裏社会の始末屋、キヴォトスにて絆される   作:渡邊ユンカース

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筆がのって八千文字も書いてしまったのでご注意ください。
それとカスミは相手にしたら面倒なタイプだから無言で武力行使のヒナでしか対応できないのを承知してお読みください。


VS風紀委員長

「あぁ、寝起きの一服は心地よい」

 

 段ボールとゴミが散乱した室内にてアゲハは未成年者御法度のタバコで脳を覚醒させる。タバコの成分が脳と肺にいきわたって心地が良い、何かしら体の調子が悪くなければ喫煙をするルーティンを組んでいる。なんという生活習慣なのだろうか。

 

「ご飯は適当に昨日買ったおにぎりでいっか」

 

 時刻は午前九時、生徒なら学校に行かなければならないのだがアゲハは学校に所属していない。そのため学生証も持ち合せていないため正規の銀行を使えないし、住居申請も出せない。もっともそういう生徒に向けてブラックマーケットでは法外な貸し借りを行う銀行や賃貸業者もある。

 ちなみにアゲハの住んでいるアパートは二階の風呂トイレ別2LDKとなっていて意外と金がかかっている。

 

「あっ?電話だ」

 

 至福の時間を過ごしているとスマホに着信が入る。ボイスチェンジャーと位置撹乱アプリを起動させた後に、少し不機嫌になりながらも電話に出る。

 

「こちら始末屋、要件を」

『ほうほう!君が始末屋か!』

「あぁ?」

『ふぅん、この電話番号にかければ出るという話は本当だったのか……』

「いたずらでかけたならすぐに切りな。じゃないとしばくよ」

『待ちたまえ。私は君に依頼をしたいだ』

「言っておくけど依頼料は高いし前金も貰うけど」

『無問題だとも』

「あっそう。いくら?』

『我が温泉開発部は旅館経営にもすこーし関与していてね。売上金の一割と無限宿泊入浴券を差し出そう!』

 

 温泉開発部、その言葉を聞いた途端にアゲハは厄ネタに遭ったと察して目頭をつまむ。

 温泉開発部はただ温泉に入泉して楽しむだけではない。源泉を探して掘削するのだ。無論、掘削工事の許可は下りておらずようは迷惑行為である。ゲヘナで大事が起きた場合に第一候補に挙がるのが温泉開発部とされるほど悪名高い部活だ。

 

「……お前、鬼怒川カスミだろ」

『ふむ、そういえば自己紹介が遅れていたな。そうとも!私が温泉開発部部長の鬼怒川カスミだ!』

「出禁」

『待て待て待て、切ろうとするな。話し合おうじゃないか』

「ろくでもないからやだよ。ふざけんな」

『報酬次第では何でもやってくれるのだろう?だったらやってくれたまえ』

「万屋みたいに言ってくれんじゃん。僕は暴力専門だから雇っても作業の邪魔になるだけだよ」

『当然それは承知の上だ。始末屋にしかできない仕事だ』

「何?」

『風紀委員長の足止めを願いたい』

 

 風紀委員長という単語を聞いた瞬間、アゲハは直ちに電話を切る。これは確実にド級の厄ネタ、身が持たないと察したのだ。同じ番号からコールが鳴らされるがアゲハは無視してご飯を食べようとする。

 風紀委員長、その座にいるのは空崎ヒナだ。小柄な体格でふわふわな白髪を持った少女なのだが、外見に反して驚異の身体能力を持っており機関銃を容易く振り回して高火力で敵を殲滅していく。さらに狙撃銃によって頭部を被弾しても無傷という伝説も残しており、キヴォトス最強の一角を担う人物だ。

 

「さて今日は平穏に過ごそうか」

 

 何もかも忘れようと二階からブラックマーケットを一望すると、遠くで大きな爆発音が聞こえた。音の出所に振り向くと、とあるアナウンスが街中の拡声器から響き渡る。

 

