目指せ、50万文字! これからも宜しくお願いいたします。
12月9日。……あとがきに色々と言い訳もとい補足を付けました。今後位置が変わるかも。
そしてまた予告タイトルがズレた……考えなしのタイトル予告は駄目ですね……
ゲートを狙う怪人ファントムの一種、ヘルハウンド。一昨日にて自分の知人がゲートだとか言っていたが、まさかさやかの事だったとは。マミは居てもたっても居られなくて、気が付いた時にはもう――さやかの前に走り出していた。
さやかの前にまで魔法少女に変身しながら走り寄り、仁王立ちとなって、ヘルハウンドの行く道を阻む。
「マミさん!?」
突然の登場に裏返り気味の声がさやかの口から放たれる。それを他所にマミは拘束魔法をヘルハウンドに放った。ヘルハウンドの足元からリボンが現れ、身体をミイラのようにぐるぐる巻きにしてしまう。
――よし、この隙にに美樹さんを……
さやかを逃がそうと後ろを向いた瞬間――背中に衝撃が奔った。魔法少女は痛みは最小限に抑えていられるので何が起こったのか直ぐには分からなかった。
――そうか……背中、撃たれたんだ……
拘束魔法で発生させたリボンで、ミイラのように巻かれていた筈のヘルハウンドは既に元通りに戻っており、流れ弾に当たった一斗缶や段ボールなどから火が出ている。マミは火球の直撃を受けたのだ。
鈍い痛みを堪えながら咄嗟にマスケット銃一丁を具現化させて間髪入れずに発砲するが照準が定まらない上に、第二波を防ぐだけのパワーが出せない。
昔、キュゥべえは言っていた。『魔法少女の魔法の強弱は精神状態に左右される』と。
今は最悪な状態だと、マミ本人は自覚していた。怖い、死にたくない。そんな想いが頭の中に占めて、人を守りたいという想いは外に追い出されている。
そして無情にもヘルハウンドから発せられる無数の火球を防ぐ手立ても無く、マミの身体は宙に浮いた……
――情けない。
そんな事自分でも判っている。先輩面する器では無かったという事も。
けれども、寂しかった。誰かが居なくなる事が、嫌だった。死ねば二度と会えないから。だから己を奮い立たせる為に余裕を見せるようになって……
もうとっくの昔に気付いている筈だ。本当は自分の為に戦っている。元々自分は正義の味方なんかじゃない。『もう二度と切れる事の無い繋がり』が欲しかっただけ。まどかが言う程己はカッコよくなんてありはしない。
そしてまた、『繋がり』が切れようとしていた。
/
その男は指輪を両手中指に嵌めていた。随分お洒落……いや、ちゃらい奴だと思えた。だが、見た事の無い奇妙な形状をした銃を持って居る。それだけでも只者では無い事が何となく影武は察した。
【Driver on】
その男が、右中指に嵌めたリングを下腹部に近付けた瞬間、特異な形状をした手形の模様が付いたベルトが出現し、そして入れ替わるように左中指の赤いリングを近付けた。すると、ベルトから日本語でも英語でもない特異な言語が放たれる。
「変身」
【Flame】
音声が終わった後、ベルトから手を離して「変身」と言い、手を横に突き出す。すると、左中指の指輪から巨大な赤く丸い魔法陣が出現し、オレンジ色の炎を吹きあげながら青年の身体を通過し――先程黒コートを着ていた青年から黒ローブに紅い宝石のような仮面という異形の戦士へと姿を変えていた。
戦士は影武の傍に歩み寄って「大丈夫? ……な訳ないか」と言った後、右手をベルトに近付けた。
【Treat】
音声が出た後、すぐさま右手を影武に向けて翳す。すると影武の外見にはあまり変化こそ起こっていなかったが……
――痛みが、無い?
