お知らせとして社会人として働くので更新頻度が落ちるかもしれません。
今回は過激な描写があるためお気を付けください。
「おじゃましまーす!」
「どうぞゆっくりしてね」
先生がアゲハの見舞いに行った翌日からアゲハはシャーレに引き取られることになった。アゲハの持ち物は病院から借りた着替えといくつかのおもちゃだけ、所持していた物は全てシャーレの保管庫に仕舞われた。
一通りシャーレの部屋を案内すると、アゲハは視聴覚室が気に入った様子だった。そして先生のワーキングスペースも視聴覚室の近くにあるため保護という面で都合が良かった。
「先生!僕これ観たい!」
「むっ、ランチ戦隊ヒルドキジャーを選ぶとは見込みがある!ぜひ観よう!」
「うん!」
先生はシャーレの書類仕事より優先するのはアゲハの世話と判断した。当然、書類仕事もほったらかしにはできないのでアゲハが没頭して絵を描いていたり遊んでいる間に取り組んでいた。本格的に取り組める時期はアゲハの情緒が落ち着いてからだと先生は見なした。
幼児化したアゲハを引き取ったことを日頃から書類仕事を手伝ってくれるユウカやリンたちに伝えようかと悩んだが、事態を大きくさせないために報告はしていなかった。傍から見れば素性の知らない幼児退行した少年が先生の世話を受けている光景は奇妙である。
「上手だね。これは私かい?」
「そうだよ。もう少し頑張ってみるね」
「わあっ、とても嬉しいよ!」
「えへへ」
容姿とは異なる精神年齢を持つアゲハはどこか歪だったが、その表情や仕草は純粋無垢なものだった。幼げのある笑顔は先生の疲れきった心を癒した。
「先生!ボールで遊ぼう!」
「いいよ。けど私はあまり動けないから手加減してね」
「えー、仕方ないなぁ。じゃあ僕だけめっちゃ動くから先生は楽にしてて!」
昼頃になるとアゲハはシャーレに設置された体育館で体を動かして遊んでいた。記憶がなくても筋肉や運動神経は健在で、素早い動きで相手のロボットを翻弄していく。しかも激しい運動をこなしてもアゲハは息切れを起こしていない。
先生はあまり体を動かすのが得意ではなく見学に徹していたのだが、驚異的ともいえる運動能力に度肝を抜いていた。アゲハの運動能力はアビドスのシロコやホシノと同程度であり、一般生徒とは段違いの実力だった。優れた運動能力を有している美少年は何者なのかを先生は考えていると、突如として顔面にボールが迫っていた。
「わっ、危ない!」
「ぐえっ!?」
「わー!!」
先生はアゲハの正体に思考を奪われていたせいで注意散漫になってしまい、ボールを避けれなかった。見事に命中した先生は卒倒してしまう。
その様子を見たアゲハは急いで先生のもとへ駆け寄った。
「先生!大丈夫!?」
「う、うん。大丈夫だよ……」
「し、死なないで!!」
「これじゃ死なないから安心して」
「わああああ!!死んじゃ嫌だああああ!!」
「大丈夫だって!ほら、元気元気!」
アゲハは酷く
アゲハの行動の端々から垣間見て、先生はアゲハが心的外傷レベルで死を恐れているように感じた。特に親しい者が死んでしまうことを極端に恐れていた。
「ほ、本当?」
「あー、もうこんなに泣いちゃって」
「……ボールぶつけてごめんなさい」
「むしろアゲハが元気なのがわかったよ!ほらイケメンが台無し」
先生は涙と鼻水で濡れた顔をハンカチで拭き、情緒を落ち着かせるために抱きしめてあげた。抱きしめられたアゲハは最初は身震いしていたが、先生の体温と心音と匂いで絆されたのか力強く抱き返した。
「ねっ、落ち着いた?」
「……うん」
「よしお絵描きしよっか。図書館でやろう」
「恐竜図鑑とかある?」
「あるよ。それも分厚いのがね」
「本当!?たくさん描く!」
先生はアゲハを連れて図書館へ行って一緒に絵を描く。先生はアゲハと楽しみつつも、描かれた絵の中に記憶に関するヒントがないかと探す。白髪の少女と金髪の少女が一定の頻度で現れるものの、二人の特定には至っていなかった。
そうこうしているうちに午後六時になっており、先生は二人分の夕飯を準備しなければならない。
「今日の夕飯は何が良い?」
「オムライス!」
「そういえばオムライスが好きなの?」
「大好き!だって
「……そっか。じゃあ私が作るから待てる?」
「うん!」
この温かいという表現を先生は熱という意味で捉えており、劣悪な環境で育ってきたアゲハには温かいご飯がご馳走なのだと思った。しかしその考えは半分ハズレで半分当たっていた。