『ブラックマーケットの諸君!この近辺に裏社会で名高い始末屋の存在が確認できた!』

「えっ」

『日頃から恨みを持つ者、名声を高めたい者、金銭が欲しい者に朗報だ!私たち温泉同好会に始末屋を連れてくれば報酬を与えよう!無論、用いた費用はこちらで持とう!』

「うおおおおお!金だああああ!」

「ぶっ殺してやる!!」

「この前はよくも俺たちをやってくれたな!恨みを返してやる!」

「このブラックマーケットに名前を残してやるぜー!!」

「せ、扇動されてる……」

 

 まさかの強硬策に唖然とした様子のアゲハ、そしてこのままでは確実に騒乱の渦に巻きこまれてしまうと察して電話をかけ直した。

 

『ハーハッハッハッ!意外と連絡が早いじゃないか!』

「マジでぶっ殺すぞ!!この温泉狂いが!」

『温泉狂いで大いに結構、むしろ最上の誉め言葉だ』

「わかったわかった。やるよ、やればいいんでしょ!だからクソ放送を止めろ!」

『ようやく話がついたようで安心だ』

「こんなことしたんだから報酬は成功問わず割高だからな!」

『構わないよ。後程、作業の場所と日程を記載したファイルを送ろう』

 

 意気揚々と電話を切るカスミ、その態度に苛立ちを隠せないアゲハは近くにあった枕を殴る。殴られた枕はハッキリへこみ、完全に八つ当たりである。

 

「ふざけやがって……」

 

 なし崩しに依頼を受けてしまったため苦悩する。あのキヴォトス最強の一人をどのように相手どればいいのかがわからなかったのだ。暗殺という依頼なら神秘を込めた不意打ちで即死させることができるが、今回の依頼はあくまで遅滞戦闘である。しかも応援を呼ばれたり、ヒナがカスミのところまで行かせないように立ち回らなければならない。ヒナとの戦闘、応援阻止、逃走阻止という三重苦をこなさなければならないので顔つきが険しくなる。

 

「……よしっ!こういう時はブラックマーケットを散策して対抗策を見つけよう!」

 

 アゲハはもう自暴自棄だった。だが始末屋としてのプライドがあるため最低限の仕事はこなそうと心に決め、ブラックマーケットに足を運ぶのであった。

 

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 ゲヘナ学園から約五キロ圏内の学区、ここは商業地区とはいえ閑静な場所だ。

 ゲヘナ学園は治安の維持のために風紀委員会による巡回が行われており、日替わり⒟巡回コースや隊が変わる。そのため日頃から騒ぎが少ないこの地区にもキヴォトス最強の一人である空崎ヒナが回ることもある。

 

「うん、異常はないみたい」

「ここは他の地区よりも平和ですからね」

「ゲヘナにもこんなに静かなところがあるんですね」

「けど油断はしないで。いつ騒ぎが起こるかわからないんだから」

「了解です!」

 

 空崎ヒナを先頭に三人の委員、本来なら隊長一人に隊員が九人のチームで構成されているがヒナの実力によって少人数であった。おそらく戦闘全般はヒナ単独で行い、確保や避難指示といった補助を三人でする構成なのだろう。下手に連携を取らせるよりもヒナが単独で戦闘をした方が効率が良いのだ。

 

「うんうん。予想通りだ」

 

 ヒナたちを双眼鏡を用いて物陰から監視するアゲハ、念のため気配を遮断しているため易々とバレることはない。ちなみに巡回ルートと日程もカスミの協力によって入手している。

 ブラックマーケットで仕入れた道具と今までの実践で重宝してきた器具を活用した作戦でヒナたちを足止めする。カスミの方からも応援を寄越そうかと打診されたが下手な連携は失敗のもとになるため断った。

 

「こちら始末屋。間もなく対象がポイントを通過する」

『了解だ。こちらも準備は完了済みだ。そちらの判断で実行に移る』

「はいよ。僕が頑張ってあげるんだから失敗しないでよ」

『もちろんだとも。よろしく頼むよ、始末屋』

「なーに、仕事はきっちりやるよ。作戦開始」

 

