裏社会の始末屋、キヴォトスにて絆される   作:渡邊ユンカース

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シャーレの先生がくる前の時系列です。
なので荒れているキヴォトス時代です。世紀末です。


山海経へようこそ!(前編)

 

「はふはふ、ここのシュウマイは美味しいですね」

「それには同感だね。とても美味い」

「もうひとつ注文しましょうかね」

「アンタが独占して喰っているせいで食べれてないんだけど」

「あなたも注文すればいい話です」

「いやいや、カレーみたいに個人で食べる物じゃないから!みんなでつまむものだっての!」

 

 山海経のとある中華店にて円卓に並べられた料理を食べるアゲハとハスミがいた。山盛りにされた料理をブラックホールのように食べるハスミとなんとか自分の分を確保しようと画策するアゲハ、時折アゲハが注文した料理の大半を食べられて怒っていた。

 そんなことを気にしないハスミは注文と完食を繰り返していく。度重なる注文に注文係と運搬係はてんてこ舞いだった。

 

「僕が頼んだ単品料理を奪うな!太るぞ!」

「知っていますかアゲハ、中華料理は香辛料が効いて体に良いんですよ」

「なわけないだろ!油料理なんてカロリーの化身だぞ!」

「……まあ今回は特別ということで」

「バーカバーカ!常識考えろバーカ!」

「あはは、そんなに良い食べっぷりだと作り甲斐があるよ」

 

 二人が注文した料理を持ってきた少女が満足気に言う。大きな耳とハスミほどではないが背が高い。

 

「あなたは山海経の」

「朱城ルミさ、一応だけど玄武商会の会長をやっているよ」

「食事をする前に挨拶しなければなりませんでしたね。申し訳ございません」

「いいよいいよ。そういうのは無しで食事を楽しむものさ」

「いささか楽しみ過ぎな気がするけど」

「余計なことを言わないでください」

「事実だろ」

「厳選した食材が美味しい料理を生み出していてね。すごく良いでしょ」

「はい、箸が止まりません」

「限度を知れ限度を」

 

 現にハスミの箸は10秒以上止まっておらず、食い意地の張りように気に入らなかった店があったら爆破する某研究会をアゲハは彷彿する。

 

「しかし無料でここまでいただけるだなんて……」

「ちょっとした出来事があってね」

「まあ大事ではないけどね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 遡るは二日前、アゲハは山海経に依頼で呼ばれていた。依頼ということでいつもの仕事着を着用し、基本的に隠密行動を行う。流石にパーカーと仮面を被ったコートの人間は目立つのだ。

 

「へぇ、ここが山海経か。噂に違わず立派なところだ」

 

 依頼人の名前は玄龍門会長の竜華キサキ、山海経を牛耳る組織の長が裏社会で活躍するアゲハを呼ぶだなんて異例の出来事であった。普段は無気力に振る舞っていたアゲハだが、今回ばかりは何か私怨でも買ったのではないかと警戒していた。この男、該当する事柄が多すぎて基本的に敵ばかりなのだ。

 

「流石に勝手に侵入はまずいよな」

 

 許可を得ずに侵入すればそれこそ敵対行為、玄龍門のみならず山海経全体を敵に回すことになる。それを避けるためにアゲハはとある行動に出た。

 

「すみませーん、玄龍門の竜華キサキ会長から招待された始末屋なんですけど」

「はあっ!?」

「なんだこいつ!」

「曲者だ!」

 

 堂々と門番に名乗り上げたのだ。来訪したことを知らせるのは当然である。

 しかし自身が裏社会で名高い存在、そんな人物が訪問しに来たとなると想像にたやすいことだ。門団たちは非常警報を鳴らして銃をアゲハに向ける。

 

「動くな!」

「おうおうおう、せっかく呼ばれたのにこんな扱いされちゃあ仕方ないか」

 

 やむなしといった感じに瞬時に武器を取り出して構える。相手は三人、十人程度の応援を呼ばれたとしても瞬時に撃破できる。

 

「それじゃあ、やろうか」

「来るぞ!」

「撃て!」

 

 アゲハは一瞬で一人目に近づくと即座に相手が持っている銃をトンファーで破壊、その後素早く連打を叩き込む。そして気絶した者を盾に前進、その結果として残りの二人は味方ごと撃つことができないでいた。

 

