《今だ、メモリブレイクを!》
「よっしゃあ、派手にぶっ放すぜ!」
『サイクロン・マキシマムドライブ!』
「《トリガーエアロバスター!》」
銃から放たれた豪風がコウモリ怪人を包み込む。
風が止んだ時、その場には一人の気絶した青年と、破壊されたメモリが転がっていた。
それを見届けたもう一人の怪人がメモリをバックルから引き抜くと、彼もまた人の姿へと戻る。
半分こ怪人だった青年は懐から奇妙な形状の携帯電話を取り出すと、手早く警察へと連絡をした。
「これで一件落着だな……」
が、そこで青年は一つの異常に気が付いた。
この町を象徴する建築物である風都タワーの風車が雄大に回っている。
冬の風に合わせ器用に角度を変えるブレードを見ながら、衛宮切嗣は小さくため息をついた。
かつて彼が居を構えていたドイツのアインツベルン城周辺ほどの冷え込みはないとはいえ、それでも今の季節の風は肌身に染みる。
キィッとブレーキの音がした。
中央から後方が緑、前方が黒。そしてボディーには銀でWの文字。
風変わりなオートバイだった。
バイクにのっていた青年は躍り出るようにバイクを降りると、ツカツカと切嗣の方に歩み寄ってきた。
「ちょっとどいてくれないか」
切嗣の後ろには自販機がある。おそらくそちらに用があるのだろう。
切嗣は素直に場所を譲ると、青年はズボンのポケットから無造作に小銭を取り出し自販機に投入した。
――もうこの場所に用はない。
慎重に周囲の気配を探った後、切嗣は場所を離れようとした。
が、背後に近づいてくる気配を感じる。
先ほどの青年だ。
「ほら」
コーヒーの缶を差し出される。
青年の差し出した右手にコーヒーが一つ、そして左手にも一つ。
「当たりが出たんだ。進呈するよ」
どうも先ほどの自販機はルーレットで当たりが出るともう一缶オマケが出るタイプらしい。
青年はぶっきらぼうにコーヒーを寄越すと、熱いはずのコーヒーを一気に飲み干し、缶をゴミ箱へ投げ入れた。
そして二つの物体をくっつけたかのようなバイクに飛び乗ると、風のように走り去っていった。
切嗣は少しの間缶を弄んだあと、そのまま栓を開けることもなくゴミ箱へ放り込む。
――いかにありえない手口だとしても、あの青年が刺客ではないとは限らない。
たとえ極僅かな可能性だとしても、毒が入っていないと断定できない飲食物は口にしない。
そう、彼は命を狙われている。
自分のため、そして何より妻と子のため、一時たりとも油断することはできない。