「……ただいま」
「おかえりなさい、切嗣」
切嗣の妻、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが彼を出迎える。
住宅街から少し離れた簡素な一軒家。現在切嗣たちはここに身を隠していた。
思えば妻の生家、アインツベルンを裏切り逃亡を開始して二週間ほどになる。
魔術師――現代で聞けば妄想だとしか思われない単語だが、世界の裏には確実に存在する。
アインツベルンはその中でも群を越えた力を持つ大魔術師の家柄だ。
彼らは外来の人間である切嗣を、とある儀式での戦闘に勝利するため傭兵として呼び寄せた。
切嗣もまた自身の“悲願”を叶えるためアインツベルンの契約に乗った。
だがいざ儀式が始まったところで双方に誤算が生じる。
単なる家名を得るための手段でしかなかったアイリとの結婚で、切嗣は深く彼女のことを愛してしまったのだ。
そして数年後誕生した娘のことも。
儀式を進めれば確実に妻を犠牲にする……切嗣は妻の命と娘の幸福を守る為全ての悲願を投げ出した。
そしてアイリの手を取り、ドイツのアインツベルン城から娘を強奪すると、ここ日本に逃げ込んだのだ。
日本へ逃げ込んだ理由はいくつかあるが、最大の理由は魔術師の基盤がしっかりと根付いていない日本では魔術師の行動は大きく制限されることだ。
さらに加えてこの街、風都。
この街はかつてミュージアムと呼ばれる組織が大規模な実験場として扱っていた街だ。
その時は魔術師を含む様々な組織が“ガイアメモリ”を始めとするミュージアムの実験結果を奪取しようと手出しをしたものの、ミュージアム、そして背後にいる財団Xの妨害により、全く成果を出せずにいた。
現在ではミュージアムは滅び財団Xもほぼこの街から手を引いたため、以前ほど魔術師をはじくシステムは完成していないが、それでもミュージアムの種々の遺産を乗っ取ろうと多くの組織が静かな暗闘を繰り返している。その中で後ろ盾が万全でない魔術師は大きな行動を起こすことはできない。
現在日本でも有数の火種を抱えた街風都――その火種が切嗣たちを守る盾となっていた。
「イリヤの調子はどうだい?」
「今眠ったところよ。切嗣が帰ってくるまで絶対に起きてるんだって頑張ってたんだけどね」
アイリはそう言って優しげに微笑む。
切嗣はそっと寝室のドアを開けると、寝ている娘の頭を軽く撫でた。
その寝顔はこの世の全ての恐怖と悲しみと無縁な、子供らしい表情だった。
よかった――そう安堵しかけた自分を戒める。
状況は全くと言っていいほど改善されていないのだから。
ドアをゆっくりと閉めると、一転アイリは深刻な顔で話し始めた。
「近く、本格的な術式を始める必要があるわ。少なくとも風都から動ける余裕は作れそうにないわね……」
「かまわないさ。おそらくここは日本でも有数の安全地帯だ。少なくとも僕たちにとってはね。綱渡りには違いないが……考えうる限り最も太く頑丈な綱さ」
しかし、アイリを安心させるためにこうは言ったものの、切嗣とて好き好んでこの町を拠点にしようと考えたわけではない。
いくら風都がある程度の安全性を確保できるとはいえ、現状火薬庫のような状況の街で滞在したいとは思わない。
だが前述のある程度の安全性に加え、移動の問題もあった。いかに安全な場所でも辿りつけなければ意味はない。
そして何よりイリヤの体を整え得る術式。
ある程度の魔術を行うには、その土地、風土に影響を相応に受けるものだし、相応に与えるものである。
