女神転生が存在しない現代に悪魔が現れたら 作:ネコマタ推し
暴走車両が僕らを轢き殺さんと迫っている。
まあこちらも常人じゃないので車程度のスピードはなんてこない、普通に躱した。
なおケットシーは轢かれた。なにやってんだ。
「それでな、ケットシー。僕としてはパーティバランスを考えて魔法が使える奴が欲しいわけよ。だからさっきの外道スライムは倒した」
「ニャ―!仲魔が轢かれたのに話を続ける奴があるかニャ!」
「いや悪魔はそういう攻撃は無効化するだろ」
「だとしてもなんか、こう、あるだろニャー!」
「………?正当防衛なら人間は襲ってもいいよ」
「もういいニャ!それはそれとして覚悟しろニャ!鉄のイノシシ!」
自動車を鉄のイノシシ扱いするとかベタだな。そう思いながら暴走車両vsケットシーの経過を見守る。
車両側の方が馬力では上だが相手を傷つける手段がない。この勝負は泥沼になるだろうな。
「ぼたん鍋にしてやるニャ!」
ケットシーは運転席に向けて突撃した。自動車を操る本体を狙うとは賢いな。
さあ運転手はどうでるか………いや待て、まず運転手がいない。
どうやって動いているんだアレ?
「そこに近寄るな!『ジオ』!」
「ニャ―!」
ケットシーの体は電撃によりダメージを受ける。
悪魔を傷つけれるのは普通の車では不可能だ。それに
車の悪魔か………真Ⅱにいたような。確か名前は外道クリス・ザ・カーだったはず。
だが少し疑問が残るな。悪魔ならなんで最初に行った轢き逃げアタックは無効化されたんだ?
まあそれはいいか。重要なのは魔法が使えるかどうかだ。
「おい!ケットシー!そいつは仲魔にするから殺すなよ!」
「ちょっとは吾輩の心配をしたりとかしニャいんですか!?」
「お前は雷撃属性に耐性持ってるから大丈夫だろ。信頼の裏返しって奴だ」
「え!?キュンッ!………ってなるわけニャいだろ!あくまで耐性だから痛いもんは痛いんですニャ!」
とりあえず弱点を看破する為に『アナライズ』する。
結果は………「生命体を映してください」と出た。
え?コイツは悪魔じゃないの?でも『ジオ』を使ったよな。はっきりと喋ったよな。
あまりにもマイナー悪魔すぎて『COMP』側が認識できなかったのかな。
それはともかくとしてボンネットの上に飛び乗る。
「アタシの車に手を出すな!『ジオ』!」
「それは既に見た。そして尻尾を出したな!」
するとスパムとトンカチを持った水色の幽霊のような悪魔がいた。
この姿は邪鬼グレムリンか。なるほど、確かコイツは機械に取り憑く力を持つ。それで車を操ってたんだな。『アナライズ』に反応しなかったのは本体が隠れていたからか。
だが方針は変わらない。コイツが『ジオ』を使えることには変わりない。
仲魔にするぞ。
僕はグレムリンを掴んだまま自動車から飛び降りて地面に着地する。なお車はコントロールを失って壁に激突した。あれは廃車確定だな。
「放せ!放せ!」
「じゃあ仲魔になれ」
「アタシの車を傷つけた奴の仲魔なんかにはならないよーだ!せっかく車を使って人を轢き殺しまくってたのに」
「それは酷いな」
だけど対外的に暴走車両が人を殺しただけだ。コイツが
ダイモーンと違って色々と条件的にいい。なにがなんでも仲魔にするぞ。
「ハッ!アタシは上級国民だからセーフなのさ!日本人なら知ってるだろう、上級は人を轢き殺しても容疑者扱いはされないって!」
「よく知ってるな。けど例の上級国民は獄中で死んだし勲章ははく奪されたぞ。だからセーフではない。正確にはマスゴミは上級に忖度してくれるだ」
この世界は前世と必ずしも同じではない。例えば政治家の名前とかは違うし、女神転生(ゲーム)は発売されてない。とはいえ似た世界ではあるので似た事件は起こっている。
「そうなんだぁ………勉強になるなぁ」
「ところでお前は上級国民じゃないだろう」
「そ、そんなことないよーだ!アタシは立派な上級国民さ!」
「まず悪魔に人権がないんだわ」
「そ、そんな!」
グレムリンはショックを受けている。
よしよし、車から引っぺがした件については忘れているな。
「ちなみに僕は上級国民だ」
「ホントかニャあ?」
「うるさい」
「ニ``ャ``!」
茶々を挟んできたケットシーに蹴りをお見舞いする。邪魔すんじゃねぇ。
「………上級だから今のように悪魔相手にも自由に暴力を振るえる。その証拠にそこの汚らしい猫は反撃してこないだろう」
「ホ、ホントだ!これが上級パワー!」
「上級の名のもとに自由に暴れたくないか?悪魔相手なら暴れたい放題だ」
