裏社会の始末屋、キヴォトスにて絆される   作:渡邊ユンカース

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この小説のヒロインは作者もわかりません。
基本的な本筋は決めているもののヒロインはぶれぶれなので。


VS要塞都市(後編)

 

「えぇ……」

 

 アゲハはアバンギャルド君との戦闘で疲弊した体を癒そうとした矢先、突如として天空から降ってきたパワードスーツの少女に唖然としていた。両腕両脚に備えられた頑強なパワードスーツはまだしも、何故か本体部分の姿がレオタード状のインナーである。事情を知らない者が見れば完全に痴女である。

 

「さて、チャレンジャーは何処に……」

「……逃げるか」

「むっ、どうして一般人が?」

「げっ」

 

 完全に驚愕していて初動が遅れたアゲハは逃げようにも逃げられなかった。今のアゲハの状態は完全に武装解除した無防備状態、さらに一服するためにマスクも外している。完全に身バレ確実ルートだ。

 

「そこの人、どうしてこの都市に?」

「い、いやぁ。そのぉ……」

 

 アゲハの脳裏には始末ルートが浮かんでいた。生憎だが記憶忘却剤といった便利な道具はこの世にない。なのでぶん殴って記憶喪失にさせるか、殺害するか、一般人としてやり過ごすかの三択が浮かんでいた。

 流石のアゲハも招待された都市でビッグシスターの関係者である可能性がある少女に暴力を振るうことに抵抗があった。だからここは言いくるめることにした。

 

「わ、わあ!実は僕迷子なんです!」

「そうなんですか。ちなみにこのアヴァンギャルド君はあなたが?」

「な訳ないじゃないですかー!見て見て、この華奢な体じゃ不良生徒にも勝てませんよ!」

「確かに貧弱そうですね」

「……はい!」

 

 白々しい嘘をついたアゲハだが少女からの刺々しい同意に青筋を立てていた。脅威ではないと認識したのか少女は武装を解除して薄着姿のままアゲハに近づいた。

 

「それでどのようにこの都市に?」

「……実はホームレスなんです。寝床を求めていたら無人列車があって、寝ていたら着いちゃったんです!」

「なるほど、つまりあなたは若くしてホームレスになった可哀想な少年ということですね」

「そ、そうなんですよ!」

 

 青筋以外に頬も痙攣していた。一度でもいいからぶん殴ってやろうとアゲハは思う。

 

「では私が出口まで案内してあげましょう」

「わ、わあ!助かるなぁ!」

「あなたのお名前は?」

「アゲハって言います!あなたは?」

「私はC&C所属、コールサインゼロフォー。飛鳥馬トキです」

 

 危ねえええ!!殴らなくてよかったあああ!!

 完全にビッグシスターの関係であることがわかり、暴行をしなくて安堵したアゲハ。恐らくはトキこそ第三ポイントで待ち構える刺客であることが先程の言動から察することができた。

 

「今は違うお客様がいらしているというのに。……けど連絡がないから大丈夫ですね」

「道だけ教えてくれたら独りで帰るよ!」

「待ってください。あなたみたいな年下では迷うのは確実です」

「大丈夫!帰れるから!」

「いいえ、見るからにケガもされている様子。騒動に巻き込まれましたね」

「違うよ!元々だよ!」

「……栄養不足でケガの治りが遅いということですね。それはいけませんね、保護してタワーで処置を始めます」

「ちょ、ちょっと勝手に捕まえようとしないでって!」

 

 トキに触られる前にアゲハはひらりと躱す。もう一度、トキは手を伸ばすがそれも躱される。伸ばして躱され、伸ばして躱されの往復が続く。

 

「ほら!こんなに元気じゃないか!」

「っ!ダメです。逃げないでください」

「なんか足技かけて寝技に持ち込もうとしないでくれるかなぁ!」

「大人しく!捕まってください!」

「ふざけんな!」

 

 お互いに近接戦が繰り広げられる状況、第三者が見たら疑問に思うに違いない。

 謎の攻防にアゲハとトキは息を切らしていた。

 

「大丈夫、ですから。何も解剖や実験するわけでもないので」

「余計なこと言うな!……無言で捕まえようとするな!」

「おや、これは……」

「あっ」

 

 先程の回避でアゲハのポケットからタバコ箱がポロリと落ちる。それに気づいたトキは拾い上げてジッと凝視する。

 