 カスミに作戦実行の連絡を伝え、準備に取り掛かる。両手にはいつものトンファーを持ち、声とヘイローを隠す機能を作動させた。

 正直、未だにやる気は出ないものの依頼は依頼。こなさなければプロとして名が廃る。

 

「さあ仕事の時間だ」

 

 アゲハは自分の神秘を使って自分の存在そのものを薄くする。この状態のアゲハは電子機器や五感による感知を受け付けない一種の透明人間となる。物陰からぬるりと出て風のように俊敏にヒナの背後に回り込んだ。

 そしてアゲハは両腕による渾身の一撃をヒナに叩きこんだ。その際、トンファーの先端部分に仕込まれていた爆発装置を起動させることに成功した。

 

「ッ!?」

「貰った」

 

 ヒナは不意を突かれたことで防御や回避をすることができなかった。凄まじい爆発と打撃による衝撃を負ったヒナは建物の方に吹き飛ばされて土煙が舞う。流石のキヴォトス人でも爆発と打撃の二重攻撃により気絶は免れない。

 奇襲の成功により存在が露わになったアゲハはすぐさま後列の風紀委員に向けて殴打と蹴りを与えて気絶させる。ヒナの奇襲から風紀委員の気絶までの時間は約二秒ほどであった。

 

「先手必勝。あとは完了を待つだけか」

「そう」

「ちいッ!?」

 

 土煙の中から無数の銃撃が飛来したためアゲハは急いで身を翻して回避する。紫色の弾道と銃弾が飛来した方向から推定されることはひとつ。

 

「まだ元気なんだ空崎ヒナ委員長」

「けど流石に痛かったわ」

「この規格外キヴォトス人め……!」

「そうでもないとゲヘナの風紀委員長は務まらないもの」

「あっ、そう。なんか大変だね」

「あなたみたいな人が騒ぎを起こすのがいけないのよ」

「その通りだ。自己紹介をしようか。僕は始末屋、裏社会の人間さ」

「名前は知っていると思うけど紀委員長の空崎ヒナ。面倒だけど義務を果たすわ」

 

 ガチャリと自身の機関銃を構えるヒナ、対してアゲハもトンファーを構えて戦闘態勢を取る。

 計画というものは想定通りに進まないもの、当然のこととしてアゲハは予備案も用意していた。ただそのためにはヒナを誘導しなければならない。

 

「手加減なしだ。本気でやる」

「そう。頑張りなさい」

「言われなくても!」

 

アゲハは予備動作なしで突撃し、ヒナはその迎撃に移る。機関銃から無数の弾丸が射出される中、アゲハはランダムに回避行動を行って攻撃を全て躱す。そしてアゲハの交戦距離にヒナを収めてトンファーで打撃を加える。

 

「この程度?」

「まだまだっ!」

 

 アゲハは頭部、腹部、胸部に向けて連撃を行う。普通のキヴォトス人なら一撃で昏倒するほどの威力だが、ヒナは耐え続ける。流石のヒナも十連撃を喰らったあたりでやや顔を顰め、機関銃を槍のように振るってアゲハを引きはがす。

 

「結構痛いはずなんだけど元気じゃん」

「残念だけどそんな攻撃だと私は倒せない」

「アンタ硬すぎなんだよ!」

「……さっきから通信が繋がらないんだけどあなたのせい?」

「その通り。増援対策でこの辺一帯にジャミングをかけたんだ」

「私が応援を呼ぶとでも?」

「僕に恐れをなすことを想定してね」

「面白くもない冗談ね」

 

 機関銃を振る舞わしながらヒナとアゲハはお互いに軽口を叩き合う。基本は回避に専念しているアゲハだが、時折トンファーを用いて銃弾を捌いている。しかし一発一発がかなりの威力なので多用はできない。

