俺はピチュー。別の世界で人間として生きていた記憶を持つポケモンだ。
森の中で仲間達とともに平和に暮らしていたら、ポケモンハンター達に襲われ、俺だけが逃がされた。
逃げる途中で力尽きた俺は、一人の少女、カレンに拾われて助けられたのだ。
そして今、俺はそのカレンの家でポケモンフーズというものを与えられていた。
「ピチュ……(オゥ……)」
ポケモンフーズの見た目はどう見てもドッグフードそのもので、人間だった記憶がある俺には少し受け入れ辛い。
だけど、とてもいい匂いがするし、俺自身も腹が減っている。
覚悟を決めて一粒口に入れると、何と言うか、フレークのような食感で美味しかった。
「ピッチュッ!?ピッピッチュチュ!!(なにこれ!?意外に行けるぞ!!)」
夢中になって貪っていると、「ただいま」という声とともに赤い帽子をかぶった少年がリビングに入ってきた。
「あ、おかえりなさい。お兄ちゃん」
「……ん」
カレンに対してぶっきらぼうに頷く少年。しかし、俺はその容姿に既視感を覚えていた。
「……そのピチューは?」
「……あ、そうだった!!この子は私が保護して、今日から一緒に暮らすの!!それでピチュー、紹介するね。この人は私のお兄ちゃんでアカシっていうんだ。……まあ、みんなは渾名のレッドって呼んでるけど」
「ピッチュー!?(アイエー!?)」
レッドさん!?レッドさんなんで!?レッドさんに妹居たの!?
思わぬ出会いに衝撃を受けていると、レッドさんはしゃがんで俺の顔をじっと眺める。
「…………」
「ピ、ピチュー……(な、何か言ってよ……)」
緊張で少し後ずさりすると、不意にレッドさんは手を伸ばして、俺の頭を撫で始めた。
「……ふわふわ」
「ピチュ……?(なんで……?)」
なぜ突然頭を撫で始めたのか分からず硬直していると、また誰かが帰宅した。
「ただいまー。カレンー?聞いたわよ。ピチューを保護するんだってね」
「あ、ママ!!うん、そうだよ。それがこの子ね!!」
「あっ……」
ママさんに見せる為に俺をさっと抱え上げてみせるカレン。撫でたりなかったのか、レッドさんからか細い声が聞こえたが、みんな無視した。
「あら、その子が噂のピチューちゃんね。……私はハナコ。カレンの母親よ。今日からよろしくね、ピチューちゃん」
「チュ〜(よろしく〜)」
そう言ってママさんも俺の頭を撫でてくる。が、言葉に出来ないほど気持ちよく、つい、甘えた声を出してしまった。
ゴッドハンドだよ、これ!!
まあ、とにかく。俺はこうしてカレンの家族となるのだった。