塩の錬金術師 ~死んだはずの幼馴染の手によって異世界に錬成された俺は、最弱錬金術『三原質』で世界を統べて究極の力を手に入れます~   作:クワガタ信者

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第31話 敵性生命体対策会議

 ――錬金連合軍土の国支部 合同庁舎 会議室

 

 ミラ・ミカエリスは敵性生命体対策会議に出ていた。

 

 会議室にはミラ、ガルドス、ブリジラの三人とその場に居合わせた連合の監査役数名、会議のサポートに入る職員達がいた。

 

 通信用の錬金器具を用いて錬金連合国にいる一部の重鎮たちとも繋がれていた。

 

『オクレイ高原での戦闘に突如現れた白い未確認生物だが、敵性生命体との関連性は不明。一心不乱に奴らを殺害した挙句、その姿を消した……という報告で間違いはないかな? ガルドス、ミラ両師団長』

 

 錬金連合軍総師団長ドルクス・アルキ・デルクスは両名にそう確認した。

 

「間違いありません。あの白い生物は我々に目も暮れずに敵性生命体を攻撃しておりました」

 

 そうミラは答える。

 

「ガルドス師団長、君の見解を聞きたい」

 

 そうドルクスは促すと、ガルドスは重々しく口を開く。

 

「……あの存在の配色、圧倒的な膂力(りょりょく)、高い防御性能。私が若い頃、国王配下の兵士として従属していた時に聞いたことがあります。始まりの錬金術師が扱っていた三原質の錬金術、士降の錬金術。……あの存在の身体的、能力的特徴が酷似していると」

「士降の錬金術……」

 

 ガルドスの言葉に、ドルクスは口元に手を抑えて考え込む。

 

「私も聞いたことがある。始まりの錬金術師にしか扱えない究極の錬金術の一つだと。そして、この国における禁忌の錬金術だと」

「総団長、私は敵性生命体に加えあの存在も討伐の対象にするべきだと進言します。奴の力は危険すぎる……いつ我々に牙を向けるかわかりませぬ」

「待ってください!」

 

 ガルドスの進言に、ミラが抗議の意を示す。

 

「あの生物は我々に何も危害を加えておりません。それどころか命を助けてもらったと証言する術師もいます。彼を討伐対象に加えるのは早計かと思われます」

「それはあくまで主観的な意見でしょう? ミラ師団長」

 

 ミラの抗議に横から口をはさむのはブリジラだった。

 

「かの生物が我々人間を助けた、その決定的なエビデンスは? たまたま標的の敵性生命体の近くにその術師がいただけにすぎないのでは? 敵性生命体と敵対していたとして、我々に危害を加えないという絶対的な保証はどこにもないでしょう」

「事実、あの生物は第三師団の総攻撃を受けても我々に危害を加えませんでした。敵対の意があるとは思えません」

「その気まぐれがいつまで続くか、あなたにわかるのですか? ミラ師団長」

 

 

 ブリジラの言うことはもっともだ。今回がそうであったとして、次回からもずっと続くとは限らない。

 

 かと言ってミラの意見も全てが間違ってはいるわけではない。現段階では相手にこちらに対する敵意がない以上、下手に手出しして攻撃対象と見做(みな)される必要はないのだから。

 

 討伐するべきだという意見と静観するべきだという意見で対立する。

 

「ブリジラ師団長、君もガルドス師団長と同じ意見というわけか?」

 

 ドルクス総団長が問う。

 

「かの生命体の危険性はともかく、その圧倒的な力には魅かれるものがありますね。捕獲してその身体を調査すれば、我々の戦力増強に大いに貢献するでしょう」

「話を聞いていなかったのかブリジラ! 士降の錬金術は禁忌の力と言ったはずだ! 人間の手に余るものではない!」

 

 ガルドスがブリジラを糾弾する。ブリジラは鬱陶しく手を払うジェスチャーを見せた。

 

「まだそうと決まったわけではないでしょう? 全く頭の固い年寄りはこれだから困りますね。もしそうだったとしても、我々の手に収まらない範囲ではありません。なにせ始まりの錬金術師も人間ですから。解明さえすれば、我々に扱えない道理はない」

 

 ここに来てブリジラは第三の意見を出してきた。

 討伐、静観に加えて捕獲。

 

 場をまとめあげる立場のドルクスは少し考えるそぶりを見せ、やがて口を開いた。

 

「とにかく、今回の件は慎重に検討してから結論を出すべきだ。この調査を連合国上層部に通達する。結論が出るまでは静観という形を取る。便宜上、この未確認生物はガルドス師団長の意見を元に士降と命名する。以上!」

 

 ドルクスがそう締めて会議は終了した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 対策会議を終えたミラは、薄暗い街路を歩いていた。

 

 一先(ひとま)ず、この件に関しては静観ということになったが、今後どうなるかはわからない。

 

 敵性生命体に加え、正体不明の未確認生物まで相手取らなければならないかもしれない将来を憂いていた。

 

(そもそも第三師団の総攻撃を受けても傷一つ付かないあのバケモノ染みた生物を我々で対処できるのだろうか)

 

 ミラはここ数日まともに休みを取っていない。疲れを溜めない訓練はしているが、ストレスというものは日々、(おり)のように重なっていく。

 

(久しぶりに立ち寄るか……)

 

 ミラですら、ささやかな憩いの場は必要だった。

 

 ミラはある場所を訪れる為に足を運んでいた。

 

 向かう先に見える物は、看板。

 レトロな雰囲気を醸し出した酒場だった。

 

 鉱石で建てられている周りの建造物とは違い、レンガで構成されていた。

 ミラはこの酒場に長年通っている。土の国を訪れるたびに顔を出していた。

 

(相変わらずネーミングセンスのない……)

 

 そこ以外は完璧な店なのにと思いながらドアを開けると、中は薄暗く閑散としていた。

 知る人ぞ知る隠れ家的な酒場だが、この時間は特に人が少ないボーナスタイムである。

 

 ミラはいつもこの時間帯に足を運び、決まった席に座る。

 カウンター席の一番右端だ。

 

 しかし、既に先客がいた。男の客は、マスターと楽しそうに談笑していた。

 

 この時間に珍しいなと思いながら、ミラは男から席一つ分間を開けて座った。

 やはり右側が安定するらしい。

 

 すると、男はこちらに気付き、驚いた声を上げた。

 

「あれ? ミラさんじゃないですか?」

「あなたは……」

 

 ミラもこの男を知っている。

 男の名は――




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