 一方でヒナは中・遠距離からの攻撃に努めており、接近戦に持ち込まれた際はあえて一撃喰らうことでカウンターを狙っていた。しかしその一撃一撃は確実に急所を狙ったものであり、確実にダメージが蓄積していた。さらに隙あらば一撃を起点に連撃を叩きこもうとしてくるので注意しなければならなかった。

 

「素早いけど疲れが見えてきたわよ」

「そっちこそ。そんな小学生みたいな体形には僕の相手は厳しいんじゃないか?」

「ふざけないで」

「おっと危ない危ない!」

 

 二本のトンファーと機関銃が激しく交差して火花が散る。弾痕と殴打により二人の顔や体には痣が浮かび、出血している。特にアゲハは自身が付けていた仮面の一部にヒビが入っていた。

 

「はっ!」

「っ」

 

 ヒナはとあることを警戒していた。それは先制攻撃の際に喰らった打撃と爆発が合わさった一撃だ。この一撃は一瞬ではあるもののヒナの意識を飛ばすほどの攻撃であり、ダメージと疲労が蓄積した状態で喰らえば気絶してしまう可能性があった。だからこそヒナの意識の大半がアゲハの体ではなくトンファーにあった。

 

「もう一度だ!」

「ッ!!」

 

 またあの攻撃がくる。

 咄嗟にヒナは機関銃を盾にして脅威を防ぐ。

 

「なーんて」

「しまったッ!?」

 

 しかしそれはブラフだった。機関銃を盾として用いてしまったせいで視界が遮られてしまい、右脚の関節部を狙った攻撃を躱すことができなかった。爆発こそ起きなかったが右膝はバキっと痛々しい音を立てて折れて、ヒナは思わず苦悶の表情を浮かべて倒れる。

 

「終わりだ!」

「まだよ!」

「があッ!?」

 

 ヒナの頭部目がけて左腕のトンファーを打ち下ろすも、ヒナは片腕の膂力で機関銃を棍棒のように振るう。カウンターを受けたアゲハ、その肋骨と左腕がベキベキと折れるのを感じながら吹き飛ばされる。バゴンと自動車にぶつかったアゲハは血反吐を吐きながら左腕を見ると本来あってはならない方向に曲がっていた。

 

「ダメージレースは私の勝ちみたいね」

「ごほごほッ!片腕だけでこの威力かよ……!」

「あなたも強いけど私の方が強かったみたいね」

「まだ終わってないんだけどッ……!」

 

 二人は激痛の中、無理やり立ち上がる。

 

「私は片足、あなたは左腕と胸部に深刻なダメージ。勝ちは明白だわ」

「だーかーら!あんたは僕の勝利条件を見誤っている」

「どういうこと」

「つまりこういうことさ!」

「ッ!?」

 

 アゲハは隠し持っていた閃光手榴弾を破裂させる。眩い閃光が辺りを包み込み、流石のヒナも目が眩む。

 

「うおおおおおっ!!」

「うぐっ!?」

 

 アゲハの大振りの一撃がヒナの腹部を捉えて、衝撃で吹き飛ばされる。吹き飛ばされたヒナはゴミ捨て場に突っ込んだ。

 

「バードハント起動!」

 

 音声操作を行ってアゲハはとある装置を起動させる。するとゴミ捨て場に遭ったゴミ袋が突如として破裂して、中から粘着質な物体がヒナに付着する。

 

「何よこれ……!」

「鳥もちだよ。先制攻撃と近接戦が失敗した時の策さ」

「うっ、気持ち悪い臭い……!」

「戦意喪失のために拘束以外に悪臭も付随していてね、お世辞にもこれを作った人は性格が悪い」

「こんなものを使うあなたも性悪ね」

「卑怯で結構。依頼は果たすのが始末屋のモットーでね」

「けどまだ銃は握れるわ」

「それなんだけど……」

 

 ヒナは何とか銃口を向けて引き金を引くも弾が出てこない。カチリカチリと空虚に音を響かせるだけだ。

 

