裏社会の始末屋、キヴォトスにて絆される   作:渡邊ユンカース

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リオ会長とセイアが実装されるなんて思わなかった。
声が付いてよかったねセイア、それとリオ会長はデカい幼女だった。


VS要塞都市(前編)

「あー、ようやく着いた」

 

 闇夜に甲高いブレーキ音が響き、無人列車は停車する。そして目的地に着いた途端に今まで開くことはなかった扉が開き、中からアゲハが降りる。スマホを確認してみると電波が立っておらず、恐らくジャミングがされているのだと気づいた。

 アゲハは辺りを見渡す。高層のビル群が軒並み連ねており、遠方には特段高いビルが存在していた。一見してオフィス街だと感じたが、建物の割に人気を感じない。おそらく無人都市だと判断した。

 

「ここが要塞都市エリドゥね、立派な街だ」

『長時間の乗車ご苦労様』

 

 長時間の乗車をしていたため肩と腰を叩いて調子を戻していると、どこからともなくドローンがやってきてアゲハに語りかける。

 

「おいおい、依頼主とはいえ苛酷な車内に閉じこめておいて対面じゃない挨拶だなんて。常識ないんじゃない?」

『こちらにも諸々の事情があるから許してほしいわ』

「てかさ、車窓からの景色が見れないよう細工されていたのうざいんだけど。てか禁煙ってなんだよ、貸し切りなんだから吸わせろよ」

『ミレニアムは全域禁煙よ。室内でも喫煙可能スペースは皆無よ』

「……もしや拉致られた?」

『そういうことではないわ。この場所が特定されるのを防ぎたかっただけ』

「まっ、要塞都市だから特定は避けたかったのはわかるよ。けどどうして僕を此処に?」

『キヴォトスで屈指の実力を誇る始末屋、あなたには試験を受けてもらうわ』

「試験?」

『この都市の防衛機能の検証として』

「へぇ……」

 

 防衛機能の検証、まさか自分がテストする側になるとは思っていなかったためアゲハは少し興味がわいていた。

 

『もちろん検証だから重傷を負わせることはしないと保証するわ』

「当たり前だ。けど重傷にならない程度には試すんでしょ」

『そうね。手厚い医療ケアを含む多額の報酬を了承したのだから同意とみなしたわ』

「まっ、そういう依頼だしね。少しも不満は抱いてないよ」

『そうね。依頼内容は三つのポイントを通過して、あの一番高いビルに辿り着いてもらうわ』

「なるほど」

『時間制限はなしよ』

「別にあっても構わないとも」

『一応、目標の進行状況によってこちらで調整はするわ。全ての機能を試したいもの』

「そうと決まれば気合入れていくよ。あぁ、そうそう!」

『何かしら』

「アンタの名前を聞いてないや」

『……ビッグシスターとでも呼んでちょうだい』

「はいよ。それじゃ、始めようか」

 

 アゲハは愛用の武器を手にして駆けだす。要塞都市という名の通り、多種多様な防衛機能による妨害もしくは攻撃があるかわからないからだ。

 案の定、数体の小型ロボットがどこからともなく出現して銃撃を仕掛けてきた。しかし朝飯前といったようにアゲハは銃撃を躱して、すれ違いざまにトンファーによる攻撃を叩きこむ。多少、形や素材が違うとはいえ弱点はブラックマーケットやミレニアムで使用されている機体と同じらしく撃破が容易だった。

 

「ん、地震?」

 

 突如として地面が揺れていることを察したアゲハは足を止めて周囲を見渡す。すると周囲のビル群が移動しているのを視認した。

 

「おいおい、幻覚か?」

『残念だけど違うわ」

「じゃあ何さ」

『これは対象者を要地に辿り着かせないようにする細工のひとつで都市そのものを使って迷路を作っているのよ』

「えっ、何そのバカな機能。やるにしてもメリットよりデメリットの方がかかるでしょ」

『……これが一つ目のポイントよ。頑張って頂戴』

「耳が痛くなって即切りしたな」

 

 とりあえずアゲハは大都市で構成された迷路をがむしゃらに走って脱出を図る。しかし普通の迷路なら左手の法則を使うことや規則性などに気づくことで脱出ができるが、その方法は常時変動し続ける迷路には無意味だった。

 何度も何度も曲がって直進してまた曲がって、いつまでたっても脱出できない状況にアゲハは苛立ちを覚える。

 

「ムキ―!うっざすぎだろこれ!」

『あら、どうする?効果はあると見なして解除しようと思うのだけど』

「……気に食わないけど効果ありまくり。これ遅滞戦闘や敵部隊の主力に一役買うよ」

『プロからの評価は嬉しいわ』

「だから僕も奥の手を使うことにした」

『えっ?』

 

 アゲハは息を整えた後、自身の神秘を発動させる。アゲハの神秘は稀薄、つまり自分の存在を薄くすることができるのだ。そしてそれは他者の五感だけならず、機械の類(・・・・)を誤魔化すのにも有効であった。

