塩の錬金術師 ~死んだはずの幼馴染の手によって異世界に錬成された俺は、最弱錬金術『三原質』で世界を統べて究極の力を手に入れます~   作:クワガタ信者

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第27話 お手本のような差別主義者

「げっ」

 

 バンビは明らかに嫌そうな顔をして三人組の(やから)どもを見て呟いた。

 

「第十一師団……!」

「なんか文句あんのかよ? 合ってるだろ? お前らクソと小便にまみれてんだからなぁ!?」

「何度も言ってるでしょ! 弔・葬・部・隊って!!」

 

 バンビがすごい剣幕で言い返す。こんなにバンビは見たことがない。

 

「何が()()だよ! かっこつけやがって! 戦えもしねーお荷物なんて穀潰しの役立たずだろうが! クソでも錬成してろや」

 

 ギャハハハハと下品な笑い声をあげて(やから)共は騒ぎ出した。

 

「あんたら――」

「あのさ」

 

 俺は間に割り込み、(やから)の一人の目を見据えた。

 

「俺たちはさ、確かに遺体から糞尿を取り出してるよ。それが体につくこともあるかもしれない。でもさ、それって遺族に仏さんを綺麗なまま返すために必要なことなんだよ。あんたらだってやだろ? 自分の大切な人が腐った状態で戻ってきたら」

 

 (やから)どもはぽかんとした顔でこちらを見ていた。

 

「大切なことなんだよ、すごく。だからさ、糞尿だって嘲笑うのはやめてほしい。それって死んだ人にもすごく失礼なことだからさ」

「てか誰? お前」 

「想一・弟切。第七師団弔葬部隊の一員だよ。まだ仮だけど」

 

 そう言い放つと、一拍置いてまた嘲笑の嵐が沸き起こった。

 

「ぶっははははは! お前まじかよ!! 男の癖に糞尿部隊かよ! なっさけねー!!」

「なんだよ。いけないかよ」

「当たり前だろうが! 糞尿部隊なんて、弱い無能な女がどこにも入れないから仕方なく置いてやってるとこだぞ? そんなとこに入るなんて俺なら恥ずかしくて死んでるね!」

「違う! 彼女達は無能なんかじゃない! それに恥ずかしくもない! 俺たちだって戦ってんだ」

「戦う? 何とだよ」

「戦ってる場所はあんた達とは違うかもしれない。それでもみんな自分のやるべきことを一生懸命に向き合ってるんだ。これだって戦いだろ?」

「まじかお前」

 

 輩の一人が俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「舐めてんなお前。戦えねー男の癖にイキりやがって。戦うってのがどういうことか教えてやんよ」

 

 そう言って(やから)Aは拳を振り上げた。

 

「おやめなさい!」

 

 男性の高い声が響き渡る。声の主に目を向けると、紐のついた眼鏡をかけた、ピンク色の坊主頭のインテリヤクザみたいな男がこちらを見ていた。

 

「ガジルさん、ベミリさん、ゲヘラさん、庁舎内での喧嘩は御法度(ごはっと)です。弱い者を侮蔑(ぶべつ)したい気持ちはよくわかりますが、ルールは守りましょう」

 

「「「はっ!」」」

 

 (やから)共はピシッと背筋を立ててインテリヤクザに敬礼した。

 

「これはこれは、お久しぶりですねミラ師団長」

「……お久しぶりです。ブリジラ師団長」

 

 ミラさんが会釈をする。このインテリヤクザ師団長なのか!? 組長じゃなくて!?

 

「相も変わらず弱者を集めてごっこ遊びをされてるようですね。そろそろ限界がきたんじゃありませんか?」

「生憎ですが私の団員に弱者はおりません。みな優秀な錬金術師です」

「中にはあなたやリノ副団長のような特異な方もいるでしょう。ですが、弔葬部隊など無駄な人員を引き連れてるようでは層の薄さが筒抜け。死者など放っておけばいいのです。死んだ者に意味はないのですから」

 

 メガネをクイッとしながらブリジラと呼ばれる男は嗤った。

 

「お言葉ですが、第七師団の他にも弔葬部隊を採用している師団は多くあります。みな、志半ばで散っていった勇士達を胸に刻み付けて前に進んでいるのでしょう。それが士気の向上にもつながるはずです」

 

 ミラさんはキッパリとそう返した。

 数瞬、二人の師団長が睨み合う。最初に動いたのはブリジラ師団長だ。

 

「まぁいいでしょう。あなたと無駄話をしにこちらにきたのではありません。それでは失礼」

「……命拾いしたな」

 

 俺の胸ぐらを掴んでいた(やから)Aはそう吐き捨てて、ブラジラ師団長の後を追っていった。

 

「はぁ……」

 

 ミラさんは頭を押さえながら深いため息を吐いた。

 

「いったい何だったんだあいつら……」

「彼らは第十一師団。師団きっての過激派だ。なんでも、団員全てが男性の戦闘員で構成されているらしい。ブリジラ師団長は、女性の錬金術師や非戦闘員は必要ないと提唱しているんだ。面倒な方だよ」

「えぇ……」

 

 めちゃくちゃ差別主義者の集まりじゃないですか。

 俺らのいた世界だとものすごい勢いで炎上しそうだ。

 

「ソーイチクン、大丈夫だった?」

 

 バンビが神妙な顔で俺に尋ねた。

 

「ごめんね、巻き込んじゃって。怖い思いもさせちゃった。もう少しで殴られちゃうところだった」

「いいって。俺は俺の気持ちめっちゃ伝えたから。それにバンビが危ない目に遭うよりは俺が殴られた方がマシだからさ」

「そんなことない! 私が買った喧嘩でソーイチクンが殴られるのなんて絶対ダメ! あたしの方がお姉さんなんだから、あたしがソーイチクン守んないとだし……」

「まあ、今回は何事もなくてよかったじゃないか。それにあんな奴らの言うことなんて気にすることないって。俺達は絶対に間違ってないんだからさ」

「……うん、ありがとう」

 

 バンビはほんの少しだけ目を潤わせながら、静かに笑った。

 

「嬉しかったよ。ソーイチクンが私達のことかばってくれて」

「何言ってんだよ。俺だって弔葬部隊なんだからな!」

「まだ仮だけどね」

「これから正式になるの!」

 

 ミラさんは俺達のやりとりを見てクスリと笑った。

 

 ミラさんは俺達の小競り合いを静観していたが、俺が殴られそうになった時にちゃんと動こうとしてくれた。あの程度の言い合いはきっとよくあることなんだろう。

 

 それよりもリノさんの方が怖かった。

 

 バンビの後ろにいて、あいつらからは見えなかったけど、俺は確かに感じたんだ。

 リノさんがあいつらに冷たい殺意のようなものを向けていたことを。




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