転移したらクソ強い奴らがめっちゃいた件 byベジット 作:天下無敵の肩こり
まぁあそこでもベジットが大活躍です
第12話 神話
力、技、センス、そしてその器たる精神。
武を極め強さの高みへと至るには、それぞれが必要不可欠なもの。ことこの場に居合わせた両者は、その全てを余すこと無く磨き上げ、前人未到の領域へ至った者と言う点で共通していた。気が合うのもさもありなん。話はスムーズに進んでいく。
「なるほどな。つまりテメーはその時空の歪とやらに飛び込んだ結果ここに来たってわけか」
「まぁな…あん時は無我夢中だったもんで、何が何やらわからずにってこった。それでたまたま降り立った先が、魔国だったってわけだ。リムルともそこで顔を合わせたな」
「ふむん、なるほどな。そうであれば合点が行くぜ。お前のような言っちまえば規格外な存在を、俺がまだ関知してないってのもありえねー話だからな」
リムルとの関係性はごく最近できたものと判明した以上、次にギィの興味を引いたのはディアブロの存在だ。
よもや自分と同格と思しき者がすでにリムルの配下として仕えているなど、夢にも思わない。
「ああ、ディアブロか。そうそう、あんたと気の感じが似てるやつでな。確か悪魔だってリムルが言ってたっけ。」
「ー。ソイツの髪色とか聞いてみても良いか?」
「髪…?単純に黒色だったと思うが…」
「マジかよ…"クロ"だと?ありゃ新参の魔王に降るような奴じゃねえと思ってたんだが…何があったってんだ一体。しかも名付けまでやってやがるのか。リムルの野郎、何を考えていやがる…」
決して他と相容れず、あまつさえ誰かの下に仕くなど予想だにしていなかった同期の有様に、さしものギィも絶句した。
そして見逃せないのが「名付け」を行っていること。
原初は本来、たとえ魔王であろうとも本来は下位の魔物であるスライム如きに御しきれるものでは無い。従って、それ程の存在に名を付けるほどのエネルギーが無ければ決して成し得ることでは無いのだ。
それ程の力を擁する存在が身近にいるのならば話は別だが。
「膨大なエネルギー…そうか。ヴェルドラが力を貸しやがったのか」
「まぁなんか大変な事をしでかしてるようだなアイツは。悪いが俺はそこら辺は詳しく知らねえんだがよ」
「いいや、大体どんな事してんのかは把握できたぜ。十分だ。ありがとよ。…後でリムルに近況がてら聞きに行こうと思ってたんだが、こりゃ落ち着いてから詰めたほうが良さそうだな」
目的どうこうはリムル本人に直接問いただすしか無いという結論が出た以上、ギィのベジットに対する要件、つまる所の事情聴取は終了した。
ここで、ギィによる返礼が行われることになる。
「こっちの都合で長々と話をさせて悪かったな。詫びと言っちゃ何だが、この際だ。何でも良いから好きに言いやがれ。大抵のことなら叶えてやれるからよ」
最強の魔王の「何でも叶えてやる」宣言。聞くものが聞けば飛び付いて縋るだろうそれを、どこまでも戦闘脳なベジットは闘いの合図だと言わんばかりに即答する。
「じゃあアンタと闘わせてくれ。お互い強さには自信があるんだ、楽しめそうじゃねえか」
「あっははは!そう来ると思ってたぜ。」
ウズウズしていたベジットの気配を感じていたのか、ギィは嬉しそうに嗤いながらパチンと指を鳴らす。
次の瞬間、円卓が浮き上がり、結界の中で隔離されていた異界への門が開く。
「場所は用意してあるからよ、そこで存分にってのはどうだ?」
「そいつはいい、遠慮はしたくないしな」
そうして場所を異界へと移した両者。
ベジットが半歩足を引き、瞬間移動の要領で手早く間合いを取る。
「ここじゃあ俺は挑戦者ってとこだな」
「はっ、律儀な奴だな。これは言わば費やした時間に対する払われるべき正当な対価ってやつだ。遠慮なんかいらねえからさっさとかかってこい」
「へへ…ありがてえ。んじゃ早速お言葉に甘えさせてもらうとするぜ」
そうして静かに厳かに、闘いは始まった。
「まさかここまでとはな、驚いたぜ。」
「くはっ、そりゃお前の方こそだ。まだこの世界に来て一月も経っていないと聞いたが、随分と力の扱いに慣れてやがるじゃねえか、大したもんだ」
ベジットが超高速で気を操り、空間の「面」を捉えた圧倒的な立体機動で攻め立てるも、そのことごとくを涼しい顔で受け流し、付け入る隙を全く見せないギィ。
(コイツは思った以上に厄介だな…二手三手けしかけて見て改めてわかったが、力の扱いの上手さが半端じゃねえ。手応え的にはアイツディアブロ以上か…)
