女神転生が存在しない現代に悪魔が現れたら 作:ネコマタ推し
世の中には、時に信じられないような出来事が発生したりする。
例えばバナナの皮を踏んで転んだり、転んだ拍子に崖から落下したり、落ちたと思ったら藪がいい感じにクッションになって助かったり、藪から蛇が出てきたり、尻から蛇の毒を注入されて死んだり………
神に遭遇したり、神の力で転生したりだ。
というのが今までの経緯だ。
まとめると「転生した」。
たった4文字で済むとは。ひらがなにすると6文字か?それでも十分短いが。
流石に端折りすぎか。
具体的には神に会ってからの部分が。
流石に転生させてくれた恩があるありがたい神様の事はもっとネットリと回想したい。
………あの時の僕は憎き蛇めに殺され、意識が謎の黒い空間に転送された。「ここが死後の世界かぁ」と呑気に思いながら長い間をそこで過ごしていると突如として光が空間の中心に灯った。
【我が名を称えよ 我が 栄光に満ちた 並ぶ者無き 我が名を称えよ】
光はそんな尊大な事を言いながら形を成していく。そして終いには黄色いスキンヘッドのおっさんの生首になった。
何だコイツ!?どこかで見たことあるんだけどなぁ。
【我はYHVH… 有らんとして在る者なり】
YHVHといえば、ユダヤとキリストとイスラムの神のことだ。まさかの自己紹介である。流石は死後の世界、なんでもありだな。
だけど僕は神なんか信じてないから地獄に行くだろうなぁ。痛いのは嫌だな。今からでも信じるから許してもらえないかなぁ?流石に無理か。
【汝は 選ばれた 代行者に】
どうやら地獄へは行かずに済むらしい。だが代行者に選ばれたとはなんぞ?
いや待てよ………僕はコイツのことを知っている。
女神転生の
女神転生のYHVH、それは女神転生とか言う神に喧嘩を売って東京が破滅するゲームの登場キャラだ。
作品によってはプレイヤーの手によって殺せたり、主人公から要らない子扱いされたり、既に死んでたりしている。とはいえ常に強大な力を持つ存在として描かれている。まあ人類の半分以上から信仰されているビッグネームだからな。
そんな存在が僕に話しかけている。実に驚きだ。
【人間を導き 魔都と化した 東京を生きろ】
導くって具体的には?魔都と化した東京ってなに?
全く分からんよ。説明もっとプリーズ!
【光あれ】
おい!説明放棄すんな!
そういう感じで碌に説明の無いまま視界は光で満たされた。そして次に目覚めたときは知らない病院の天井が視界を支配していた。
つまり赤ん坊に転生したというわけだ。だがここで問題が発生した。
「で、誰の子供なんだ?」
「知らないわ!この子は悪魔よ!」
今世における僕の祖父と母が口論をしている。
当時はよくわからんかったがなんでも母は性行為をしてないのにも関わらず僕を孕んだらしい。要するに処女懐胎ですね。
流石はYHVH、キリストさんと同じ生まれ方をさせてくれるなんて太っ腹ですね。なお受胎告知はしてなかった模様。いやしたのかな?ガブリエルは来たけど普通に幻覚だと思われた説、あると思います。
まあ今となって分からないし、どっちでもいいが。
「こんな子を育てられない!」
母はそう言って僕を拒絶する。
えー、僕は齢0歳にして捨てられました☆
だが捨てる神はあれば拾う神あり、叔父夫婦が僕の面倒を見てくれることになった。
ちなみに彼らはキリスト教のカトリックを信仰している家庭だ。これにはYHVHもニッコリ。
そして僕は良い感じに成長していった。
流石に人生2周目ですからね、勉学とかで躓くわけがなかった。
だが転生の旨味はそれだけじゃないだろう。
前世ではその手の転生系小説を好んでいた身としては期待するしかない。
そう、転生特典だ。
というわけで、お楽しみの特典は『トラフーリ』と『COMP』だった。前者は女神転生に出てくる魔法で、後者は同シリーズの重要なアイテムだ。