「キヴォトスでは未成年者の喫煙は違法です。いけませんね、これはいけない」

「……返してくれない?」

「ダメです」

「お金あげるから」

「賄賂を渡されても渡しません」

「どうすれば返してくれるのさ」

「返すなんて選択肢、あなたにあげません」

 

 トキはぐしゃりとタバコ箱を握りつぶし、追撃として空中に放り投げた後に自身の拳銃で撃ちぬいた。タバコの葉が辺りに散布された。

 

「……そうかい。わかったよ」

「わかりましたか。なら大人しく保護を――――」

「アンタは僕に倒されるべきだ」

「ッ!?」

 

 アゲハは一気に間合いを詰めてトキへ周り蹴りを放つ。突然の攻撃にトキは反応することができずに吹き飛ばされた。

 トキとの距離ができるとアゲハは小型スモークグレネードを展開して煙幕を作る。そして急いでマスクとコートを拾い装着してアゲハは完全武装を整えた。

 

「お遊びは終わりだ。やろうか」

「……まさか」

「僕の素顔を見られたとなったら流石に本気でやる」

「貧相な体で私を倒せるとでも?」

「やってみなよ」

「アビ・エシェフ、戦闘モード」

 

 完全にトキを記憶喪失になるまで殴るのが確定した。

 アヴァンギャルド君の戦闘で癒えていないとはいえアゲハにとって得意な対人戦、勝機の目はいくらもあった。

 

「いきます」

 

 トキは背面に装着されている二基のブースターを吹かして高速で迫る。対してアゲハは迎撃は不可能と判断して回避に努める。

 しかしすれ違った刹那、ガトリング砲が備え付けられた右腕を向けられる。

 

「ちっ」

「捌かれましたか」

 

 アゲハはトンファーを高速で回して銃弾を受け流して回避に成功する。トキはこの時点でアゲハに近接戦闘をさせてはならないと判断して距離を取って射撃に努める。

 

「まあそうなるよね!」

「銃弾を受け流す芸当の持ち主に近接戦をするのは愚策ですから」

「正論!だけど攻略方法はいくつもある!」

「なっ!」

 

 射撃の合間を縫ってアゲハは閃光手榴弾を破裂させて目潰し攻撃を行う。ある程度ではあるがトキのバイザーには閃光を抑える機能がある。しかしブラックマーケットで仕入れた魔改造閃光手榴弾のため、一瞬だけトキは目を閉じてしまった。

 その間にアゲハはトキに接近、二本のトンファーによる連撃をトキに与える。

 

「まずは数撃」

「ぐっ!?」

 

 後手にまわったトキはブースターを逆噴射させてアゲハを吹き飛ばすと同時に後退する。

 

『ちょっと何が起きているの!?』

「マム、この人を倒します」

『話が急展開ね……』

「おい、ビッグシスター。こいつが第三のポイントだね」

「……パワードスーツを着用したC&Cのトキ。優秀な私のボディガードよ」

「へぇ。こんなじゃじゃ馬。よく躾けられたね」

『?確かに言うことは聞かない時もあるけど素直に奉仕してくれるわよ』

「テメェ、主にだけ従順になるな!」

「メイドなので当然です」

「ともかく、対戦よろしく」

「イエス、マム」

「まあこれも依頼だ。遠慮なく潰してやる」

 

 トキの銃声が皮切りに戦闘が再開される。アゲハが距離を詰めようにもトキは後退して距離を保つ。接近されてもアビ・エシェフが自動的に有効な位置へ射撃を指示し、トキはその位置に射撃を行う。すると燃料タンクが爆発したり、配管パイプから熱風が噴き出したり、消火栓から水が噴き出したりと明らかにアゲハに対してダメージを与えていた。

 対してアゲハはあの連撃以降、トキに有効打を与えることができず攻めあぐねていた。

 

「接近戦ばかりで射撃をしないのですか?」

「残念だけど銃器は信頼していないんだ」

「もしかして射撃が下手くそなのですね。クスクス」

「ボコボコにしてやる」

「おっと」

 

 射撃の不得手を煽られたアゲハは怒り心頭といった様子で近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばす。無論、トキは難なく回避する。

 

「避けたな」

「ッ!?」

 

 突然、避けたはずのゴミ箱が爆発して爆風と爆炎がトキを包み込む。

 十秒程度の会話の間にアゲハはゴミ箱に手榴弾を入れたのだ。

 

