塩の錬金術師 ~死んだはずの幼馴染の手によって異世界に錬成された俺は、最弱錬金術『三原質』で世界を統べて究極の力を手に入れます~   作:クワガタ信者

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第29話 なっちゃいない、てんでだめ

「……なんか用かよ」

 

 俺がそう言うと、輩どもは俺の顔を見てニィッと品のない顔で笑った。

 

「言ったろ? 戦うってのがどういうことか教えてやるって」

 

 輩Aはこぶしをバキバキと鳴らしながら応えた。

 

「……あんたさっき、そっちのヤクザ……師団長に言われただろ。喧嘩は御法度って」

「話聞いてなかったのかよバカが。師団長は庁舎内でって言ったんだ」

「つまり庁舎外だったら何やってもいいってわけだよ。足りない脳みそでもわかったか?」

 輩Bが続ける。

「それにこれは喧嘩じゃねぇ。()()だよ()()。仮入隊の分際で先輩である俺達に逆らった罰だ。そもそも俺達とお前じゃ喧嘩になるわけねぇだろ。一方的な処刑だ処刑」

 輩Cも加わる。

 

「お前さ、錬金術が使えねえんだってな」

 

 Aがそう言った。儀式の最中の出来事がどっかから伝わったんだろう。

 

「使えるよ。四元素のは使えないけど」

「それを使えねーつってんだよ。まさか三原質なんてザコ錬金術しか使えねえ出来損ないがいるとは思わなかったぜ。マジで糞尿部隊って失敗作ばかり集まんだな。使えねえ奴ばかりだ」

 

 そう言ってAはまた俺の胸倉を掴み上げた。

 

「お前連合やめろ。お前みたいなカスと一緒にされたくないんだわ」

「やだよ。俺には俺のやることがある」

「なんで俺の親切が伝わらねえかなあ? 殺されんのと消えんのどっちがいい?」

 

 周りの奴らが俺を囲み込むように陣取る。逃がさないってわけね。

 

「死なない。俺は死なない。俺が死んで悲しむ人がいる以上、俺は死ねない」

「何言ってんだこのバカ。お前みたいな失敗作が死んで悲しむ奴なんているわけねえだろうが」

「バカはあんただ! あんたら、人を守る為に連合に入ったんだろ!? だったら間違っても殺すなんて言うなよ!」 

  

 取り巻き達が声を上げて笑った。

 

「もういいわお前」

 

 Aがこぶしを振り上げた。

 

「死ねよ」

 

 そのまま俺に打ち下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうは言ってもなあ。

 

 今更ただの人間のパンチが効くわけでもないんだよなあ。

 

 士降にならずとも今の俺は並大抵の攻撃じゃビクともしなくなっていた。

 

 自分の肉体がどの程度の強度なのか実験をしたことがある。

 

 錬金術を自分に放って防御力を確かめてみたが、ほとんど効かなかったんだよな。

 

 だから正直こんな攻撃食らったところで痛くも痒くもない。

 

 とはいえ、まともに食らってしまえばこいつの腕がひしゃげて終わる。

 

 そうなれば他の奴らも加勢するだろう。

 

 攻撃はどんどんエスカレートしていって、いずれは錬金術を用いての暴力が襲ってくるかもしれない。そうなると面倒だ。

 

 もう俺にはこいつらがどの程度の実力か推し量れてしまう。

 

 例えどんな攻撃が繰り出されたとしても効果がないのは目に見えている。

 

 でも、戦闘専門の術師の全力袋叩きを食らってピンピンしてたらおかしいと思われてしまう。そうなれば下手すりゃ俺が士降だということもバレてしまうかもしれない。

 

 つまり、そこそこのダメージをこの攻撃で負うように見せかけなきゃいけない。

 

 めんっっっっっっっっっっっっっっっどくさいなあ! もう。

 

 とはいえ、避けてもこいつらムキになるだけだろうし。

 

 そうこう考えている間もこぶしはまだあんなところにいるよ。

 

 おっそいなぁ。正直、幹部怪物と戦ってる俺からしたら、キレも速度も腰の入りも全然足りない。のろいんだよなこいつの攻撃。眠っちゃいそうだよ。今まで一番眠い。

 

 あーあー、もうめんどくさい。

 

 とにかく適当に食らって後ろに吹っ飛ぼう。

 

 ああそうだ、まともに食らっても

 こいつの骨が折れるんだっけな。

 

 じゃあこうしよう。

 

 殴られる直前に後ろに飛んで衝撃を抑えよう。

 

 ほっぺたをぷくーと膨らませてクッションにするのもいい。

 

 これなら相手を怪我させずに派手に吹っ飛ぶことができる。

 

 よし! これで行こう。 ……まだ来ないのかよ! いい加減にしろよ。こっちも暇じゃないんだよ。いやほんとは暇だけどさあ!

 

 やれやれ、それにしても他にやることないのだろうか。

 

 なんというかこう、修行とか、作戦会議とか、街のゴミ拾いとかさ。

 

 俺は連合の錬金術師はみんな立派な人ばかりなんだろうと思ってたけど、こういうロクでもない奴らもいるんだなあ。

 

 俺は悲しいよ。

 

 でもまあ、こんな奴らでも仲間っちゃ仲間なんだから。傷つけないようにしないと。

 

 あーあ、早く終わんないかなあ。これ終わったら何しよう。

 

 やっぱなんか食べたいよなあ。できるなら肉とかがいい。今日はガッツリお肉が食べたい気分。

 

 いや、辛いものでもいい。唐辛子いっぱいの激辛料理もありだ。俺は前の世界で激辛らーめん大盛りチャレンジを完遂させたんだ。

 

 この世界の激辛がどのようなものか見ものじゃないか……よし、真ん中くらいまで来たな。

 

 その後は……バンビでも誘ってショッピングでも行くか?

 

 確かあいつ新作の化粧品が見たいとか言ってたな。この世界の一般的な化粧がどんなものかは化粧を取り扱う者として興味はある。

 

 とはいえ、やっぱ元の世界の化粧技術の方が優れているように見えるので、せいぜい参考くらいにしかならないか。

 

 いっそ、起業して化粧品会社でも立ち上げるか?

 

 悪くない……俺の無尽蔵の生命力なら化粧品の大量生産くらい行ける気がする。

 

 やっぱ何をするにしても先立つものが必要だよね。まずは露店から始めてみようか。

 

 そういえばシオンはどうしてるだろうか。宿に戻ってるか、それとも医療部隊の仲間とどこかお出かけでもしてるんだろうか。

 

 お、そうこう考えているうちにもう目の前まで来たぞ。随分待たされた気がする。

 

 よし、ほっぺた膨らませて後ろに飛ぶ、頬っぺた膨らませて後ろに飛ぶ……今だ! 

 

 タイミングを合わせて後ろに吹っ飛ぶ。……よし! 完璧だ。

 

 吹っ飛んだ先でCに後ろから羽交い締めにされた。

 

「ようし、そのまま抑えてろ」

 

 Aはてのひらに炎を纏わせ俺に近づいてくる。

 

「チッ、無駄に整った顔しやがって。まずはその気に入らねえツラから焼いてやるよ」

 

 ……マジか。こいつら最初からそこまでやる気だったのか。

 

 まいったな。弱火で炙られたところで焦げもしないんだけど、それじゃあ不審がられる。

 

 「醜く爛れろ」

 

 容赦なくAの凶爪は俺の顔面に振り下ろされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――が、

 

 

 

 

 

 

 

「んだテメエ!」

 

 Aの腕を掴み、離さない者がいた。

 

 その男の名は――

 

「トニックさん!?」




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