贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

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 トリスタンに苛々する回。


第十五話 手ぶらで帰るのは癪だな

 巴マミはさやかが、光実が心配だった。自分は恐怖心で力が出せなくて駄目だと勝手に諦めて敗北宣言してしまっていた一方で和哉とほむらは力が弱いのにあの勢力に挑もうとしている。

 

 マミは隠れているさやかと和哉とトリスタンの戦闘を廃工場のトタン製の壁の経年劣化で出来た隙間から見ていた。敗北宣言していたのに前に出るというのは抵抗があったし、今の恐怖心に取り憑かれた己では足手纏いになると思ったからだ。

 

 それでもさやか達が心配で和哉たちを追って来たのだが……

 

 

 

 まどかから聞いた話によると和哉はさやかたちの先輩。フランクな言い方をすれば友達だという。友達を助ける為に絶望的な戦力差だろうと戦える強さがマミにとっては羨ましかった。

 

 

 だが、一方でほむらの行動が解せなかった。

 

 キュゥべえ曰くまどかは強力な魔法少女になる才能を秘めている。だから、ほむらは殺害予告紛いの事を言って魔法少女化を妨げようとしていた……と言う認識だったが、お菓子の魔女の一戦からその認識に疑問が出つつある。

 確かに戦闘前のほむらの警告通り、ほむらの仲間である和哉の横槍が無ければ死ぬ所だった。(警告は当てずっぽうの可能性もあるが話が進まなくなるので割愛する)

 

 

 だが、当初のマミの認識前提ならば警告する必然性が無い。テレポート紛いの力を使って、素通りする事だって出来た筈。打算的な見方をしたら政美周子と戦う利点も無い。さやかは相当ほむらを敵対視していた筈だ。何故、助けたのか。光実もこちら側の人間である筈だ。何故、助ける。

 

 だが、どんな事を考えてもキュゥべえ殺害未遂という事実は消えない。魔法少女化する力を持って居るとは言え無抵抗の生き物を殺しかけていたのだ。

 

 

 悪い方に考える事は出来た。だが、それには心の何処かでストップをかけている自分が居る。

 

 

――分からない、分からない事が多すぎる。

 

 

 暁美ほむらが、分からない。

 

 

 悩んでいる内に、さやかの叫び声が聞こえた。

 

「早乙女先輩! 上!」

 

 

 天井にぶら下がっていたトリスタンが落下してきて、勢いの乗った一撃を和哉が変身した影武に、叩き込む。

 穏やかでないレベルの火花が血しぶきの様に、影武の新たなアーマーから噴き出ていた……

 

 

 

「がぁっ!?」

 

 強烈な衝撃が和哉の身体を襲った。トリスタンの天井にぶら下がって身を隠してからの、自由落下速度を乗せた重い一撃。

 最初何が起こったのか分からず混乱していて、この事実が漸く脳が許容していた時には二本の剣を落とし、地に膝がついてしまっていた。

 一撃を与えたトリスタンは影武を蹴り倒し、執拗に蹴り飛ばす。動けない所をソニックアロー射撃を叩き込んでは、蹴る。影武の首根っこを掴むと顔を耳に近づけて嘲笑を込めた言葉を放つ。

 

「低能のクソガキってのは世間知らずの偽善者でいけないな。この街を泣かせる奴は俺が許さない~ってか? 溢れ出る安っぽい正義感が許さなかったのか? 幼稚だなぁ。浅はかでもある。お情けで世の中の現実と厳しさをじっくりとその体を以て教えてやるよ、有り難く思えよ低能野郎」

 

 まるで耳にねじり込むかのように、ねっとりと語る。正論か否かは別として和哉にとってそれは……気に食わなかった。その物言いが。行動が、無抵抗の女の子を足蹴りにするのが大人か。

 

――ふざけるなよ……バカチンが。

 

 

 影武から掠れた声が出た、それを耳にしたトリスタンは反応して、顔と顔を合せた。その気になれば頭突きでも叩き込めそうだ。

 素顔は見えないが影武からは第三者からでも分かるくらいの殺気が溢れ出ていた。

 

 和哉は蹴りによる衝撃で喉から声が出辛くなっていたが、煮えたぎる怒りと反骨心がそれを、『捻じ伏せた』

 

「ふざけるなつってんだよ! このバカチンが!」

 