「小癪な細工を」

「そうでもなきゃ近づけないからさ」

「そんなっ!?」

「猛烈な一撃、喰らいな」

「きゃっ!?」

 

 アゲハが左腕のトンファーでトキの腹部を殴打すると同時にその先頭部を爆発させる。殴打と爆発の威力が直撃したトキは衝撃でビルの壁面に突っ込んだ。

 アゲハも爆発時の衝撃が強かったのか左手を振って痛そうにしている。地面には柄の部分しか残っていないトンファーの残骸があった。

 

「あーあー、流石に負荷をかけ過ぎて壊れちゃったよ」

『何、今の爆発は……?』

「僕は硬い敵にはよく苦戦するんだ。だから神秘を入れずに破壊する方法、それがトンファーで殴った瞬間に起爆させるんだ」

『愚直なやり方ね。まるで人間パイルバンカーね』

「手順は一緒。問題なのは僕も痛いし、何よりトンファーの耐久が激しく消耗すること」

 

 実は壊れたトンファーはヒナ戦で一度爆発させたことがあるため耐久が減っていたのだ。さらにアヴァンギャルド君やトキの射撃を受け流していたこともあり、もう寿命であった。

 他愛ないやり取りをしていると穴の空いた壁面からトキが現れる。爆発でインナーの所々に穴が開き、端正な顔から出血していた。 

 

「まだ、終わってはいませんよ」

「おっ。まだやるんだ」

「アビ・エシェフも半壊していないので」

『やめなさいトキ。始末屋の攻撃はアビ・エシェフではなくあなたの体を狙っているのよ』

「ですが受領したアビ・エシェフの能力を最大限活かしきれてはいません……!」

「……危なくなったらこっちで強制終了させるわ。好きにしてちょうだい」

「ありがとうございます」

「いいよ。おいで、クソガキ」

「望むところです」

 

 トキは背部から二本の大砲を向ける。小型ミサイル攻撃ならこの距離でも回避できるとアゲハは判断した。

 

「発射」

「ッ!?まずいっ!!」

 

 アゲハの慢心からなる判断は間違いだった。何故なら大砲から射出されたのは砲弾やミサイルでもなく、青色の閃光を放つビームだったのだ。砲弾以上に高速な攻撃はあっという間にアゲハに迫り、直撃した。

 

「ぐああああああ!!」

 

 高温による激痛と衝撃がアゲハを襲う。長年、始末屋として活躍しているアゲハですらビームの直撃は初めてだったのだ。この場所から離れないといけないと本能で察したアゲハは激痛の中でなんとかビームから脱出し、吹き飛ばされた先の植え込みに突っ込んだ。

 コートとマスクはは耐熱使用ではあるものの激しい損傷により使い物にはならなかった。さらに仕込んでいた手榴弾もビームを受けた際に爆発を起こして消失していた。つまりアゲハは手榴弾の爆発もゼロ距離で受けていたのだ。

 

「お、おえっ!?ごほ、がはっ!?」

 

 内臓に喰らった損傷は大きく、マスクを外して嘔吐後に喀血した。

 

「さ、流石に舐めすぎていた。これは、二度も受けれない」

『大丈夫かしら』

「そう見えるかな?」

『っ!?検証は終了して二人の治療を行うわ』

「……ふざけるな!依頼を完遂するのが一流の仕事人なんだ!」

『けどあなたの具合を見ると内臓系にも――――』

「それでも!僕はやり遂げなきゃならない!」

『ッ!?』

「やり遂げずに生きるぐらいなら!僕はやり遂げてから死ぬね!」

 

 自己を奮起してふらつきながらも立ち上がるアゲハ。先程の攻撃で右腕のトンファーと足に隠したナイフしか武装はないが、それでもアゲハは戦闘を継続するつもりだった。

 一方でトキもビームの反動で少なからず疲弊してはいるが戦闘意欲は落ちてはいなかった。普段は飄々としているくせに仕事は完遂する完璧主義のアゲハとトキはまさに似た者同士だった。

 

「悪いね。アンタを見くびっていた」

「いえいえ、あなたを貧相と言ったのは修正しましょう」

「なら対等に殴り合おうか」

「いいでしょう。お互い、全身全霊でやり合いましょう」

 

