在りえし日のラ・マンチャランド   作:とろねぎ

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ここでは狩人の謀略に貶められる第二眷属が描かれる

 

 

 

お久しラ・マンチャ〜(気さくな挨拶)

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

全くもって頭が痛い。

人間だった頃ですらこのような痛みは知らなかった。

 

これも全て、あの男...あの気狂いが、微生物よりも頭の悪い事ばかりするからだ。

 

「......でだなサンチョ、吾々にあった味を探求するために...サンチョ?サンチョ聞いているのか?」

 

いや、あの男と比べられる微生物が哀れだ。

ならば血袋以下...いや、いや...血袋未満だあの男は。

 

血袋未満の頭血鬼野郎だ。

 

いや頭血鬼野郎ってなんだ?

 

アレは血鬼じゃない。

アレと同じだなんて身の毛もよだつ。

 

「サンチョ〜?」

 

これ以上何かをしでかす前に、なんとか対処しないと。

 

しかし私よりもアレの方が強いのは、認めたくないが事実...ならば、今度父上が冒険に出掛けた時、その時は断固としてここに残って...

 

アレが来た時に、家族全員で襲ってみるか...?

 

...いや、家族を危険に晒したくは無い。

 

「無視はさすがの俺でも傷付くぞサンチョ。」

 

血を使うのは以ての外、むしろ利用されて終わりだろう。

 

そうなると...

 

「......サンチョ、俺、いいアイデアを思いついたんだ。」

 

「ドンキホーテ流以外の武器か...」

 

出来れば、血を使わない、一般的な人間も使えるような武器。

 

「え?謀反起こそうとしてる?」

 

「はい?どうして謀反なんて単語が出てくるんですか?」

 

「もしかして俺の話を聞いていなかったのか。」

 

「え?あ、あー...」

 

私の視線が、父上の目の前に積まれた大量の赤レンガ...じゃなかった。

血液バーへと降りかかる。

 

「......反対です。」

 

「血液バーの改良の話じゃないぞ?あながちハズレでもないが。」

 

「えっ」

 

「サンチョ...聞いていなかったのならそう言いなさい...そしてそうやって頭ごなしに否定されるとさすがの俺でも深い傷を負うぞ...」

 

「そうなんですか?意外です。」

 

「最近君容赦無いな。俺が何かやったか?」

 

「心当たりがないとその考えは出ないですよね。」

 

とぼけているのかそれとも素で言っているのか...

 

「ふむ...やはり、ニコリーナに君のドレスを仕立てさせたのが不味かったか...」

 

「は?あれ父上の指示だったんですか?」

 

「おっ?もしかしてなくても俺、余計なことを言ったみたいだな!」

 

「冗談抜きでその内親不孝されますよ。」

 

冗談抜き、だなんて冗談を返したら、父上の顔から笑みが失せた。

 

「...サンチョは、そのつもりがあるのか?」

 

その代わりに、捨て犬のような顔になった。

 

最近、この顔をすれば誤魔化せると悪知恵を付けた気がする。

 

「そのっ...!......つもりは、無いですけど...」

 

「なら良いな!」

 

この人本当に狡い。

私がどんな考えで協力しているかも分かっているくせに、それを分からないフリをしてとことん良く使うんだ。

 

...いや、父上の事だからやっぱりなんにも考えてないな?

 

「......もう私が聞いていなかったのは事実ですから、何を考えていたのか教えてくれませんか?」

 

「君が俺の考え...言わばアイデアを聞くとは!明日は血の雨が降るかもしれないな?」

 

「なんですかその喜ばしいかどうか微妙な雨。それで、何を...」

 

「考えていたんですか。」そう言いかけた私は、即座に口を噤む事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「私が、来〜〜たっ!!」

 

 

 

 

 

 

「......」

 

血鬼でも、呆れて言葉が出ないことってあるんですね。

何だあのパンパンのキャリーケース...

 

「父上、血液バーを一つ、いただきます。」

 

「え?あ、あぁ。」

 

山のように積まれた赤レンガを一つ手に取って、構える。

 

「私が誰かって!?私だよ私!ヴァンルウゥゥゥ!!?

