裏社会の始末屋、キヴォトスにて絆される   作:渡邊ユンカース

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レイジョとルミのご当地コラボ看板だけ色気ヤバいんですけど。
レイジョは人妻みたいな格好でデカ乳が浮いているし、ルミは独特な湿度を感じさせるんですよね。


山海経へようこそ!(後編)

 

「成敗!」

「よっ」

 

 勘違いから始まった銃撃戦、赤いチーパオに黒のジャージを着た少女が自身のライフルをアゲハに向けて撃つ。銃撃をあらゆるところから生えている竹を障害物として活かし、難なく攻撃をかわして距離を詰める。距離を取られまいと少女も後退するが、アゲハの攻撃圏内に入ってしまう。

 

「ふんっ!」

「ちっ」

 

 懐に入られてはたまらないと少女はライフルを捨てた後、アゲハの顔面めがけて回し蹴りをする。咄嗟に体を反らして攻撃をかわすアゲハだったが、続けて行われた掌底による腹部の突きをトンファーで受ける。

 

「へぇ、アンタ格闘もいけんだ」

「残念ながら射撃よりもこっちの方が得意なんで」

「そうかい、このカンフー娘!」

「なっ!?」

「甘い!」

 

 土を飛ばされたことで少女の視界が遮られる。その隙にアゲハはトンファーで腹部に一撃を入れ、少女は吹き飛ばされる。

 

「がはっ!?」

「まずは一撃、まだやる?」

「ま、まだまだ!」

 

 少女は勇ましい叫び声をあげてアゲハに突撃し、間髪入れずに裏拳や蹴りや掌底を繰り出していく。怒涛の攻撃に対してアゲハもトンファーで受け流すか回避して攻撃を防ぐ。日頃から修練しているのか攻撃の速度もキレも良く、近接格闘に慣れているアゲハですら思わず胸部に掌底を喰らってしまう。

 

「いっ!?」

「これがカンフーの奥義、発勁です」

 

 発勁という現代格闘術では見られない攻撃を受けてアゲハは悶絶する。内臓が直接揺らされる不快な感覚に食いしばって耐える。今の一撃で内臓にまで衝撃を喰らったのを体感し、これ以上は受けてはならないと悟る。

 

「くそ、威力を誤認した……!」

「まだ一撃、以降もやりますか?」

「……少しだけ本気出してやるから死なないでよ」

「望むところです」

 

 深呼吸で息を整えて痛みを抑え、アゲハは双方のトンファーを構えなおす。飄々とした態度が一転、鋭い眼差しで睨みつけて威圧する。少女も足を大きく広げて地面に重心を固定、照準を定めるかのように左手を突き出し右手は全力の一撃を生み出すために引く。

 ほんの数秒、静寂が辺りを包む。しかし二人の体感では永遠にも思えるほど長く感じた。きっかけがあればすぐに弾けてしまう爆弾のように機会をジッと伺った。

 

 一陣の風が吹き、二人の間に一枚の竹の葉が落ちる。

 

「はあっ!」

「やあああ!!」

 

 それを合図にアゲハは強く地面を蹴り上げて一秒で少女を射程圏内に捉える。少女もそれに反応して構えていた右手を打ち出す。まさに勝負はこの一撃で決まる。

 

「そこまで!」

 

 二人の勝負は中止を促す第三者の声で決まることはなかった。お互いの眼前にはトンファーと掌底がピタリと静止する。

 声の主は大きな耳を持った少女だった。その後ろには竹の花を見つけたと離脱した子供の姿も見える。

 

「ルミ会長……!」

「何さ。せっかく勝負がつくっていうのに」

「はいはい、事情はこの子から聞いたから。レイジョもキミも落ち着いて」

「うぅ……」

「ちっ」

「わかりました」

 

 興が冷めたと言わんばかりにため息を吐くアゲハと納得のいっていない様子のレイジョの双方は渋々構えを解いた。申し訳なさそうにルミ会長と呼ばれた少女はアゲハのもとに近づいてきた。

 

「ごめんね、何か色々トラブっちゃったみたいだね」

「別に。まあそう思われても仕方がないか」

「この男が子供を騙している可能性もありますよ」

「この子曰く、迷子になりかけていたのを助けてくれただけだってさ」

「そ、そうなんです!」

「……ルミ会長を信じます」

「ありがとう!それで二人ともケガとかしてない?」

「えー、何さ。慰謝料でもくれるの」

「こっちの問題だから常識の範疇でなら払うよ」

「なら三百万で、内臓ぐちゃぐちゃになっちゃってさ」

「ふんっ」

「……危なッ!?冗談に決まってるじゃん、真に受けないでよ」

 