トリスタンに痛めつけられた跡の痛みが綺麗さっぱり消え去っていた。疲労こそ消えていないもののこれならばまだ戦える。影武は腹に力を入れて立ち上がった。
その間にトリスタンが何やら言って襲い掛かって来たのだが戦士は軽く銃剣であしらっており、影武には指一本触れられない。
戦士の特異な形状から新手のアーマードライダーかと和哉は思ったのだが――
「治してくれて、有難うございます。あんたは……あなたも、アーマードライダーなのか?」
近くまで和哉の問いにウィザードは首を横に傾げて答えた。
「俺? おれは……『ウィザード』お節介な魔法使いさ。ほいっ」
会話の途中で襲い掛るトリスタンに顔も向けず、軽い調子を崩さずに銃口を向けて発砲しつつ会話を続ける。
「何会話しながら戦ってんだ! 消えろっ!」
「黒い鎧武者君、その『アーマードライダー』って名前カッコいいね。俺も使って良いかな? そいやっ」
「ぐふぉっ!?」
会話しながらトリスタンを銃剣でいなす様はまるで戦い慣れしている戦士の姿だった。トリスタンは銃弾を耐えてウィザードの傍まで近寄れたのだが、銃剣で殴り飛ばされて倒れてしまう。
「え、まぁ……いいけですけど」
影武は困惑しながらウィザードの問いに答えた。
魔法使い。彼はそう言った。魔法少女の男版なのだろうか? 影武が困惑しているのを他所に「じゃぁ、今から俺はアーマードライダーウィザードって感じかな?」と軽い口調で言った後、再度飛び掛かったトリスタンを回し蹴りで横方向に吹っ飛ばし、吹っ飛んだトリスタンは一斗缶の山にぶつかり音を立てて一斗缶に押し潰された。
「蒼い髪の娘。俺が何とかして助け出すから、この喧しいのもうちょっと相手してくれない? 耐えるだけで良いから。多分君の仲間っぽいのも来るだろうし」
手を合わせてウィザードは影武に拝む。
「え、あ、おう」
困惑しながら影武は頷く。仲間というのはほむらの事だろうか?
ウィザードはトリスタンの事はまるでアウト・オブ・眼中のように影武には見えた。
――強い……
純粋に和哉はそう思った。トリスタンを歯牙にもかけないぐらいの強さがあればきっと、人を守れる筈。『同じような事』を繰り返させなくて済むと。ただ純粋に彼の強さに魅入られていた。
無造作にいなすその姿に激昂したか、トリスタンは一斗缶を払いソニックアローでウィザードと影武に向かって滅茶苦茶に光の矢を放つ。だが、ウィザードはそれを総て銃剣の剣形態で明後日の方向へ弾き飛ばし、お返しに銃形態へと戻して数発発砲。トリスタンに叩き込んだ直後、気絶して仰向けに倒れて紫色の亀裂を発生させているさやかの元まで歩み寄った。
トリスタンの胸部装甲に火花が散る。弾丸は吸い込まれるように向かって来るものだから恐ろしいものに彼には見えたようで、これ以上光の矢を撃たずに動かなくなっていた。
影武もウィザードも視線がさやかの方向へ行っておりトリスタンはまるで相手にされていない。
「ちょっと失礼っと」
ウィザードは無造作に右手をベルトに翳す。
【Enter】という音声が発せられると、さやかの身体から魔法陣が出現し、ウィザードはその魔法陣へ『軽くジャンプして飛び込んだ』。
一瞬踏みつけるのかと影武は身構えたが、そのまま魔法陣に呑まれるように消えて行ってしまい、思わず強張った肩の力が一気に抜けた。
――逃げたのか?