 

「チッ、避けられたか。」

 

「おやこれはこれは愛しのサンチョ!!都市のメジャーリーガーも嫉妬のあまり腕を折るようなナイスピッチングであったぞ!!182km/hのストライク!!と言ったところか!!」

 

「そんなに野球がしたいなら今度はデッドボールだ。今楽にしてやる。」

 

「なんと!サンチョはメジャァリィグァの才もあると言うのか!?さすがは吾がサンチョ!!しかし、野球とはそのようなルールであったか?」

 

「細かい事を気にしていたら禿げますよ。では私はこれで、園内を見回りに行ってきます。」

 

「今吾に禿げと言ったのか?そんなわけが無いだろう!見よ!このサラサラキューティカォルな髪を!!」

 

「どうしたんですかその話し方?いつも以上にかわっ......大袈裟な。」

 

「紳士への髪イジリは流石のサンチョ殿でも感心はせんな!!ハッハッハッうおっあぶなっ!!」

 

お前は黙ってろ。

 

もう一つ血液バーを投げ付けてから立ち上がり、宣言通りラ・マンチャランドの見回りにでも向かう。

 

「フッフッフ...お前が家族を思うのは吾も嬉しいが、そんなに焦ったところでいい事は無いぞ!」

 

「...は、はあ?」

 

しかし父上はそんな私を、意味ありげな怪しい笑い方をしながら引き止めた。

 

「以前、ただ血鬼としての本能を満たすためだけの血液バーを作ると言っただろう?」

 

「?...そう、ですね?」

 

いきなり何の話だろうか。

 

困惑し首を傾ける私に対して、相変わらず誇らしげな父上。

 

「食事は生きることだが、それと同時に楽しむものだ。そうは思わないか?」

 

「...申し訳ありません。質問の意図が...その、理解出来かねます。」

 

「娯楽としての食を追求するに欠かせないものが...分かるか?」

 

意地でも質問へは質問で返し続けるんですね?

 

この流れは、また何かよからぬことを思いついた時の父上です。

 

「......味...?」

 

「その通り!!血の味と一括りにしたところで、細かな違いがあるのはサンチョも分かるだろ?」

 

「まあ...はい。」

 

「しかし悲しいかな。血の味を変える設備など、ラ・マンチャランドには無いのだ。しかし!!都市にはあるらしいではないか!!」

 

「正確には脳を錯覚させる効能を注入する機械だがな!!」

 

いつからか姿を消していた男がひょこりと顔を出した。

 

「そしてその設備を購入する伝手を、何を隠そうルーク殿が取り持ったらしいのだ!!そこで...」

 

次の言葉を溜めて間を作る父上に、いつになく私の勘が警鐘を鳴らしていた。

 

「...う、嘘ですよね?まさか、私をコイツに同行させるつもりじゃ...」

 

「話が早いなサンチョ!!」

 

「.........もうやだ...そ、それなら!いつも通り父上が行けば良いでは無いですか!お好きな冒険でしょう!?」

 

「家族との時間を大切にしろとついこの間説教されたばかりだからな!君とはいつも一緒だろう?」

 

「〜〜〜ッ!!!!」

 

なんでこんな時に限ってしっかりとした父親面するんですかッ...!!

 

コイツと...外に...!?

そ、そんなの死んでも御免だ!

もうコイツを殺して私も死ぬしかない!

 

「...そこまで拒否されるとさすがの私も凹むぞ...そう、それはまるで、溶岩が顔を覗かせる谷底の如き凹み具合...」

 

「うるさい!」

 

「食べ物を粗末にするなァ!!」

 

なんで私が怒られた?

 

「けほん...しかし私とて鬼では無い。拒絶の意を示す淑女を連れ回すなど男の風上にも置けん。ということで、二つ選択肢を用意した。」

 

「...選択肢...?」

 

気を使ってくれているのか?

 

...なんだ、案外話の分かる、良い奴じゃ...いや違う!!どうして一瞬騙されそうになったんだ!?

 

「一つ!大人しく私とちょっとした冒険に行くこと!!」

 

死んでもお断りだ。

 

「もう一つ!!もう一つは...あー...もう一つ...は...」

 

チラチラしきりに腕時計と部屋の扉の間で視線を反復させる男。

 

「ん......遅いな...?」

 

何か、もしくは誰かが来るのを待っているような...