 

『ッ!?消えた!?』

 

 どうやら最新機器にも有効だったらしくほくそ笑むアゲハ、音も気配も出さずに迷路脱出に向けて動き出した。システムもアゲハを認識していないのか変動することはなく、左手の法則で難なくゴールまで辿り着いた。某アトラクション番組のように、丁寧に脱出を知らせるボタンが用意していたので叩きつけるように押す。

 

「はい、クリア」

『いつの間にゴール…あなたがハッキングした形跡もないし……』

「僕には強固なセキュリティを突破できるノウハウも機械もないよ。単純に神秘を使っただけ」

『神秘?』

「この際だから言うけど僕の神秘は自身の存在を稀薄化できる。すなわち存在を消せる」

『対象の姿、体温、影を機械が把握できないほどに消せば動かなくなるってことね』

「そういうこと。ちなみに機械よりも人の目を誤魔化す方が簡単」

『流石ね』

「自慢だけどゲヘナの風紀委員長にも有効でね。五感だけじゃ僕は捉えられないよ」

『なるほど、強力な神秘ね。小休憩を挟んだ後に次のポイントに移動してもらえるかしら』

「あいよ」

『今度はあなたの神秘が通じると思わないで』

 

 自信満々に言うビッグシスターに疑念を抱くアゲハ、それほど強力な防衛機能が待ち望んでいるのだろう。アゲハとしても自分がどこまでこなせるか興味がわいていた。

 そうこうしているうちに第二ポイントに差し迫ってきた。百メートル先には大きな銅像らしき物体があり、都市のモニュメントだと認識した。しかしそれは大きな間違いだった。

 

「なっ!?」

 

 突如としてモニュメントから二発の砲弾が発射されてアゲハに迫る。奇襲ともいえる攻撃を間一髪で躱して、爆風の対処は近くにあった看板で防いだ。

 爆炎で一瞬ではあるが正体が鮮明に現れた。多数の手腕に武器を取り付けと無限軌道式の駆動を持つ、如何にもロボットという兵器だった。

 

「な、なるほど。あれが第二のポイントってわけだ」

『そうよ。あなたにはこの戦闘用ロボット、通称アヴァンギャルド君の相手をしてもらうわ』

「えっ、ダッサ」

『何が?』

「武装はいいよ、問題なのはデザインと名前。なんでガキが考えたような構想になるんだ」

『……見た目と名前は性能に関係ないわ』

「傷ついてんじゃねぇ!僕は正直な意見を述べただけ!」

『早く始めてちょうだい』

「都合が悪くなると話を飛ばそうとするな!やるけど!」

 

 ビッグシスターのデザインセンスに苦言を呈するアゲハだが、その裏でアヴァンギャルド君の性能はあの一撃で優秀だと見抜いていた。なぜならアゲハが接近する瞬間まで一切の駆動音と動く素振りを見せてはおらず、さらに有効射程距離と認識した時点で広範囲かつ高威力のバズーカ攻撃を行ってきたのだ。アゲハの回避能力と機転を利かせた障害物を用いた爆風の防御が無ければ確実に負傷していた。広範囲の攻撃はアゲハにとって不得手な部類、気を引き締めなければならないとアゲハは覚悟する。

 

「現役の始末屋と理論で生まれたロボット、どっちが強いかやり合おうか」

 

 初手のバズーカ攻撃と同様の広範囲高威力の攻撃を受けないようアゲハは距離を詰める。近距離戦に持ち込めばバズーカ攻撃は自機の被害を考慮して使えなくなると考えたのだ。

 アヴァンギャルド君は着々と距離を詰めてくるアゲハに対して二本の左腕からガトリング攻撃とアサルトライフル攻撃を行う。アヴァンギャルド君のサイズになると装備されている銃器の口径は大口径、そのため一発の威力が大きい。ヒナほどではないものの被弾すれば確実に怯んでしまう程度には痛い。

 

「弾幕が激しすぎるって!」

 

 基本的には回避に専念し、回避が不可能な時はトンファーで無理やり銃弾を受け流す。

 しかしアヴァンギャルド君の学習速度は速く、アゲハが次に来るであろう地点を予測して偏差射撃を行ってくるのだ。なんとかランダム軌道で最大限予測させないように努めているが、それでも攻撃を受け流さなければならない時が多々あった。

 

「うぐっ!?」

 

 苛烈な銃撃はアゲハの体力と思考力を減らし、ついに一発が左足に命中した。思わず転倒して地面に伏してしまう。

 

『これで決着ね』

「まだまだァ!」

 

 器用にも二本のトンファーを全力で地面にぶつけて体を浮かせて立ち上がって走り出す。その刹那、先程いた場所が多数の弾痕まみれになった。

 

『ありえない機転ね』

「こんなことができないと裏社会で死ぬんでね!」

 

