裏社会の始末屋、キヴォトスにて絆される   作:渡邊ユンカース

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えっ?いきなりネームドにオリ主を絡ませるのは早急すぎないって?
便利屋68の設定が便利すぎてどこにでも出せちゃうのが悪い。
それと不定期更新になるかもですが朝七時更新を心掛けます。


便利屋と始末屋(前編)

 ブラックマーケットのとあるアパートの一室にて、始末屋のアゲハは寝タバコをしながら気だるげにスマホをいじる。防弾防水仕様のスマホは厚く大きいため、一見すると手からこぼれそうになっている。

 

「あー、今日も暇だ」

 

 始末屋という仕事の都合上、依頼数が少ないため暇を持て余す日が多々ある。これといった趣味を持たないアゲハはタバコを吸いながら部屋でだらだらするのが日課となっていた。キッチンはあるのだが自炊せず、また最低限の掃除しかしないため部屋はゴミでまみれていた。非常に自堕落な人間だ。

 今日もいつもと変わらない日を過ごすのだと思った矢先、手にしていたスマホに着信が入る。すぐさまボイスチェンジャーと位置情報を撹乱させるアプリを起動させ、着信に出る。

 

「はい、こちら始末屋。要件を」

『キミが始末屋か。依頼を頼みたい』

「依頼?この番号にかけてくるってことはわかってんだよね」

『も、もちろんだとも。私は怒犬組の組長で抗争を支援してもらい』

「ゲヘナのところのヤクザか。にしてもヤクザ間の抗争に僕を使うだなんて甘く見られたもんだ」

『もちろん大金をはずむ!それにプランもこちらで用意する!』

「……その焦りようだと火急の要件らしいね。いいよ、引き受けるとも」

 

 アゲハ自体、金には困っていない。だけど暇を持て余している状況は芳しくないと感じていたため、本来なら引き受けないであろう依頼を了承した。もっとも金額と気分次第で何でもやるが。

 

『本当か!』

「まあプラン代は用意してくれたプランによってはチャラにしてやる。だから前金は300万クレジット」

『前金でそんなに取るのか!?』

「その代わり絶対の成功を保証してやるよ。要件は敵のトップをぶっつぶせばいいんでしょ」

『ま、まあそうだが……』

「それで日にちは?」

『明後日になるな』

「……随分と近いな。きちんと当日までに前金を準備しておきなよ」

 

 アゲハはそう告げるとプツンと電話を切る。

 パーカーに短パンというラフな格好でむくりと立ち上がると通販サイトで購入した煙幕弾と閃光弾をそれぞれ取り出す。そして始末屋の仕事服として愛用している深緑色のコートの裏地ポケットに入れた。コートの隠しポケットには様々な状況に対応するための道具があり、縄やピッキング道具や懐中電灯が用意されている。なお拳銃の類は一切なく、理由として単純にアゲハの射撃技術が皆無なだけだった。そのため銃弾飛び交うキヴォトスにおいて近接武器を操る始末屋は異質な存在だった。

 ある程度の準備を終えたアゲハはスポーツバッグにコートを入れて、自身の武器であるトンファーと太腿に取り付ける用の軍用ナイフの手入れに入る。このトンファーは非常に頑丈なものでできており、バズーカや対物ライフルの威力に耐えることができる逸品だ。軍用ナイフの方は一般的なものであるが、缶切りや鉄条網の破壊といった機能を携えている。

 

「よし、準備終わり。……寝よ」

 

 一通りの準備を終えたアゲハが次にする行為、それは昼寝だった。ジュッとタバコを灰皿に押し付けた後に、スヤスヤと寝息を立てて夢の世界へと堕ちていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「遅いわね……」

「本当に来るのかなアルちゃん」

「も、もし罠だったらどうしましょう!と、とりあえず燃やしましょうか……?」

「ハルカまだ早いよ」

「本当に来るんだ!だから安心して待っていてくれ!」

 

