アビドスの角 ~Abydos Rising~   作:ダニエルズプラン

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日常

 『D.U.大暴動!!連邦の権威、何処にありや!?』

 

 照りつける太陽の下、装甲車の天板にカンガ布を敷きクロノスハイスクールの発刊した新聞紙を眺める。

 見出し記事には車や商店だったであろう建物が燃えて黒煙が昇っているシラトリ区が張られ、その下には真実か定かではない文章がつらつらと書かれている。その記事によればどうも少し前から流れている連邦生徒会長が失踪したという噂は本当らしく、失踪の混乱に乗じた一部のバカたちが騒ぎを起こしているらしい。

 

 「はぁ・・・今日もキヴォトスは平和だぁ」

 

 装甲車の中に戻るため新聞紙を畳もうとすると、ある一つの記事が私の目に留まる。

 何の変哲もなく、写真すらついていないサイド記事の一つではあったが異様に目を引いた。その記事の見出しは『連邦捜査部S.C.H.A.L.E始動』という簡素なもので、なんでも連邦生徒会長直属の組織であり連邦生徒会長から全権を委任された超法規的な組織だという。

 なんだその組織?何考えてこんなもの作ったんだ?

 

 「まぁいいや。関係ないし」

 

 私は今度こそ新聞紙を畳み、敷いていたカンガ布をつかんで装甲車―――ルーイカット8輪式装甲戦闘車の車長席に戻る。ルーイカットの内部に戻ると私は立てかけておいたヘッドセットを素早く頭に被り、キューポラから上半身だけを出す。

 

 「通信手、偵察部隊からの連絡は?」

 『今ちょうど入りました。敵車両部隊は進路速力変わらずまっすぐ南アビドス中心街へと侵攻しているようです』

 「予想通りね。敵勢力の概要はわかってる?」

 『えっと・・・ありました。敵部隊はBTR-80とBTR-60などのAPC(兵員輸送車両)を中心とした中隊規模の機械化歩兵部隊と思われます』

 

 毎度毎度飽きないわねぇ、あちらの陸上戦力も相当削っているはずなんだけど・・・

 まぁいつも通り返り討ちにしてあげるだけね

 

 「全車両こちらCouronneより通達。混成大隊各員は車両に搭乗、搭乗後は速やかに複縦陣を成形されたし」

 『Dagger中隊、感度良好。指示了解』

 『Edge中隊、了解』

 『ラーテル各車、全車了解』

 

 大隊各車両からの報告とともに、私の搭乗する白線の入ったルーイカットを先頭にして陣形が形成されていく。

 相変わらずきれいな陣形を組むわね、練度は高いままで安心。

 私は前に向き直り、左手を上にあげ・・・

 

 「大隊各車、前進!!」

 

 振り下ろすと同時に、すべての車両が砂煙を起こしながら走り出す。

 偵察部隊からの情報によれば、敵車両部隊の位置は私たちの車両隊が巡航速力で30分程度走った場所だ。

 

 「・・・大隊各車こちらCouronne。敵部隊と接敵次第機械化歩兵を中心として楔一型陣形を形成、車両部隊の奇襲による混乱に乗じて包囲殲滅に移るわ」

 『『『了解』』』

 

 そのまま15分ほど走っていると、こちらと同じように砂煙を挙げながら走行する黒で統一された車両隊が見えてきた。

 急いで双眼鏡を取り出し、覗いてみると

 

 「・・・大当たり。全車両こちらCouronne。敵勢力確認、敵はカイザーPMCの機械化歩兵部隊!!各車、陣形を複縦陣から楔一型へ!」

 『『『ウーラー!!』』』

 

 私が指示を出すと同時に歩兵部隊が搭乗するラーテル装甲車を中心として楔一型へ陣形が変わる。

 陣形が完全に変わり、間もなくルーイカットの射程距離に入る直前でカイザーの部隊もこちらに気づいたらしく速度を上げた。

 しかし、それはあまりに遅い。

 

 「ルーイカット全車、全力攻撃!!open fire!」

 

 ルーイカットの105㎜砲が火を噴き、戦闘が始まった。

 

 

 

 楽な任務のはずだった。

 自分たちが普段相手しているアビドス本校の連中では到底手も足も出ないような機甲戦力で当たれば、辺境も辺境である南アビドスの学生なんて簡単に蹴散らせる。

 多くのカイザーPMC部隊の隊員たちのそんな考えは、横から急襲してきた敵性勢力の存在に打ち消された。

 

