塩の錬金術師 ~死んだはずの幼馴染の手によって異世界に錬成された俺は、最弱錬金術『三原質』で世界を統べて究極の力を手に入れます~   作:クワガタ信者

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第42話 邪魔をするな

「こっちで合っているのか? ソーイチ君!」

「おそらく! これが反応してるんです!」

 

 想一とミラは、ガジル一行の後を追うように森の中を駆けていた。

 

 トニックを探す手がかりとして、ミラは想一にトニックから受け取った首飾りに何か細工をされているんじゃないかと教えた。

 

 試しに生命力を込めて見ると、首飾りが光り出しある方向を差し始めた。

 それがトニック追跡のカギになると踏んで、ミラ達は首飾りが示す方向に走っていた。

 

 想一はミラを抱きかかえ、持ち前の脚力と風の力で森をすごいスピードで駆けていた。

 ミラも自分の空気の錬金術でそれをサポートし、より加速していく。

 

 「!!」

 

 気配を感じて想一は急ブレーキをかけた。

 

 すると、地面から数十メートルに達する巨大なミミズのような魔獣が現れた。

 今までの魔獣とは強度も頑丈さも格段に違う大型の魔獣。

 その巨体を活かして想一に襲い掛かった。

 

「邪魔だ……」

 

 怒りを表すかのように、こめかみからひび割れていく。ミラを地面に降ろした頃には、あっと言う間に身体全体に亀裂が走った。

懐に手を入れて何かを握る。

 

「退けえ!!」

 

 想一は横薙ぎに腕を振るう。ミミズの魔獣は身体をウォーターカッターのような水の威力によって真っ二つに千切れ爆ぜた。

 

 想一の身体も共に爆ぜ、白夜の魔人が姿を現した。

 

 その手に掴むのは炎と激流が迸る三節棍、パラディオ―ディナーだった。

 

「ソーイチ君! それは!?」

「ウリコさんから貰いました! 俺なら扱えるって」

 

 ミミズを両断したのを皮切りに、魔獣の群れがボコボコと地面から湧き出てきた。

 

 魔獣たちが一斉に士降に飛び掛かる。

 士降はパラディオーディナーを縦に振り回す。下から掬いあげるように振るう舞花棍だ。

 

 炎と水の二重奏。

 二色の乱気流の間に挟まれた魔獣たちは、次々に身体を粉砕され、塵一つ残らずにすり潰されていく。

 

(なんて回転力だ……もはやあの棍に触れることすら許されていない……それどころか魔獣たちはソーイチ君に吸い込まれている……?)

 

 ミラは士降の力もさることながら、自らが起動すらできなかったパラディオーディナーの圧倒的な破壊力にも驚いていた。

 

「っ!」

 

 その赤と水色の美しい破壊の渦に見惚れていると、後ろから殺気を感じ、即座に防御姿勢を取る。炎剣がなにか柔らかい衝撃を受けた。

 背後から襲い掛かったのは、体中が無数のワームのような触手で構成された怪人だった。

 

「……幹部級か」

「ツヨイメスダ……ツヨイメス……」

 

 ワームの幹部は身体をうねうねと気味悪く揺らし、ミラを凝視して呪詛のように呟いていた。

 

「苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗苗なええええええええええ!!!」

 

 ワームの幹部は粘液を吹き出しながらミラに襲い掛かってきた。

 

「ミラさん!」

 

 士降がミラの前に出ようとしたところで、横殴りの一撃を棍で受ける。

 どこから現れたか、サイの意匠を象ったサイの幹部が自慢の角で士降を串刺しにしようと突進してきたのだ。

 

「私のことはいい! 君は目の前の相手に集中してくれ!」

 

 ミラは炎剣を迸らせ、ワームの幹部を睨みつける。

 

「先日の奴といい、私の相手はどうも変なのが多いらしい」

 

 

 

 

 

 

 サイの幹部は士降に突撃を繰り出す。太く逞しい大角は数々の錬金術師を屠ってきた自慢の凶器だ。これを受けて生き残った相手はいないという自負があった。

 その巨体から生み出される力は、存在するだけで脅威。シンプルなウェイトこそが戦場を支配するのは道理。

 

 だが、相手はそんな常識が通用する相手ではなかった。

 

 バギィッ!!

 

横薙ぎに繰り出された一撃はサイの装甲を砕き、大木を薙ぎ倒して吹き飛んだ。

 

「ばっ……があっ……」

 

追撃に走り出す士降。ジャラジャラと鎖を鳴らしながら突貫するその姿にサイは恐れを抱いた。

 

「や……やれえ!!」

 

 再び魔獣達が地面から湧き出て、士降に襲い掛かるが、

 

 

 

 グチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ……

 

 

 

 走りつつ、下から救い上げるように振り回す撩花棍を繰り出しながら、魔獣共を挽き潰していく。

 

 士降は左棍を持ち、炎の右棍をサイに振り下ろす。

 

「ごっぱあっ……!」

 

 たった一撃で、誇りと誉によって飾られた一本角がへし折られた。

 だが一撃では済まされない。三節棍の真骨頂は縦横無尽に駆け巡るように打たれる連撃なのだ。

 

 

 繰り出される推摇棍はサイをX字に潰し裂いた。推摇棍は延々とループさせることのできる技。他の幹部よりもひと際丈夫なサイは不幸にも即死することができず、拷問のような連打を叩き込まれた。

