在りえし日のラ・マンチャランド   作:とろねぎ

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この空間で語られる夢とその協力者について

 

 

 

 

旧W社の独自解釈あり

 

 

 

 

そして当作品のキャラはみんな、あ・ほです

 

頭ラ・マンチャな父上とそれに対する辛辣ツッコミサンチョ

かわいいね

 

はい

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「サンチョ、やめるんだ。」

 

「っ...!」

 

父上の静止を振り切り、自身の行動を正しい事だと信じて男の首へ獲物を振るった。

 

獲った。

 

そう思ったのもつかの間、楽しげな声がした。

 

「随分なご挨拶では無いか麗しの人!そうだ、貴殿の名を聞いていなかったな!聞かせてくれないだろうか!」

 

首へ一直線に振るった槍を、見向きもせずに男は掴み取り、あろうことかただの血液として分解した。

 

質問に答える訳もなく、また血をかき集める。

 

「ふむ、これまた知らない流派だ...ここまで頑強で鋭利な血の槍を私は見たことが無い。素晴らしい練度だ。あ、誤解はしないでくれよ?決して戦いたいわけじゃ...」

 

「お下がりください父上!」

 

血鬼としての本能が警鐘を鳴らす。

 

嬉しそうに話す男の顔が、水を見た時のような恐怖を齎す。

 

先程よりも小さな槍を数本作り投擲する。

通用はしなくても、時間稼ぎ程度にはなるだろうと。

 

「話を聞かぬお人だ!」

 

だが、私の考えを甘いと一笑するように叫ぶと、その槍も血へ戻し、私へ肉薄する。

すかさず迎撃しようと動くが...

 

「恨み言は後で聞こう。」

 

その一言を境に、私の意識は黒く塗り潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ起きぬか......申し訳ない...なんと詫びれば良いのか私は力加減が下手だと、同僚にも何度言われたかわからんのだ......」

 

「謝るならこちらこそ。いまいち子供たち一人一人の性分を把握しきれておらぬゆえ。」

 

会話が、薄らと耳へ入る。

 

...気絶していた...?

私が...?

 

暗い意識の浅瀬から、少しずつ体引き起こす。

 

「ところでキホーテ殿...」

 

「お断りしよう。」

 

「そんな!?まだ何も言っておらぬでは無いか!!」

 

前の方から聞こえる喧しい声でようやく、完全に覚醒した。

 

「サンチョは吾の眷属であるぞ。」

 

...私、今どういう状態なんだ...?

 

どうして父上の声がすぐそこから...?

 

「人間風に言うと...『何処の馬の骨とも知らん奴に、娘はやらん!』というやつであろうな。」

 

「名乗ったでは無いか!!」

 

「まだ名乗っただけであろうが!!」

 

「...何をそう...言い争っているのですか...?あの男は...?」

 

薄く開いた視界に、父上の顔が入り込む。

 

いつもの...私をからかう時と同じ笑顔で。

 

「全く、ルーク殿に敵意も害意も無かったことは分かっていたであろうに。吾の言葉も聞かぬほど焦るとは、お前らしくないな?」

 

「...申し訳ございません。それでも、あの男...アレは危険です。」

 

「アレとはなんだアレとは!!いくら貴殿であっても怒るぞ!」

 

小声で忠告したというのに、アレには筒抜けだったらしい。

 

さっきまでの腹の底から冷えるような威圧感は無く、ただ少し頭のおかしい人間にしか見えない。

 

「私は...一体どうしていたのですか?あの男は、我々と同じ...」

 

「ついさっき、それについて話していたところだ。血液を操る人間など見た事も、口伝の一つも聞いた事なかったからな!」

 

「手数をかけるようだが、今一度説明してはくれないだろうか?」と丁寧に頼む父上に対し、男は「願ってもない機会だ!是非とも私の事を知って頂こう!」と...

 

「全てを語るには長い刻を要する...貴殿には、その覚悟が「なら結構ですこの人間を早く追い出しましょう。」

 

「わかった!掻い摘んで話そう!!爪を切ってヤスリで整える内に終わる程度にな!!」

 

父上は少し落胆していましたが、こんなことに浪費する時間は無いことを忘れてはいませんよね?

 

「貴殿らの貴重な時間を頂けたことを光栄に思う。この事は代々語り継いでいくとしよう!!私に家族は居ないが。」

 

そう相変わらず長くくどい前置きをして男は語り始めた。

 

それはもう、ここが舞台の上かと思う程、大仰に。

 

「単刀直入に、先程お見せした力はとある施術によるものであって私は貴殿らと同じく血鬼では無い。ただの人間である。ただ血鬼の天敵というのはまあ間違いでは無い。」

 

施術...

