在りえし日のラ・マンチャランド   作:とろねぎ

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血鬼らしからぬ苦悩を露呈する第二眷属について

 

 

 

ンチョ...ンチョ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「...はあ...」

 

狭い木の匂いがする空間に腰掛けて、ある人物を待っていた。

 

「最近のあなたは、どうも気分が優れないようですね。少なくとも...ここを利用なさるほどには。」

 

その私が待っていた人物は、たった今到着したようで、一枚隔てられた薄い壁から声が聞こえてきた。

 

「......あぁ、そうかもしれない。なにせ、心当たりが多いものだから...」

 

「良くも悪くも変わりつつありますから仕方がないことだと思います。しかし...今回は、このような話に花を咲かせるつもりでは無いのでしょう。」

 

「悪いな、神父...いや、クリアンブロ。」

 

私が名前を呼んだことに驚いたらしい。

向こうからわずかに息を呑む音が聞こえたが、その後すぐ、至極冷静な声が返ってきた。

 

「面談を始めましょうか。」

 

「あぁ。」

 

「...時にサンチョ様、血液バーは食べましたか?」

 

「血液バー?...あぁ、ドゥルシネーアがクレパスと評したのはあながち間違いじゃなかったな。飢えを凌ぐには良いが、渇きは収まらない。」

 

「皆さんそのように仰られます。やはり混ぜる人間の血液の割合を増やすべきなのでしょうか...」

 

「血液の備蓄に余裕があるうちに試すといい。私とドゥルシネーア(第二眷属)でも物足りないんだ。下の家族にはもっと堪えるはずだから。」

 

「ありがとうございます。この意見はニコリーナらにも共有させていただきます。さて、今度こそ面談を始めましょうか。申し訳ありません。」

 

「いいや、お前たちの努力は知っている。」

 

「重ね重ねありがとうございます。」

 

私の言葉を促すように神父か黙り込む。

 

一言私も礼を告げて、用件を語った。

 

「最近父上が一人の人間と親密な仲なのは知っているだろうか。」

 

「はい。狩人のルーク様ですね。」

 

「...そいつ...る、ルーク...が、どのような人間かは?」

 

「私は彼と直接話をした事はありませんが、噂はかねがね。何度か私のアトラクションへ訪れたようですが、ここへは来ませんでした。彼が退園した後、ここの家族全員から面談を申し込まれ、いずれも同じような話でした。」

 

何をしたんだアイツは...

 

頭痛くなってきた。

 

「なんて...言われたんだ...?」

 

「過剰なまでに驚いて、小さな血液パックを渡してきたそうです。そして一言その者を褒めて、先へ進んだと。」

 

「...」

 

面談がこの懺悔室で行われていて本当に良かった。

 

こんな顰め面、家族たちには見せられないだろう。

 

「......噂は...?なんて聞いたんだ...?」

 

「人間のドン・キホーテ様のような方だと。血鬼との共存を夢見る人間。それから...『血鬼キチ』とも。」

 

「なんでそれは伝わってるんだ...」

 

脳が弾けるんじゃないかと言うほどに、ハンマーで殴られているような鈍い痛みが頭を打ち付ける。

 

「仕切りに辺りで喧伝しておられましたよ。」

 

「...」

 

「しかし、ルーク様がどうかされたのでしょうか?何か無礼を?」

 

「無礼...と言えば、無礼では...ある...のか...?」

 

あの時のことが鮮明に蘇り、それもまた頭痛の片棒を担ぐ。

 

「神父...言いたくなければいいんだが...誰かを愛したり、愛された経験はあるか...?」

 

「...?いえ、一般的には素晴らしいことだと認知はしていますが...そのような経験はありませんね。」

 

「そうか...」

 

「お役に立てず申し訳ありません。恐れ入りますが、その質問にはどのような意図が?」

 

「...血鬼に惚れる人間ってどう思う。」

 

「はい?一体どのような意味で......あっ...」

 

「......分かったか。」

 

