贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

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 今回は短め。前半胸糞、後半にて原作では屈指のイケメン枠のザック登場。

 もうちょっと描写を増やす事も考えましたが、唯でさえストレスフルな作品に陰湿な描写を叩き込むのはどうなのかと思って……(半分は実力不足ですごめんなさい)


第二章
第01話 悪意と傲慢/ザックと光実


 邑川正治は沢芽市にて暮らす普通の少年だった。他者との付き合いが殆ど無い事と傲慢な所がある事以外は……

 

 ユグドラシル傘下の進学校、私立天樹高等学校では様々な優等生が集う中で相当高い学力を以て教師たちを驚かせ注目されるほどの人物で、このままならば順風満帆な日々を、人生を送れた事であろう。

 

 

 ……だが、そうは行かなかった。

 

 

 父親はユグドラシル社の重役だった。だが、有る日を境に――自殺した。

 正治は後々知る事となるが、父親はプロジェクトアークの反対者だった。その煽りで有りもしないデマを広げられ、精神的に疲労。自殺に至ったのだという。

 無論、正治自身もその煽りを受けた。家にゴミを投げ入れられたり、家の壁に落書きを喰らったりと陰湿な嫌がらせを受けた。

 

 耐え切れずこの街には居られないと判断した母親は沢芽市から風見野へと引っ越した。距離的にはそれなりで、沢芽市自体陸の孤島に近いものがあったので丁度良かった。

 

 

 これで何とかなる。母親も正治もそう思っていた。

 

 

 だが、そうは行かなかった。新たな悪意が正治に容赦なく襲いかかる。

 

 

 引っ越しと合わせて引っ越した先は私立ではない高校だったのだが、良くも悪くも『お坊ちゃん』であり、序でに頭の悪い連中を見下してもいた正治は途端に在校生たちから異物として認定。正治が場の空気に馴染めない事もあり、苛烈な嫌がらせなどの悪意を一身に受けさせられる。

 

 想像を絶する壮絶な物で、助けてくれる人間などどこにも居なかった。母親は衰弱。教師は見て見ぬふり。

 

 

 時間が経つ毎に恨みが迫害対象に向いて募り募って行った。だが、逆らえば益々痛めつけられる。

 

――何故だ。こんな勉強もまともにしていない頭の悪い奴らがのうのうと生きて、頑張って来た人間が迫害されるのか。

 

 訳が分からなかった。理解が出来なかった。分からないまま罵声と陰口が正治を追い詰める。脅迫されてほぼ毎日金を払いもした。まぁ、払った所で殴られる事には変わりなかったが。

 

 次第に正治は学校へ行かなくなった。怒りの矛先は加害者には向いてはいたが、逆襲は怖かった。

 だから虫や野良猫や犬を分解するなどと言った所謂八つ当たりで怒りを鎮めて、加害者には近づかないという選択肢を選んだ。

 己より弱い者を、ばらばらに、ずたずたに。自身が加害者たちと同じ領域に踏み込んでいるという自覚も無いまま……

 

 

 

 ある日、彼のもとに少女が姿を現した。それが彼を完全に歪ませてしまったのかも知れない。正治は少女に付いて行く事にした。今の状況が変わると信じて。

 

 結果、正治はトリスタンという名の力と仮面を手にした。少女からは魔女や魔法少女関係者以外に使用して無用な騒ぎを起こすなと言われていたが、そんな言葉で正治が止まる訳が無かった。

 

 これまで痛めつけて来た者に正義の鉄槌を与えようと思った。折角理不尽に抗うだけの力を手にしたのだここで使わなくて何故使うのか。

 正治は加害者グループを裏通りに呼びつけた。加害者側はきっと、いつも通りに金を払ってくれるものだと思っていたのだろう。

 

 だが、正治はそれを拒否した。何時もなら従う正治なものだから加害者は呆気に取られていた。そしてその事実に耐えられなかったのか激昂。正治に掴み掛ろうとしたその時だった。

 

【スターフルーツエナジー】

 

 正治は紅いベルト『ゲネシスドライバー』を取り出し、腰に巻き付けクリアパーツで形成された錠前『スターフルーツエナジーロックシード』を取り出し、開錠した。

 

「変身」

 

 正治はこの瞬間、加害者側の表情が歪むのが爽快で仕方が無かった。

 そうだ、もっと怯えろ。お前らのような屑共が陽の道を歩くことなど間違っている。だから……

 

――死ねよ。

 

【ロック・オン ソーダ……スターエナジーアームズ】

 

 ドライバーにロックシードをセットし、コンプレッサーで絞るように押し込む。すると頭上からクラックを介して落下し、正治と一体化。彼はトリスタンへと姿を変えた。

 

「お、おい……なんだよ……何なんだよお前っ」

 

 突然の変化に驚いたか、加害者のリーダー格が二歩数歩後ずさる。

 

――そうだ、もっと怯えろ。

 

 数人の腰巾着がこの場から一目散に逃げようとした。だから、ソニックアローを非殺傷出力で逃げる者の脚に直撃を喰らわせ、動けなくしてやった。

 目の前のリーダーには拳を叩き付ける。

 

 そして、ここに居る奴全員を一ヵ所に集めて好きなだけ、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る

 

 蟷螂の腕を引きちぎる時の様に、蟲の足を一つ一つを引きちぎるように。サンドバッグに張り付けた奴らの写真にナイフを突き立てるように。

 殴られる奴らはやめてくれと、助けてくれと懇願する。その姿はとても、醜い。見苦しい。だから黙らせるために殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。顔の原型が保てないほどに。殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