 

外では、身体能力を強化する施術があると...あの騎士も言っていたのを思い出す。

 

しかし...

 

「まあ...今は既に廃れた技術故、聞き馴染みも無いであろう。血を操り、己が力とする技術は私の()()にピッタリであった。その体質とは...気になるか?気になるであろう?」

 

「別に。」

 

「それは一体どのようなものであるか!?」

 

父上はもう聞いたんじゃないんですか?

 

「キホーテ殿は先も聞いたでは無いか!いやはやしかし、興味を持たれるのはすこぶる気分が良いな!」

 

やっぱり聞いてたんじゃないですか。

 

「なに、体質と言ってもそうやっかいなものでは無い。死ぬほど厄介であるが......私はな、体内で血液を過剰に作ってしまうのだ。それこそ干からびる寸前まで行ったとて、二日後には腕を振ってレストランへ足を運ぶくらいにはな!」

 

「さあ!これこそルーク殿がもっと血を取るように言っていた真相というわけである!」

 

「その通り!私にとって血液とは、仕事道具でもあり延命手段でもあり時限爆弾でもあるのだ!!正直ちょっと怖い。」

 

「常に生命を天秤にかけるフィクサーのなんと勇ましく尊いことか!」

 

あなたはいつの間にそちら側へ回ったのですか?

 

あとその男最後に本音がこぼれていましたよ。

 

それはもう情けない声が。

 

「...その男は、フィクサー以前に...ハンターじゃないですか。勇ましいなんて言ってる場合じゃ...」

 

今の父上は冷静さを失っている。

せめて、口から言葉を出す前に数秒考えられるぐらいには落ち着いていただければと思ったのだが...

 

「彼がそのつもりなら、君はもう殺されているだろう?」

 

目を逸らしていたその事実が、喉を貫く。

 

第二眷属()よりもこの男の方が血の扱いに長けているという事実が。

虚をつかれたと言い訳しても、たったの一撃で意識を刈り取られた事実が。

 

「もっとも、私にここの血鬼たちを殺す気など毛頭無いがな!確かに数多の血鬼を殺したのもまた事実だが、私のこの思いもまた事実なのである!そして私なら貴殿らの飢えを解決出来ると自負もある!」

 

何を、無責任なことを言っている。

 

家族が何人いると思っているんだ。

それを全て...お前が潤すと?

 

「あ!その顔は信じておらぬな!?」

 

何を当たり前のことを言っているんだと首肯すると男は嬉しそうに...

 

「よし分かった!ならばお見せしよう!元より土産のつもりで持ってきていたのだからな!!」

 

そう快諾した男は小さな小袋を取り出した。

 

「ふざけているのか」「その程度で乾きが収まるか」と怒りが溜まるが、父上に目で諭され黙った。

 

そして明らかにその...袋から、その袋よりも遥かに大きな血の入った袋がでてきた。

 

「ほう...!」

 

「おやお二方、次元収納ポーチを見るのは初めてだったかな?」

 

興味深そうに頷く父上へ、男は小袋を逆さにして血液パックを散乱させながら説明していた。

 

「W社...あー、異空間への出入り口を作り、それを利用した収納物をウリにしている企業があるんだが、これがまた使いやすくてな。」

 

「...」

 

「あ、パックも完全保存技術を存分に使った物故、鮮度は取りたてのままのはずだ。」

 

未だにドサドサ落としながら男は続ける。

 

「血鬼もやはり新鮮な血液が良い物だと思っていたが...間違いないか?なんなら現在進行形で採ってるんだけど。」

 

「うむ!その認識で相違無いぞ!それに、この量であれば二日は飢えずに済むであろう!全ての家族を代表して礼を言おう!! 」

 

今度は、袋とは別に懐から取り出した血液パックをいくらか追加している男に父上は勢いよく礼を告げる。

 

「これで二日分...だと...?クッ...私の五日間の貯蓄だというのに...こうなれば時間加速技術で私の体を10倍...いや30倍に加速させて...!」

 

「...ところで、まだルーク殿が吾らに肩入れする理由を伺ってはおらんかったな。聞いても良いか?」

 

「ん?そんなもの、貴殿らが気に入ったからである!......という返事は求めておらんな。そうさな...」

 