私生活はズボラと称される先生でもオムライスぐらいは作れる。きちんとレシピを確認しながら調理を進めていき、二人分のオムライスができた。簡単なコンソメスープを添えてアゲハに提供する。
「美味しそう!」
「ふふん、自信作なんだ」
「いただきます!」
「めしあがれ」
アゲハは目を輝かせながら一口頬張る。すぐにオムライスの美味しさに魅了されてバクバクとスプーンを忙しなく動かして食べ進めていく。その光景を見た先生は満足感と安心感で胸がいっぱいになった。
ご飯を食べたアゲハは入浴後、テレビを観て時間を過ごす。ちなみにアゲハの入浴には先生も随伴したが、流石に先生も全裸とはいかなかったため何故か持ち込んでいた競泳水着を着た。学生時代の一品であるためピチピチでキツキツだったが何とか収まった。
「ふわぁ」
「ん、眠いのかな?」
「……うん」
「それじゃあ寝よっか。もう十時だし」
「……寝る」
アゲハはシャーレの仮眠室で先生と一緒に寝ていた。アゲハの現在の精神年齢では独りで寝ることができず、先生が眠るまで付きっきりになる必要があった。そうでもしないとアゲハは暗闇を怖がって寝ない上に夜泣きをするのだ。幸いなことに寝る前の子守唄や読み聞かせは要らないタイプの子供で、先生が隣に居ることに安心して眠る。
アゲハがスヤスヤと寝息を立てている姿は人たらしとして称される先生を揺さぶるほど愛らしかった。魔が差した先生は眠っているアゲハの頬をつつくと、アゲハは先生の指を掴んで払いのける。この不意に出た仕草に先生は可愛さで悶絶した。
「ッ!!……ふぅ、これは劇薬だね」
アゲハが問題を起こして先生が対処に当たるのを繰り返す日々は度重なるアクシデントでドタバタしながらも充実していて、もはや先生が一児の母の如く振る舞っていた
途中でユウカやリンたちが訪れることがあったがどうにかアゲハを隠してやり過ごしていた。
しかし平和な日々は長く続かなかった。
「うーん」
「38.5度か、やっぱり熱があるね」
ある日、アゲハは高熱を出してしまった。それに気づいた先生はすぐに医者を呼んで診察を受けるも原因がわからず、ひとまずは解熱剤を貰っただけだった。
額に冷感シートを貼るも紅潮した頬の色は変わることなく、瞳もとろんと溶けている。先生は寝込むアゲハの傍で書類仕事をこなしながら容態を確認する。
「どこか痛いところはない?」
「ないよ。けどお腹が熱くてムズムズするの」
「うーん、どうしたんだろうね。昨日は元気だったのに」
「先生、ごめんね」
「謝らなくていいよ。早く元気になってね」
「うん……」
夕方まで熱が引かなければ病院に行って精密検査を受けてもらおうかと先生は考えた。可能性として孤児だったアゲハは劣悪な環境下で臓器が機能不全を起こしているのもありえるからだ。
息苦しそうに唸っているアゲハに何もしてやれない無力感が先生を襲う。こればかりは本人の問題だった。
「つらいよ、先生」
「元気になったら美味しい物食べに行こうね」
「お外に出れるの?」
「うん。初めてのお出かけだね」
「頑張って良くなるね」
「頑張れ頑張れ」
先生はアゲハの手を握って鼓舞する。アゲハもそれに応えるように吐息を漏らしながらニッコリ笑みを浮かべる。
しかしその接触が問題だった。
「うっ!?うぅ!」
「ちょっとアゲハ!?どうしたの!?」
いきなりアゲハが悶え苦しみだしたのだ。突然の急変に困惑する先生はアゲハの容態を確認すると熱は先程よりも上昇しており、心臓の鼓動も速くなっている。明らかに異常だ。
先生はすぐさま医者を呼び出すために連絡を入れる。
「すみません!アゲハの容態が急変しました!」
『わかりました!すぐ救急車を手配します!』
「わかりました!……きゃっ!?」
シャーレと病院に繋がれた直通回線で連絡をするためにアゲハと距離を置いていたが、後ろから強い衝撃を受けて先生は倒れてしまった。
倒れた衝撃で痛めた部位を擦りながら先生は何が起きたか把握しようと顔を上げる。そこには吐息を漏らして顔を真っ赤にしたアゲハが先生に馬乗りになっていた。
「あ、アゲハ?」
「ごめんなさい、なんか体が動いて……!」
「そうなんだ。ちょっと重いから退いてくれる?」
「体が先生を求めて言うことを効かない……!」
「ええっ!?……ッ!」
