女神転生が存在しない現代に悪魔が現れたら 作:ネコマタ推し
2024年 12月10日 19:00
夜の寒さが肌を切り裂く今日この頃。
首相官邸記者会見室、日の丸が建てられたこの部屋にはいつものようにたくさんのマスコミが席を温めていた。しかし今回は特別だ。
理由は主に2つ。1つは官房長官ではなく内藤総理自身が会見を行うこと。そしてもう1つ、今日の朝から突然東京に現れた奇妙な生物について、政府の調査により判明したことを発表するということが事前情報として伝えられたからだ。
この生物の発見から丸一日と経過してない状況で果たしてどの程度の情報が齎されるのか、マスコミ各社各人も疑問に思うことだろう。とはいえ政府には一定の信頼があるのも事実。故にテレビなどのマスコミ各社はドラマやバラエティーなどの通常の放映を取りやめて記者会見を放送している。もちろんそれらを『我関せず』とばかりに態度を取り通常放送を流すテレビ局もある。主にテ〇東とか。
ちなみに僕は『みなさんの公共放送』がスローガンであるMHKの放送をワンセグで見ている。当該チャンネルの画面には左上には時刻、右上には『総理記者会見中継』という字幕が映し出されている。
さて、時間的にもうそろそろだな。
『えー、時間になりました。これより内藤内閣総理大臣による記者会見を始めます。冒頭、総理から発言がございます。総理お願いします』
記者会見の進行係の案内が響き渡る。すると総理が入室して、壇上に上がって国旗に一礼した。カメラのフラッシュが焚かれて非常に見にくい。これって意味あんの?
『えー、本日未明より東京23区各地で確認された未確認生物につきまして………国民の皆様におかれましては………混乱の最中にあると思います………この度は政府調査により判明した事実を国民の皆様に対して、ご報告申し上げます』
内藤総理はハッキリとした語り口で話す。それは国民に安寧を齎したいという思いが込められているように見える。
流石にバイアスがかかってるか?まあ僕は総理の
『まずこの未確認生物につきまして………既存のどの生物とも異なる全く未知の生態を持つということがわかりました………具体的には銃火器類を始めとした現代兵器が通用せず、人類に対して非常に敵対的であります………故に絶対に近づかないようお願い申し上げます』
まずは国民の命を最優先。まあ為政者として当たり前だよな。
なお国民である僕はさっきまで政府からの要請で悪魔と対峙していたけどな。お外でワンセグを使い総理の記者会見を見ている理由はソレだ。
木原さんによって『COMP』が量産されたとはいえ、すぐに自衛隊や警察が悪魔と戦えるようになったわけではない。志願者の募集などで時間がかかる。なので世界で唯一、悪魔を倒すことができる僕が被害を最小限になるように食い止めているわけだ。
ま、僕としても経験値が入るし仲魔も増やせるし特に不満はないけどね。
『政府としましても、この度のことは前例のない事態であり……また、被害の報告もあり……予断を許さない緊急事態と認識し、事態の収拾に奔走しておりました』
さあ来るぞ。
この記者会見は歴史に残ることが確定するだろう。
『その最中………我々政府はこの緊急事態に対し………深い知識を持ち未確認生物を打破した人物と………接触することに成功いたしました』
その発言に会場は大きくどよめいた。
近くの家からは『えー!』という声が聞こえた。きっと記者会見を見ていたんだろうな。
『おいおい、どういうことだよ?』
『現代兵器が効かない存在を打破!?』
『ひょっとしてアレか?』
『なんだよアレって!』
『静粛に願います!』
進行係が騒ぐマスコミを黙らせる。そして頃合いを見計らった内藤総理は話を進める。
『国民の皆様におかれましては………既にご存じの方もおられると思いますが………実はインターネット上にて、この未確認生物を打破した動画が広まっております』
これは僕がダイモーンと戦った時の
いつの間にか動画取られてたんだよな。普通にモザイク加工なしでネットの海にバラマキされている。肖像権とかないんか?