いや、それは無いと、何となくではあったもののそう思えた。一体何をするつもりなのだろうか。
ああなった人間をどう助け出すのか影武には分からないし知らない。ここはウィザードに任せる事にして影武はトリスタンの方を向いた瞬間――
光の矢が影武目掛けて一直線に飛んできた。直撃を避けるべく上体を逸らす。右肩を掠めてしまうも、この程度想定の範囲内。ウィザードに回復される前の状態よりはずっとマシだ。
影武は次から次へと飛んでくるトリスタンの光の矢を走り乍避けつつ地面に落ちた大橙丸と無双セイバーを拾い上げる。
そして飛んできた光の矢を躱しつつ、トリスタンに少しずつ近寄ってゆく。だが、トリスタンも簡単に近づかれるほど間抜けでは無いようで、彼もまたゆっくり離れてゆく。
冗談じゃない。これでは泥仕合再びである。それどころか一方的に強烈な攻撃ばかり撃たれてまともな反撃が出来ないこちらは、逃げるばかりで疲弊して再びタコ殴りルート再びではないか。
反撃に使っている無双セイバーの弾丸は和哉自身の土壇場での射撃の腕の悪さも相まって集弾性が悪い。――要するに遠距離戦という選択肢は無いと考えた方が良い。
彼我の距離は約8M程。影武は飛んできた矢を二刀で弾き飛ばした後、脚を止めた。
「鬼ごっこは終わりかな? あの魔法使い名乗る訳の分からん奴はどっかに逃げたしここでとっととくたばれよ……いいか? 俺は面倒が……嫌いなんだよっ!」
八つ当たり気味にトリスタンは再度ソニックアローの光の矢を発砲する。影武はそれを避けては避けきれないものを弾く。
傷は癒えても疲弊した体力は戻っていない。
――どれくらい、耐えれば良い?
避けながら己の限界ばかりが脳裏に過る。まるで戦闘の事などそっちのけであった。
それが直ぐに仇となるのは言うまでもない。
【スターフルーツエナジースカッシュ!】
トリスタンはベルトのハンドル型コンプレッサーでスターフルーツエナジーロックシードに一度押し込んでからソニックアローを引き絞り、影武に向ける。
影武は回避行動を取ろうと回避のために受け身を取るべく身構えた。だが……それは想定以上の速度で影武に向かって飛んできた。まるで先ほど避けていたものが銃弾だとしたら今飛んできているものはレーザーである。
まるで――閃光、流星のような。
当然それを避ける事など人間に出来る訳が無くソニックアローから放たれた光の矢は通常のソレ以上の速度で影武に突き刺ささった。
「なん……だとっ……」
異常なまでの弾速だった。というか矢そのものは全くはっきり目に入らなかったのだ。一瞬、光が視界に広がったような。
鎧の硬度でも耐え切れなかったらしい、ブラッドオレンジのアーマーに大きな傷が入り、衝撃で吹っ飛び影武は大きく身体がよろける。
鎧のダメージは自己再生するが少々時間が掛る。また新しい攻撃を喰らえば耐えられる保証は無い。
――どんな状況でも対応出来る力が有れば……!
時間稼ぎは出来ても、倒す事は出来ないらしい。再び余裕を取り戻したトリスタンの態度に和哉が苛立ちと悔しさに仮面の下で舌を打ったその時――
また違う新しいバイクのエンジン音がこちらへと近づいて来ていた。どうも今日は乱入者が多い日のようだ。
――今度は誰だよ……!
