ポケモンハンター達から逃げて、どれぐらい走ったのだろうか。
ボロボロになり、ふらふらとなった体。飢渴したままでは、いずれ死んでしまうだろう。
と、その時偶然にも目の前の木の洞に積まれたきのみを見つけた。飢餓感に襲われていた俺は、本能のままに飛びつき、貪り喰らう。
「ピッチュ〜(助かった〜)」
オレンの実に齧りつきながら、ほっと胸を撫で下ろしていると、背後になにやら気配を感じた。
振り返ると、俺を睨むラッタやイトマル達がズラッと勢揃いしていた。
「ピチュ……(オゥ……)」
思わず変な反応をする。どうやら、俺が食べたのは彼等の食料だったようだ。
「ヂュ゛ー!!」
「キィィッ!!」
「ピ、ピチュー!?(う、うわあーっ!?)」
怒るポケモン達から慌てて逃げ出す。イトマルの『いとをはく』やコラッタの『かみつく』を躱しつつ、『くさわけ』を利用して素早さを上げつつ、『でんこうせっか』で逃げ続ける。
「チュ、ピッチュー!!(もう、許してくれよー!!)」
そんなことを言ってもポケモン達は許してくれず、どこまでも追いかけてくる。
くそっ!どうしたら……っ!!
内心で愚痴を言いつつ、森の中を走っていると、不意に足元の感触がなくなった。
「ピッ?(えっ?)」
下を見れば、はるか下に地面と川があった。
「ピヂュ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ッ゛!?(ギャア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!?)」
悲鳴を上げ、崖下へと真っ逆さまに落ちていく。どうにかしなければ、俺は地面の染みになってしまうだろう。
一周回って冷静になった思考で解決策を模索する。
流石に風船はないから『そらをとぶ』は使えない。そもそもあれはピカチュウだし……。
「っ!!ピッチュッピッ!(っ!!そうだ、『でんじふゆう』だ!)」
上手くいくかわ分からない。どころか、ぶっつけ本番だがこれしか手はなかった。
俺は一心不乱に体内の電気を操作し、自身に磁力をもたせようと苦心する。
「ピィィィィヂュ゛ヴヴヴヴヴヴッ!!(『てんじふゆう』うううううっ!!」
祈るように目を閉じて、電気を操作しながら技名を叫ぶ。すると、
ふわっ……どすっ。
一瞬の浮遊感の後、体に軽い衝撃が走った。恐る恐る目を開くと、視界の先には崖の上に青く広がる空と、俺を忌々しそうに見つめるポケモン達の姿が見えた。どうやら俺は賭けに勝ったらしい。
ほっと息を吐きつつ体を起こすと、川から顔を覗かせる厳つい顔と目が合った。
「ピッ、ピチュ(あっ、ども)」
「ぎゃおおおおおんっ!!」
叫び声を上げるギャラドス。その口元に何やらエネルギーが集まっており、俺はとても嫌な予感がした。
「ぎゃおおおおおんっ!!」
「ピッヂュウ!?(ぎゃああっ!?)」
咄嗟に躱すが、ギャラドスが吐き出した光線は、川辺を抉り取って新しい水の道を作っていた。
そして、今の光景で何をされたのか大体の予想がついた。
このギャラドス、『はかいこうせん』を撃ってきたのだ。それも、「取り敢えず撃っとくか」的なノリで!
反動で動けない今、俺は必死になって逃げ出した。そして、
ツルッ
「ピッ!?(あっ!?)」
俺は走り滑り、見事に転んで川へと落ちる。
「ピッビヂュ゛ッ゛!?(まっ不味っ!?)」
必死にもがくが、ピチューの小さな体躯では川の流れに抗えず、溺れて流されていく。
あっやば……。
そして、そこで俺の意識は完全に途絶えてしまった。