「これは確かに...この場所でないと話せませんね。この事を知っているのは、私以外に誰が居るのでしょうか。」

 

「お前と父上だけだ。くれぐれも他の家族には言わないでくれ...ニコリーナには特に...!このことを聞き付けたら、どんな服を作られるか分かったものじゃない...!」

 

想像しただけで鳥肌が立つ。

 

二の腕を擦りながら頼む。

向こうからは見えないはずだが、薄々気付いていたのだろう神父も了承してくれた。

 

「はい。しかし、どうしたものでしょうか。何せ、このような相談は初めてで...大抵は『腹が減った』『喉が渇いた』などが大半ですから。」

 

「お前に解決策を出してもらおうとしているわけじゃない。本当に、ただ話を聞いて欲しかっただけだ......周りには敵しかいないからな...」

 

「下位眷属がこのようなことを言ってもいいか迷いますが...心中、お察しいたします。この事を父上はなんと?」

 

「...『サンチョ、俺、いいアイデアを思い付いたんだ。』」

 

「あっ...」

 

「今度のアトラクションは劇場にするようです。それも、最初の公演はラブロマンスだそうです。」

 

「.........」

 

「これ、もう親不孝してもいいよな?」

 

「お、お気を確かになさってください...!」

 

「...冗談だ。あぁ、冗談......少し気が楽になった、感謝する。」

 

「...お役に立てのなら幸いです。もしまた何かあれば申してください。優先的に予定を入れますので。」

 

「いや、それは元の順番を守ってやれ。あ...ただ、どうしようも無い時は...頼む...」

 

「はい。」

 

頭痛の治まりつつある体で、懺悔室から出た。

 

外へ出る頃には夜の時間帯だった。

 

ここが閉まる前に必ず行われる、パレードの真っ最中だった。

 

賑やかな音楽に湧き上がる歓声。

煌びやかで巨大な乗り物に乗ったドゥルシネーアが、柔和な笑みを浮かべ、観客へ上品に手を振っていた。

 

「...?」

 

私をすぐに見つけたドゥルシネーアは、私を見て怪訝な表情を一瞬浮かべたが、それもすぐさま、周囲からの賞賛への誇らしさに変わった。

 

恐らく、今の私は相当酷い顔をしていたのだろう。

 

そろそろ、父上の様子を見に行かなければ。

 

そう理由をつけて、パレードの光から背を向け、いつもの管理人室へ向かった。

 

人はパレードに集まって、家族たちは各々の場所で休んでいたから、昼とは比べ物にならないくらい歩きやすかった。

 

思考を回していればすぐさま管理人室に着いて、扉を開ける前に念の為何度か叩いてみる。

 

「...反応が無い?父上?入りますよ?」

 

扉を開き、中へ入った...その瞬間からだった。

 

「こんなレンガみたいなものを食わせようとは正気か貴様!むしろレンガの方が美味であるぞ!!」

 

「しかし極小量の血液で一日活動する分のエネルギーを得られるのだぞ!?これが本格的に量産体制に入れば、もしや人間から血を集める必要もなくなるのやもしれん!!」

 

以前に肩を組んでおぞましい計画を立てていたバカ二人の姿は無くて、何やら本気で言い合っているようだった。

 

「体の栄養も必要だが貴殿らにまず必要なのは心の栄養であろうが!!人間とて生活に必要のない食を嗜む生き物ぞ!!頭のおかしい油と塩の分量で作られた料理は皆が好む!貴殿らに必要なのはこの余裕だ!!嗜好品を嗜好し過ぎるがあまり膝に爆弾を抱えた人間もいるのだぞ!!」

 

「うん?どういう事だ?」

 

何を言い合っているのかと思えば、血液バーの話か。

 

テーブルの上になんでレンガが積まれているんだと思っていたがよく見れば、血液バーだったらしい。

 

...というか、仮にも外部の人間にここまで見せていい物なのですか...!?

 

「我々に必要なのは安定した血液バーの供給である!」

 

「違う!貴殿らに必要なのはただ美味いだけの嗜好品だ!」

 

はあ...どうしてこんな...こんな事?