 怒犬組組長の一室には組長とアウトローとして売名中の便利屋68のメンバーがそろっていた。始末屋と便利屋68によるプランの照合のため電話でのやり取りは行えず、直接会うことになっていた。

 顧客とのやり取りはある程度経験していたアルたちであったが、顧客と一緒にいる空間で待つ気まずさには慣れていなかった。アルと組長は本当に来るのか不安になってダラダラ冷や汗を流していた。

 

「こんにちはー、始末屋でーす」

 

 そんな最悪な空気の中、アゲハは20分以上遅刻した上に扉を破壊しない程度に蹴り飛ばすという無礼すぎる登場をする。しかもそれが依頼人がいる部屋でやったものだから相当なものだ。

 あまりに衝撃的な登場をしたため周囲の目はアゲハに集まっていた。

 

「遅いぞ!てっきり来ないかと思ったぞ!」

「悪いね。時間通りに来たら罠にハマったことがあって」

「まあ良い」

「それはどうも。で、彼女らがプランにあった陽動組ね」

 

 アゲハはちらりと目を向ける。便利屋68のメンバーは呆気に取られていたが、うち一人がこちらを鋭い眼差しで睨んでいた。

 

「始末屋……!」

「もしかして僕のこと知っている感じ?」

「カヨコ、この人知ってるの?てか始末屋って何よ?」

「キヴォトスで屈指の成功率を誇る裏社会の人間……!」

「ちょっとそれ本当なの?見た感じそんな印象ないけど」

「飄々とした態度に騙されると痛い目見るよ社長。大金を払えば何でもする危険人物なんだから」

「噂では知っていたけど実在するのね……」

「まっ、邪魔をしない限り何もしないさ。――――だからホルスターに手をかけんなよ、お嬢ちゃん」

 

 飄々とした態度から一転して刃の如き眼光でカヨコを睨んだ。素手であったとしてもアゲハは近距離戦闘に慣れているため、ホルスターから拳銃を抜いて安全装置を解除してからの発砲という手順のあるカヨコが間合いでは不利だった。カヨコ自身もそれに気づいており、双方が拮抗した状況が生まれていた。

 険悪で沈黙に満ちた空間では一秒、また一秒と時間が過ぎる。組長とアルたちにとってそれは永久のようにも感じた。先程の冷や汗とは違った嫌な汗が流れる。

 

「そこまでよ、二人とも。いくら始末屋が危険人物だったとしても今は仲間、仲間同士で争うのは愚行よ」

「そうとも!それにここは私の部屋だ!勝手な乱闘は許さないぞ!」

 

 何とか一触即発の空気を打破するため便利屋68の社長であるアルが行動する。それに便乗するように組長が釘をさす。

 

「……ごめん社長」

「いいのよ。始末屋、あなたの言葉信じるからね」

「……忠告するけど、信じるって言葉使うとロクな目に合わないから気をつけな」

「私は信じたい時に信じるからいいの」

「あんた裏社会に向いてないよ、真っ当に生きな」

「うぐっ」

 

 どこか思い当たる節があるのかアルは苦虫を嚙み潰したような顔をした。実際、アルは混沌と自由が蔓延するゲヘナ生徒とは思えないほど善性に満ちた人物であった。

 アゲハは用意された椅子に座ることなく、扉に寄りかかる。

 

「それじゃ組長、説明よろしく」

「うむっ、プランの概要を説明するぞ」

「あっ、ホワイトボートうちにも置きたいわね」

「我々と敵対している雷猫組は武力において上で、奴らのアジトの警護は固い。そのため便利屋と組員で陽動をかける」

「だいたい組員はどのくらいいるのかしら」

「10人程度だ」

「待て。10人しか組員いないのに抗争を始めたのか」

「仕方がないだろ!先日、多くの組員がカイザーPMCに引き抜かれたんだ!」

「こんな時期にヘッドハンティングねぇ。いいや、続けて」

 

 なぜこの時期にヘッドハンティングが起きたのか疑問を抱くか些細な問題だと見なしてアゲハは続行を促す。

 