「暴れたい放題………」
グレムリンは目をキラキラさせながらこちらを見てくる。いい調子だ。
なんとかリカバリーは出来た。
「お前も暴れたいか?」
「暴れたい!人間を轢き殺すの飽きた!」
「じゃあ仲魔になれ!」
「で、でも完全には信じられない。じゃあさ!アタシを総理大臣にあわせて!偉い人に会えるのなら本物の上級国民でしょ!」
「いいだろう内藤総理に会わせてやる」
「それじゃあまぁ………アタシは邪鬼グレムリン、こんごともよろしく!」
「ああ、よろしく!」
グレムリンの尻尾と僕の手で握手をする。
これで2匹目の仲魔を確保だ。
僕が『COMP』にグレムリンを収容するとケットシーが寄って来た。
「サマニャ―、あんなこと言って大丈夫ニャの?」
「なにがだ?」
「総理に会わせるとかって話ニャ。サマニャ―ってただの大学生あたりニャよね」
「大学生兼上級国民だが何か?」
「冗談はよすニャ」
「だから冗談じゃねぇよ」
こうして口論が始める。そして話は平行線になるかに思われた時、『COMP』から通知が来た。
だがそれは悪魔関連の知らせではなかった。普通のメッセージアプリからのものだった。なんでもメールが来ているらしい。
僕はメールを見る。………これは、これは。なんともタイミングのいいことだ。
「そこまで言うならしょうがないな。じゃあ実際に会いにいくぞ」
「誰にニャ?」
「総理大臣」
そうして総理大臣がいる場所、永田町へと向かう。なお道中で悪魔を討伐したり仲魔を勧誘したのだが、それは別の話である。
そして時刻は午後3時頃………
「いやぁ、妖獣ピアレイは強敵だったニャねぇ」
「全くだ。『ムド』を使ってきた時は肝が冷えた」
「サマナーは呪殺弱点だもんね。でもアタシ的には妖精ピクシー戦が印象的だなぁ」
「ああ、何とか仲魔にできた。グレムリン、お前のおかげだ」
「えへへ~」
感想を語り合っていると僕達は遂に総理大臣が鎮座する場所、首相官邸前についた。そこには取材陣が多く詰めていた。やはり悪魔という異常事態を受けての政府の対応に注目が集まるのは自然だな。
グレムリンとケットシーは『COMP』に収容しといた。なにぶん悪魔は人目につく。流石にここでマスコミに捕まると面倒だからな。
さてと………あの人はいるかな?
「あっ!ヒトナリくん!」
「どうも、八雲さん」
黒髪ロングの美人さんが官邸正門近くにいた。彼女は秘書の八雲さんだ。
ある人からのメールによれば彼女が官邸まで案内してくれるとのことだったが予定通り集合場所にいた。
そうして僕は彼女に導かれるままに官邸内に入る。
「はえ~」
うん、前も含めて自分の人生とは一切縁のない建物に連れてこられて思わず口をボケっと開けてしまう。
なんか田舎から上京した人みたいな感じになって辺りを見回している。
そうして通される一室、「未確認生物対策本部」と達筆で書かれた紙が貼ってあるその一室の中では既に会議が始まっているようであった。なにせ扉越しに声が漏れている。かなり紛糾しているようだ。
そして八雲さんは扉をノックする。
「失礼します、八雲です。件の人物を連れてきました」
「ついに来たか!」
扉の向こうから誰かの声がした。
どうやら期待されているようだ。ならば行きますか。
八雲さんに連れられて入室する。そこには総理を始めとした閣僚や与党幹部などのテレビで一度は見たことがある大物達が集合していた。まるでボスラッシュみたいだ。実際、総理は日本国のボスなわけだが。ちなみに陛下は裏ボスだ。
覚悟していたとはいえ、やっぱし緊張するな。だけど警官に
「おはようございます。タロウ防衛大臣」
「いつもみたいにタロウ叔父さんと呼んでくれないのかヒトナリ?」
「流石に総理の前で叔父さん呼びはきついよ」
多田野タロウ、それは現職の防衛大臣の名前だ。そして僕の叔父さんにして育ての親でもある。
こんな人が育ての親なのはちょっとした自慢である。まあ別に僕が凄いわけではないので内心で威張るのが精一杯ではあるが。
しかし、叔父さんが政府の重役で本当に助かった。………よく考えたらこれはYHVHの意思なのかもな、親族が偉い人だとアイツの「人間を導け」というオーダーを達成しやすくなるし。そんな力あるなら僕の使える魔法が『トラフーリ』だけなのをどうにかしてどうぞ。
「何がなにやらといった人もいるだろう。紹介しよう!彼は多田野ヒトナリ、俺の甥だ。そして今回の事態の打開の鍵でもある!」
「えっと、よろしくお願いします!」
とりあえず挨拶をする。