まあ結論からいうとどちらもゴミだったわけだが。
まず『トラフーリ』、これは瞬間移動して戦闘から逃げ出す補助魔法だ。なおこの世界には悪魔はいない。心霊スポットや裏路地とかを探索しても悪魔の「あ」の字も無かったので間違いないだろう。
一応、戦闘状態じゃなくても瞬間移動はできるが、短距離しか移動出来ないという非常に使い勝手の悪いものだ。もっとこう、ドラクエのルーラみたいな感じにならんのですかね?そしたら色々と有効活用できたのに。
現状、逃げる時にしか役に立たない魔法となっている。なお善良な日本人が逃げる機会があるかというと………
流石に『メギドラオン』が欲しいみたいな贅沢は言わないから『アギ』や『ジオ』辺りが欲しかった。いや平和な世界で攻撃魔法もらっても使いどころさんなんて限られているけど。
次に『COMP』だがこれは『悪魔召喚プログラム』『アナライズ』『悪魔合体』『悪魔言語自動翻訳』『生体マグネタイト蓄積機能』まで備えたハイテクデバイスだ。
なおこの世界に悪魔はいない。つまり今のところは無用の長物だ。
まあ『アナライズ』は少しは役立った。例えば自分が『トラフーリ』を使えることが判明したり、総理大臣や米国大使が天津神ツクヨミや鬼神トールではないことが分かったりしたし。
なお『
なんというか、転生特典が普段使いできないものばかりで悲しくなってくるね。
ということで僕は鍛えて鍛えまくった。先天的な力が使えないのなら後天的に力を付ければいいじゃないの精神だ。
具体的には筋トレによる肉体的修行、武術を習う技術的修行、臨死体験をする霊的修行などを行った。
特に霊的修行はとても有意義だった。『カオス転生ごちゃまぜサマナー』を参考にして、富士山で生命の危機にあいまくる荒行は効果覿面。
レベルなんて10まで上がった。
………ショボイ!
レベル10なんて真Ⅴで言うなら天使エンジェルくらいだぞ。必死に鍛えてもモブ並の戦闘力しか得れなかった。まあそれでも常人よりは遥かに強くはなっているが。
でも「人間を導け」とかになると無理ゲーぞ。むしろ導かれる側なんだわ。
と、ここまでが僕の人生だ。
今は大学生になって上京して独り暮らししている。実の子でもないのに大学まで行かせてくれる叔父夫婦には頭が上がらない。
ちなみに東京行きを選んだのは自分の意思だ。YHVHの言いつけ通り東京で生きている。やっぱ転生させてくれた恩があるわけだしな。
それに彼の言うことを聞かなかったら塩の柱にされるかもしれないし。ソースは聖書。
しかし疑問が残るのはYHVHの「魔都と化した東京を生きろ」という神託だ。
今の世界は細かい所は違うものの平和な日本だ。前世と同じく悪魔とかはいない。なのでガイア教もベテルもジプスもヤタガラスも存在しないだろう。それなのに東京は魔都と化すらしい。この際、メシア教でもいいから存在してくれよ。
途轍もなく不安だ。
そしてその不安は現実のものとなった。
「で、お前は悪魔でいいんだよな?」
「そうニャ!吾輩は悪魔である!」
いつものようにアパートの自室で大学の課題をこなしていると突如として『COMP』がバイブレーションした。叔母さんからの電話かなと思い手を取った瞬間に『COMP』から悪魔が召喚され、いきなり襲い掛かって来た。
まあ僕もそれなりに雑魚だが相手はもっと雑魚だった。普通に攻撃を躱してから、タコ殴りにするとあっさりと降参し命乞い。
彼曰く「仲魔になるから見逃してくれニャ!」というので要求を飲んだ。
そして今は事情聴取中だ。なぜ悪魔がいないであろう世界に
とりあえず『COMP』のカメラを猫っぽい悪魔に向けて『アナライズ』を行う。
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【NAME】
『魔獣』ケットシー(レベル6)