 「・・・ッ!?3時方向、不明車両部隊接近!!」

 

 誰かが叫ぶように3時方向を指さす。

 そして速度を上げた車両から敵性部隊を確認しようと車長や指揮官たちが身を乗りだすが、彼らの視界に映ったのは迫りくる105㎜砲弾の姿。

 着弾と同時にAPCの数両が爆散し隊列が乱れ、その隙を逃さず不明部隊は距離を詰めていく。

 

 「落ち着け!隊列を組みなおし、反撃しろ!」

 

 指揮車両から部隊指揮官が身を出し、反撃の指示を出すが混乱は簡単には収まらず反撃もまばらだ。

 BTR-80とBTR-60が14.5㎜機関砲を迫りくる不明勢力の車両に放つが、敵MCV(機動戦闘車)の正面装甲に阻まれる。

 不明勢力・・・・・・いや、ここまでくれば誰だってどこの勢力なのかは理解できる。

 

 「敵MCVの側面に南アビドス学園のマークを確認!敵は南アビドス学園!」

 「やはり南アの奴らか・・・!歩兵隊は急いで降車、基地に航空支援を要請しろ!」

 

 車両部隊の混乱が落ち着いたころにはすでに車列は前後に寸断されており、敵APCからアビドス学園の制服に酷似した制服に身を包んだ歩兵部隊が展開している。

 こちらの歩兵部隊も展開して応戦するが、敵MCVとAPCの攻撃によって損害が増えていく。

 

 『指揮官!基地からMi-24V(ハインドV)が離陸したそうです!あと数分で到着します!』

 「そうか!各員は遅滞戦闘を行え!数分持てば我々のかt」

 

 指揮官が言い切る前に、指揮官は意識を失った。

 

 『こちらRomeo2-4、敵指揮官と思わしきオートマトンを排除』

 「了解、よくやったわ。総員、敵車両の無力化に成功、あとは敵歩兵を掃討するだけよ!」

 

 指揮官を失ったことで、歩兵部隊の混乱は大きなっていく。

 

 「ちくしょう!南方分遣隊の奴ら、これを知ってやがったな!?」

 

 破壊されたBTR-60を遮蔽物にしながら、4~6人ほどで迫ってくる南アの生徒に対して応射するオートマトンが愚痴を吐く。

 弾のなくなった68式小銃に予備のマガジンを挿す彼の脳裏には、出撃する前に自分たちの車両隊を見ながら笑っていた南アビドス派遣隊の連中が思い出される。

 奴らは知っていたのだ、このような装甲車両だけでは蹂躙されることを。

 

 「ちくしょう、ちくしょう!奴らがちゃんと言っていれば!」

 

 派遣隊が保有していた旧式のT-62でもあれば、まだ一方的な蹂躙にはならなかったかもしれない。

 そんな思考を最後に、頭部に7.62㎜弾を2発撃ち込まれカイザーPMC歩兵は気絶した。

 

 「AT射手!あのうるさい80にFT5をぶち込んでやれ!」

 「了解!バックブラスト注意!!」

 

 またあるところでは制圧射撃を行っていたBTR-80が南アのAT射手の持つダネルFT5*1によって吹き飛ばされ。

 あるところではSS-77*2の制圧射撃を受けて遮蔽物に身を隠していた複数のオートマトン兵が手りゅう弾によりまとめて吹き飛ばされる。

 しかし数分経った頃

 

 『急報!Romeo1-8が北西方面から近づく敵攻撃ヘリを確認!数は2機、機種はMi-24・・・Vです!』

 「珍しいわね、ルーイカット隊はこの場から離脱開始。スモークはいつでも発射できるように待機!MANPADS*3用意!!」

 

 偵察部隊からの急報を聞き、急いで南アの車両部隊がカイザーPMCの車両部隊から離隔していく。

 それと同時に歩兵部隊は残骸となった車両に隠れ、MANPATSを持った生徒が配置につく。

 

 『Conqueror1、戦闘空域に侵入。すでに地上部隊は壊滅状態にあり』

 『こちらHQ、了解した。Conqueror1、および2は地上支援任務を続行。敵部隊を排除せよ』

 『Conqueror1了解。2行くぞ』

 『Conqueror2了解、地上部隊の敵討ちだ』

 

