「いやぁっ……!!」
怒り狂うガルーラ。その気迫に恐怖したのか、腰を抜かしてしまったカレンちゃん。
「ガルァアッ!」
しかし、ガルーラはそれを気にも止めず、血走った目で周囲を見渡している。
と、そこで気がついた。ガルーラのお腹の袋が空っぽである事を。
本来ガルーラはおやこポケモンの名の通り、お腹の袋に子ガルーラが入っているカンガルーのような生態のポケモンなのだ。子ガルーラが巣立った場合なら、袋が空でも少し寂しそうにしているだけのはずなのだが、ここまで怒り狂っているということは……
「ガルゥラアッ!!」
「ピッチュピ……(やっぱり……)」
今の叫びを聞いて確信が持てた。このガルーラ、子供を奪われたのだ。それも、人間に。
それで恐らく、怒り狂ったガルーラは人間の匂いを辿ってこの周辺を徘徊しているのだろう。その匂いのもとが、子供達であることに気付かずに。
そして、子供の方も何故ガルーラが怒り狂っているのかが分からず、逃げ惑い、あの木の洞に閉じこもってしまったのだろう。
「ぁ……」
チラリとカレンちゃんの様子を盗み見ると、恐怖によってか、腰を抜かして声も出せない様子だった。
……仕方ない。こうなったら。
「ピチュッピ!(ガルーラ!)」
俺は気を引き締めて、ガルーラへと呼びかける。背後でカレンちゃんが驚愕の顔をしているのが分かるが、この際無視する。
「ガルゥッ……?」
「ピチュッピ。ピピチュピピチュチュピピチュッチュピー(ガルーラ。ここに君の子供はいないよ)」
「ガルァッ!」
俺の言葉に嘘だと食い気味に否定するガルーラ。
「ガルァッルゥラッ!ガラァッ!」
「ピチュチュチュッピピチュピ!!ピチューチュピチュピチュッチュピチュ!(それは人間の子供たちの匂いだ!!君の子供を拐った奴のじゃない!)」
必死になって呼びかける。だが……
「ガルゥッ、ガラァアッ!!」
怒り狂ったガルーラは止まらず、俺を『ふみつけ』ようとしてきた。
「ピチュ……ッ!?(やば……っ!?)」
咄嗟に躱すが、流石に近くにカレンちゃんや子供達がいたら危ないので、遠ざけるように誘導する。と、
「ガルガラアッ!!」
今度は両腕での『ダブルアタック』を実行してきた。
俺は慌てずに攻撃の先を予測して『でんこうせっか』で躱し、『じゅうでん』からの『ボルテッカー』を放つ。そして、接触と同時に『てんしのキッス』を行った。
「ガ、ガルゥアッ!?」
混乱状態になったガルーラの隙を窺いつつ、頬の電気袋をスパークさせる。
「……ピチュッ!(……今だ!)」
そして、ガルーラがバランスを崩したタイミングで『でんきショック』を当てる。
「ガラァッ……!」
急所に当たったのか、ふらりとガルーラは目を回して倒れてしまった。
「ピチュゥー……(ふぅー……)」
何とか倒せた事に安堵しつつ、カレンちゃんの方へ振り返ると、呆然とした顔をしたカレンちゃんが俺を見ていた。
「ピチュー……」
「ピ、ピチュピ……?(か、カレンちゃん……?)」
カレンちゃんに近寄り、恐る恐る声を掛けると、力強くギュッ!と抱きしめられた。
「す、凄いよピチュー!」
興奮したカレンちゃんにガシガシと力いっぱい撫で回されて、ふらふらしてしまうと、それに気付いたのか、慌てて地面に降ろされる。
「……けど、ピチュー」
「ピ〜……、ピッ?(う〜……、ん?)」
「助けてくれて、ありがとね」
そう言って笑うカレンちゃんはとてもとても、綺麗だった。