 

「カッ……カガッ……」

 

 体中に貼り付けられた鉱石のような鎧は見るも無残に剥がされ、全身の骨が砕かれ立っているのもやっとな状況。放っておいても絶命するだろう。

 

 だが、士降は妥協を許さない。

 右棍、左棍の両端を持ち、真ん中の棍棒を相手のうなじに引っ掛け、そのまま引き寄せて――

 

 

 

グチャア……

 

 

 

膝蹴で首をへし折った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ミラとワームの戦いは停滞を続けていた。

 

 ミラは地殻変動の後、シオンの回復を受けていない。

 治療もすることなく、想一をAWDCに連れて行き、そのまま会議に出たのだ。

 

(奴の攻撃は迂闊に防御できん。即座にからめとられて身動きできなくなるだろう)

 

 

 まともに戦えば、幹部級に勝てるはずがない。

 そこでミラの取った戦法は遅延行為だ。

 

 相手の攻撃を紙一重で避け、炎で攪乱させて時間を稼ぐ。

 

 無尽蔵に自分の分身である小さなワームを飛ばしてくる。それを風の力でかわしながら

時間を稼いでいた。

 

 ワームの幹部は他の幹部達と比べて知能が低いのか、単調な攻撃を繰り出してばかりだ。

 

「苗!!苗!!苗ええええええええええええええ!!」

 

 しかし、業を煮やしたワームが怒り狂ったかのように叫ぶと、ワームの背後に先ほど士降が屠ったミミズの魔獣が大量に這い出てきた。

 

(まずい! 範囲攻撃か!)

 

 そのまま大量のミミズがミラを捕食しようと襲い掛かるが――

 

 

 

 

 ――ミラの頭上を何かが飛び越えた。

 

 

 

「破あっ!!」

 

 パラディオーディナーの右左棍を逆手に持った士降は地面にその先端を突き刺した。

 

 巨大な炎と水の柱が爆発するかのように噴き上げ、ミミズ達を飲み込んでいく。

 

「苗、苗~~~~~~~~!!!」

 

 士降がワームの幹部との距離を一気に詰めると、そのまま渾身の一撃をワームに叩き込む。たった一撃でワームは上半身を吹き飛ばされた。

 

 だが腐っても幹部、ただでは死なない。この幹部は大量の弱小ワームの集合体だ。身体を無数に分離させ、無数の分身が士降とミラに襲い掛かる。

 

 士降はミラの前に立ち、撩花棍で大量のワームを潰していく。しかしワームは軌道を変えて後ろのミラに襲い掛かる。

 

「なっ……!」

 

 ミラも炎の壁を作り出してそれらを焼き尽くしていくが、数匹のワームがミラの身体に纏わりつき、そのまま隊服の中に潜り込んでいく。

 

「ひっ……!」

 

 粘液を撒き散らしながらミラの素肌を駆けずり回るワームたち。

 ゾゾゾゾゾゾゾゾゾと、ミラは全身に駆け巡る不快感とくすぐったさに悶える。

 

「~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!!」

 

 ボンッ! とミラの全身から炎が吹き出される。

 

「ミラさん!?」

 

 ミラの身体が大爆発を起こし、士降は焦り、威力を弱めた流水を爆心地にに注ぎ込む。

 

 白い水蒸気が徐々に収まり、中から出てきたのは水浸しになり、ところどころに黒く焦げた残骸を素肌に貼り付けた、あられもないミラの姿だった。

 

 ほぼ全裸。

 

「…………」

「…………」

 

 ミラは無言で衣類を錬成し、最低限身体を隠した。

 

「……すまない、度々見苦しいものを――」

「先を急ぎましょう」

 

 想一は身体を士降から戻し、再びミラを抱きかかえて走り出した。

 

(トニックさん……!)

 

 普段の想一なら慌てふためきつつその肢体を拝んでいたのだが、彼の心境はそれどころじゃない。

 

「…………」

 

 ミラにも多少なりとも羞恥心はあったが、それ以上になんだか複雑な感情が胸の中を渦巻いていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ミラさんを抱きかかえて森の中を疾走する。

 今のミラさんの格好は露出が多く、その柔肌が密着しているが今の俺はそれに反応できるほどの余裕はない。

 

 一本道の直線の向こうに、開けた場所が見える。そこに誰か人が立っている。

 

 ……! あの黒と金の長髪、スラっと長い手足、身なりのいい格好。間違いないトニックさんだ。

 

 よかった。無事だ。ジンの奴に攫われたのかと思ったけど、逃げ出すことができたんだ!

 後は事情を話してもらって無実を証明しよう! きっとみんな分かってくれるさ。

 

 あ、こっちを向いた。トニックさんが俺達に気付いた。

 

「トニックさ――」

 

 咄嗟に声をかけようとした。でもその声は途中までで止まってしまった。

 トニックさんが片手で何かを掴み上げている。

 

 俺は見てしまった。

 

 

 

 トニックさんの右手の先には

 

 

 

 片手片足を引きちぎられたボロ雑巾のような人間が吊り下げられていた。

 

 

 

 

「やあ、ソーイチ君。思ったより早かったね」

 

 トニックさんが俺に笑いかける。その声は今までと何も変わらない。優しくて穏やかなあの声だった。

 




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