 驚嘆するビッグシスターをよそに悪態をつくアゲハ、そして苛烈な弾幕を切り抜けてようやくアヴァンギャルド君の足元まで辿り着いた。アゲハが近づくたびに距離を取るという小賢しい行動をしていたアヴァンギャルド君だが、後ろのビルが後退を阻止していた。

 跳躍してアヴァンギャルド君の顔面に一撃を加えようとしたアゲハだったが、右腕のシールドがアゲハを叩き落とす。アゲハはビターンと効果音が適しているほど地面に伸びた。

 

「ぐえっ!?」

『もちろん対接近戦用のプログラムも組み込んでいるわ』

「なんでも載せてんじゃねえ!お子様ランチか!」

『全ての事態に対応するためよ。アヴァンギャルド君を笑ったこと、覚悟して』

「根に持つな!」

 

 アヴァンギャルド君によるシールドの横薙ぎ攻撃をアゲハはローリングで回避し、アヴァンギャルド君に張り付いた。当然、アヴァンギャルド君は体を激しく動かして振り落とそうとする。

 

「さて、どうするか」

 

 振り落とされまいと必死にしがみ付いて抵抗しながらアゲハは思考する。アヴァンギャルド君の体は金属製、つまりアゲハの持ちうる火力では攻めあぐねることは必至なのだ。そもそもアゲハが得意とする戦闘は対人戦、しかも奇襲や暗殺という部類だ。鋼鉄の体と強力な武装を持つ大型の敵に対して相性が極めて悪い。

 そうこうしているうちにアヴァンギャルド君はあろうことかバズーカ砲を近くに撃ち、爆風でアゲハを吹き飛ばした。空中で態勢を立て直して着地するアゲハ、積み重なる攻撃に疲労が蓄積されていた。

 

「認めるよ。アンタが作ったロボット、マジで強い」

『あら素直に褒めてくれるのね』

「センス諸々は保留にするけど、事実だしね」

『……そうね』

「だから僕も奥の手を使うことにした」

『何ですって?』

「さあご覧あれ。僕の必殺技を」

 

 アゲハは息を整えた後に両手のトンファーに神秘を流し込む。自身のヘイローがモザイクにかけられたかのように不鮮明になっていく。

 

『……初めて見る現象ね』

「僕だけの技だから。じゃあ行こうか」

『消えたっ!?』

 

 存在も極限まで希薄化させて存在を消し、アヴァンギャルド君に迫る。アヴァンギャルド君は頭を振り、備わった認識機能を最大限活用してもアゲハを見つけることができない。一歩一歩、音を立てずに近づくアゲハは双方のトンファーをアヴァンギャルド君に打つ。

 アヴァンギャルド君はトンファーによる衝撃からアゲハを認識して右腕シールドによる薙ぎ払いを行おうと右腕を挙げた。しかしピタリと右腕を挙げた状態で静止して、数秒後に目の照明が消灯した。

 

「効果あり、だ」

『アヴァンギャルド君のシステムが強制シャットダウンした!?一体、何を!?』

「僕の神秘は稀薄。この神秘は人や物体に流し込んで破壊することができる」

『稀薄させるだけなら存在が稀薄になるだけで破壊はできないはずよ……!』

「氷点下状態でガラスにお湯をかけるとガラスは割れる。その原因は?」

『温度の温度差によるものね。……まさかそれが』

「温度を神秘に置き換えたのが今の技ってこと」

『つまり流し込まれた神秘が元々ある存在に影響して壊れるって理屈なのね』

「正解。まっ、黒くてひび割れた男に教わるまで理屈なんざ知らずに使っていたけど」

 

 疲労困憊といったようにアヴァンギャルド君に寄りかかるアゲハ。心なしか息遣いが荒く、力がなさげに項垂れていた。

 

『大丈夫かしら?』

「こんなにデカブツ相手に神秘を流したのは初めてなんだ。流石に、キツイ」

『あなたの体力が回復しきるまで休息としましょう』

「そいつはありがたい、大丈夫になったら連絡するよ。それとマスクを外すからカメラの一切切っといて」

『わかったわ』

「もし破ったらアンタの枕横に立ってアレ、お見舞いするから」

『……』

 

 ビッグシスターが遠隔操作していたドローンがアゲハから離れ、アゲハは独りになった。

 マスクとフードを外し、汗だくになった顔をハンカチで拭く。流石のアゲハでもあの戦闘は体力を大幅に消費していたのだ。コートを脱いで身軽になったアゲハはガサゴソとタバコを取り出し、火を点けようとした。

 

「わっ!?」

 

 しかしその瞬間、何らかの物体が地面に着地したのか着磁時の衝撃と風圧でタバコが吹き飛んだ。あまりの事態にアゲハはマスクを被る暇もなく、トンファーを構える。

 

「アビ・エシェフ、移行。戦闘を始めます」

 

 土煙から現れたのはレオタード状のインナーを着てパワードスーツを装着した少女だった。

 




ネルが理解ある彼氏君で驚いた。
結局、C&Cの推しキャラはネルになるんですよね。
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