 素顔だったら唾が出ていただろう。と言うか、実際仮面の下では結構な量が出ていた。影武は勢いを乗せた頭突きを全力でトリスタンの顔面にかました。

 トリスタンは爆弾が爆発するような一瞬の気迫と想定外の頭突きに圧され、思わず後方へと下がる。ダメージは勢いが有ってもあまりない。だが、トリスタンを怒らせるには充分過ぎる行動だった。

 

「口答えしてんじゃねぇぞ!」

 

 気炎を上げて、ソニックアローを振り上げ斬りかかる。だが、影武はそれに構わず、

 

「歯ァ喰いしばれ!」

 

 血を吐くかのような叫びを上げながら右ストレートをトリスタンの顔面に叩き込んだ。だが、ほぼ同じタイミングでソニックアローが影武に叩き込まれる。両者は足が後方に数歩後ずさる。

 

 ダメージが浅かったトリスタンは直ぐに立て直し、怯んで態勢を立て直す時間が足りない影武に叩き込んだ。

 

 

 

「のわははははっ、といけない。取り敢えず、お縄について貰いますぜ……そこの兄さんとお嬢ちゃん?」

 

 一方、光実とほむらは時間停止魔法の影響を受けていない魔法少女と廃ビルの階段にて対峙していた。

 少女はわははと豪快にひとしきり笑い切ると、芝居がかったおっさんのような口調で敵意を表しながらゲネシスドライバーを取り出し、腰に巻き付けた。

 

 態度を見て少しさやかに似ていると思ったのは内緒だ。

 

【マツボックリエナジー!】

 

 続いて取り出したものはエナジーロックシード。それを見た瞬間、光実は己の不利を悟った。自分自身の戦闘力と戦力では太刀打ちは出来ない。

 階段は狭いので正面突破は不可能と断定。

 

――引き返すしかないか……!

 

 別の道を通って逃げれば良い。光実はほむらの手を引き、後ろに向かって階段を再び駆け上がった。背後には少女が変身した黒影・真が追ってきている。どうにか身を隠さなければ捕まってしまうだろう。

 

 

 ほむらに気を配りながら2段飛ばしで階段を上り切り、背後に黒影・真が居ない事を確認してから手近にあった部屋の扉を開けて逃げ込んだ。そして間髪入れずに閉め切った。

 

「無駄よ。魔法少女はお互いの居場所は大体把握できるわ。時間さえあれば」

 

「っ!?」

 

 光実はこれで何とかなると思って安心していたが、ほむらの追い打ちの一言で歯噛みする。

 一難去って(今回は思い込み)はまた一難。こんな事はこれまでにも有ったには有ったが、前線にあまり居たわけでは無いので心臓の鼓動が大きくなる。気を落ち着かせるために、さり気なく深呼吸するが殆ど効果が無いようで静まらない。

 それに、入った部屋も凄まじいものでもあったというのもある。

 

 机の上にナイフ(護身用とか)やモデルガンをはじめとした様々なものが散乱しており、部屋の隅には赤いサンドバックがぶら下がり、見知らぬ少年の顔写真が貼り付けられているのだが、それにナイフが深く突き刺さっている。いや、顔写真が貼られている場所に限らず至る所にナイフで刺したのであろう穴が空いていた。

 

 そんな光景にほむらも思わず顔を顰める。ほむら自身物々しいものを持って居るし、少し、年頃の少女から離れた殺風景な部屋に住んでいるという自覚はあるのだが。

 壁にも机の上にもナイフで刻まれたような跡があり、ズタズタにされた熊のぬいぐるみが床に転がっていた。

 

「まるで野獣が暴れた跡ね」

 

 ほむらの喩えに苦笑しつつ光実は、様々な物が散らばっている机の上にて、有るモノを見つけた。

 

「これは……」

 

 思わず声が出た。見つけたのはメロン、バナナ、スターフルーツエナジー等といった上級ロックシード。戦極ドライバーが一つ。……そして、

 

 

 

 

――オーズロックシード。

 

 

 

 

 オーズロックシード。それは以前、戦国時代のような異世界にて、ノブナガ軍に仕えた武神オーズという戦士の形見である紅いメダルとヘルへイムの果実が融合して生まれたもの。Wロックシードと出自が似た特異なロックシードだ。

