転移したらクソ強い奴らがめっちゃいた件 byベジット 作:天下無敵の肩こり
第7話 暴風竜
リムルに案内された先にあったのは、広大な地下空間。
空間は奥の方へ続いており、最奥には一つの部屋があった。
「ここが地下迷宮。まぁ言ってみればダンジョンみたいなもんだ」
どこか聞いたことのある気がする単語に、ベジットは首を傾げ、思い出したかのように話し始めた。
「だんじょん…ああ、そう言えば聞いたことがある。俺のガキがやっていたげえむとやらに、そんな感じのものが出てきていたはずだ」
(ベジットの子供…悟天じゃなさそうだし、トランクスか。まぁカプセルコーポレーションの御曹司だし、ゲームの一つや二つやっていてもおかしくないよな)
ベジットの発言一つ一つにドラゴンボールの隠された設定などを見出しては、リムルは頭の中で考察していた。
もうすっかりオタク全開という感じである。
ここでベジットが本題とばかりに切り出した。
「で、俺をここまで連れてきたってことは何か用があるんだろ?…さっきから奥の方でヤバイ気配をビンビン感じるんだが、それと何か関係があるのか」
「まぁね。あんたにどうしても会いたいって奴がいるもんでさ、悪いけど会ってやってくれないか?」
「ふむ…こいつは結構大物そうだ。別に構わねぇよ、強ぇ奴にはむしろ会いたいぐらいだからな」
ベジットでさえ肌で感じる強者の気配。まだ姿を見ていないというのに、その顔は高揚で満ちていた。
「クアーッハッハッハッ!!よくぞ来た!歓迎するぞ、聖典最強の戦士よ!」
頭上から響いてきたのは野太い声色の高笑い。
いつの間に部屋から出てきていたのか、ベジットとリムルを見下ろす形で、1人の男が宙に浮かんでいた。
「ほう…この俺を見下すかよ。面白え」
頭上に立つ褐色肌で大柄の男に、ベジットは不敵な笑みを浮かべながら言い放つ。
「降りてきな。貴様のお望み通り出てきてやったんだ」
「クク…この我を相手にその不遜な態度、どうやら本物らしいな。良かろう!」
舞い降りた瞬間、お互いの闘気が迸り、地に電流が走ったかのような衝撃が響き渡る。
「お…おい!いきなり始める気かよ!」
まさか出会った瞬間にやり始めるとは思いもしなかったリムルが、本日何度目であろう焦りを見せる。
そんなリムルのことなど、2人はもはやそっちのけであった。
「クハハハ!これは我が挑戦者というわけか。よし、では名乗ろう!我はヴェルドラ。この世界に4体しか存在せぬ最強の竜種が1体、『暴風竜』ヴェルドラ=テンペストである!!」
声高に名乗った最強の竜に、無敵の戦士が応える。
「どういうわけかは知らんが、お前も俺の事を知ってるらしいな…だが名乗られちゃあ答えるしか無い。俺の名はベジット。ベジータとカカロットの合体で、ベジットだ!」
お互いに口上を述べ終わった今、始まるのは純粋な闘争のみ。
「いざ!」
「尋常に…」
「「勝負っ!!」」
発する声など遥か彼方。音を置き去りにした高速乱舞が闘いの合図となった。
自分以外を弱者と呼んで憚らぬ、究極戦士同士の闘いが勃発した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
激突する拳と拳。
放たれる技のどれもが災害級であり、ここが地下迷宮の最奥であることにリムルは密かに安堵していた。
「…やるな!」
「貴様もな!」
何千何万回にも及ぶ連打の応酬、組合いに転じた両者は、距離を取るためお互いを弾き飛ばし、仕切り直しとなった。
「ウォーミングアップはここまででいいだろう」
ベジットはそう宣言し、内に鎮めていた気を、燃え上がらせるように解放した。
「はあっ!!!」
裂帛の気合いと共に閃光が走り、光の中から現れたのは翡翠の瞳と黄金の髪となった金色の戦士。
「こいつが超ベジット!」
四方八方に飛び散った黄金色(こがねいろ)の輝きは、昏い迷宮内を明るく照らした。
(うおおおお、かっけー!まるで漫画の中に取り残されてるみてーだ…)
黙って戦況を見守っていたリムルは、心の中で大はしゃぎ。
それは今、その超戦士と相対しているヴェルドラとて同じこと。
「素晴らしい…何度その姿を思い浮かべたことか!クハハハ、実に素晴らしいぞ、ベジットよ!」
既に高かったテンションをさらに爆上げするヴェルドラに、若干引き気味となるベジットだった。