【状態】
『死にかけ』
【耐性】
『衝撃弱点』『雷撃耐性』
【スキル】
なし
【ユニークスキル】
『にゃん2ブロー』:自身以外の「にゃん2ブロー」を持つ仲魔がいる時、自身の攻撃で与えるダメージが増加する。
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あー、お前は魔獣ケットシーか。
確かに真Ⅴで見た記憶があるぞ。最新作はやったことがあるからよく覚えている。
そんでもってタコ殴りにしたせいで死にかけか。これってどうやって回復させるんだ?『トラフーリ』しか使えないカスだから回復魔法や傷薬なんていう回復手段は持ち合わせてないぞ。まあいいか、死んだら死んだ時だ。コイツに愛着なんてないし。
というかスキルが「なし」って………『トラフーリ』だけの僕よりも酷いじゃないか。ユニークスキルも強くないし。
「とりあえず自己紹介だな。俺の名前は多田野ヒトナリだ。サマナーと呼んでくれ。今後ともよろしくな、魔獣ケットシー」
「吾輩のことを知っているのかニャ?なら話が早いニャ。今後ともよろしくだニャ、サマニャー」
それを聞いてから僕はキッチンに向かって冷蔵庫を漁る。………ちくわしか持ってねぇ!これは買い出しに行く必要がありますね。
まあケットシーは猫の妖精だし魚介は好きだろう。
ということで皿の上にちくわを載せて
「とりあえずこれでも喰え」
「おっ、これはかたじけないニャ………スンスン、魚の練り物か。これは美味しそうだニャ」
そう言ってケットシーは此方に礼を言ってから、ちくわをモムモムと食べ始めた。
触りは上々、こっからが本番だ。
「それで、お前以外にもこの世界に悪魔はいるのか?」
「ああいるだろうニャ。魔界の悪魔達は東京に殺到しているという噂を聞いて吾輩もここに来たんだニャ」
「ちなみになんでお前は物質界に来たんだ?」
「そ、それは………」
「言わなきゃ猫缶にするぞ」
「いや、なに。大した理由じゃないさ。吾輩はケットシー族の中でも王国を持たない落ちこぼれでな。武者修行の為に物質界に来たんだ」
ケットシーは自嘲するように笑う。………あざといな。流石は猫の妖精なだけある。
だけど気を抜いてはいけない。コイツは俺を殺そうとしてきたリアル悪魔だ。いつ主従を逆転されるか分かったものではない。
「そうか、それでなんで東京なんだ?」
「聞いた話によるとでニャ、急にここら辺の「じーぴー」ってのが上がって悪魔が出現しやすいんだニャ。そうなった理由は詳しくは知らんニャ」
なるほど、「じーぴー」とはおそらくGP(ゲートパワー)のことだな。確か悪魔が住まう魔界と人間が住まう物質界を結ぶゲートの大きさを表す数値だったはずだ。
今まではそれが0か0に近かったから悪魔は出現出来なかったが、何かしらの要因で東京のGPが上昇して悪魔が出現するようになったと。こんなところだろう。
とりあえず状況を整理すると平和だった東京はもうないと考えていいだろう。これからは歴代女神転生シリーズみたいに末法の都市になる可能性が高い。
………最悪だ。人間なんて楽に死ねるだけマシと言えるくらいな目にあいまくるだろう。
なら逃げるか?いやそれだとYHVHの「魔都と化した東京を生きろ」という命令に逆らってしまうことになる。聖書の神なんて悪魔よりも人を殺した数が多いマジキチ神だから逆らったら天罰が下される可能性大だ。
つまり地獄を生き延びる必要があると。その為には強さが必要だ。レベル10みたいなモブ同然の力では到底足りない。
もっと力を………悪魔を殺さないと。
「そのだニャ、サマニャー?怖い顔してどうしたんだニャ?」
「ああ、COMP内に戻っていてくれ」
ケットシーをCOMP内に収容する。出しっぱなしにしててもマグネタイトの無駄遣いだからな。
さあ行くか、
そうして玄関へと向かった。