 嘗てダンスチーム『チームバロン』のリーダーであった駆紋戒斗がそれを手にして変身していたのだが、光実と同じく元の世界に帰還して以降起動しなくなったらしく、チームバロンから脱退した際に拠点に放置。以降チームリーダーの後継者であるザックが預かっていたという代物だ。

 

 無論、預かっていたザックは使わなかったらしいが。

 

 ドライバー及びロックシード回収の際にザックが自主的に提出してそのまま溶鉱炉に放り込まれたものだとてっきり思っていたのだがそうでは無かったようだ。

 

「窓から脱出出来そうね……」

 

 光実がロックシードに気を取られている内にほむらは突破口を見出していた。奥にある窓を大きく開け放った。

 薄暗い部屋に僅かな光が差して淀んだ空気が薄くなって行き、新鮮な空気へと入れ替わってゆく。

 

――手ぶらで帰るのは癪だな。

 

 ああにまで好き放題されると仕返ししたくなるのは人情だ。それに、これで多少戦力は削げるかも知れないのだ。戦極ドライバーの設計図は現在外国に居る貴虎が持って居るので新しく造る事は民間ではほぼ不可能。それにエナジーロックシードは非常に希少で、特殊な調整を要する為にドライバーのロックシード精製機能だけでは造る事は出来ない。

 まぁ、連中は魔法少女でもあるし数も多いので焼石に水でもあるかも知れないが何もしないよりはマシと思い、光実は見つけたロックシードと戦極ドライバーを懐に収めた。

 

 光実は窓に歩み寄り、下を見る。現在2階。龍玄なら余裕で飛び降りられる。

 

「飛び降りるわよ」

 

 無論、ライダーに変身出来る事を知っていたほむらは有無も言わさず、さっさと飛び降りてしまい、光実もつられるように龍玄に変身してから飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

「へっ、もう逃がしませんぜ……ってありゃ?」

 

 入れ替わりに問答無用で扉を蹴破って部屋に入る黒影・真は部屋が既にもぬけの殻になっているという事に気付いた。魔法少女を探知する為のソウルジェムの光も弱まっている。

 

「……成程、やられたわね」

 

 何時の間にか現れていた政美周子に驚き、黒影・真は上半身を軽く仰け反らせて「ありゃー、居たんすか」と言った。

 

「えぇ。まさか、あの黒い魔法少女。時間停止能力を持って居るなんてね……想定外だったわ」

 

「ザ・ワールド! って感じっすよね……DIOかあいつ」

 

 各々感想を漏らしながら二人は窓から下を見ると、バイクに乗った龍玄がほむらを後ろに乗せて走り去ってゆくのが見えた。

 

「まぁ、吾輩の魔法無効化の能力があれば何でも無いですけどね……その幻想をなんとやらー! って」

 

 黒影・真は何故か右腕を突き出してカッコ付けたポーズをとる。それに周子は自分のこめかみに指をとんとんと軽く叩きながら呆れたように口を開いた。

 

「じゃぁ、何故逃がしたの?」

 

 周子の問いに黒影・真はぎょっとして、ちょっと答えに困り……色々言い訳を考えたがどうも、いいものが思いつかなくて――

 

「すんませんこっちの不手際でしたハイ」

 

 普通の土下座による謝罪に落ち着いた。土下座しているのが何とも言えない雰囲気を作っている。

 

「土下座は良いわ。取り敢えずこの部屋から出ましょう。悪趣味だわ」

 

 黒影・真の土下座に構わず、周子はこの部屋の周囲を見回す。――随分と荒れたものだ。どれだけ負の感情を辺りにぶちまけたのか……

 この部屋に居た()は歪んでいた。力を手に入れて狂喜乱舞していたのはよく覚えている。まぁ騒ぎ起こされると面倒なので力は魔女や魔法少女及びその関係者以外には使うなとは言っては居るのだが。

 

 あの男は今……

 

 

 

 

 トリスタンは動かなくなった影武を足蹴りしながら、面白く無さそうに舌うちした。

 

 

 大きな面をしていた無知の屑が圧倒的な力にひれ伏し、怯えて命乞いする連中の姿は見ていて爽快だった。そして本来あるべき光景なのだと思っている。

 少し前に自分を痛めつけていた連中に会ったのだがそれをライダーの力で叩きのめした。力については口外したら殺すという警告付きで。

 自分を痛めつけていた連中とは違って勉強も出来るし、必要なのは力だけだった。これさえあれば誰も自分に逆らわない。屑共とは違って「大人」である自分こそが報われ、無知な屑共を選ばれた人間がコントロールするべきなのだとトリスタンの変身者は考える。