ベジットはギィと同期の原初の悪魔、"黒"であるディアブロから直々にこの世界の力の扱い方を学んでいた。だからこそ分かる。目の前の漢が如何に崩しにくい存在であるかを。
「チッ、難攻不落ってやつかよ」
「どうしたよ、まだ全然そんなものじゃないだろ?小手調べはこれぐらいにしとこうや」
このままでは千日手であることを暗に伝えたギィは、更なる力を見せてみろとベジットを挑発する。
(現状まだ上手く力を調節できない俺が超サイヤ人になっても、その粗を突かれる可能性がある…かと言って決定打に欠けるこの状態なら、奴の力の本質すら掴めん)
あらゆる可能性をその優れた頭脳で一瞬で処理し、ベジットはここに来てまだこの世界では見せていなかったチカラを解放することに決めた。
「へっ、良いけどよ。ブッたまげても知らねえぞ」
煽られたこともさして気にしていないベジットが無邪気に笑いながら返し、遂にその内に眠る神の力を解放した。
「変身か。…にしてはちょっと雰囲気が…」
「流石だな。お前ほどになると、どういうものかは見ただけで大体分かるもんなのか」
「これが超サイヤ人ゴッド…まぁ超サイヤ人と言ってもわからんだろうからゴッドベジットってとこかな」
ー超サイヤ人ゴッド。
深紅色に輝き静かに燃ゆる闘気、同じく髪色や瞳も紅々と染め上げられるその神々しき姿は、薄紅の闢光となって周囲を照らし出し、相対する者を確かな圧力で威する。
5人の正しき心を持つサイヤ人が、選ばれた1人の正しい心を持つサイヤ人に力を送り込むことで誕生するという伝説の存在が今、界を跨いで降臨した。
ベジットを取り巻く神の気はサイヤ人の純粋な神性を扱ったチカラ。
即ちベジット自身が「そういう」存在へと成り代わっただけであり、厳密には超サイヤ人のような単純なパワーアップの為の変身とは異なるものだ。
つまり身体に負担をかけずに平時と同様の力のコントロールが行えるのである。
故にー
「さあて、いきなり段違いのもんに慣れろっつーのは流石に酷だからよ……最初は緩めにしてやるよ」
本当のところ、ギィはベジットを本当の意味で危険な存在だとは思っていなかった。
実際、先程の組手ではあくまで力の扱いを弁えた強者という印象だけで、パワーやスピードは確かに規格外と言えるものではあったものの、そんな存在は彼の知るところではありふれていたからだ。
神性を纏う変化を行ったことは少々驚いたものの、良く知る顔ぶれにも似たようなことをできる者達は一定数いたし、仮にそうなったところでギィにとっては脅威足り得ない者たちがほとんどだったからである。
だが、その評価は文字通りの亜光速で覆ることになる。
「なっー」
空間内を赭色の風が満たし、瞬間的に構えを取ったギィの総身を凄まじい衝撃が打ち叩く。
異界全体を揺るがす振動は仮初の質量となって隣接した次元世界の悉くを滅ぼした。
(うおお…あっぶねえなこの野郎、こんなおっかない力を隠していやがったのか…!)
とっさにギィはあのタイミングで引き出せる力全てで相殺し、殺しきれなかった力を神憑りな指向操作で逸らしていた。
最低限界を保たせる程度の範囲にギリギリまで絞り込んでから放逐したことで、そのまま異次元に投げ出されるようなめんどうな事態はなんとか避けられたものの、あれ程のものをただ躱すか受けるかしていた場合、大惨事は必至だった。
それ程の拳を一切の躊躇も無く打ち込んできた当の本人はと言うと。
「おー、なんか周りがやべー事なってっけど大丈夫そうか?」
「…」
とてつもなくお気楽である。
少なくともベジットは、自身の力には振り回されていない様子だった。そこはまずまず及第点であるが、肝心の周囲への配慮が全くなっていない。楽しめると思っていた戦いにおいて、余計な作業を強制されたギィは、こめかみに青筋を立てながら中断の意を伝える。
「やめだって?そりゃあねえぜ、お前だって全然ピンピンしてんじゃー」
「うるせえ、テメェのせいで察しの通りやべー事になりかけたんだよ。あやうく俺達揃って帰ってこれなくなるところだったんだぜ。色々と言っとかなきゃならん事も聞いときゃならん事もあるし、とりあえず今日はもうナシだ。」
有無を言わせない凄みを見せるギィに、実は少しやらかした自覚のあるベジットはバツの悪そうに首定した。
「確かにやりすぎちまったよ、ごめんごめん」
「ほんとに思ってんのかよ」
肩を竦めてはにかみ顔で謝罪するベジットと、ぶっきらぼうにそれに応じるギィの姿が戻ってくるのが見えた時、それを迎えたヴェルザードが不思議そうに首を傾げたのも無理は無かった。
ーかくして空前絶後の最強対決は、両者共に不本意な形で決着を見ることになったのであったー
まあ底は見せないよね