僕はタロウ叔父さんに1つのメッセージを送った。それは「この事態をどうにかできる方法を知っている。政府に取り次いでくれ」だ。それを受けて叔父さんは僕を「未確認生物対策会議」に召集することにしたらしい。いくら身内とはいえ部外者を政府の会議に招くとか思い切りが良すぎる。
ちなみに召集することになった決め手は僕が悪魔に勝利した動画がネット上で出回っていることだ。これを見た過半数の出席者は僕が会議に参加することに賛成した。そして残りは動画を信じなかった。
「ふんっ!自称超能力者がどこまで信頼できるんだか」
閣僚の1人がそう吐き捨てる。言動的に動画を信じなかった人か。自称超能力者って、自称した覚えはないよ。それにデビルサマナーだし。
まあいいか。そこまで言うなら仕方ない。少しおどかしてやろう。
僕は『トラフーリ』で彼の後ろに瞬間移動して話しかける。
「これで信じてくれますか?」
「なっ!後ろ!?いつの間にっ!どうやって!?」
「それがヒトナリの力だ。見ての通りコイツは只者じゃない。信頼はしてくれなくて構わない、だけど信用してくれ」
僕が『トラフーリ』を使えることは数年前から叔父さんに説明している。なお使えることを明かした理由は他にも同類が、転生者や異能組織があるかどうかが気になったからだ。防衛大臣なら色々と知ってそうだしね。まあ異能組織なんてなかったんだが。
それはともかくとして僕は着席する。すると内藤総理は咳ばらいをした。
「オッホン!では今までの会議内容を要約しますね。東京23区に未確認生物が発生しました。それらは拳銃を始めとする現代兵器を無効化する生態を持っており、人類に敵対的。ですが馬力は高くないようで現状ではセメントを流し込むことでの拘束を行っております」
悪魔をセメントで流し込んで拘束か、なるほど!賢いな。
確かに今の悪魔ならセメントで固めて行動不能にできるだろう。まあGPが上がればそれが通用しなくなってはくるだろうけど。
「ですがここに全く別の対処を行った人物がいます。それこそが………ヒトナリくんです。では頼みましたよ」
「はい、では未確認生物………いわゆる悪魔の対処法について話させてもらいます」
「悪魔か、流石に表現が剣呑すぎやしないか」
「固有名詞ではないし公式採用は出来ないな」
「いや悪くないかもいしれない。この表現なら国民も下手に近づかなくなるだろう」
「総理が述べたように通常の攻撃が通用しません。なぜなら霊的な存在だからです。ですが例外があります。それは同じ悪魔か僕のような超人による攻撃です」
僕はそう言うと『トラフーリ』で短距離ワープを繰り返して力をアピールする。
一度だけの力の行使では信じきれない人もいるだろうからな。ダメ押しだ。
「君のような存在は他にいるのかね?」
「なにぶん自分以外の超人にはあったことがないもので。逆に政府は何か知らないのですか?そういう異能者を抱えた組織とかあったりするんじゃないですか?」
「総理として解答させてもらいます。そんな組織はありませんしヒトナリくんのような超人がいるという情報も聞いたことがありません」
内藤総理はキッパリと言い切る。
やはりそうか。政府のトップすら知らないということは他の転生者やヤタガラスみたいな異能組織がある確率は低いだろうな。
カオ転のガイア連合みたいな転生者互助会でもあれば嬉しかったのだが、無いものは仕方ない。切り替えて行こう。
「それでヒトナリくんのような超人を増やすことはできないのかね?」
「分かりません。一応、富士山で荒行したら力は増しましたが通常の人が超人に覚醒したという前例はありませんし」
「現状はセメント注入と1人の超人が頼りというわけか」
「ですが安心してください。超人の数が少ないなら、数がいる悪魔を戦わせればいいんです!出て来いグレムリン!」
「ヤッホ~!アタシはグレムリンだよ~」
僕は『COMP』から悪魔を召喚する。すると室内は騒然とする。
まあ人類に敵対的だとされている存在を総理の前に出したらそうなるよね。常識的にに考えて暗殺を疑う。
「安心してください、コイツは僕の悪魔召喚プログラムの管理下にあります」
「悪魔召喚プログラム!?」
「はい、その名の通り悪魔を召喚するプログラムです。これを使えば悪魔を制御することができます」
「プログラムということはまさか!」
「ご明察です、僕の提案としては悪魔召喚プログラムの量産です!」
さあ、ここからは賭けだ。
これから、どうなるかは分からないが1つだけ確かなことがある。
それは会議が長引きそうだということだ。