 普段通りに人をおちょくろうとしたアゲハのもとにレイジョからの拳が飛んだ。なお難なく回避した。

 

「二人とも元気そうでよかったよ」

「普通に内臓痛かったんだけど」

「キヴォトス人なら平気なはずです」

「僕はアンタより華奢なんでね。僕より体重重いじゃん」

「女性に向かって言うセリフですか。配慮が欠けますね」

「あーあー、訳も聞かずに撃ってきた人が言っても説得力に欠けるなぁ」

「今ここで決着をつけますか?」

「いいぜ。本気の一撃をお見舞いしてあげる」

「まあまあ落ち着いて……」

「むぅ」

「謝罪の気持ちを込めてアタシの名刺あげる。系列店なら一回分無料で振る舞うよ」

 

 ルミから渡された名刺を受け取ると、アゲハはとあることに気づく。

 

「玄武商会って玄龍門の派生?」

「派生というか、何だろう説明が難しいね。けど玄龍門とは良好な関係を築きたいとは思っているよ」

「あの組織は面倒くさそうだね。つまんない意地に固執して瓦解するタイプの組織だ」

「伝統を重んじて門主想いの組織なんだけどね。まっ、上手くやっていきたいな」

「それでこの子はどうすんのさ」

「アタシが責任を持って梅花園に送り届けるよ。けどどうして何もない竹林に?」

「……ルミ会長、やっぱり例の」

「違うって、ただの観光さ」

 

 ここで下手に売人捜査の依頼を受けたとなったら、玄龍門から依頼内容が漏洩した時に正体がバレてしまうことを考慮して嘘を吐く。

 

「そっか。山海経は良いところだからゆっくり回ってね」

「お気遣いどうも。ガキんちょも勝手に迷子になるなよ」

「ありがとうカッコいいお兄さん!」

「っ!」

 

 純粋な善意と感謝が込められた言葉を向けられたアゲハは内心で狼狽えながらも後ろを振り返って歩き始める。

 

「……何だったのでしょう」

「けど悪い人じゃないと思うよ。だってこの子の言葉に照れてたから」

「生意気な感じが癪に障りますけどね」

 

 

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 とある日の真夜中、昼間でも太陽の眩い光を竹が閉ざしてしまい薄暗い。それが夜中になると月明かりすら届くことなく暗黒に包まれる。おまけに生い茂る竹林のせいで視界も遮られてしまう。

 暗中の竹林にてとある取引を行う者がいた。一人は最低限の明かりを手にしたロボットともう一人は細長い茶封筒を持ったサギの獣人がいた。

 

「……合言葉は?」

「漁夫が全て得る」

「はい、貴方が取引相手で間違いないようですね」

「当たり前だろう。お得意様だぞ」

「まあ一応の確認なんでお許しを」

「それで例の物は?」

「ここに」

 

 ロボットの売人は懐に手を入れる。サギの獣人は拳銃を取り出されるのではないかと身構えたが、ロボットの懐から取り出された物が紙袋だったのを視認すると安心した。

 

「驚かせやがって」

「クリーンな取引をこちら側もしたいのですよ。お客様の信頼は大切ですから」

「中身の確認だ。出してくれ」

 

 言われるとおりに売人は紙袋から白い粉の入った小袋を取り出す。

 

「まあ吸わなくても本物だろう」

「もちろんですとも。お代をこちらに」

「あいよ。こいつを生徒どもに売れば儲かるぜ」

「なるほど、ようやく掴んだよ」

「誰だ!?」

 

 どこからか声が聞こえて二人は辺りを見渡しつつ、いつでも攻撃ができるよう拳銃を構える。しかし辺りを見渡しても暗中のため視界不良で声の主を見つけられないでいた。

 業を煮やした獣人は後先関係なしに拳銃を撃ちこんだ。

 

「どーこ見てんのさ。目ん玉あるの?」

「隠れてないで出てこい!」

「上だよ上」

「いっ!?」

「わっ!?」

 