「銃っていうのは複雑な機構を持っているんだ。ネバネバなものがその機構に入ったらわかるだろう?」

「くっ」

「僕の勝利条件はあくまで足止め。あんたの始末じゃないんだ」

「こんなもの……!」

「あまり動かない方が良いよ。だって母なる大地と連結してんだからさ、時間が経てば勝手にとれるよ」

 

 もがくヒナを見てアゲハは勝利を確信した。まるで蜘蛛の巣に引っ掛かって暴れる蝶をどのように調理してやろうかと傲慢に考える蜘蛛のように後を去る。

 だがしかし、その行動は間違いだった。

 

「はああああああッ!!」

「ウソ、だろ!?」

 

 完全に油断して慢心しきっていたアゲハは強引に拘束を解除したヒナの体当たりをまともに受けてしまったのだ。肺から漏れた空気が口から出て、倒れ込むアゲハ。追撃をするためにヒナは馬乗りになって素手で殴打を始める。

 頭部や胸部を含む重要な個所を守るために両腕で攻撃を防ぐアゲハ、しかし徐々に腕力がなくなっていきタコ殴り状態になる。

 

「うおおおおっ!」

「うっ!?」

 

 危機を脱するためにたまたま近くに転がっていた瓦礫を手にしてヒナを殴る。思わずヒナの攻撃が緩んだ瞬間、上半身を翻して馬乗り状態を解いた。

 

「ぜぇぜぇ……!」

「はぁはぁ……!」

 

 お互いに満身創痍の状態であった。どこの部位にも怪我をしていない箇所はないほどにボロボロだった。

 ダメージレースではヒナが勝っているが、小手先での戦闘技術はアゲハが勝っているため勝算がある。

 

「次で決めてやる」

「えぇ。望むところよ」

 

 ヒナは落ちていた瓦礫を、アゲハは足に携帯していたナイフを手にして睨み合う。この一手で全てが決まることはないがどこかしらの部位に深刻な障害を与えることは確かだ。

 二人は僅かな隙を狙って膠着する。そんな中、着信音が二人のスマホから聞こえる。どうやら激しい戦闘の結果、ジャミング装置が壊れてしまったみたいだ。

 

「……出ないの?」

「そっちこそ」

「なら一分だけ休戦。どっちかが早く切れても一分は絶対」

「そうしましょう」

 

 二人は同時に通話の受信ボタンを押した。

 

『始末屋!工事は完了だ!』

『ヒナ委員長!温泉開発部がゲヘナ学園の臨時駐車場から源泉を見つけました!』

「よしっ!」

「えっ」

 

 連絡を受けた二人の反応は対局だった。ガッツポーズをするアゲハと困惑の表情を浮かべるヒナ、アゲハはそそくさとナイフと道端に落ちたトンファーをコートに仕舞っていく。

 

「まさかあなたの狙いって」

「ゲヘナ最高戦力のヒナの足止め。それが僕の勝利条件」

「……まんまとハメられたってわけね」

「ぶっちゃけ破れかぶれだけど。まっ、成功して何よりさ」

「このまま逃がすとでも?」

「ぶっちゃけた話、もう体力が無いんだ。だからここは退かせてもらうね」

「何をっ!?」

 

 ポロリとコートの裾から二つの煙幕弾が転がり、中から煙幕が絶え間なく噴出する。煙幕は次第にアゲハの全身を包んでいき、煙幕が晴れた頃には姿形なくなっていた。

 荒れ果てた市街地にヒナは独りたたずみ、自身の怪我の具合を確認した。そののち、昏倒した隊員の脈拍と呼吸を確認して風紀委員本部に救急車の手配とその経緯を連絡した。

 

「……面倒くさい相手」

 

 

 一方で満身創痍になったアゲハはふらつきながらゲヘナの裏路地を歩く。仕事着や主な道具はドローンを用いて家まで発送したが、暫くの間は指名手配になっているため公共交通機関の仕様はできなかった。

 

「家まで何十キロあると思ってんだよ……」

 

 アゲハは咥えタバコをした状態で裏路地を歩く、満身創痍といえども喫煙という依存からは抜け出すことはできなかった。

 