 トキはガトリング砲の残弾を確認すると、残りは両腕とも三十発程度だった。ランダムな動きで翻弄してくるアゲハが相手だと無駄弾が多かったのだ。しかしビーム砲は未だに健在、残されたガトリング砲の弾数でも余裕はある。

 アゲハはどのように攻めるか悩んでいた。目くらましといえる閃光手榴弾とスモークグレネードも尽きているが神秘を使って奇襲を仕掛ける体力もある。少し考えた後にとある名案を思いついた。

 

「よし、逃げる」

「えっ」

 

 意外なことにアゲハがとった行動は逃走だった。アゲハは踵を返して建物内へと潜り込んだ。

 

「……呆れました。あれほど大口を叩いたにも関わらず逃走とは

 

 苛立ちを募らせながらトキは再びビーム砲の照準をアゲハが逃げ込んだ建物へ合わせる。そして数秒のチャージの後に眩い閃光を射出した。

 高威力のビームを受けたアゲハが潜んだ周辺の建物は轟音と土煙を立てて崩壊する。建物の崩落で伸びているアゲハをとりあえず救助すればいいとトキは考えていた。事実、そのつもりでビームを撃ったのだ。

 あまりの崩壊の規模に土煙がトキの方まで伸びていく。

 

「……レーダーと集音器から人影は見えず。完全に倒しました」

『トキ、やりすぎではなくて?』

「いいえ、あのぐらいまでやらないといけないと判断したまでです」

『……救命ロボットを待機させておくわね』

「それでは救助を――――」

 

 崩壊した現場に足を踏み入れた数秒後、トキは後頭部に強い衝撃と爆音を感じる。何が起きたのかを理解する前にガツンと地面に頭を打ちつけた。

 

「うッ!?な、何が」

 

 地面に伏した状態のトキに何者(・・)かが全体重で体を抑えて彼女の首に腕を回す寝技をかける。

 無論、その正体は―――――

 

「どうしてあなたが……!」

「そりゃあ建物内に居たからだろ」

 

 そう、ビルの崩落に巻きこまれたと思っていたアゲハだった。アゲハはビルの崩落でできた土煙と瓦礫を活用して潜伏し、一瞬の隙をついて奇襲をかけたのだ。当然、細心の注意を払って神秘も使っている。

 すぐさまアビ・エシェフのパワーで寝技を解除しようとトキは操作するが無反応だった。なんとか体を動かして抵抗するトキだが余計に自身の首を絞めつける。

 

「残念だけど配線はこちらで切らせてもらった」

「いつの間に……!」

「知っているか。優れた暗殺者は一秒あれば五カ所の箇所に刺せるんだ」

「つまりワイヤーを切った後にあの爆発トンファーで……!」

「……失望は油断を誘う、感情や矜持を揺らす手はこっち(裏社会)で常識だ」

「い、息が―――」

「はい、おやすみ」

 

 トキを締め落としたアゲハは立ち上がり、肩を回す。流石の連戦にアゲハも疲労困憊の様子だ。そんなアゲハのもとにビッグシスターが操縦するドローンがやってきた。

 

『……生体デバイスの反応からわかるけど生きているのよね』

「当たり前じゃん、そういう依頼でもないし」

『彼女にはまだやってほしいことがあるから安心したわ』

「それに殺したらアンタが要塞都市を活用して僕を殺しにくるでしょ」

『……』

「従者とはいえ身内は身内だ。その道理は普通だよ、何も怒っちゃいない」

 

 身内がやられたらやり返す、復讐はありとあらゆるところで常識的に行われている。感情を持つ人間なら当然のことだ。

 アゲハはたまたま存在していたオフィスチェアーに座り、一息ついた。

 

『本当はタワーでの決戦だったのだけど』

「アクシデントだ。仕方ない」

『それでどうかしら要塞都市の評価は』

「端的に言うと強力。防衛機能は申し分ない」

『当然の評価ね』

「だけど僕みたいな神秘を持つ相手と対峙すれば機能は半減するから過信はしないで」

『えぇ。演算システムと感知機能の強化に努めるわ』

「にしたってアンタ、一体何と戦おうとしているんだ」

『それは…言えないわ……』

「ミレニアムが他の学園と戦争を起こそうにも兵力が不向き。学園自体が情報戦と防衛戦に全振りしている」

『確かにロボットや高価なパワードスーツだけだと攻勢には不利ね。電力の供給と修理維持が持たないもの』

「さらにミレニアムの校風は温厚、研究者やオタク気質が多いから戦争なんて論外だ」

『そこまで観察しているのね』

「ゲヘナとトリニティを見てよ。血気盛んだから」

 