馬乗りにされた先生の太腿から硬い何かが当たり、先生は本能的にアゲハが
「どうして動かないの!?」
「あ、アゲハ!手を離して!」
「無理!できない!」
「待って!そういうことしちゃダメだって!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
キヴォトス人ということもあり先生の両手首を片手で掴んだアゲハは謝りながら先生の服を脱がしていく。そして下着が露わになったその体を慣れた様子で舐めたり、指を這わすことで先生を刺激する。そういうことの経験が少ない先生でも敏感になってしまうほどアゲハは上手だった。
先生は快楽と多幸感に溺れそうになるも、教育者としての精神力で理性を保っていた。しかし限度があり、もうじき耐えきれなくなってしまうのを感じた。
「……先生から良い匂いがする」
「ひぅん!?これ以上は、しちゃだめだよ……!」
「もう、耐えられない」
アゲハがついに先生のパンツを脱がそうと手を伸ばす。ついに
――――――だが、そうはならなかった。
「先生、被害家屋の算出についてだけど。……アゲハ!?」
「っ!?」
「カヨコ《・・・》!?」
淫らな雰囲気が充満した空間を壊したのは便利屋68の鬼方カヨコだった。
カヨコは二人の性行為前の状況に戸惑いを隠せなかったが、瞬時に状況を理解してアゲハを先生から引き離す。
「アゲハ落ち着いて!!」
「うぅ!!離して……ッ!」
「カヨコ、彼を知っているの!?」
「けど今はこれの対処が先!私のパーカーのポケットからタバコとライターを取り出して!」
「えぇ!?どうして!?」
「いいから早く!!」
先生はカヨコの言われた通りにポケットからタバコとライターを取り出す。タバコはアゲハが保護された時に所持していた物と同じだった。
「取ったよ!」
「そしたらタバコに火を点けて煙を嗅がせて!」
「煙を!?」
「それが解決策!そうしないと止められない!」
「わ、わかったよ!」
タバコに火を点けて、その先端から立ち煙る紫煙をアゲハに吸わせる。しかし煙の排出量が少なく、アゲハは多少落ち着きを取り戻したが完璧とはいかなかった。
「効果はあるけど、まだみたい!」
「くっ!こうなったら……!」
「がはっ!?」
「わっ!?」
カヨコは拘束するために足を引っ掛けてアゲハを転倒させて組み付いた。しっかりアゲハの上半身を腕ごとカヨコの自重で抑えているためアゲハはジタバタ藻掻くしかなかった。
「先生、それちょうだい!」
「う、うん!……って吸っちゃった!?」
「っ」
「むぐっ!!」
「ええっ!?」
先生が驚くのは無理もない。何故ならカヨコは喫煙した後に、アゲハとキスをして人工呼吸の如く紫煙を体内に送ったのだ。年頃の少女にしては過激な行為に思わず先生は顔を赤らめて興奮した。
「……まだ」
「んっ!!」
一度のみならず何度もされたアゲハは症状が収まったことで落ち着きを取り戻す。しかし酷く疲れたのかパタリと倒れると寝息を立てて寝てしまった。
アゲハの脈拍を計って安定していることがわかると、騒動がひと段落したことに先生とカヨコは安堵する。あと一歩、カヨコが居合わせなかったら先生はあのまま大変な目に遭っていた。
「ふぅ、危なかった。怪我はない先生?」
「平気だよカヨコ、助けてくれてありがとう」
「気にしないで。あの子がああなったら大変なの知っているから」
「……カヨコ、きみとアゲハはどういう関係なんだい?」
アゲハが描いた絵に登場する白髪に黒の一線が入った少女はカヨコであると理解して、先生は記憶を失う前のアゲハとどういう関係だったのかを尋ねる。
記憶を忘れていてもアゲハの潜在記憶に残されていたことから相当深い仲であることを先生は察していた。
「アゲハは私にとって欠かせない人」
カヨコは寝静まるアゲハの頭を愛おしく撫でながらハッキリと答えた。その目に嘘はなかった。
Q.幼児退行のアゲハ君がこれなら昔のアゲハ君はどうだったの?
A.親も保護者もいないため独り。ラジオもないため娯楽を見聞きできず、腐りかけの物を食べ、独りでボロボロのせんべい布団に身を包みながら寝ていました。外出すると悪い人に身ぐるみを剥がれて盗まれれば良くて悪いと暴力を受けた後に悲惨な目に遭っていました。
Q.どうしてカヨコはタバコを常時していたの?
A.アゲハがタバコを持っていないせいで発情した場合を想定していた。トキも捜索時には必ず所持している。