「おいおい!見ろよあれ生徒なのにタバコ吸ってんぜ」

「ガキ、うちらにも寄越せよ」

「タバコと財布を渡さないと痛い目みんぜ!」

「……裏路地の治安がブラックマーケットと遜色ないね」

 

 満身創痍のアゲハをカモろうと五人の不良生徒が寄ってきた。至る所に骨折している状態ではまともに戦えない、それに逃走用の煙幕弾と閃光弾は尽きている。万事休すだった。

 

「……やるしかないか」

「ギャッ!?」

「何だ!?」

 

 生き残るためには神秘を込めて相打ち覚悟で殺してしまおうかと脳裏をよぎった瞬間、一発の銃声の後に一人の不良生徒が断絶魔をあげて倒れる。

 銃声の方へ顔を向けるとそこには便利屋68の姿があった。

 

「便利屋……」

「なんだお前たち!」

「邪魔すんなよ!」

「悪いけどボロボロの人をいじめるのは私の主義に反するの。やっちゃいなさい!」

「は、はい!」

「了解だよ社長」

「くれぐれもアゲハに当てないようにねー!」

 

 腕利きの便利屋68にとって不良生徒如き相手ではなかった。すぐに決着がつき、アゲハは安堵した状態で壁に寄りかかる状態で座り込んだ。

 

「あぁ、運が良いや。助かった」

「どうしたのよボロボロになりすぎよ!」

「わ、私が流れ弾で!?」

「違うよハルカちゃん。きちんと銃口管理してたじゃん」

「……左腕触るよ」

「触らなくても怪我の把握は終えてる。肋骨と左腕、複数臓器の損傷、重度の打撲痕だよ」

「ハルカ、応急キットを」

「は、はい!」

「それなのになんでタバコなんて吸っているのー!?」

「俺の生命線だ。脳と心臓が落ち着くし、生きている心地がする」

「とりあえず今はダメ。急いで救急医学部にでも放り込もう」

「やめて。それだけはダメだ」

 

 ヒナぐらいの実力者なら相手の損傷具合を把握しているはず。下手にゲヘナ学園で治療を受けるとなれば始末屋だとバレて逮捕されてしまう。

 

「けどあなた重傷なのよ!」

「それだけはダメなんだ」

「じゃあ市街の病院は?」

「それもダメだ」

「じゃあどうするっていうのよ!」

「ブラックマーケットの闇医者に頼むに決まってんじゃん」

「前々から察していたけどブラックマーケットの住民なんだね」

「けどさ今の状態じゃブラックマーケットに帰れないよね」

「し、しかもなぜか検問も行われています!ゲヘナから出れませんよ!」

「ならどうしましょう……」

「……眠い」

「し、死なないでください!」

「すぐに起きるから起こさないで」

 

 アゲハはタバコを口元から落として、パタリと地面に倒れ込んだ。カヨコはすぐに脈拍と呼吸音を確認する。どちらも乱れはないことを確認して便利屋68一同は安堵する。

 こうして始末屋アゲハの濃厚な一日は幕を閉じた。

 




ぶっちゃけヒナはキヴォトスでステータスが最優の生徒、fateでいうとセイバー(アルトリア枠)なのでステータスがアサシンのアゲハ君は勝てません。そのぐらいヒナは強いです。
なので小細工を用いてようやく短時間だけ渡り合える強さです。神秘を用いずに小細工が無い状態で戦うと普通に負けます。万全の装備かつ全盛期状態でもギリギリ負け、小細工があって引き分けです。

なのでアゲハ君はピーキーな性能なので神秘が込められた先手必中の奇襲攻撃でヒナを殺さないと勝てません、確実に先手必中の奇襲攻撃ができるのがアゲハ君の強みなんです。通常戦闘だと神秘込みの必殺攻撃は当たらないと意味がないのです。
煙幕や閃光弾を用いて仕切り直しは可能だけど強者はすぐ対応してくるから多用ができません。
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