 

そう思っていた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たいっへん!お待たせいたしましたわぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここにいるはずの無い、甲高い声が聞こえてきたのは。

 

赤く大胆なスリットの入ったドレス。

血のような赤と骨のような白をした巨大な鋏。

何度もしつこく私へ迫っていたあの声。

 

「来たか理髪師殿!!」

 

「あらぁごめんなさい!あれもこれもと用意していたら、ついつい遅くなってしまいましたわぁ!」

 

「に、ニコリーナ...?どうして、ここに...」

 

「サンチョ、あぁサンチョ!いつもいつも逃げてた貴方だけど...今日こそ!私の仕立てたドレスを着ることになるのよぉ!」

 

「......はあ?」

 

いつになくテンションの高いニコリーナを、小首を傾げて眺めていると軽く男が咳払い。

 

「二つ目の選択肢、それは、理髪師殿の仕立てた服を着るかだ!さすれば私も、貴殿をドキドキワクワク☆23区デェトツアーに連れて行くことはやめよう!家族との時間が何よりの宝であるからな!!」

 

おい今デートっつったな。

 

「あら!あらあらあらぁ!デートですってぇ!サンチョ、貴方も意外と、隅に置けないんですわねぇ!」

 

「...ち、父上ぇ...!」

 

「......たまにはドレス姿のサンチョも見てみたいな!」

 

「父上ッ...!!!!」

 

「ドン・キホーテ様ぁ!この方からのお土産からインスピレーションを受けましてぇ、実は、ドレス以外にも作っていますのよぉ!!」

 

「!!さては、以前知り合いより譲り受けたバトラーの衣装...あれを作れたのか!?そうなのか理髪師殿!?」

 

ば、バトラー?何の話だ?

 

「中々趣深い造詣でしたわぁ!で、す、が...私にとってみれば、おままごとより簡単でしてよぉ!」

 

私の知らないところで話が進んでいく。

 

「っしゃァァァ!!バトラーサンチョ来たァァァッ!!!」

 

ガッツポーズするな。

殺すぞ。

 

「バトラー...確か、フィクサーの種類の一つだったか?......なあサンチョ、やっぱり冒険は今度にしないか?」

 

父上まで...

 

「.........もう......それで...いいです...」

 

もうやだこいつら

 

「記念すべきこの事はしっかり記録しておかなければなりませんわねぇ!」

 

いつになく上機嫌なニコリーナ。

 

...家族円満とは...こんな形なのだろうか...

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「......そのような事があったのですね。通りで、最近のニコリーナはやたらと上機嫌なわけです。」

 

「もうしばらくシャッター音は聞きたくない...一つの服につき前後左右から撮られた...」

 

「...ご苦労様でございます。」

 

もう私の味方はお前だけだよクリアンブロ...

 

ニコリーナはまだ、あの男が私へなんと言っているか知らなかったからいいものの...ドゥルシネーアはどうなんだろうか。

多少なりとも噂は聞きいれているはずだし、もう既に接触しているのではないだろうか?

 

...いかん、また胃が痛くなってきた。

 

「ふむ...私は美的感覚には優れておりませんので詳しいことはわかりませんが...どの写真も、綺麗に撮れておりましたよ。どの服も着こなしているように見えました。」

 

「そうか...しかしだな、そんな慰めは意味がな......待て。今なんて言った?見たのか?写真...」

 

「あ...い、いえ!これはニコリーナに見せられただけであって決して...!」

 

「......いや、いい。何もお前を責めるわけじゃない。それぐらいの分別は着く。」

 

しかしこうなってしまえば、もう...

 

「...もう...ニコリーナ諸共アイツを殺して私も死んでやる...!!」

 

「お、お気を確かにサンチョ様!」

 

今回も、冗談ということにしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

あとがき

 

家族の隔たりをとっぱらおうとしてくれるだなんて、なんて良い人なんでしょう。

 

 

 

ルークの深堀り要る...?(設定とか生い立ちとか)

  • いる(断固)
  • 正体不明の変態で十分
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