塩の錬金術師 ~死んだはずの幼馴染の手によって異世界に錬成された俺は、最弱錬金術『三原質』で世界を統べて究極の力を手に入れます~ 作:クワガタ信者
「マリア、少し頼まれてくれるか」
俺は今、弔葬部隊のメンバーとしてみんな共にいる。
朝起きたら、シオンはもうベッドを出ていた。
ちゃんと眠れたのかな、俺の事が怖くて全然眠れなかったんじゃないか。
なんてことを考えていたら、ミラさんがマリアさんに話しかけていた。
「物資の調達を頼みたいんだが」
「あらあら、任せてミラ。何を買えばいいかしら」
「リストはここに。結構な量必要になる。馬車で行ってきてくれ」
ついでにと、ミラさんが補足する。
「ソーイチ君にこの村を案内してあげてくれ」
「わかったわ。承りました」
「あのっ、ミラさん」
俺は二人の会話に割って入った。
「どうした? ソーイチ君」
「あの、今日シオンの姿って見たりしてますか?」
「ああ、シオン君ならさっき会った」
「その、どうでした?」
「どう、とは?」
「具合が悪そうだとか、眠たそうだとか、目にクマができてたとか…」
「いや、そんなことはなかったな。むしろ顔色一つ悪くなかった。今までで一番健康的かもしれない」
「そ、そうですか。よかった」
安心した。俺の所為でシオンが隊長を崩していないか不安になっていたんだ。
「それはもしかしたら、君のおかげかもしれ――」
「はいはーい」
ということで、とマリアさんはみんなに呼びかける。
「みなさーん、お使いの仕事ですよー」
マリアさんの呼びかけにみんなが一斉に振り向く。
「はりきっていきましょうね」
◇◇◇◇◇
俺達弔葬部隊全員は馬車に乗り、市場に繰り出していた。
途中、この町の名物などの説明も加わり、村しか知らなかった俺には新鮮だった。
馬車から降りてミラさんから渡されたリストの物を探していると
ポコっと頭に何かが当たったのを感じた。
なんだろうと、俺の頭から跳ね返って宙に舞った何かを手でキャッチする。
「……石?」
するとどこからともなく、石が飛んできた。
石の向かう先にはマリアさんが!
「危ない!」
俺はとっさに身を乗り出して、マリアさんを庇う。投げられた石は頭にポコッと当たり、跳ね返って地べたに落ちた。
「な、なんだあ!?」
石が飛んできた先を見ると、女の子が石を投げようと振りかぶっていた。
再び投げ出された石は、俺の眉間に当たってまた転がった。
「こら! チル!!」
どこからともなく子供をしかりつけるような声が聞こえてきた。
それを聞いた女の子は飛び込むように路地裏へと逃げて行った。
続けて町の役人らしき男がすごい剣幕で路地裏に入っていく。
「だっ、大丈夫!? ソーイチ君!?」
マリアさんが慌てながら俺の額眉間をさすってくる。
「すみません、マリアさん、俺、ちょっと!」
「ちょっと、ソーイチ君!?」
駆け出す俺をマリアさんが驚きながら見ていた。
あの女の子、間違いない。ここに来た時に見かけた女の子だ。
俺たちのことを恨むような目で見ていたあの子。
「捕まえたぞ!」
「やめて! 離してえ!」
「また連合の錬金術師様に無礼なことしよって! 今度という今度はもう見過ごせん! 折檻してやる」
「あの!」
俺の声を聴いて役人らしき男は振り返った。
「あなたは……」
「あっ、俺、第七師団のソーイチって言います。入ったばっかですけど」
「たっ、大変申し訳ない。こいつったら村を守ってくださる錬金術師様に石なんか投げつけて。私が厳しく躾けておくんで、どうかご容赦を願います」
「あ、いや、そういうことじゃなくて」
なだめようとしている俺を見て、役人さんは首をかしげる。
石を投げつけられて俺が怒っていると思ったんだろう。
「その子と話がしたいんです。その、暴力とかそういうのじゃなくて、本当にお話を」
「でも――」
「大丈夫です。その子の石が当たったのは俺だけなんで。他の団員は誰も被害になんてあってませんから」
俺は眉間は親指でトントンと叩いた。
「そ、そこまで言うのでしたら」
役人さんは女の子を解放し、俺の方に向ける。女の子は後ろに人がいるので、逃げることはできない。
「こんにちは。俺はソーイチ。君は……チルちゃんでいいのかな?」
腰を曲げて目線を合わせる。子供と接するときはとにかく同じ目線に立って話すのが基本だ。いろんな意味で。
「…………」
女の子は、俺から目を逸らして俯いている。
「どうして石なんか投げたりしたの? 人に当たると危ないよ? 多分わかっているよね?」
女の子は何も答えない。
「別に怒ってるわけじゃないんだ。石が当たったの俺だけだし、怪我なんて全然してないしほら。ここ、全然平気だろ? めっちゃ頑丈なんだ俺」
再度、眉間をトントンと叩いた。女の子は言葉につられて俺の眉間を見る。
やっと目を合わせてくれた。
「俺はいいけどさ。近くにいた女の人は、当たったらもしかしたら怪我をしたかもしれない。石って結構硬いんだぜ?」
女の子は俺の目を真っ直ぐに見据えて何かを訴えたいような表情をしている。
「何か理由があるんじゃないかな。理由もなく石なんて投げないよね? 聞かせてくれるかな。どうして石なんか投げたの?」
「……錬金術師なんて」
小さく唸るように女の子はそう呟く。
「錬金術士なんて大っ嫌い!!」
そう叫んで、俺の脇を抜けて女の子は走り去ってしまった。
第16話、いかがだったでしょうか。
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