「……陽動部隊は派手にやってくれ。武器にかかる費用はこちらが半分負担する」

「それじゃド派手にやっちゃおっか!ドカーンと!」

「が、頑張ります!」

「そして警護が手薄になったら始末屋が隙を見計らってアジトに侵入。そして組長を仕留める算段だ」

「まあ典型的な戦法だが悪くない。プラン代はチャラにしてあげる」

「ちょっと待ちなさいよ!敵のアジトに一人で突っ込ませるって正気なの!?」

 

 このプランに異を唱えたのは意外にもアルだった。その視線には怒りと驚きが混じっており、日頃から危険人物として扱われるアゲハにとって虚を突かれた。

 

「その通りだ」

「それはあまりにも非道じゃないかしら!プランの変更を要求するわ!」

「ちょっと社長……!」

「心配してくれてありがとう社長さん。けど大丈夫、俺は基本的に潜入や奇襲が得意だから」

 

 右手でピースをして心配は不要だと示すアゲハ、実際その戦闘スタイルは人混みや闇夜に隠れてからの奇襲や不意打ちだった。一体多数の戦闘において先制攻撃と視界不良は必須であり、時間帯は夜を好んでいた。

 

「ならいいのだけど……」

「僕の任務が終わったら連絡して速やかに撤退って感じかな」

「そうだが、危惧するのは――――」

「風紀委員会、そうですよね組長さん」

「ヒナと相対したら撤退の難易度は上がる」

 

 ゲヘナ自治区を自治する風紀委員会、空崎ヒナを筆頭に構成された組織はゲヘナの治安維持のため昼夜活動している。人員も多く、幹部も優秀な者が在籍ていて特にヒナ委員長は別格の強さを誇っていた。大型の機関銃を振り回し、恐ろしいほどの頑強さを持つ肉体は絶対的な力の象徴だった。

 便利屋68も風紀委員には辛酸を舐めさせられていたり、実力者として名高いアゲハも好んで戦いたいとは思えないほど恐ろしい存在だ。

 

「……風紀委員には嫌な思い出しかないわね」

「あはっ、アルちゃんの銀行口座凍結しちゃったからねー!」

「あれさえ使えればお金のやりくりには困らなかったのに……!」

「だから現金一括手渡しだったのか」

「ゲヘナで悪さするんだったら予備の口座作らないと。まっ、僕はブラックマーケット闇銀行に口座あるけど」

「えっ!?そういうことができるの!?」

「もっとも実績を作らないといけないけどさ。まっ、頑張りなよ」

 

 一応、ブラックマーケットでも停学や退学といった生徒を顧客とした銀行がある。もっとも金利はほぼ無いようなもので、借りるとなっても暴利だ。

 

「実績作りのためにも便利屋の皆さんには迅速にアジトの人数を割いてくれ。じゃないと大変なことになるからさ」

「……ふっ、まあ私たちみたいなアウトローにとっては容易いことよ」

「ちなみに敵戦力の八割を引きずり出せばいけそう?」

「余裕。最悪の場合、僕が単騎で突っ込んで無理やりこなす」

「……最初からそうすればいいんじゃなーい?」

「逃走されるリスクが高くなる。しかも僕は有名人だから尚更」

「確かに超危険人物が突っ込んできたら怖いもんねー!」

「そういうこと。別に俺が強行突破して逃げる敵さんをアンタらが潰すプランでもありだ」

「いいえ。私たちが陽動した方が成功率は高いもの」

「おっ、言うじゃんか。じゃあそういうことにしよう」

 

 パチンと指を鳴らしてアゲハは快諾した。

 かくしてアルたち率いる便利屋68と始末屋の共闘プランが決まり、作戦決行の時まで準備をするのであった。

 余談だがアルが共闘するため親睦を深めようと握手を求めたり、アイスブレイクを行おうとしたがアゲハはそれを断った。その際、ハルカがアルに対する敵対行為だと見なして騒動を起こしかけた。

 




カヨコが始末屋を知っている理由なんて得意の情報収集能力でサーチしているからです。
カヨコ好き(唐突な告白)
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