 2機のMi-24は戦闘空域に侵入すると同時に攻撃を開始。

 遮蔽物に隠れ切れていなかった南ア生徒やラーテル装甲車に対して20㎜機関砲やハイドラロケット弾などを用いた射撃が行われ、爆発に巻き込まれた生徒が意識を失い数両のラーテル装甲車は足を止める。

 

 「こちらBravo1-1、敵攻撃ヘリに攻撃されている!MANPADSはなにをしているんだ!?」

 『Bravo1-1、こちらCharley1-2。すぐ撃つから待ってて』

 

 FIM-92(スティンガ)を構えた南ア生徒が遮蔽物を出てすぐに照準器を覗き、一機のMi-24をロックオンすると引き金を引いた。

 

 『!?MANPADS!MANPADSだ!!フレア、フレア!!』

 

 FIM-92から発射された対空ミサイルは白煙を引きながらまっすぐMi-24に向かっていくが、Mi-24がチャフフレアを放出したことで赤外線誘導が惑わされ見当違いの場所で対空ミサイルが炸裂する。

 

 

 「くそっ、安い赤外線シーカーはこれだから・・・!!こちらCharley1-2、敵攻撃ヘリに対し攻撃するも回避された!一度下がる」

 『Charley2-4、了解。すでに攻撃準備はできている』

 

 FIM-92を発射し終えた生徒がBTRの残骸の影に隠れて下がり、別の生徒がFIM-92を構えて発射する。

 反撃を行おうとしていたMi-24はもう一度チャフフレアを放出して回避を試みるが、今度の対空ミサイルはチャフフレアに惑わされずにMi-24のエンジン部に直撃する。

 

 「Mayday!Mayday!こちらConqueror2、敵MANPADSの攻撃を受け制御不能!墜落する!」

 

 制御を失ったMi-24は黒煙を吐きながら地面に墜落し、爆発する。

 

 「Couronne、こちらCharley2-4。敵攻撃ヘリ1機を撃墜、残り1機」

 『了解。歩兵隊はそのまま遮蔽物に隠れていなさい、残りの1機はこちらで堕とすわ』

 

 相方のMi-24が落とされ動揺しているもう1機のMi-24を他所に、歩兵隊は全員が遮蔽物に隠れ、それとは対照的に離脱していた車両隊が前進してくる。

 

 『HQ!こちらConqueror1、敵車両部隊が接近中!当機だけでは対処は不可能と思われる。至急援軍を要請する!』

 『ネガティブ。すでに今次侵攻における参加兵力は全て吐き出している。南アビドス分遣隊への要請も却下された以上、現有戦力で対処せよ』

 『なっ・・・!?』

 

 それは言外にではなく、明確な死刑宣告であった。Mi-24のパイロットとコパイの眼下に広がるのはもはや全滅状態にある地上部隊の姿。

 この有様では反転攻勢どころか遅滞戦闘すら不可能だろう。

 

 『ふざけているのか!?HQ!HQ!?クソッ!切りやがった!』

 『機長!敵の自走対空砲が来ました!』

 『しまった!?』

 

 パイロットが操縦桿を倒して回避行動を取ろうとするよりも早く、ルーイカットと帯同していたZA-35(対空ルーイカット)が35mm機関砲の砲口を向け火を噴くほうが早かった。

 赤外線誘導の対空ミサイルとは違い、フレアやチャフに惑わされることのない35mm機関砲弾は次々とMi-24に着弾。

 次から次へと機体のステータスはグリーンからレッドに変わり、制御を失っていく。

 

 「全局、こちらCouronne。敵航空戦力の撃滅完了、以降は敵歩兵の掃討に移行する」

 

 2機目のMi-24が堕ちた後は早かった。離脱していたMCVとAPCが戦列に復帰し南ア生徒たちの進軍に合わせて支援を行い、健気にも抵抗を続けていたオートマトンたちも歩兵に撃たれるか砲撃に巻き込まれて気を失っていく。

 結局、カイザーPMCの歩兵部隊が全滅したのは最後のMi-24が墜落してから数分後のことだった。

 

 「Couronneより全局、状況終了。歩兵部隊は残存している敵兵がいないか確認しつつ、気を失っているPMC兵を縛り上げなさい」

 

