「先ずは博士のところに行かなくちゃ」
カレンちゃんはそう言ってマサラタウンの端っこの方へ向かって歩き出す。
「ピチュチュッピチュピ、チュチュチュピ……(博士のところって、もしかして……)」
「トレーナーカードを発行してもらわないとねー」
「ピッ……(あっ……)」
ゲームと同じ様にポケモン図鑑を貰うのか、もしくは御三家を貰うのかと思っていたら、全く別の用件だった。
「ん?どうかしたの、ピチュー」
「ピッ、チュチュチュ(いえ、なにも)」
「そう?」
不思議そうに首を傾げるカレンちゃんは、気を取り直したのか歩きながら鼻歌を歌い始める。
「〜〜♪」
遂に旅に出られたのが嬉しいのか浮足立っている雰囲気を感じる。
「〜♪……っと、着いたー!!」
「チュー!(おー!)」
到着したのはアニメで見たのとは細部が違う建物。敷地入り口には『オーキド携帯獸研究所』の文字が書かれた看板が立っている。
「チュピー……(これが……)」
ポケットモンスター、特にアニメでは何度も登場したオーキド研究所。たとえそのものではないと言えども、ファンとしては生で見れて感無量である。
「あれ?ピチュー。本当にどうしたの!?」
「ピッ!?ピチュチュピッチュピ!!(ふぇっ!?いや本当に大丈夫!!)」
ぼんやりとしていたからか、カレンちゃんに思い切り心配されてしまい、慌てて大丈夫だと体全体でアピールする。
「本当に……?」
「ピチュピチュ!!(本当本当!!)」
激しく頷くと、不承不承の様子ながらもカレンちゃんは引き下がると、気を取り直してオーキド研究所へと足を踏み入れた。
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「おお、待っておったぞ。カレンよ」
研究所内に入ると、白衣を纏った好々爺が居た。オーキド博士だ。
俺がカレンちゃんと出会った時、起き抜けに『でんきショック』を浴びせてしまった人があのポケモン学の権威だと後で知った時は驚愕したが。
「ピチューも元気そうじゃのう」
「ピチュッ(はいっ)」
元気よく返事をすると、オーキド博士はニコニコと頷いた後、近くのデスクの上から赤い何かを取り上げると、カレンちゃんへと差し出した。
「これは……?」
「うむ、これはスマホロトムじゃよ」
「スマホロトム?」
受け取ったスマホロトムをいろいろな角度からしげしげと眺めるカレンちゃんに、オーキド博士は説明を続ける。
「そのスマホロトムにトレーナー情報とポケモン図鑑も入っておるからの。それと……」
そこで言葉を切ったオーキド博士は、白衣の懐からモンスターボールを取り出した。
「ほれっ」
「ロトー♪」
軽く投げられたモンスターボールから現れたのはプラズマポケモンのロトムだった。
「えっ、いきなり何!?」
唐突にロトムを出した事に驚くカレンちゃんに、オーキド博士は朗らかに笑った後に
「ほれ、ロトム。頼んだぞ」
「ロトッ!!」
と指示をする。指示を受けたロトムはビュンビュンと部屋内を飛び回るのをやめて、カレンちゃんの持つスマホロトムへと入り込んだ。そして、
『起動中……起動中……。ようこソ、ユーザーカレン。スマホロトムでス』
と、スマホロトムの画面が突然光り、宙に浮かんでカレンちゃんの前に滞空する。
「おおー……」
「ピチュちゅ……(凄え……)」
ゲームやアニメでも登場するが、生で見ると凄まじい技術力に驚嘆する。
カレンちゃんと二人……じゃなくて、一人と一匹そろって口を開けたままスマホロトムを眺める。その様が滑稽だったからだろうか、「ほっほっ」と笑うオーキド博士が呼び掛けた事でカレンちゃんが再起動した。
「あ……。ご、ごめんなさい!ちょっと驚いて……」
「いやはや……。そう驚いて貰えたら儂も用意したかいがあったというものじゃ」
にこやかに笑ってそう言った後、オーキド博士は改めてスマホロトムについて説明を始めた。
「そのスマホロトムは最近開発された物での。様々な機能が有るからの、快適に旅が出来るじゃろう。……ああ、料金の方はハナコさんが支払ってくれるらしいからの。安心して使いなさい」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
カレンは嬉しそうにオーキド博士にお辞儀した後、スマホロトムに視線を移した。
「これからよろしくね、スマホロトム!」
『ロトッ♪』
カレン は スマホロトム を てにいれた!