シャーレの先生は基本的に多忙だ。各自治区を飛び回り、日々生徒の為にその身を粉にして働いている。
「先生、この書類は今日まで連邦生徒会に提出ですよね。何でここに在るんですか? リン行政官に今すぐ連絡しましょうか?」
「い、いやぁそれは……」
「ん?」
「イエ、ナンデモナイデス……」
だが、それが書類を好きにサボっても良い理由に成りはしない。
シャーレの先生は基本的に高給だ。多忙を極めるその代価として、連邦生徒会から多額の給料が支払われている。
「先生、この明細書は何ですか? 『戦隊ロボット変形シリーズ 第三形態バージョン』、お値段は約10万円。……私とユウカちゃんが一体いつ購入の許可を出したのでしょうか?」
「い、いやぁそれは……」
「ん?」
「イエ、ナンデモナイデス……」
だが、それが趣味に散財をしても良い理由に成りはしない。
シャーレの先生は基本的に優秀だ。連邦生徒会長直々に指名した大人ということもあってか様々なトラブルを瞬く間に解決し、そして生徒達との間に深い信頼関係を築いている。
「先生、何で変出者の通報があった現場近くに悉く居るんですか? しかも目撃情報が山ほど出てますし。今からでもカンナちゃんに連絡しましょうか?」
「い、いやぁそれは……」
「ん?」
「イエ、ナンデモナイデス……」
だが、それが変態行為に走ってもいい理由に成りはしない。
だからこそ、連邦生徒会や自治区の代表たちは話し合いの末に先生の補佐を選出した。今までのような担当制を継続しつつも、しっかりと【シャーレ専属】とした生徒の選出を。
そうして選出されたのが私、法灯シズク。元は連邦生徒会所属の一般生徒だ。ある日突然、次の配属先がシャーレだと聞かされた時には流石に驚きを隠せなかったが、素直に配属は受け入れた。元より先生とは様々な事件などで知り合いではあったし、シャーレの仕事で関わるであろう各自治区の生徒達とも良好な関係は築けていると一方的に自負していたからだ。それにまぁ、何より上からの命令だ。キチンとした辞令があるのに加え、辞令交付の後日なのにリン行政官から直々に頭を下げられるとなれば、私も流石に断りはしない。
シャーレに配属されてからはとても賑やかな日々が続いている。仕事場であるオフィスには様々な生徒が遊びに来るし、ついでにと差し入れもしてくれる。外回りの仕事は基本的に先生が譲らないため、私は事務仕事が主になる。そうなれば古巣である連邦生徒会にも顔を出すことが多くなり、昔の仲間を懐かしみナイーブになることも無い。どこを取っても良い職場であるこの場所を離れようなど私は思いもしなかった。
そう、思いもしなかったのだ。
「先生、また新しい明細書が出てきましたね。今度は『クラブふわりん』7万円、ですか。申し開きはありますか?」
「……………………」
先生、無言の土下座を辞めてください。私がこの職場を辞めたくなってきました。
私は自分の携帯でモモトークを開き、【早瀬ユウカ】と登録された連絡先へ通話を掛けた。
シャーレはいそがしいね。