うんざりしつつ、エンジン音のする方向を見ずに影武は二刀を構える。
敵だったらもう覚悟するしかない。敵なら諦めてウィザードを信じて倒れるという非常に弱気な事を考えてしまう和哉はそんな己が嫌になりそうだった。
……だが、バイクのエンジン音より先にやって来たのは――紫色の、弾丸。
弾丸はトリスタンのソニックアローを持つ手をピンポイントで狙い撃ち、喰らった本人は思わず取り落とし、少し離れた所まで吹っ飛ぶ。
これでやって来たのが誰なのか分からない程影武は……和哉は鈍い人間では無かった。
「大丈夫ですか!?」
エンジン音が止まり、そして己を案じる自分と同じくらいの年齢の少年の声の後に、緑色のアーマードライダーが影武の隣に立つ。
――暁美……やっぱすげぇわ。
和哉は仮面の下で、表情を綻ばせる。賞賛された本人も影武の隣へと駆け寄る。
「思いの外時間が掛ったわ……ごめんなさい」
謝罪するほむらに和哉は「へへっ」とやせ我慢気味に笑う。仮面を付けている為、素顔は分からないのだが。それを察したほむらは目を伏せた。
「気にすんな。俺が弱かったんだ……俺が弱かったんだ……」
戦力差をあまり把握しきれなかったというミスがこの状況を生んだ。だが、ゲネシスドライバーの力があれ程だと誰が思うのか。
「俺が……弱いんだよ」
和哉はまるで己を呪うように同じ言葉を繰り返す。ほむらは悪くないのだと。期待に応えられなかった弱い己が悪いのだと。
剣道を始めた小学生の時だってそうだった。とても弱くて意気地なしで……そして今、沢山練習して稽古して、結果、確かに少しは強くなったのだろうけど、結果として強い力の前に怯える己は変わってはいなかった。
剣道が少し出来ても、こういう殺し合いで使えないのでは意味が無い。応用力の無い己が悪いと、和哉は考える。
「俺が弱いだけなんだ。気にすんな」
ただ呟いた後、和哉は二刀を構え直した。龍玄もブドウ龍砲を構える。
因みにほむらは待機だ。ほむらの持つ強力な武器が喧しいのだ。手榴弾とかロケットランチャーとか。過疎化したここ周辺でも喧しい爆音で騒ぎにならない訳が無いのだ。
精々使えるとしてもフラッシュグレネードぐらいか。
「何故だ……何故こんな事になってんだ! クソッ」
人質総て奪われたのがそんなに悔しいのか、トリスタンは近くに転がっていた石ころを蹴り飛ばしながら気炎を上げた。
影武と龍玄はそれに構わず、龍玄から影武は小声で作戦案を受けてから、影武は残った体力を振り絞ってからトリスタンに向かって走り出し、龍玄はブドウ龍砲の銃口をトリスタンに向けた。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
影武がトリスタンと接触するまで龍玄が発砲。トリスタンはそれをローリングしつつ落としたソニックアローを回収する。
だが、立ち上がる瞬間の隙はソニックアローでもカバーのしようがない。……それが龍玄、光実の作戦だった。
【ソイヤッ! ブラッドオレンジスカッシュ!】
起き上がろうとした所で、影武は戦極ドライバーのカッティングブレードを一回倒して、エネルギーが集中した大橙丸を振り上げ、起き上がったばかりのトリスタンに必殺の斬撃、大橙一刀を叩き込む。
更に追い打ちで、無双セイバーを叩き込んだ後、トリスタンが吠えながら反撃としてソニックアローを振り上げる。その瞬間、影武は即座にトリスタンから離れた。
トリスタンが突然の退避行動を不審に思い、前を見ると、龍玄がブドウ龍砲を持って攻撃のチャンスを待っていた。
既に龍玄はカッティングブレードを一回倒して、撃鉄を引いていたのだ。もう、ドラゴンショットを叩き込むお膳立ては既にできている。
銃口を怯んだトリスタンへと向けて影武が退避した瞬間――引き金を引いた。
【ハイィ~ッ! ブドウスカッシュ!】
泣きっ面に蜂、泣きっ面にドラゴンショット。銃口から龍型のエネルギー弾が隙だらけのトリスタンに命中した。
/
――やった!?