 二人の真上からロングコートを羽織って仮面を被った者が着地音を立てずに降りてきた。そう、アゲハ改め始末屋だった。あまりに神出鬼没の登場だったため二人は悲鳴をあげてしまった。

 

「おいおい、驚くことないだろ。心外だなぁ」

「な、何者だお前!」

「申し遅れました。僕は始末屋、裏社会の仕事人さ」

「し、始末屋ですって!なぜここに!」

「そりゃあアンタらの捕まえに来たに決まっているでしょ。依頼だよ依頼」

「逮捕だと!?」

「ま、まいりましたね……」

「しこしこ新月の日にこんな暗くて人気がない場所でやりやがって。そりゃあ見つからないわけだ」

「こ、こんのぉ!」

「おっと」

 

 獣人はアゲハに殴り掛かるが、ひらりと躱される。そしてアゲハは獣人の首を掴むと首元に向けて一発殴る。呼吸困難と苦痛に苛まれた獣人は地面に伏して悶えていた。

 

「おじさん雑魚いね。武器を使うまでもない」

「……始末屋さん」

「何?」

「取引をしましょうか」

「取引?」

 

 いかにも商売人らしくロボットは交渉を切り出してきた。とりあえずアゲハは大人しく聞くことにした。

 

「私たちは例の囚人の霊薬の製造に成功しました」

「カイのやつか」

「そうです。副作用はありながらも効果は絶大!需要が非常に高く高価でも買いに来る方は大勢です!」

「うんうん」

「なので私を見逃してくださったら毎月の利益の二割を貴方に差し上げます。単刀直入に言うとこの男は勝手にしてください」

「そっか」

「どうです?貴方に利がある取引でしょう?」

「そうだね。じゃあ見逃そうか」

 

 納得した様子のアゲハは後ろを振り向いて竹林の出口へと向かっていく。なお売人は交渉を守る気はない様子であり、拳銃の照準をアゲハに向けていた。

 傍から見れば危機的状況なのだが、アゲハは知ってか知らずにピタリと足を止めた。

 

「ひとつ言い忘れていたんだけどさ」

「何ですって?」

「あとから僕が全部奪えば良いだけだよね」

「えっ」

 

 アゲハは振り向いた際にナイフを売人の真上に飛ばす。するとバキバキと音を立てて売人の真上から捕縛用のネットが落ちてきて、ネットの重さと落下時の衝撃で売人は倒れてしまう。

 

「何ですかこれは!?」

「どうせアンタも裏社会の人間だから交渉なんて守る気ないでしょ。まっ、こっちもだけどさ」

「ええい!私が捕まれば貴方が総取りできませんよ!」

「残念でした。アンタらの拠点の目星は付いているんでね。ゆっくり分捕らせてもらうよ」

「なら私がヴァルキューレに密告してやる!」

「裏社会の人間なんて元々汚いんだからさ。意味ないよ」

「ぐぬぬ……!」

「ちなみにもう玄龍門に連絡してあるから」

「普通はヴァルキューレではないのか!?」

「二人で尋問を楽しんで」

「ふざけるなああああ!!」

 

 売人の叫び声と獣人の嗚咽を聞き流しながら立ち去る。

 

「?」

 

 しかし道中で異変を察知したのかアゲハは辺りを見渡す。すると黒髪と白髪が混在した長髪で胸元の空いた黒いチーパオを着た少女がいた。容姿端麗な姿が相まって不敵かつ不遜に微笑している姿は非常に絵になるがどこか怪しげな雰囲気を醸し出している。

 

「アンタ、普通じゃないね」

「ククッ……、そっちこそ人のこと言えないだろう」

「自己紹介といこうか。僕は始末屋、裏社会の仕事人さ」

「私は申谷カイ、七囚人のひとりさ」

「そうか、アンタが」

 

 空気が一瞬にして変わった。アゲハからは隠し切れないほどの殺意が漏れ出ており、カイが下手な動きを見せた瞬間にその喉を素手で抉り取ってしまおうとした。しかしながらカイはこの危機的状況にニヒルに笑うだけだった。

 

「私は始末屋さんに何かした覚えはないんだけどね」

「アンタに恨みはないが個人的な憎悪はあるんでね」

「個人的な憎悪とは失敗した霊薬のことかな。それとも薬物全般のことか」

「さあな、アンタが知る義理もないでしょ」

「まあ今回の件とは無関係だが私にも責任感はある。いつか滅ぼすつもりだったよ」

「あっそ、けどアンタは元より危険人物だ。ここでアンタを捕まえて玄龍門に差し出せば報酬は上乗せってわけだ!」

 