「優しさはあだになるぜ」

「うぐっ!?」

「あぐっ!?」

 

 二人に近づいたアゲハは盾役を放り捨て、人体の急所である鳩尾と胸部に連撃を叩き込む。二人は強烈な痛みと衝撃で意識を飛ばし倒れこんだ。戦闘はたった十五秒で終わった。

 

「さて、とりあえずは終わったな。警報を止めなきゃな」

「止まれ」

「おっと」

 

 けたたましい音を響かせる警報機を止めるためアゲハがいじっていると後ろから敵意を感じ、動きを止める。ちらりと後ろを覗かせるとサングラスを頭にのせて片目が隠れた隠れた者がいた。その手には二丁の拳銃が握られている。

 

「たまたま近くにいて僥倖だった。貴様何者だ」

「おいおーい、物騒なもの向けないでよ」

「とぼけるな、倒れている部下がいるからできるわけないだろ」

「あっそう。一応、キサキ会長から依頼を受けて来たんだ」

「証拠は?」

「コートの懐の内ポケットに手紙が」

「動くなよ」

 

 一丁だけ拳銃をホルスターに収めた後にアゲハの懐をまさぐり、一枚の手紙を取り出した。

 

「これは確かに門主様の文字だ」

「だから言ったでしょ。というわけで、銃下ろしてくれる?」

「ふんっ」

「しまってくれてどうも」

「それで何者だ」

「普通はそっちから名乗るのが礼儀でしょうが。まあいいや、僕は始末屋」

「始末屋だと?あの悪名高い始末屋が何しに来た」

「それを聞きに来たんでしょうが。要領悪いなぁ」

「なんだと!」

「ミナ、そこまでじゃ」

「ッ!?」

 

 両者の挑発するかのような態度が原因で騒動が再開されかけたが、落ち着きのある一声が静止を促した。ミナと呼ばれた少女は姿勢を正して声の主に視線を向ける。一方でアゲハはゆっくりと振り向いた。

 声の主は黒のチーパオを着た小さな少女だった。背丈はアゲハよりも断然小さかった。

 

「門主様!護衛も付けずにいらしてはいけません!」

「たまたまじゃ。じきに着くとと始末屋の方からも連絡も入っておった」

「へぇ、アンタが依頼主ね。ちょっと部下の躾がなってないんじゃないか」

「すまないのう。玄龍門はとある事件をきっかけに気が立っておるのじゃ」

「なるほど。その案件を解決するために呼ばれたわけか」

「左様。して持て成す故、中に入られよ」

「はいよ」

「貴様、門主様の前でなんて態度を!」

「ミナ。そなたの忠義は十分に伝わったが今は抑えよ」

「はっ」

 

 玄龍門の門主キサキに連れていかれ、豪華絢爛な応接間に着いた。普段から芸術に関心のないアゲハでも古風で趣のある装飾には一目を置いた。壁に掛けられている小さな小物ですら高値で売れるだろうと断定できるほどだ。

 関について間もなくするとお茶と茶菓子が運ばれた。

 

「美味しそうだ」

「幹部の私ですら中々食べれない逸品だぞ」

「客人をもてなすのは当然じゃ」

「素晴らしい心構えに感謝するよ。それで依頼とは?」

「単刀直入に話そう。其方にはとある漢方の所在を突き止めてほしい」

「漢方?そんなことで高給取りの僕を呼んだわけ?ヴァルキューレやアンタの部下に任せればいいじゃん」

「残念ながらそうはいかないのじゃ。これは極秘じゃが申谷カイの捜査に全力を尽くしておってな」

 

 申谷カイ、この人物にアゲハは当人と面識はないものの心当たりがあった。

 キヴォトスの連邦生徒会長が謎の失踪を遂げた後に七囚人と呼ばれる危険人物が連邦矯正局から逃げ出した。現時点では厄災の狐と呼ばれた狐坂ワカモ、慈愛の怪盗と呼ばれた清澄アキラがキヴォトスで騒動を起こしている。ただでさえ連邦生徒会長がいなくなった途端に治安が急速に悪化したのに七囚人の存在が拍車をかけていた。

 

