旗をテーマにしたホラー短編小説です

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血塗られた旗

 

 

 発見

山間の小さな村、御影村。過疎化が進み、いまや住人はわずか十数人しかいない。ある日、村の若者である田嶋信夫が、山の中で一枚の奇妙な旗を見つけた。それは古びた木の棒に縫い付けられた赤と黒の旗だった。色褪せているものの、まだ鮮やかな赤はどこか血を連想させる。風に揺れるそれを見て、信夫は胸騒ぎを覚えた。

 

「なんだこれ……」

 

信夫は恐る恐る旗を手に取った。触れると、生暖かい感触がした。旗を振ると、突然遠くからかすかな呻き声が聞こえたような気がした。だが振り返っても、そこには誰もいない。

 

「気味が悪いな……」

 

信夫は旗を捨てようとしたが、なぜか手が離れなかった。無理やり振り払うと、指先に血が滲んでいるのを見て、青ざめた。

 

 旗の言い伝え

御影村には一つの古い言い伝えがあった。

 

「赤と黒の旗が風に揺れるとき、村人の命が奪われる」

 

子供の頃に祖母から聞いた怖い話だ。だが信夫はそれをただの作り話だと思っていた。しかし、その旗を見つけて以来、村では奇妙な出来事が相次ぐようになる。

 

信夫の家では夜中に床下から響く何かを引きずるような音。近所の農家では牛が突然苦しんで死んでしまう事件が立て続けに起きた。そして三日後、村長の孫が川で溺れて命を落とした。

 

「これが旗のせいだってのか?」

 

信夫は村の年寄りたちに旗を見せた。すると全員の顔が凍りつき、一人の老婆が小さく呟いた。

 

「その旗は、御影神社の封印だよ……」

 

 封印の謎

御影神社は村の山奥にある廃れた神社で、誰も近寄らない場所だった。その理由を知る者はほとんどいなかったが、老婆は震える声で話し始めた。

 

「昔、この村には恐ろしい疫病が流行ったんだ。それを治めるために、御影神社で生贄の儀式が行われた。そして、生贄となった者の魂を封じ込めるために旗が立てられたんだよ。その旗を動かしてしまうと、封印が解けてしまう……」

 

信夫は耳を疑った。封印?儀式?そんなものは迷信だと笑い飛ばしたかったが、胸の奥で不安が膨れ上がるのを止められなかった。

 

  旗の復讐

その夜、村は深い闇に包まれていた。どこからともなく太鼓の音が響き、赤黒い霧が村全体を覆った。信夫が外に出ると、旗が自分の家の庭に立っているのに気づいた。

 

「嘘だろ……?」

 

旗が風もないのに揺れ、耳をつんざくような叫び声が辺りに響いた。次の瞬間、村の住人たちが次々に倒れていく。信夫は旗を引き抜こうとしたが、逆に旗の根元から血が噴き出し、地面を赤く染めた。

 

「やめてくれ!俺が何をしたって言うんだ!」

 

叫び声は止まらない。旗はまるで生き物のように、信夫の身体に絡みつき、締め上げる。意識が薄れていく中で、信夫は最後に旗の中央に浮かぶ何かの顔を見た。それは明らかに人間の顔で、苦悶の表情を浮かべていた。

 

 廃村

翌日、村に残っていたのは誰もいなかった。外部の人間が訪れたとき、村全体が奇妙な赤黒い霧に覆われており、全住民の消息が不明だとされている。

 

だが、その山中を探索した者の話によると、一枚の赤と黒の旗が村の中央に立っており、そこからどす黒い血のような液体が滴り落ちていたという。

 

誰もその旗に近寄ろうとはしない。やがて御影村は地図からも消され、ただ一つの伝説だけが残された。

 

「赤と黒の旗を見つけた者は、決して触れてはならない。さもなければ――」

 

そう、あなたがこの話を読んでいる今も、風の中でその旗は揺れているかもしれない。


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