『政府は件の人物と接触をいたしました………そして我々よりもはるかに未確認生物に対しての理解を示しており………対処の仕方についても教授してくれました』
そうして内藤総理は懐からスマホ、いや『COMP』を取り出す。木原さんが量産に成功した
『出てきてください』
『キャハハ!』
総理の『COMP』から出て来たのは妖精ピクシーだ。彼女は真Ⅲでは実質ヒロインを務めたこともある人気の悪魔でもある。
ちなみにコイツは元僕の仲魔だ。総理に『悪魔を記者会見に出したい』と言われたので譲渡した。ちなみコイツを選んだ理由は人間に比較的友好的だからだ。
しかし総理がデビルサマナーになるなんて剛毅なことだよな。一応、悪魔に反逆されるリスクもゼロじゃないのに。本心で国民に希望を与えたかったんだろうな。
そしていきなり記者会見室に悪魔が現れて場は驚きに包まれる。記者達はもはや驚きすぎて一周回って何も言えなくなっている。
『この未確認生物は『悪魔』という存在であります………そして件の人物により齎され北山大学の秦野教授の手により量産された『COMP』を使うことで私の制御下にあります』
内藤総理のその言葉を皮切りに現実を理解した記者達の『ええええええええ!?』なんていう声がワンセグ越しに聞こえてくる。まあそうなるよね。
進行係の人もあっけに取られて何も言えなくなっている。
『毒を以て毒を制すように………悪魔には悪魔の力を以て対処する………というのが、えー、政府の有識者会議で出た見解であります………国民の皆様におかれましては悪魔へはくれぐれも近づかないようにお願い申し上げます』
内藤総理の発言は終わる。そしてピクシーは『COMP』内に収容される。
流石に東京が滅びるかもしれないことは言わなかったか。まあそんなこと言ったら株価は大暴落し首都はパニックに陥るもんな。無理もない。
そうして質疑応答の時間に移る。
『軽子坂新聞の狭間です。総理の仰る悪魔?について詳しい人物についてもう少し詳細な情報をお願いします』
『はい………かの人物につきましては公人ではありません。故にプライバシー等も加味しまして詳細な情報は差し控えたいと思います』
『では質問を変えます。総理の仰る人物が悪魔を生み出したのではありませんか?』
『それはございません………その方は一般人ですので』
『ですがネットに出回る動画では悪魔発生して早々に悪魔と渡り合い悪魔を従えるなどの行動が確認できました。これは如何にもおかしいとは思いませんか?』
『確かに腑に落ちないこともあるかもしれません………ですがその方は科学者でも何でもない。それに今日になって東京全域に悪魔が現れたということは、それまでにどこかで悪魔を生み出して、それを僅かな時間で解き放ったことになる………そんなことが人間に可能でしょうか?』
『………ですが』
『貴方ばかりが質問を独占するわけにもいきません。他の方、どうぞ』
内藤総理は無理やり質問を打ち切る。
やっぱり僕が疑われるよなぁ。まあ覚悟はしていたが護国の為だ、仕方ない。
しかし何が原因で悪魔がこんなに出現するようになったんだろうな?不思議である。
『マヨナカテレビの鳴上と申します。総理が制御下にあるその悪魔ですが、それはどうやって捕まえたのですか?』
『件の人物から譲渡されました。彼曰く、対話して対価を捧げることで従えたとのことです』
『悪魔と対話することが可能なのですか!?』
『はい、可能です。『COMP』を起動した状態ですと悪魔と対話することができます。現在は件の人物と協力して悪魔を確保しております』
そういうわけで僕は夜中にも関わらず悪魔を確保しているわけだ。
もちろん政府に引き渡せば報酬もでる。悪魔1体ごとにそれなりのお値段を提示してくれた。これは日本の為にも自分の為にもなるし断る理由はないな。金も力だ。
因みに勧誘を断った悪魔は経験値に変換だ。そのおかげで僕や仲魔もレベルアップし、ケットシーは『ジオ』と『グラムカット』を覚えた。なお僕は何も覚えてない。悲しみ。
『月刊
『基本的には日本を守るための力として運用します』
東京ではなく『日本』を守るための力か。
これは非友好国達への牽制の意味も含まれているだろうな。悪魔に現代兵器は通用しない、軍事転用すれば暴れ散らかすこと間違いなしだ。有効打になりえるセメント拘束も知恵を持つ人間がいれば通用しないだろう。そしてその悪魔を仲魔に出来る場所は東京のみ。
日本って悪魔のせいでピンチに見えて実はイニシアチブを握れるチャンスなんじゃないか?こうなったら必殺の霊的国防兵器でも作るか(愛国者並感)。
『つまり自衛隊や警官などが所謂デビルサマナーになるという認識でよろしいでしょうか?』
『デビルサマナーの定義によりますが、基本的には自衛隊や警察などに『COMP』と悪魔を貸与するという認識であります』