その土地の魔術師、あるいはそれに準ずる存在からの干渉を受けず儀式を遂行し、且つある程度の安全が確保でき、そして移動が容易な地点と言えば、切嗣の知る限り、この風都ぐらいしか選択肢がなかったのだ。
(術式……か)
その陰鬱な響きを切嗣は心中で反芻した。
表には出ず本人に自覚はないものの、現在イリヤの体調は命を脅かすレベルまで落ち込んでいた。
とある目的のため、生まれる前から現在に至るまで特別な処置を施され続けてきた彼女を無理に連れだしたことが祟ったらしい。
出来る限り早く、イリヤの体調を復調させるため、魔術的な施術を行わなければならない。
現在切嗣はその術式の行使に差し当たりの出ないよう、地脈の正常化を行っていた。
本来は土地の管理者に相当する人物が行う行為だが、風都にはそうした行為を行う人物がいないのだ。
土地柄風が強く吹き抜け、マナの流れに淀みの出ない風都では地脈にも乱れが生じ辛く、そうした行為を行わないことによる弊害は皆無といってもいい(それなりの規模の魔術を行使しないのならば、だが)。
だが弊害はなくとも影響までは消えなかった。
魔術的、呪術的な手を加えられず、風のうねりに任せるまま生まれた奇妙な街、風都。
ミュージアム、あるいは財団Xが実験用の都市として選んだことにはこうした事情も無関係ではないと切嗣は睨んでいた。
「切嗣、5km先の湾岸に新しい滓(おり)を確認しました」
暗がりから新しい人影――久宇舞弥が姿を現す。
切嗣にとっては頼りになるパートナーであり……切嗣の妻であるアイリにとっては複雑な感情を持ちえない女性だった。
「わかった、すぐに向かう……おそらくはそこが最後になるだろうね」
「はい、その場所の地脈を正せば、術式の行使に問題ない状態になるはずです」
「よし……」
切嗣は家を出ると、現在足として使っているVMAXに火を入れた。
本来は彼が逃げ出した戦い、“聖杯戦争”での“サーヴァント”の為に手配したものだったが、現在はデチューンを施し、彼が使用していた。
やはりこの町の風は冷たいな――そう心中でひとりごちると、切嗣は舞弥の指定した地域へ向かった。
そろそろ術式の必要があるだろうと、アイリと舞弥は眠るイリヤの周囲で陣や呪具、魔術的な機器の再確認を始めた。
安らかな寝息のみが聞こえる室内にて、なんとなく気まずくなったアイリは口を開いた。
「その……舞弥さん?」
「はい」
アイリの呼びかけに、舞弥は機械の合成音声を思わせるような平坦な調子で応えた。
いまだ会話少なく、微妙な関係の“夫のパートナー”のその調子に若干怯みながらも、アイリは言葉をつづけた。
「……貴女は良かったの? 私達についてきて……逃げ出したのよ……切嗣は、私は……あなた達がかつて掲げていた理想から……」
「かまいません。切嗣が逃げるというのならそれに従うまでです」
その即答は、何かしらの信念や信条を伴う返答を期待したアイリへと肩透かしを食らわせた。
また舞弥がその心中の全てを吐露したわけではないだろうと理解はしながらも、身を切るような痛みを心に抱え、その理想を追い続けた夫の覚悟を真っ向から否定されたように感じられ、彼女としては決していい気分がするものではなかった。
だが夫にその理想を否定させた張本人でもある自分がそうした感情を持っていいものかと、アイリは自分を窘めた。
そもそも自分は舞弥に対してどういった回答を期待していたのだろうか?