 黒煙がのぼる十数両のカイザーPMC所属のAPCの残骸と、南アの生徒たちに捕縛され一ヶ所に集められるPMC兵をルーイカットの上から見下ろし、私はため息をつく。

 戦闘というのは行うよりも、終わらせるか終わった後(後片付け)の方が大変だからである。

 

 「数両のラーテルがエンジン部に被弾して動けないから、回収車を回さないといけないわね。通信手、校舎に車両回収用の輸送トラックを出動させるように連絡して」

 『了解しました』

 

 通信手に指示を出すと私も自身の銃を持ってルーイカットから飛び降りる。すでにカイザーPMC兵は一箇所に集められ、彼らから取り上げた装備の選定(・・)作業を行っているところだった。

 部下に指示を出した後、手持ち無沙汰だったので業務用にスタンドアローンされたスマホで戦闘詳報の原案を書いていると、装備の選定が終わったであろう大隊の補給物品係の娘がバインダーを片手に歩いてくる。

 

 「司令官、装備の選定終了しました。鹵獲(・・)できる装備はこちらになります。こっちが返却する物品です」

 「あら、意外と多いわね」

 

 開幕から終幕まで105mm砲やら20mm機関砲やらで滅多撃ちにされていたにしては、鹵獲可能な兵器の数が多い。

 そのほかにも最新型のスコープやレーザーファインダー、5.56mm弾や12.7mm機関銃弾など様々な物資が記載されている。

 それにしてもさすがメガコーポがバックについたPMC様ね。これだけ溶かしてもすぐ新しい戦力を編成して出してくるんだもの。呆れるわ。

 

 「・・・ん、もう輸送隊が来たの?いつもより早いわね」

 「あぁ、なんでも新型輸送トラックの試験運転をしているらしいっすよ。ミレニアム製の」

 

 地平線から砂煙をあげながら近づいてくる南アのものと思われる新たな車両隊を見てつぶやくと、ルーイカットから頭だけを出して操縦手が説明してくる。

 というかアレがそうだったんだ・・・予算申請で存在は知ってたけど、忙しくて見に行けてなかったんだよな・・・

 

 「というか、あのトラック荷台に何か載っけてない?」

 「あーー色合い的に・・・カイザーPMCの輸送トラックじゃないっすかね?」

 「なぜ?」

 「さぁ?」

 

 輸送部隊が近づいてきて分かったことだが、輸送部隊のトラックも荷台にはなぜか黒一色にタコのようなマークをつけたカイザーPMCのトラックが載せられていた。

 そして輸送部隊が到着するとカイザーPMCのトラックは荷台から下ろされ、運転席からではあるが南アの輸送トラックの運転手と輸送部隊の指揮官に礼を告げチップを渡してから私のもとにやってくる。

 見知った顔ダァ・・・

 

 「オッスクソガキども、哀れな敗残兵どもを回収しにきたぞ」

 「やっぱアンタだったのね、カイザーPMC南アビドス分遣隊司令官殿?」

 

 悪びれもなくタバコを咥えながらトラックから降りてきたのは、ある意味では顔見知りであるオートマトン。

 なぜ顔見知りかというと長いから今は置いておくが、今ここにいることは色々な意味で好都合だった。

 

 「今回の連中、アンタたち分遣隊の駒じゃないわね?」

 「お、なんで分かった?もしかしたら戦略が変わっただけかもしれんぞ?」

 「バカ言わないで、今回のは戦略の変更じゃなくて雑になったって言うのよ。少なくともアンタたち分遣隊の連中だったら私たちのルーイカット隊を警戒してMBT(主力戦車)を複数両同伴させるでしょ」

 「まぁな。バラしちまえば、今回襲撃したのは俺たち分遣隊じゃなくて本隊の奴らだ」

 

 やっぱり。通りで私たちに対する対応が遅かったはずだ

 もし私たちが戦ったの私の前の司令官率いる派遣隊だったら、損害は多くなりカイザーPMC部隊も損害は出しつつも撤退していたことだろう。

 

 「まぁそれは置いておいて・・・これ、今回の返却品よ」

 

 私がバインダーから一枚の紙を外して分遣隊司令に渡すと、分遣隊司令はため息をついた。

 

