りながらチリを見上げる。

 

「あぁ、ええで!」

「……あっ……でもこの前奢ってもらったばっかり……」

「ぷくっ……子供がそないな事気にすんなや!」

「でも……」

 

 この辺に関しては強情で譲らないのをチリは良く知っている。チリはませてるなと想いながらも、サイカの頭をまた撫でると、妥協案を提示する。

 

「んじゃこーしよ!半分や半分、割り勘って奴や……情けないけど、それで手を打ったる。ええな?」

「……それなら、まぁ……」

「っしゃ、決まりや決まり!売り切れる前にいこーや!」

「お、おう……ナカヌチャン、席取っといてくれ。」

「ナカンヌッ!」

 

 サイカの指示に従い、ナカヌチャンはその場にとどまって席と荷物を見張っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……

 

「いやぁ流石はカントーのクレープ、美味いわぁ!」

「……美味い。」

 

 サイカとチリは、クレープを半分に分けて食していた。広場では、チリの手持ちであるとげうえポケモンのドオーとナカヌチャンが仲良く遊んでいた。

 

「ドォ!」

「ナカンヌッ!」

 

 タイプ相性的にいえば、ナカヌチャンはドオーは苦手も苦手のはずなのだが……一切気にせず仲睦まじく遊んでいた。

 

「……ドオーも元気そうっすね。」

「ちぃと元気すぎるけどな……そういや、そろそろ『宝探し』の時期やないか?」

「んっ……そうだけど……」

 

 宝探し――それは、グレープアカデミーで行われる大きな行事、課外授業の一つ。

 

 オープンワイルドとなり、生徒達がそれぞれの宝を見つけるためにパルデア中を旅に出たり、勉強したりする……それが宝探しである。

 

「確か前の時は……」

「ひたすらに野生のカヌチャンがハンマー錬成する所みてたな。」

「何やっとるん自分。」

「いや、面白いから!一匹一匹ハンマーの生成方法や素材や形が違うんだって!」

 

 はがね使いのサイカとしては非常に有意義な時間だったそうなのだが……まぁ、そういった専門的なことは大抵大多数の人間には理解されないものだ。

 

「ジニア先生には良い研究結果とレポートって褒められたんだけどなぁ……」

 

 生物科の先生であるジニアに観察結果等を纏めたレポートを提出したら、かなり褒められたが……まぁ、あの人はあの人で特殊なので勘定には入れられないだろう。

 

「う〜ん……あとは、パーティを増やしたいな。俺のパーティ、今ナカヌチャンともう一匹だけだし。」

 

 サイカの手持ちは相棒のナカヌチャンの他にもう一匹いるのだが……普段はもっぱら殻に『たてこもる』ばかりで、偶にボールから出るのを拒否することもある程の引きこもり気質、レベル的な意味でも、まだまだサイカの言うことは聞いてくれそうにない。

 

「その為にも、今回はジム巡りかな!リーグまで行ければチリ姉やポピーとも戦えるんだろ?」

「あぁ!楽しみに待っとるで!」

 

 そう言ってチリはまたサイカの頭をくしゃくしゃになるまで撫でる。

 

 正直、もうジム巡りが出来るほどまで成長したのかと、驚くばかりだ。

 

 少し前まではそれこそ本当にカヌチャンみたいな子供だったのに……なんて、親みたいな事も思う。それほどまでに幼い頃からの付き合いと言う訳だ。

 

「チリちゃんは応援しとるから……きばりや!」

「おうっ!」

 

 チリの人を狂わすほどまぶしい笑顔に対して、サイカもまた無垢なギザ歯を剥き出しにした笑顔を見せてハイタッチする……

 

「ドォ。」

「ナカヌッ?」

 

 その様子を見ながら、ドオーは何処か満足げな様子で頷き、ナカヌチャンは何も分かってないようなとぼけた表情を向けていた。

 

 




チリ:ナチュラルイケメンムーブで数多の人間を堕として来た魔性の女。サイカへの感情はまだ母性の方が勝ってる。

サイカ:チリの被害者。幼少期から無意識イケメンムーブしてくる顔面600族がいたら拗れるに決まってるよなぁ!?

ナカヌチャン:何も考えてない。

ドオー:サイカの心情を察しているが、あくまでトレーナー同士の問題なのでポケモンドオーは傍観を決め込む事にした。それはそれとしてサイカの恋路は応援している。結ばれるだけが恋や愛ではないと言う事を知っている。

サイカのもう一匹のポケモン:シンオウに旅行した時に出会った。シンオウがヒスイと呼ばれた頃に居たポケモンらしい。
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