 ゲヘナとトリニティの戦争はいつ起きてもおかしくはなかった。現に両校の関係の溝は極めて深い。ちょっとした火種を与えれば爆発する火薬庫同然だ。

 

「よって導き出されるのは宇宙人、もしくは異常存在(・・・・)だ」

『ッ!?』

「対人戦にしてはビーム砲なんて火力が高すぎて不向きだし、アヴァンギャルド君もデカすぎる」

『あれは合理性と機能美を追求した結果よ。前衛的でしょ』

それは(アヴァンギャルド君)話が脱線するから置いとくよ」

『むっ』

「つまり対大型だ。根拠としてアビドスっていう砂漠地帯にバカデカい大型の怪物の発見報告がある」

『……正解よ。素晴らしい洞察力ね』

「でもどうしてC&Cやヴェリタス含む生徒を動員しないのさ、調月リオ(・・・・)会長」

 

 トキの反応や要塞都市の建築思想から大方、ビッグシスターの正体に気づいていた。その正体はミレニアムの現会長である調月リオだ。隠す必要はないとリオはドローンから自身の姿を投影する。

 

『そう、私が今回の依頼者である調月リオよ』

「だよね、ここまでできる権力の持ち主なんてアンタしかいない。建築にいくらかかってんのさ」

『それは秘密だけど多額とだけ言うわ』

「ふーん、よく予算を承諾してくれたね」

『……これは皆を守るための必要経費よ』

「完全な横領じゃねぇか!……まっ、僕に深入りしないのなら何もしないよ」

『深入りって?』

「例えば僕の正体を探ろうとしたり、排除にかかったりだよ。した場合は、わかっているよね(・・・・・・・・)

『あなたがミレニアムの敵にならない限りしないわ』

 

 念のためアゲハはリオを脅す。基本的に依頼主とは依頼以外で関与したくないのだ。

 

「ならいいよ。それとトキに記憶消去剤みたいなやつ飲ませてよ」

『記憶消去剤?そんな非現実的なものあるわけないじゃない』

「……まあそうだよね。まあトキにも強くッ、つーよーく言っておいて!」

『わかったわ』

「これにて依頼は完遂。もう帰るから」

『待ってちょうだい。帰りはこちらで用意した乗り物で列車まで送るわ』

「それはありがたい」

 

 アゲハはトキをさらなる崩落の可能性のあるビルから引っ張り出して路上に寝かせる。一応ではあるもののトキが体調を崩さないようにボロボロになったコートを毛布代わりとして被せた。

 数分後、医療用の無人トラックが来てトキを車内に運んだ後どこかへ走っていった。間もなくして一台の奇妙な形をした乗り物が無人運転でやってきた。その外見はまさにエビとムカデを足して割った感じだ。満面の笑みを浮かべてリオは言った。

 

『私が開発したアノマロカリス君よ』

「ふざけんじゃねぇ!アンタの造形センスおかしいわ!」

『……けど安全な高速走行も可能で搭乗者を守る機能も搭載済みよ』

「もういい!歩いて帰る!」

『待ってちょうだい。私とトキ以外に搭乗者がいないから感想を聞きたいの』

「知るか!会長なんだからそこら辺の生徒を捕まえて聞けばいいだろう!」

 

 かくして要塞都市エリドゥの検証依頼は幕を閉じた。多額の報酬を貰えてアゲハはウハウハだったがオーダーメイド製のコートやトンファーの出費が凄まじく、一瞬にして大半を失った。残ったお金で美味しい料理を食べようとブラックマーケットで散策をしているとさらなる事件に巻き込まれることになるのは別のお話。

 余談だが突如としてミレニアム学園の校庭に開発者不明のエビ型バイクが出現、近くに置かれていたアンケートから評価ができた。結果として機能美は抜群の評価だが、投票者全員がデザインの評価が0もしくはマイナスだった。リオはちょっと落ち込んだ。

 




後日、元気になったトキはアゲハから貰った(借りパク)したコートを丁寧に縫い合わせ補修して保管しています。そして買い物や依頼ついでにブラックマーケットに足を運ぶ機会が増えたという。

??「非常にヤニ臭くて洗濯の有無を疑います。よくこれで仕事できましたね」
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