 「ハァ・・・弾薬や光学機器系が根こそぎ持ってかれたか、少しは加減してくれてもいいんだぜ?」

 「言っておくけど、返さないわよ?刻印をつけてない方が悪いんだし」

 「それは重々承知しているさ」

 

 まぁAPCが帰ってくるだけ十分か・・・と分遣隊司令はつぶやきつつ、受領書にサインする。

 刻印がついていない以上もしかしたら私たちの落とし物かもしれない。そして落とし物である以上その土地の治安維持組織が管理するべきだろう。その後の行方は知らないが

 もちろん淑女として刻印が入っているものは一つ残らず返却する

 

 「そういえば、なんでアンタたちは私たちの輸送トラックに乗ってきたわけ?」

 

 一番気になっていたことを聞いてみた。

 すると分遣隊司令殿は逆に困惑したような表情で聞いてくる。

 いや、なんでアンタが困惑してるのよ

 

 「いや、なんでも何も行き先が一緒だったからついでに送って貰っただけだぞ」

 「あっそう」

 「もちろん金は払ったからな」

 

 ここだけじゃないだろうか、敵対している組織の輸送部隊同士が行き先が同じだからって載せて貰っているの。

 私は突っ込むのを諦め、部下に返却品と哀れな敗残兵たちをカイザーPMCの輸送トラックに乗せるよう指示を出す。

 

 「おーいそっちの足の方持ってくれ」

 「よいしょっと、投げる?」

 「重いしな」

 「じゃあせーのでいきましょう」

 「「せーのっ!」」

 

 カイザーの輸送トラックの方では金属製の何かが金属製の何かにぶつかる鈍い音が響き、南アの方では損傷して走行不能になった装甲車を回収車に載せている。

 

 「・・・もしもの時は修理費や治療費を請求してもいいか?」

 「ハハハ、ナイスジョーク」

 

 気安いとはいえ敵は敵だ。何かあったとしても労災に入るだろうし自分のところから出しておけ

 そんな考えが顔に出ていたのか、分遣隊司令は一際大きいため息をはいてから胸ポケットから携帯を取り出しどこかへと電話をし始めた。

 

 「・・・ああ俺だ。ああ、予想通り作戦は失敗した。BTRが全て走行不能だから大型の車両回収車を寄越してくれ、あぁ人員はこちらで回収しておく。頼んだぞ」

 

 どうやら分遣隊司令も走行不能なAPCやMi-24を見て自分たちの車両回収車を呼んだようだ。

 私がそれを見ていると、南ア輸送部隊の指揮官が走行不能な車両を全て回収し終えたことを報告しにくる。

 

 「ありがとう。用事が済んだ者は車両に搭乗!撤収するわよ」

 

 私がそう指示を出すと南ア生徒たちは速やかに戦利品を抱えてそれぞれのAPCに搭乗していく。

 私もそれを見つつ、ルーイカットの車長席に戻ると分遣隊司令が声をかけてきた。

 

 「ちょっと待て」

 「あによ?私たちはもう撤収するんだけど?」

 「せっかちな奴だな・・・ほれ、これやるよ」

 

 そう言って分遣隊司令が投げてきたのは、一つのUSBメモリ。何これ?

 

 「正直俺たちもこいつら(本隊の奴ら)にはうんざりしていたからな、まあちょっとした迷惑料だと思って貰っとけ」

 「・・・ウイルスとか入ってないでしょうね?」

 「いれんわ」

 「・・・まああげるって言うなら貰っておくわ。じゃあまた戦場で会いましょう?」

 「ああ、また戦場で」

 

 USBを腰のポーチに入れると、全車両に前進指示を出して学校への帰路につく。

 こうして騒がしい南アビドスの日常の一つが過ぎていく。

 

 【次回予告】

 

 この照り付ける砂漠で、私たちは生きていく

 

 いくつもの悲願(ユメ)が破られ、砂漠に消えても私たちはあきらめることはしない

 

 もう一度つなげるため、か細い希望にも縋り付いてたどり着く

 

 次回『アビドスの角 ~Abydos Rising~』

 

 彼方への道(デザート・ハイウェイ)

 

 アビドスの栄華よ、再び

*1
携帯型のロケットランチャー。弾頭を変えることによって対戦車から軽装甲目標まで攻撃可能な優れもの

*2
5.56mmNATO弾または7.62mmNATO弾を使用する汎用機関銃。

*3
携帯式地対空ミサイルシステム

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