 

 

 そう、足元に居る屑もだ。

 

 だが、彼は全然謝罪も命乞いもしなかった。ただ、立ち上がって殴りかかる。一撃入れようと何度でも立ち上がる。

 滑稽だった。何をしようと状況は変わらないのに時間と労力の無駄だというのに。

 

「まだ……だっ……まだ、終わっ……ちゃ……いな……い」

 

 影武はトリスタンの足首を掴む。彼の常軌を逸した執念に軽く恐怖を覚えた。――壊れている、何処かが。

 生かしては置けない。それが屑を導く選ばれた者の務め。

 

 

 今、トリスタンはよくわからない使命に燃えていた。屑共をコントロールし、導くには余計なものは削減させてすっきりさせなくてはいけない。社会の大掃除だ。

 

「……っ!」

 

 影武が何かを見つけて、掴んだ足を離す。トリスタンにとってはそれがなんなのかどうでも良かった。今成すべき事を成すのだ。

 

 

――美樹っ!

 

 隠れたさやかの背後に、一昨日の戦闘で逃走したファントム、ヘルハウンドが立っていた。何故かマミもさやかの近くに居る。

 

「この瞬間を待っていた! ファントムを生み出せ!」

 

 マミが拘束魔法でヘルハウンドを縛り付けるが効果はあまりなく、数秒で消滅、無効化されてしまう。そしてそのまま発砲した火球に吹き飛ばされてしまい、さやかを守る者は誰も居なくなっていた。

 

 拙いと思い掴んだトリスタンの足を離して、戦闘そっちのけで這うようにさやかのもとへと向かうが、そこに背中に強い衝撃が奔る。……トリスタンが踏みつけたのだ。そしてねじり込むように踏まれて背中に鈍い痛みが走る。

 

「美樹を助けないと……」

 

 届かない距離にあるのに伸ばしてしまう、手。それをトリスタンは背中から手に踏む位置を変えた。手の甲に強烈な痛みが走る。圧迫感と肌が抓られているような痛みで朦朧としていた和哉の意識を呼び覚ますが、その覚醒はあまり意味を成していない。

 

「いいじゃないか。屑が一人減る。現実を見ろ。屑は夢ばかり見るからな」

 

 屑屑屑屑とボキャブラリーが貧困な男である。だが、失笑する暇も余裕もありはしない。

 

――届かない。

 

 もがいていても距離は全然縮まらない。無情にもヘルハウンドがさやかの中に入り込んだ。

 暫くするとさやかの身体から紫色の亀裂が入ってゆく。このような状況下でも行かせてくれないトリスタンがひどく憎く思えた。

 

 

 

 

 その時、バイクのエンジン音が聴こえた。……その音は遠ざかるどころかこちらにどんどん近づいてくる――

 

――何故だ!?

 

 そしてバイクのエンジン音が、廃倉庫入り口付近で止まった瞬間、何発分かの銃声が廃倉庫内に響いた。

 

 飛んできた弾丸は吸い込まれるようにトリスタンだけに全弾命中し、装甲に火花が散る。それと同時に身体の拘束が無くなり、自由が利くようになる。影武は起き上がる気力も無くごろん、と仰向けになって、廃倉庫入り口に顔を向けるとそこには――

 

 

 アイドリング状態のバイクに跨って銃剣を持った青年が廃倉庫に入り口にて銃口をフッと息を吹きかけてながらバイクから降りているのが視界に入った。




 アームズチェンジシリーズの略、ACシリーズで過剰反応した私はナニカサレタヨウダ……
 空気だったハルト君登場。3者が立ち会うのも時間の問題でしょう(そのまま共闘するとは言っていない)。マミさんもこのまま噛ませの状態で終わらない事はお約束します。確変時期は不明ですが。

 トリスタンの性格は随分歪んでいて色々めちゃくちゃ言ってますが、ただ単に気に食わないものは断罪したいという欲求の塊なだけです。更なるマジキチが登場する予定。お楽しみに(ゲス顔)


 現在、クリスマス回執筆検討中。
 次回『Re:birth』(仮)
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