どういった意図を以って今の問いを投げかけたのだろうか……
アイリはその時、自分がイリヤの手を強く握りしめている事に気が付いた。
自身の命よりも大切な存在であり、未来の象徴でもあるイリヤを、切嗣との間の繋がり――といえば聞こえはいいが、舞弥に対する切嗣との間の優位性――として扱ったようで、アイリは自己嫌悪に陥りながらイリヤの手をそっと離した。
そう、アイリは舞弥が切嗣にとって、単なる戦闘面においてのパートナーに限らない存在であると、薄々ではあるが勘付いている。
だからこそ、彼女は自身でも整理のつかない感情を舞弥に持たざるを得ない。
今は切迫した状態だから一緒にいてほしいというほど、彼女は舞弥に対して心を許せないし、立ち去ってほしいというには彼女の力は頼りになりすぎた。
「マダムは――」
突如かけられた言葉にはっとふりかえる。
舞弥からアイリに話しかけることはこれで何度目だったか……それは何度かあったはずだが、アイリにはそれが初めてのように思えた。
「――よろしかったのですか? 聖杯の完成はマダムにとっても、切嗣だけの理想と割り切れるものではなかったはずです」
少しの間逡巡してから、アイリは眠る我が子の頭を優しく撫でた。
「……ええ。アインツベルンの悲願もこの子に比べれば私にとっては些細な事。この子を聖杯の器としないため、私は戦っていた。そして“恒久的平和”も……できればこの子にそんな世界を見せて上げたかったけど……でも大丈夫、きっと切嗣はこの子を守ってくれるから……せめてこの子の周りだけでも彼は争いを失くしてくれるはずだから……だから切嗣が自身の理想から逃げ出すというのなら私も――」
そう言いながら、自身の回答が結局、舞弥と同じ形に帰結することにアイリは気付き、どこか後ろめたい気持ちになった。
自分はどれだけ“争いのない世界”を願っていたのだろうか。
自分はどれだけ、切嗣の理想に身をやつす覚悟だったのだろうか。
切嗣がかつて抱いていた理想――争いのない世界。
誰も傷つくことのない遠い遠い理想郷。
誰よりも優しかったからこそ、誰よりも残酷な修羅として生きていた彼は、ついにそこへ至る道を見つけ出した。
あらゆる願いを叶えるという聖杯、そして聖杯をつかむための戦い、聖杯戦争。
だがその願いは成就されなかった。
彼が手段に過ぎなかった、アイリとイリヤを心から愛してしまったからだ。
聖杯の降臨にはアイリの犠牲が必要となる。結局、彼は耐えきれず、全てを捨てて逃げた。
戦いからも、アインツベルンからも、ずっと抱えてきた理想からも……
だが果たして彼はそのことを受け入れられているのだろうか?
アイリがずっと懸念していたことはそれだった。
彼の理想を支えていたものはなんだったのか。
理想という“重し”で抑え付けられていた“支え”は自らを縛る枷を失ったことで彼へと牙をむくのではないだろうか。
(切嗣……)
今自分に何ができるのだろうか?
あるいは自分もまだ知らない夫の過去に踏み込む必要があるのかもしれない。
しかしアイリは今手の中にある微かな幸せを失う事を恐れ、それができなかった。
その葛藤は、閉鎖的な城の中、ただ聖杯の為に生み出され、聖杯の為に生かされてきた彼女が、ホムンクルスではなく人間として直面した初めての壁であり試練なのかもしれなかった。
切嗣は目的地近くまで来ると、エンジンを切り、そこからは目的地までバイクを押して歩いた。
目的地までバイクで向かえば、エンジン音が途切れた地点にそれなりの時間留まる事となってしまう。
それは追手を気に掛ける切嗣にとっては決して面白くない事だった。
港湾のコンテナターミナル――夜の海と空に挟まれ、眩くライトアップされた風都が目に映る。
車でドライブでもすればさぞ気持ちのいいものだろう。
できることならいつかアイリとイリヤを乗せた車でゆっくりと、普通の家族のようにドライビングコースを走ってみたいものだ――
だがそれは本当に可能なのだろうか?
