転移したらクソ強い奴らがめっちゃいた件 byベジット 作:天下無敵の肩こり
結構ルミナスやヒナタの解像度で悩みに悩んでます…
第10話 "最強"の遊戯
日が落ち始め、空が朱と黒の境界線を形作る黄昏時。
私室の窓枠に腰掛け、優雅にグラスを傾ける絶世の美少女。
宵闇に浮かぶ月の光のような銀の髪に、すべてを見透かすようなヘテロクロミア。
それは、まるで絵物語の中から出てきたかのような現実感の無さを儚げに映し出していた。
「ヒナタめ…全く、あやつの独断専行癖には悩まされるものじゃ。ーそれも妾の事を思って行っておるのだがら、尚の事タチが悪い。これでは窘める事も出来ぬではないか」
愛おしいとさえ思っている友に憂いを覚え、独り、愚痴のように呟く。
(下手に監視などは付けられんからの、「視」させてもらった。すまんが許せよヒナタ)
「ギュンター」
「は。ここに」
「少し出かける。直ぐに戻る故、問題無いと皆には伝えよ」
「承知致しました」
「うむ。では頼むぞ」
それだけ告げて事も無げに私室から出ていく夜魔の女王クイーン・オブ・ナイトメアに、老紳士然とした執事は頭を下げたまま、ふと感慨に浸った。
(姫も随分と奔放になられた。良い悪いなどとは無礼故に考えはせぬが、何かの兆候なのだろうか…)
そんな執事の感慨を嘲笑うかのように夜闇は更けていった。
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「ッ!」
「へっ、止まって見えるぜ?人類最強さんよ」
鮮やかに縁取られたレイピアを、まるで切っ先が届く位置が分かっているかのような足捌きでゆるりと躱す。
次の瞬間反転し一気に接近。人差し指と親指で剣先を軽く摘んでみせた。
「俺相手に出し惜しみしようなんざ、ちょっと考えが甘いんじゃないか?ただでさえ手も足も出ないのによっ、と」
そのまま爪弾きにして、まるで路傍の石を扱うかのように煽ってみせる。
「チッ、本当に癪に障る…」
「おいおい僻みか?そう睨むな睨むな。悪かったよ、強過ぎて、な」
「…」
次の瞬間、豪と風が巻き上がり、如何にも神秘的とも言える純白の聖装を纏った戦乙女が顕現した。
ー聖霊武装である。
「ほう…それがお前の本気の姿か」
「ーッ」
「おっと」
有無も言わせないとばかりに激しく切り込んでくるヒナタを片手間で相手取りながら、ベジットは独り言ちる。
「美人がキレるってだけでもおっかねえのに、黙って襲い掛かってくるなんざ卒倒もんだぜ」
「ただよ」
剣戟の間隙を縫って放たれた裏拳を予備動作ゼロで受け止め、身を半歩引きながらヒナタを眼前まで引き寄せた。
「その氷みてぇな冷たい気、読みやすくて仕方が無い」
「ーシッ!」
咄嗟にその場で回転して放った踵落としは空を切り、再び相手を捕捉しようとした時には既に喉元に手刀が突き出されていた。
「俺の勝ちだ」
「くっ…」
未だ戦意の衰えぬ瞳。しかしながら既に動きは封じられており、誰がどう見ても結着は明らかであった。
だがここで屈辱的に頬を歪めたヒナタが我慢出来ないとばかりに言い放つ。
「なぜ攻撃しようとしない。私を舐めているのか?」
「いやそういうことじゃねえんだけどな…できねぇんだよ」
「…!女に手はあげられないとでも?」
「違う違う、まだ気付いてないのか」
「ーッ?!この気配、まさか…」
「ーヒナタよ。全く…直接的な行動に出るのはよせとあれほど伝えたであろうに」
昏い闇に染まっていく街並みに、凛とした美声が響く。
「ルミナス様ー?!」
いつの間にかそこに佇んでいたのは、神聖法王国ルベリオスが御神体にして魔王である、吸血鬼の女王ルミナス=バレンタインその人であった。
ベジットは感じた微細な気から瞬時に何者かが居る事を悟り、勝負の決着を急いだのだ。
「ー。なるほどな、こいつらが信じる神ってのは、アンタのことか」
「ふむ。リムルの言っておった桁外れの力を持つという魔人というのは其方か?此度は妾の知己が迷惑をかけたようじゃ、謝罪しよう」
「魔人っつーのが引っかかるが…まぁいい。それに関しちゃ気にしてねえし、構わねえよ。得体の知れない奴だってのはその通りだしな。それと、コイツはアンタの大事な奴なんだろ?傷物にはしてねーから安心しな。」
「感謝する」
急に現れては勝手に話を進められ、流石に物申そうとヒナタが飛び出した刹那、純白の光を纏う手刀が放たれた。
「ちょっと!なんの「ふんっ」」
これには流石のベジットも呆け顔で呆然と呟いた。
「傷物にしちゃいないってったはのにいきなり気絶させるのかよ…」
「これ以上話を大きくされては困るのでな。」
「む…そういやさっきからあちらこちらで気を感じるな…気配は抑えながらやってたつもりだったが、ちっとばかし遊びすぎたか」
「妾は貸しを作るのは嫌いじゃ」
今にも立ち去りそうな雰囲気だったルミナスが、後ろ姿もそのままに唐突に告げる。
「ん?」
「この始末は後程必ず付ける」
そう言い残してはたと消えた光の影。
ベジットはしばらくその場を見つめながらふと思い至ったかのように呟いた。
「随分と律儀なカミサマもいたもんだ。ただ、だからこそ上手くやれてるのかもな」
すっかり日が落ちた夜闇の中、余韻すら感じさせぬ遊戯は、こうして終わりを告げたのであった。
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ベジットが人類最強との闘いという題目で遊戯にふけっていた頃、リムルは自分の庵で今後の予定について頭の中で構想を練っていた。
(開国祭が間近に迫ってる…せっかくベジットがここに居てくれてるんだってから、何かあと一つぐらい即興で付け加えられるものはないかな)
今もこうしてリムルがその存在を特別視し便宜を図ろうとしているように。
様々な情報筋やリムル自身の共有によって、刻々と世界は動きを見せていた。
ー全宇宙最強の戦士の登場は、少しずつ少しずつ、この世界の物語へと影響を及ぼしているのだったー
モチベが逝く