女神転生シリーズでもそうであるように数は力だ。自衛隊や警察がデビルサマナーになってくれるのは本当にありがたい。手に負えない悪魔が出た時には是非とも頼らせてもらおう。
その為には種銭ならぬ種悪魔を確保しないとな。自分の強化に、仲魔の強化に、政府人員の強化、休学届を出す、やることが多いぜ。
『東亜テレビのミキヤユリアです。今回の悪魔騒ぎで都民にも少なからず被害が出ております。つまり現在、東京は危険地域なわけです。都民の疎開や政府機能の移転などは考えているのでしょうか?』
『都民の疎開案及び政府機能の移転については有識者の間でも意見が分かれるところであり、慎重に判断していきます。ただ1つ言えるのは悪魔には近づかないでください』
まあ1日も経たずに首都を捨てる判断を下せるわけないよね。それに東京以外でも悪魔が出現するかもしれないわけだし。
これは色々と難しい問題だ。
『にゅぅカマーの大宅一子といいます。新生物の呼称についてですが、悪魔という呼び名はいささか剣呑なのではないでしょうか?』
『悪魔という名称については件の人物の呼称を採用した形であります。彼の言葉を借りるなら「敢えて神を悪魔と呼ぶ」とのことです』
敢えて神を悪魔と呼ぶ。それは女神転生において重要なキーワードだ。神話に語られる神も天使も必ずしも善ではない。現に聖書で最も人を殺したのはYHVHだし。
善悪はコインの裏表のように裏返ってきた。故に彼らは悪魔なのだ。
そう思っていると突然、電話がかかってきた。『COMP』の画面には『タロウ叔父さん』と表示されている。
「もしもし?」
『ヒトナリや、今どこにいる?』
「現在は港区の悪魔を狩り終えて総理の会見を見ていたところだよ」
『そうか、今日はもうそろそろ休め。聞けば今日の朝からずっと戦い詰めなんだろう』
「だけど、まだ悪魔を鎮圧できてない区もある。僕が行かないと………」
『政府としても叔父さんとしてもここでお前が倒れてしまう方が困る。既に関係省庁には根回ししといた。既に首相官邸近くのホテルは押さえてある。そこでゆっくりしとけ』
「………うん、叔父さんも無理はしないようにね。もう若くないんだから」
『なぁに、俺は替えが利く人材だから多少の無理はするさ。それじゃあな!』
そう言って叔父さんは電話を切った。僕にとっては替えが利かない人なんだけどな。あの人にはYHVHと同じ、いやそれ以上の恩がある。
「さ、帰るか」
僕は腰に携えた模擬刀にカバーをかけて帰宅の準備をする。記者会見の続きは後で切り抜き動画でも見るか。
さあ明日に備えてホテルで寝よう。そうして僕はホテルにチェックインした。
「サマニャー!吾輩、この「純米秘蔵まさむね」っていう酒を飲んでみたいニャ!」
「それは高いからダメだ。こっちの「本醸造まんさく」にしとけ」
「え~、名前が気に食わないニャ~」
「じゃあ「珍味のおつまみ」をつけてやるからそれで我慢しろ」
「仕方ないニャ~」
寝ようと思ったら
軽い気持ちで召喚するんじゃなかった。そして奴はルームサービスで酒とおつまみで宴会を開始する。こうなったらヤケだ、僕もソレに参加しよう。
「ウィ~!しかし上級国民の割にサマニャーはお金を持ってないんニャね」
「まだ悪魔を日本政府に売却してないからな。出来高制なんだ」
「悪魔を売却って悪魔より悪魔ニャ!」
「それが生きるってことだ」
それに悪魔の大半は人間を殺すか傷つけたクズどもだしな。
同情はない。精々、奴隷のようにこき使われてくれ。
「まあいいニャ、吾輩は売らんだろうしニャ。それで素朴な疑問ニャンだけど、政府は譲渡された悪魔をどうする気ニャ?」
「まあ自衛隊や警官に貸与するんじゃないか?総理も会見でもそう言ってたし」
「つまり東京を守る戦力にするんニャね。それ上手くいくのかニャア?」
「というと?」
「吾輩を含めた悪魔はサマニャーみたいな力のある人物の指示は聞くニャ。それは裏を返せば力のない人物の指示は聞かないということニャ」
「けど譲渡した秦野さんのグレムリンや内藤総理のピクシーは指示を素直に聞いてるぞ」
「それは非戦闘時かつアイツラが特殊な悪魔ニャからね。命の奪い合いの最中で初心者サマニャーからの命令を聞きたい悪魔ニャんて少数派。少なくとも仲魔にしてきた悪魔や吾輩はそうだろうニャ」
「なるほど」
それは少しマズいな。忠誠度が足りないということか。つまり捕まえた悪魔達を政府に譲渡しても、あんまり意味がないということになる。
いや待てよ………
「大丈夫だケットシー、策はある。ピクシー以上に忠誠度が高い悪魔に心当たりがある」
「というとニャ?」
「僕はYHVHに転生させられた」
北山大学・軽子坂・マヨナカテレビ・月刊 妖・東亜テレビ・にゅぅカマー。
名前が一致しているのは偶然です。ホントだよ。