コイツが話に入っているから感覚が麻痺していたが、この話は家族たちへも大きな影響を与えないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「どう思う!?吾(我)がサンチョ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

「...えっ?私ですか?」

 

「「あぁ!!」」

 

やっぱり仲良いですねあなた達...

 

「なぜ私に判断を委ねるのですか。普段あれだけ自由に我々を振り回している父上まで。」

 

「それはルーク殿に忠告されたからであるな!もっと家族との会話を増やすようにと!!」

 

「うむ!!会えなくなってからではもう遅いからな!それさえ知っていれば、私も...おっと、話が逸れるところであったな愛しのサンチョ!!話は聞いていたのだろう?」

 

「吾らが気付いていないと、そう思っていた訳ではあるまいな?」

 

「それならばどちらの案が今必要か分かるはずだ!さあ!!私の胸に飛び込んでこい!我が愛しのサンチョォォォォッ!?

 

ノコノコ近付いてやれば、無防備に体を広げるものだから、とりあえず腹に一発。

 

別に血を使わなければどうということは無いというのには、最近気付いた。

 

「...ふ、不意打ちとはっ...!勝ちにこだわるその姿勢も...素敵だぁ...!」

 

頭湧いてるのかなこいつ。

 

「サンチョ...!あぁ吾が子よ!お前ならわかってくれると...」

 

「お言葉ですが、父上に全て賛同できる訳でもありません。癪ですが...こいつにも、少しは納得できるところがありました。」

 

「......そうか...」

 

露骨にしゅんとしないでください。

本当に第一眷属なんですか?

 

「父上は、あのレンガブロックを食べてどう思いましたか?」

 

「吾か?腹は脹れるが物足りない、とは思ったな。」

 

第一眷属(父上)でさえその感想のものを、私よりも下...ニコリーナ、クリアンブロよりも下の家族がどう思うかも分からないのですか?」

 

「さ、サンチョ?なんだかお父上への当たりがキツくないか?」

 

「お前がお父上だとか言うな。」

 

「ぐべっ!...モウシワケゴザイマセン...」

 

鳩尾にもう一発叩き込んで変態を黙らせてから、もう少しだけ父上に意見することにした。

 

「父上は私たちに『人を襲わずに生き延びる』事を希望しているのでしょう。ですが大半の家族は違います。『生きたい』んです。血鬼としての衝動は百も承知として、本当に人間と生きられるならと、そうして夢を持っている者も居るんです。」

 

「サンチョ...」

 

普段、適当にあしらわれこそしてもここまで言われることは無かった父上は、唖然と、しかし喜ばしそうに私を見ていた。

 

私としても珍しく、酷く感情的な言葉。

 

「だから...生きられるだけのレンガブロックも反対はしません。ですが、衝動を抑えられる...抑えられるだけのものがあってもいいと......お、思います。」

 

最後の最後で冷静になってしまったが、それでも父上には伝わったらしい。

 

満足気な表情で何度か小さく頷くと、「では血液バーの生産分を、いくつかそちらの開発に注力してみよう。」と言ってくださった。

 

「ふむ、しかし、名前は仮としても決めておいた方が良いのでは?いつまでも『あれ』や『これ』等では不便であるまいか?」

 

「それもそうだな。仮であろう?そうだな...ならば思い付いたぞ!その名も!!『一本満足バ「キホーテ殿ォ!それはなんかダメな気がするぞ!!」

 

「...ダメか?」

 

「端的に『満足バー』とかでいいんじゃないですか?」

 

「そっ...!...っちは、いいか...」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

あとがき

 

パパ上は名前、サンチョは名前と役職どっちでも呼んでた気がする...

 

サンチョの他血鬼の呼び方を覚えていない私は有罪でしょうか。

 

目を包帯で覆った鳥

「うーん、とりあえず死刑www」

 

 

 

 

 

 

ルークの深堀り要る...?(設定とか生い立ちとか)

  • いる(断固)
  • 正体不明の変態で十分
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