「なんか妙に喜びやがるな…調子狂うぜ全く」
それはともかくとして、ここから更に戦いの次元は一段階引き上がることとなる。
「覚悟しろよ、こうなっちまったらもう俺は止められねぇぞ!」
「クックック、望むところだ!我もまだまだ全力ではないぞ!」
再び一瞬の間にして距離を詰めた両者は、そのまま激しく殴り合った。
流れるような動作で突き、蹴り、叩き、その全てを神がかった力の方向操作で逸らす。
「むんっ!」
ベジットが気合い一閃。
不意打ち気味に右手首から気剣、スピリッツソードを放つ。
「くっ!」
高速連打の最中に混ぜ込まれた唐突な斬撃は、ヴェルドラの頬を浅く切り裂く。
「この我をただの闘気の刃で切ってのけるとは…驚いたぞ、ベジットよ!」
切り裂かれた拍子の勢いを利用し、その場で姿勢低く急回転してベジットの意表を突いたヴェルドラが、上方向に強烈な回し蹴りを放った。
「ちぃっ!」
ガラ空きとなった左脇腹に辛うじてガードを割り込ませたベジット。だが威力を殺し切れず、激しく吹き飛んだ。
「これでお互い一本、ってとこか」
「ふむ、そうなるな」
三度距離を取った両者。
これ以上の近接戦はジリ貧だと悟ったのか、大技同士の勝負に持ち込まれた。
全身から紫電の如きオーラを放ちながら、ベジットが必殺の構えに入る。
「てめえが俺を知ってるってんなら、この技のことも知ってんだろうが…関係ねえ。実際に受けてみねえと分かんねえ威力ってヤツを、思い知らせてやる!」
「クハハ、右掌を左掌に重ね合わせ、肩上に取るその構え…さてはアレだな?アレなのだな!?」
ヴェルドラが興奮のためか上擦った声を上げた時、既に空間には危険なほどに高まったエネルギーにより、バチバチというスパーク音が響き渡っていた。
「ならば我は「あの技」で迎え撃つとしよう!往くぞ!」
ヴェルドラは、兼ねてより何度も見返していた記憶を反芻しながら、その独特な構えを取る。
「へっ、そう来るか…ホントになんで知ってるか知らねぇが、面白ぇ…本家本元は俺だろうからな、勝者も決まってるってもんだぜ」
「それはどうかな?我もエネルギーの総量には自信があるのでな!」
臨界点を迎えた両者のエネルギーが、今、解放されようとしていた。
「喰らえ!ギャリック砲ーッ!!!」
「波ーッ!!!」
耳鳴りを覚えるような轟音を立てながら巻き起こった、蒼と紫の極光のぶつかり合い。
発生した激烈な干渉波は次元を突き破り、付属する迷宮の階層をその異なる次元層ごと全て滅ぼしー
は、しなかった。
「…!なに…!?」
「むうっ…!?」
「はいはい!そこまでそこまで!」
邪魔されるはずの無い漢同士の技と技のぶつかり合いは、直前までただの観客でしか無かった闖入者により、決着を見ずに終わった。
「おいおい、そりゃねーぞおめぇ!」
「そうだぞリムルよ!今が一番イイ所だったというに!」
すっかり熱くなり、己と相手、戦いにしか目が行っていなかった両者はそれぞれ抗議の声を上げる。
「あのねぇ君たち…アレ以上やられてたらここが無事で済まなかったっつーの!」
リムルはあの闘争の結果起こり得たであろう当然の事実を突き付け、勝負無しの理由を冷静に語り始めた。
説明を始めてから数分後、ようやく両者は納得したようで、リムルはホッと胸を撫で下ろす。
「それにしてもよ、あの規模の技をお前はどこにどうやって消しちまったんだ?」
今やすっかり落ち着きを取り戻したベジットが、ふと思い至ったようにリムルに尋ねる。
「ああ、それは…」
「リムルの能力(スキル)によるものだ。此奴は我にもよく分からぬモノを色々と持っておるからな。不可能などほぼ無いのだ」
ヴェルドラが我が物顔でリムルの説明を横取りした。
「ほう…そういう力もあるのか。面白い」
「ははは…まぁそういうこと。」
リムルはヴェルドラのざっくばらんな説明に苦笑しながら、ベジットへ話を振る。
「さて、身体も動かしたことだ。そろそろ良い時間になって来たし、飯の時間にしないか?積もる話もそこでしたいしさ」
大喰いで美味いもの大好きなサイヤ人のベジットにしてみれば、それは願ってもない申し出だった。
「そいつはありがたい。じゃあ早速メシにさせてもらおうかな!」
こうしてベジットの魔国訪問は、大詰めを迎えることになる。
初の超化です。
まぁ見せ場としてはここで良いかなって…
次回は雑談回です。