聖杯戦争という、あらゆる願いを叶えるという聖杯の降臨の為だけに生み出されたアイリ。そしてそのための調整を受け続けたイリヤ。
そして何人もの人間を手にかける血塗られた道を歩き、そして最後にはその生き方すら否定した自分。
そんな自分たちに本当に普通の家族のように過ごせる日は来るのだろうか――
煩悶する心と裏腹に、切嗣は手際よくバイクを物陰に隠し、自身の安全性をもっとも保障する位置を探り当てていた。
かつて彼の師匠は言ったものだ。
お前は心を切り離したまま指を動かす才に恵まれているのだと。それは稀有な資質……しかし資質に恵まれることが必ずしも幸福につながるとは限らないと――
準備を整え、いざ地脈の滓を取り除こうとした切嗣だったが、そこで異変に気付いた。
奇妙な音が聞こえる。
それは海風に遮られた微かな音だった。普通の人間ならまず聞き逃しただろう。
しかし数多の戦場を潜り抜け、今現在も追手を警戒する切嗣にとっては、決して聞き逃せないものだった。
研ぎ澄まされた聴覚と、修羅場を潜り抜けた人間のみが身に着ける、第六感ともいえる奇妙な感覚が導き出す凶報。
――殺気を孕む音。
自身の身と気配を忍ばせ、周囲を確認しつつ、音の地点を確認できる場所へと移動する。
音が聞こえた地点から、約50メートルほど離れた倉庫の影、魔術で視力を強化し、切嗣は音の地点を探った。
倒れた男が一人、そしてその傍にたたずむ男が一人。
倒れた男は血を流しているが、その傷は浅いようだった……が、そばにいる男は今にもその男にとどめを刺そうとしている。
切嗣の頭の中を様々な行動パターンが駆け巡る。
あの男を助けるのか、そのためにはどうした行動が最善か……
しかし切嗣はその考えを断ち切った。
自分は人生の全てを妻と子のために費やすと決めた。そのために世界が平和へと至る道を捨てたのだ。
だからもう、見も知らぬ誰かを救ってはいけない。
おそらくあの事件は自分達とは何の関係もない。間が悪く、偶然起きた犯罪が自分の目的地と近かったのだ。
ならば関わる必要はない、関わってはいけない。この場は静かに立ち去り、また機を改めてこの場を訪れるべきだ。
しかし――
「誰だ……!?」
その男は切嗣に気付いてしまった。
これだけの距離を離し、気配を消しているのにどうして――疑問を横に置き切嗣は駆け出した。
万が一に備え逃走経路もすでに想定してある。
軽やかにコンテナの一つを越え、コンテナから飛び降りた先のすぐそば、VMAXが隠してある。
飛び乗り、素早く走り出す。
だが高速で走る切嗣の後方でもエンジン音が聞こえる。
(追いかけてくるか……!? だがあのエンジン音はなんだ……聞いたことのない……いや、確か一度ある……! あの音は――)
一陣の風が切嗣をあっさりと追い抜き、前方で立ちはだかるように静止する。
VMAXを軽々と抜く途方もないスピードと、そのスピードをあっさりと殺すブレーキ性能。明らかに一般に流通するマシンではない、否、それどころか既存のテクノロジーで作られたマシンですらない。
すべらせた後輪が地面との摩擦で生み出した猛烈な煙が、風に流され徐々に晴れていく。
煙の中には、中央から後方が緑、前方が黒。そしてボディーには銀でWの文字。
先程あったばかりの奇妙なバイクだ。乗っている青年も変わっていない。
「逃げる事はないだろう? 仮面ライダーの活躍なんて滅多に見れないぞ」
「……」
仮面ライダー。その名は切嗣にも聞き覚えがあった。
世界の裏には人々のために戦う孤高の戦士がいるという都市伝説である。
実際に世界の裏とも言える戦場を駆け抜けてきた切嗣は、そう呼ばれた人物、そう自称する人物とも出会ったことがある(それが都市伝説の本人なのかはわからないが)。
そしてこの風都にも仮面ライダーの名で呼ばれる人物がいることもまた彼にも聞き及ぶことだった。
それが目の前の青年だというのだろうか?