龍玄は銃口を降ろし、強力な攻撃を立て続けに喰らってよろめいているトリスタンを見た。
ゲネシスドライバーの性能に頼っていたのが運のつき。とっとと、ドライバーを破壊するなり没収するなりしなければならないと、そう思ったその時。
トリスタンは苦し紛れにソニックアローにスターフルーツエナジーロックシードを装填して、龍玄狙って、光の矢を発砲してきた。
「っ!?」
咄嗟に反応出来たのが幸いだった。凄まじいまでの速度で光の矢は龍玄に向かって飛来するが、ギリギリの所で命中は免れた。……だが、肩の装甲に煙が上がっており、完全には回避出来なかったらしい。
龍玄は再度攻撃に出ようとしたが――もう既にトリスタンの姿はそこには居なかった。
脅威的な弾速。それがスターフルーツエナジーの性能か。そう判断した光実は随分厄介な相手が居るという事に気が滅入りそうだった……
/
「さて、今度は逃がさないよ? ヘルハウンド」
「言ってくれる……死にぞこないの魔法使いめ」
一方ウィザードはさやかの
近くには小さなさやかと思しき少女が演奏後であろうバイオリンを持って居る少年に花束を渡している。
……ここはバイオリンのコンサートホールだった。
無論これはさやかの心が生み出した世界の虚像に過ぎず、本人以外の介入、干渉は不可能である。
席の上の段の階段上に居たウィザードは間髪入れずガンモードのソードガンの引き金を引いた。銃弾が下の段に居るヘルハウンドを襲ったが、ヘルハウンドの姿は床に沈み込むように消えた。
――また逃げたのか?
ウィザードが辺りをきょろきょろ見回す。見回していると、背後から突然魔力の気配を感じ取った。
「ここですよ!」
――背後かっ……!
魔力感知に続いてヘルハウンドの声。ウィザードは咄嗟に振り向くと、魔剣による斬撃を身体に叩き込まれた。
「うっ……くっ」
攻撃に耐えて、ソードガンのブレードの付いた銃身で殴ろうとしたら、またヘルハウンドが地面に沈んで消える。
まるでモグラ叩きのようだった。ヘルハウンドが笑いながら別の場所で上半身だけ姿を見せて、ウィザードの発砲を消える事で躱す。壁に現れ、背後に現れ……
「私にも後が無くてね。今度は本気を出させて貰う……!」
何度か鼬ごっこを繰り返しているウチに、ヘルハウンドは自分が本気であると語った。確かに言う通り本気のようだ。魔法を出し惜しみ無く使って来るという点では間違いなく。
ウィザードは兎に角走って、捉えられないようにしてみるも、容赦なくヘルハウンドの攻撃が飛んでくる。四方八方からの通り抜けざまの斬撃、火球。
「……そろそろ拙いか」
防御して対策を考えた方が良いと判断して、足を止めてから、ウィザードはコモンリングを装着していた右手をウィザードライバーに翳した。
【DIFEND】
魔力を受けた右手を、地面に向けて翳すと、周囲に炎の壁がウィザードを覆い、周囲を炎で仄かに明るく照らした。
「ヌッ!?」
すると、ヘルハウンドは引きずり出されるかのように床から姿を現した。……想定外の出来事に、ウィザードは思わず二歩ぐらい後ずさる。
「……あぁ、成程」
それと同時にヘルハウンドの魔法のトリックをウィザードは見破った。納得が行ってうんうんとウィザードが何故か呑気そうにうなずく。
トリックの種を明かすとあの魔法は影が有る事が前提。やけくそに放ったDIFENDの炎で影が薄らいだ為に姿を隠す事が出来なくなったと言うのが事の顛末だ。つまりその影を奪ってしまえば……
「も一発」
【LIGHT】
再度コモンリングをベルトに翳し、魔法を発動させる。音声の通り、発動魔法は、光だ。
ウィザードが右手から上に向かって強い光を放つ光球を放ち、コンサートホールを強く、明るく照らす。
雰囲気ぶち壊しだがいまのコンサートホールは光球により完全に公演前の状態となっていた。
「ちょっとばかり無粋だけど、お前のトリックはくるっとまるっとお見通しってね」
おちゃらけるウィザードに忌々しげにヘルハウンドは睨む。だがそれにウィザードは構わず、左中指のフレイムリングをウォーターリングに入れ替えてベルトに翳して魔力を受けてから、前方へと左手を翳した。