父上の問いを正しく解釈した男は、言葉を慎重に選ぶようにうんうんと唸り始めた。

 

...私も、なぜこの男がここまでするのか気になり始めていた。

 

ただの道楽か、内側に入り込んでから我らを狩るつもりなのか。

 

先程私を殺さず無力化したのだって、父上からの好意的な目を得るためであって、後で殺すつもりなんじゃないか。

 

「私は...先も言った通り、シ所属の血鬼狩りフィクサーだ。いくつもの集落を潰したし、数え切れぬ血鬼の首を切り落とした。あぁ、人間に危害を加えた血鬼を、依頼でだ。私の施術は、貴殿らの全力を封じ、私の力を増強させるもの故。」

 

『人間に危害を加えた血鬼』と、保険のつもりなのか?

 

それだけで手放しで信用は出来ないのだが、それは父上も同意見らしい。

 

だが、まだ前置きだからか静かに傾聴している。

 

「私は依頼の中で数多のな血鬼を見てきた。家族を逃がすもの、囮にして逃げるもの、一丸となって立ち向かうもの...それはもう様々の。」

 

僅かに不快感を覚えたが、これは言い掛かりの範囲だろうと自身に言い聞かせる。

 

もしもこの男が本性を顕にした時...

 

...少なくとも私は、父上に逃げるよう言うのだろうな。

 

数秒でこの首を刎ねられるとしても。

 

「実は私な...もう一つ私を指し示す言葉があるのだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「血鬼狩りの身でありながら、血鬼の安寧、血鬼との共存を思い描く。」

 

 

 

 

 

 

 

「荒唐無稽な夢を周囲へ振りまくその姿から。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『血鬼キチ』とも呼ばれている。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ恐らく蔑称であろう。」

 

仰々しく語った割には、恐らくどころかただの蔑称が飛び出て耳を疑った。

 

「...なんて...?」

 

「血鬼キチ。」

 

「......」

 

聞き間違いじゃなかったことに確かな頭痛を感じている私のことなぞ露知らず...父上は、目を輝かせていた。

 

おおかた、同じ考えを持つ人間に感激しているんでしょうね。

 

「今日ここへ訪れて確信した!私と貴殿ら...いや!人間と血鬼は、共存することが出来る!!とな!!!」

 

その宣言で完全に父上の心は打たれたらしい。

 

「吾も一語一句違わず同意見である!!家族が飢えず、また人間とも友好関係を築いていくことが吾の夢でもあるのだから!」

 

「き、キホーテ殿...いや、ドン・キホーテ殿ぉ...!!」

 

固く握手を交わす二人を見ながら、思う。

 

「...はあ...」

 

馬鹿が、一人から二人になってしまったな、と。

 

冷ややかな目で意気投合した二人を見ていると、突然男と目線が交わった。

 

「...キホーテ殿。しばし、かの麗人と二人きりにさせてはくれまいか。」

 

「どうしてだ?」

 

「あぁいや、伝えたいことがあるのだ。心配せずとも危害は加えぬし、その要件を秘密にするよう強いもせぬ。」

 

...いきなり、何を言い出すんだ?

 

今度はなんだ。

 

そんなの、さすがの父上も...

 

「うむ!気が回らなくて済まないな!ならば吾は、少しの間外へ出よう!」

 

「父上!?冗談ですよね!?わ、私は絶対に嫌です!こんな、信用の欠けらも無い男...」

 

「また後で教えてくれ!さらば!」

 

「父上ェェ!!ゔっ、ごほっ!げほげほっ!」

 

後にも先にも、ここまで叫ぶことはこれきりだろう。

 

喉が痛い...

 

喉の痛みに意識を取られていると、いつの間にか男は目の前までやってきていて、私の目をじっと見つめていた。

 

「貴殿らに協力する理由は、実はもう一つあるのだ。馬鹿馬鹿しく、現実離れした...風邪の時に見る夢の方が現実味のある言葉だ。だがそれでも伝えねばなるまい。」

 

やけに真剣な顔付きで言うものだからか、無性に私も気になって、続きを促した。

 

...すぐ後悔することになったけど。

 

私は先程、『馬鹿が一人から二人になった』と。

 

あれは、撤回しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正しくは、馬鹿一人と気狂い一人だった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

あとがき

 

こんな頭ラ・マンチャな妄想をお気に入ってくれてる人が居るのウレシイ...ウレシイ...

 

 

 

 

ルークの深堀り要る...?(設定とか生い立ちとか)

  • いる(断固)
  • 正体不明の変態で十分
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