「まっ、指名手配犯のためなら仕方がない。カイって言う人を捕まえればいいんだね」

「そうではない。カイが在籍時に生み出した違法霊薬の模倣品が流出するのを防いでほしいのじゃ」

「コピー品の流出ね。それで被害と効能は?」

「被害はまだ十名程度。効能は短時間の集中力向上だが依存性が高くて厄介な物じゃ」

「要するに覚醒剤だ。ブラックマーケットにも似たような騒動はあった」

「……噂に聞いておったがブラックマーケットの治安は悪いのう」

「最悪、売人を捕まえてくれればこちらの方で情報を吐かせよう」

「了解だ。僕も麻薬には良い思い出がなくてね、頑張るよ」

「では頼んだぞ。ミナ、見送りを」

 

 正式な依頼書にサインを受けたアゲハは足早に玄龍門の敷地を出る。見るからに不審者そのもので目立ってしまうことやアゲハ自身、薬物には並々ならぬ思いがあった。キサキたちとの会話中は飄々とした態度は崩していなかったものの、心中には薬物に対しての怒りと憎悪が渦巻いていた。

 人気がない場所で仕事着から山海経で日頃から着られている服に着替えた後に聞き込み捜査を始めた。ちなみに黒のカンフー服である。

 

 

「うーん、進展なしか」

 

 捜査を始めて二週間が経過した。どれも出てくるのはシャーレの先生が解決したカイ絡みの事件だけ。求めている情報の収集には時間がかかっていた。唯一、掴めたのは深夜の竹林で違法霊薬の売買が行われているとだけ。

 どうしたものかとアゲハは甘栗を食べながら出店で人々の会話を盗み聞く。すると竹林の方に小さな子供が入っていくのが見えた。カイ絡みの事件で梅花園に通う子供が見ず知らずのうちに運び屋になっていたため、アゲハは尾行することにした。

 竹林は鬱蒼としており、遥かに高い背丈の竹が青空を塞いで視界が悪い。それに同じ景色ばかりなので方向感覚がマヒしてしまうことを考慮すると違法霊薬の売買には適している。

 

「あっ、いた」

「うっ、うぅ……!」

 

 子供の僅かな痕跡を頼りに追うとしゃがんで泣いている子供がいた。髪色や服装から最初に見た子供そのものだ。

 

「ねぇ、キミ。どうしてこんな場所にいるんだい」

「うえっ!?あ、あなた誰ぇ?」

「なーに、気軽に旅人さんと呼んでくれ。それでどうしてここに?」

「シュン教官にあげるお花を探しているの」

「お花?」

「うん。竹の花だよ」

「竹って花が咲くんだ……」

「とても珍しいからプレゼントしたら喜ぶかなって……」

「なるほどね。けど子供が独りだとそのシュン教官も心配するさ。梅花園まで連れて行くから帰ろうか」

「……うん」

 

 子供の手を繋いでアゲハは来た道を戻る。スマホを見てマップアプリを起動するも通信が不安定なのか現在地がわからない。道中で不安に駆られながらも無事に竹林の出入り口まで到着した。

 

「あっ、もしかして!」

「おい!勝手に手を離すな!」

「あったよ!竹の花!」

 

 何かを見つけたのか子供は繋いでいた手を放し、すたこらと近くの竹に駆け寄って念願の竹の花を見つけた。目当ての物も見つけたうえに遭難しやすい竹林からも出ることができてアゲハは安堵した。

 しかし安堵したのもつかの間、後ろから銃声と敵意を感じて咄嗟に地面を転がった。そっきまで居た場所には銃弾が通過した。

 

「あっぶねぇ!唐突になんだよ!」

「それはこちらのセリフです。梅花園の子供を使って悪事を働いていると見ました!」

「はあっ!?」

 

 義憤に駆られた様子の赤いチーパオにジャージを羽織った泣きほくろのある少女がそこに立っていた。明らかに銃を向けていることから撃ってきた本人だと断定し、アゲハはカバンからトンファーを取り出す。

 

「仕方ない。話し合いで解決できる空気じゃないなら実力行使でいこう」

「悪党に言葉はいらないですよね……!」

 

 両者とも子供を差し置いて竹林での戦闘が始まった。

 




これはキヴォトスに原生するキヴォトスノタケなので竹の花が珍しく綺麗な花なんです。四葉のクローバー以上に珍しいのです。(暴論)

タッパがデカくて父と尻がデカい女は大好きです。
正義実現委員会ってなんすか、ツルギ以外いやらしい娘しかいないんすけど。
えっ、コハル?彼女は補習部だから……
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