「……生憎と血は苦手でね」
切嗣は青年の言葉に応対した。
明らかに目の前の人物は真っ当な人間じゃない。だがしかし――意外なことだが――敵意がないことは読み取れた。
口封じのためにこちらを消そう等という様子は今のところ見られない。
害意のある人間でなければ、無理に排除することもない。
無難な対応を続けながら、相手の様子を探ることを切嗣は試みた。
「ああ、あんたさっきコーヒーをやった奴かい」
「君は……風都で活躍している例の仮面ライダーなのか?」
「少なくとも周りはそう呼ぶね」
「なら君の傍に倒れていた彼も……風都を害する人間だったのかな? だから、倒した……」
「あいつ、あいつはな。あいつはガイアメモリの売人だったんだ。メモリを売りさばいて金を得る悪党でね……殺すつもりはなかったんだが……抵抗されてしまってな。俺はずっと戦い続けてる。キリがない、多分裏がいる、ストリートギャングなんかじゃない、もっとでかい悪の組織だ」
「彼はまだ死んでいない。救急車を呼べばいいんじゃないか?」
その言葉に青年の目がぎょろりと動いた。
「あ、あいつは! 言っただろう、悪人なんだよ、しっかり裁かなきゃいけない……きゅ、救急車なんて呼ばなくていい……!」
切嗣は確信した。彼は完全にガイアメモリに汚染されている。
ガイアメモリ――かつてミュージアムが製造していた、人間に超常的な能力を与えるUSBメモリ状の生体感応端末である。
その使用者は身体能力の強化や、メモリに応じた能力を得られるものの、メモリの毒素に蝕まれ、徐々に精神が歪んでしまうのだ。
この言動、元は強い正義感を持った人間なのかもしれない。
「だから、奴は、俺が倒す。あんたも見ててくれ、仮面ライダーの、晴れ舞台だ」
危険な人物だが、少なくともこの人物は自分に危害を加えるつもりはないようだ。
倒れた人物にとどめを刺せばそのまま立ち去るだろう。
――血の匂いがした。
彼はきっと多くの人間を傷付けてきたのだろう。あれほど情緒が乱れた人物が善悪の判断などできるのだろうか?
本当にあの倒れた男はメモリの売人だったのか?
彼はこれからも危うい断罪を行い続ける。この後もまた次の生贄を求め、町を彷徨うのだ。
……だがそれに自分が何をできるというのか?
昔の自分なら青年をメモリの呪縛から解き放ち、倒れた男を介抱しただろう。
しかし今はそんなリスクは冒せない。
青年の中毒症状は相当に進行している。メモリを使用せずとも何かしらの能力がすでに身を覆うほどとなっているのだ。
さっき隠れた自分を見つけたこともそれに起因するのだろう。
そんな人物からメモリを奪取し、更に倒れた男を助ける事は相当に危険な行為だ。
もう自分はそんな行いからは、目を背けて生きることに決めたのだから。
「いいか? この世界は汚れきってる……だから誰かが正義の味方にならなきゃいけないんだ。俺は、仮面ライダーは、だから……」
正義、その言葉をずっと呪い続けて生きてきた。
それは一体いつからだろうか。
多くの命のために母のように思う師を手にかけた時からか?
多くの命のために父を手にかけた時からか?
もっと昔の自分にとって、憎む以外にその言葉を捕えていた時がある。
それは一体いつだろうか……一体どうした感情だったのだろうか。
まるで霞がかかったように思い出せない――
切嗣は虚ろに青年の後ろ姿を眺めていた。
――その時、涼やかな風が吹いた。
そして声が響く。
「仮面ライダーは風都を守る者……街を泣かせるお前に仮面ライダーを名乗ることはできねぇよ」
倉庫の屋根の上、月光に照らされた人影が言葉を放つ。
その姿はまさしく怪人。しかし、その口から語られる言葉は人間の尊厳に満ちていた。
「あ……う……」
「バイクを返しにもらいに来たぜ?」
体の右半身がメタリックな緑、左半身はマットな黒。
複眼上の巨大な目とV字型の銀の触覚、そして右肩から伸びた銀のマフラー。
彼こそ、真に風都で仮面ライダーと呼ばれた人物。
数多のドーパント犯罪と戦い、数多の人々を救った風都の英雄であり、希望。