「お前のような! ゴミが! 国を! 駄目にするんだよ!」

 

 好きなだけ罵詈雑言を叩き付ける。助けを請う声を上塗りするように。

 彼の中では今、己は正義の使者だった。この仮面をかぶっていれば虚弱な存在とは違う何かに『変身』出来ている。そんな気がする。

 都市伝説で『仮面ライダー』と呼ばれる存在が居たらしいが、恐らくそれより真っ当で現実的な裁きをやっている気がしている。

 

 正治は自分の正義(どくぜん)に酔っていた。

 

 好きなだけ殴ってストレスが吹き飛んだ頃にはもう、彼らは顔が原型を保てないほどに膨れ上がっていた。涙が頬を伝い、失禁したのか股間が尋常じゃないほどに濡れていた。

 

「……ぁ…………ぇ」

 

 殴られ過ぎて声も出せなくなったらしい。一人は声を出そうとするが、全く持って聞き取れはしなかった。ざまぁ無い。当然の報いだ。そのまま転落死しろ。

 正治は今、これまでにない程の充足感と達成感を覚えていた。圧倒的な力を以て悪を叩きのめす。爽快かつ痛快。本当はこうであるべきなのだ。

 

 トリスタンはリーダーの頭を、髪を掴んで、顔を近づける。

 

「お情けで殺さないで置いてやる。だが、他に言ったらお前……命が無いと思えよ?」

 

 本来なら悪は殺しておくべきなのだが、慈悲を忘れてはならない。アメと鞭という奴だ。そして、正治はリーダーを放逐して変身を解き、黙って歩き去る。

 正治は力をくれた少女……周子に感謝していた。まぁ、その気持ちも……

 

 

 5分経てば忘れてしまうのだが。

 

 

 

 誘拐事件から翌日。沢芽駅はいつも以上に賑わっているように光実には見えた。何時もなら見ない筈のゆるキャラっぽい着ぐるみたちが集まって、チラシを配ったり、宣伝の看板を持って居たりしている。

 その看板には『みんなおいでよざわめ祭り』と書かれていた。

 

 沢芽市は約8か月前の混乱で大分人口が減ってしまった。戻って来た人も居たには居たが、戻って来たのは半数程度。沢芽市役所はそれを重く見て、町おこしイベントを考えた。その一環が『ざわめ祭り』である。

 

 早乙女和哉と色々訊きたい事がある。一応連絡先は交換しており、アポは取っている為、電車で向かおうとした矢先、もふもふと肩に柔らかい感触が触れた。

 

「ん?」

 

 後ろを向くと、黄色い服を着たぎりぎり三頭身くらいの白い猫の着ぐるみが立っていた。その白猫からチラシを手渡される。それはざわめ祭りで行われるビートライダーズのダンスイベントの告知だった。チラシなんていつもなら捨ててしまうのだが、この告知は直ぐに捨てるに捨てられなかった。

 

「よっ、ミッチ、元気してるか?」

 

 そして可愛らしい白猫の着ぐるみから放たれる聞き覚えのある声。

 

「ザック?」

 

「おう。よっ」

 

 白猫が光実の問いに手を上げて肯定する。子供の夢崩壊ものだが、一部界隈には受けそうではある……主に女性とか。だが、その一部界隈でも夢を持つ子供でも無かったのでその光景は何とも不自然(シュール)であった。

 この可愛らしい白猫の中身があの長身の男前だと思うと込みあがってくる笑いを抑えつつ、元気だよと返すと、白猫は通りすがる子供たちに手を振ってから、無きに等しい首を傾けた。

 

「ミッチお前……笑ってるだろ?」

 

「いや……別に……っぷ」

 

 流石に耐えられなかった。光実が笑った事に気付いた白猫はがーんと漫画の演出が出そうなくらいに項垂れた。

 

「ラットの奴もペコの奴も……皆変だと笑うんだよ。何故だ……何が可笑しいんだ?」

 

――仕方ないと思う……多分。

 

 どう励まそうかと悩んだが、直ぐに白猫は立ち直った。

 

「それはそうと……良かったら俺たちのダンス公演が沢芽ホールで行われるんだ。よかったら見に来てくれ」

 

 立ち直り早っ!? 思わず突っ込みかけたが、多分きっと色々耐えているに違いない。……この件は黙っておいて話題に乗る事にした。

 

「うん、考えて置くよ」

 

 今は戻るつもりは無いとザックには話しており、他も納得している。ザックは「気持ちに整理がついたら何時でも戻ってこい」と言ってくれているが、本当は光実は戻るつもりは無かった。

 きっと永遠に自分が許せないままで終わるのだろう。己の成した事はそれ相応の事をしているのだから……

 伸ばされた手を振り払った報いなのだから。

 

 

 改札口に入ろうとした所で、白猫がもふもふとした白い手を振っていた。そこが少し面白おかしくて、光実はまたちょっとだけ吹き出した。

 




 登場した白猫は428のタマが元ネタ、というかそのまんま。原作で放置された迷惑極まりない赤いアイツが後々登場する予定。
 そしてトリスタンの外道化はこの部で更に加速する模様。特にさやかとまどか絡みで。

 次回は緑と黒の共闘再び&影武強化という事で。では次回をお楽しみに。


光実の所有LS:ブドウ・キウイ・ローズA・W(ダブル)・ブラッドオレンジ・メロン・スターフルーツエナジー・オーズ
和哉の所有LS:マツボックリ
さやかの所有LS:オレンジ・バナナ
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