 不敵に笑うカイに対して苛立ちが抑えきれなくなったアゲハは先制して攻撃を始める。狙いは予定通りに喉、カイの白い喉に殺意の右手が迫る。

 

「なっ!?」

「どうだい、硬いだろう」

「ちっ!」

 

 しかし首を抉り取ろうとした瞬間、鋼鉄に当たったかのような感触が右手に伝わった。違和感に瞬時に気づいて後ろに飛び退く、抉り取ろうとした右手の指は赤く腫れてしまい爪も数枚割れてしまった。

 

「私は仙丹を完成させるために日々研究していてね」

「へぇ、鋼鉄人間もその効果ってわけだ」

「事前に飲んだけど効果はいまいち、仙丹には程遠い」

「言っておくけどただ硬いだけだと僕に殺されるよ」

「ほう、それはどうやって」

「僕の神秘さ。言っておくけど生命なら硬い柔らかい関係なしに当たると死ぬぜ」

「それは興味深い!研究のためにぜひとも見せてくれたまえ!」

「アンタ、ひび割れた黒い不審者と同じ感じがして気味悪いね」

「ほう、その人とは趣味が合いそうだ」

「普段ならやらないけど今回は私怨が勝る。お望み通りに叶えてあげよう」

 

 トンファーをコートから取り出して、アゲハは自身の神秘をトンファーに流し込む。アゲハのヘイローがモザイクにかけられたかのように不鮮明になっていき、トンファーからも白い湯気のようなもので覆われる。

 

「後悔はなしだ。いくよ」

「いいさ。おいで」

 

 恋人を待つかのように両手を広げるカイ、対して神秘を武器に十分に蓄積させたアゲハは地面を強く蹴って駆けだした。

 勝負は一瞬でつく、はずだった。

 

「山海経だ!大人しくつけ!」

「ちっ」

「むっ」

 

 しかし売人たちを捕まえにきた玄龍門の幹部たちの怒声が遠方から聞こえた。思わぬ乱入者によってアゲハのトンファーはカイの胸元に当たる寸前で止まった。この現場が見つかるとマズいと察したアゲハは舌打ちを打ちながらトンファーを下ろす。一方で興がそがれたと言わんばかりに不満げのカイはギュッと目前のアゲハを抱きしめた。

 豊満な胸がアゲハを包みこむ。

 

「おい、アンタのでっかい乳が当たって苦しいんだが」

「衝撃が加わると固まる効果の薬でね、刺激がないと柔らかいままなんだ」

「そんなの知るかァ!とっとと放せってんだ!」

「やれやれ、せっかく男の子の夢を叶えてやったというのに」

「何が夢だ!よし外れた!……おい、なぜ性別が男だと思った」

「仮面をつけてコートを羽織って性別を隠していても骨格と歩き方は隠せない。気を付けた方がいいよ」

「……もう帰る。ジロジロ見やがって気色悪い」

「さよなら始末屋さん、またどこかで」

「黙れ!関わりたくないからとっととヴァルキューレか連邦捜査局に捕まりやがれ!」

 

 悪態を吐き捨ててアゲハは踵を返して竹林の出入り口へと向かう。普段は相手の調子を崩す側だったが今回はカイに調子を崩されてしまったためアゲハの機嫌はすこぶる悪かった。どのくらい悪かったのかというと仕事終わりのルーティンである喫煙が普段より倍以上多かったのだ。

 一方でカイはそんな様子のアゲハを傍目に自身のスマホを見る。スマホにはとあるアプリが入っており、赤い点が点滅している。カイはアゲハを抱きしめた際に盗聴機能のある発信機を取り付けたのだ。

 

「さて、仲良くやろうじゃないか罪禍の黒犬(バーゲスト)

 




ちなみに武器込みの近接戦ではアゲハとレイジョではアゲハに勝敗が上がります。
しかし徒手空拳に限定した話になるとアゲハは苦戦を強いられてしまいます。どの程度かというと五割勝利、二割引き分け、三割敗北という確率に落ち着きます。
実はピーキー性能な神秘と経験で補うタイプの潜伏奇襲特化の近接キャラなので、高度な頭脳戦と遠距離から近距離まで戦闘が行えるチート主人公みたいな強さはありません。
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