【WATER】
すると、青い魔法陣が現れてからウィザードの身体を突き抜け、ウィザードはウォータースタイルへと変化した。
「さて、掃除の時間だ」
そう言い放ってウィザードはソードガンを発砲した。放たれた弾丸は、吸い込まれるようにヘルハウンドに命中し、水しぶきを上げた。
放っているのは水圧弾だ。これでもう湿気で火球は発砲出来ない。さらに、通常弾も追い打ちで叩き込み、反撃も回避する時間も与えない。
【BIND】
散々弾丸を叩き込まれてへろへろになったヘルハウンドに足元から出現した拘束用の魔力水で出来た鎖で縛り付られ……
「
何時もの一言と共に、ソードガンをソードモードに切り替えて、ハンドオーサーを起動。そこにウォーターリングを翳す。
【WATER SLASH STRIKE】
力を解放したソードガンの刀身に魔力水が渦巻き、力が最大限まで高められた瞬間、ウィザードはそれを力強く振るった。
斬撃がヘルハウンド目掛けて三日月状に飛び、ヘルハウンドを真っ二つに切り裂いて大爆発の代わりに大きく水しぶきを上げ、消滅。ヘルハウンドは跡形も無く消滅した。
「さて……次だな」
もう倒した瞬間既に、今のウィザードの頭にはヘルハウンドの事など無く、
感じる魔力を便りに探し出すと、やはりファントムはあっさり見つかった。場所は水族館前で、人々の虚像で賑わっている。
ファントムを探すべく周囲を見渡していると――ふと歌声が聞こえた。
それは聴き惚れてしまうくらいに透き通った綺麗な歌声だった。聴いていて眠たくなりそうである。聴こえて来る歌の言語からしてそれはファントムのものだとウィザードは確信する。
その聴こえて来る歌声を頼りに歩いてゆくと、水族館内の閑散とした広場に行き着く。そこには等身大の女性型の人魚のような青色のファントムが広場の片隅にて歌っていた。彼女には足が無く、代わりに鰭が有り、軽く浮遊している。
「……!」
招かれざる客に気付き、ファントム……ローレライがウィザードを見据えて、剣を精製したので、ウィザードもまたソードガンを構える。
「綺麗な歌声だけど……このまま放置しては置けなくてね!」
綺麗な歌声を少しだけ、ほんの少しだけ惜しみつつも、ウィザードはソードガンのハンドオーサーを起動して、右手を近付けた。
【COPY】
すると、ソードガンが二つに増加し、直ぐに二本とも床に突き立てて、再度二つの剣にCOPYを発動。
結果、合計4本のソードガンが床に刺さっていた。その内2本を回収し、両方ともガンモードへと切り替えてから銃口をローレライに向け、いつもの一言を放つ。
「さて、掃除の時間だ!」
早乙女先輩に若干危ないフラグ。モットチカラヲー
そしてウィザード久々の戦闘でした。多分トリスタンは帰ったら更にブチ切れるのではないでしょうか。自分の部屋荒らされてるし……
本作登場したさやかのファントム、メロゥと名前を付けようとしたら盲導犬の名前として既に存在していた事を知り、ローレライという名前になりました。……同じ人魚ですし。
ローレライはオクタヴィアに少し似た蒼い女性型ファントム。身も蓋も無い言い方をしてしまえば小型オクタヴィア。
それと、マミさんの覚醒時期はおぼろげながら決まりました。
補足。クラック事件と外部について。
まどかたちよそ者の一般人にとって、沢芽市での事件は殆ど外に出回って居らず、一部お偉方とユグ社ぐるみの情報工作により隠ぺいされている為まともに知られていません。トルーパー自体も外部にも存在こそしていましたが詳細は基本一般人には語られていませんし、社員及び関係者にも口外しないよう言い渡されており、表向き謎の自然災害で片付いています。
恐らくビートライダーズ叩きなどの報道は沢芽市限定だった可能性が高いかと。
自衛隊にベルトが配布されていない上に、ビートライダーズについても詳しく知らない様子だったというのを元にしました。というか、これ以上沢芽市と外部の事は余り触れない方が良いかもしれない……