贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

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 あるのか無いのかはっきりしろなタイトル。

 そしてあんこ(非グリード)久々の登場。あんこたちの居候先の家主の娘さん名前が剣のヒロインと被っていて気になりましたので変更しました。史織→麻弓(まゆみ) 名前は真由とコヨミを足して2で割ったような感じで。


第03話 奇跡も魔法も……

 そこは見滝原から少し離れた山奥。人は誰も通らないであろう生い茂る草木を潜り抜けると、大人がなんとか潜れるぐらいの小さな洞穴が開いている。そこまで、白く長い耳を持ったウサギぐらいの小さな生き物が入り込んでいく。

 入り込むと、入り口より徐々に天井が高くなり、余程の巨人でもない限り天井に頭は打ち付けないぐらいの高さにまで至った。

 そこには白いローブを纏った者が魔導書を立って読んでいた。

 彼の周囲には様々な実験器具やよくわからない魔法陣が刻まれた表紙の本が乗った机が沢山置いてある。……実験でもする場所なのだろうか?

 白いローブを纏っている男の、僅かに覗かせる顔がウィザードの仮面を彷彿とさせるものだった。差し詰め白い魔法使いと言うところか。

 

「貴様は……インキュベーターか。何をコソコソと覗き見している」

 

 その者はすぐさま、実験装置の物陰に隠れて見ていた白い生物、インキュベーターの気配に気付き、魔導書を閉じてから魔法を発動させる態勢に入った。

 

『僕の目的は知っているね』

 

 インキュベーターの言葉に白い魔法使いは「あぁ」と言い頷く。

 

「莫大なエネルギーさえ得られればこの惑星の今後はどうなっても知らない。それが貴様の目的だろう」

 

『乱暴な言い方をすれば大体正解だよ。君の計画で発生するエネルギーが非常に有用だと思ってね。でも君も一緒だろう? 目的さえ果たせばこの惑星、いや、世界には要は無い事は』

 

「ふん……」

 

 白い魔法使いは魔法を出す態勢を止め、読んでいた魔導書に目を移す。表紙に描かれている題名は英語でも日本語でもなく、この地球上の言語ではない文字だった。そして文字の他にはウィザードが発生させる魔法陣に似た紋章が彫られている。

 

「別に余剰エネルギーなどには要は無い。勝手に使うなりするがいい。……必要なのは結果だ」

 

 白い魔法使いの言葉に、インキュベーターは薄暗い空間に赤くビー玉のように丸い目を輝かせ、『そうさせても貰うよ』と言い残し外へと通じる通路へと向かって踵を返し去っていく。

 そのインキュベーターを見送って白い魔法使いは彼(?)に聴こえないように呟いた。

 

「絶望も希望も知らん人形風情がよく言う……」

 

 ……と。

 

 

 

 佐倉杏子は老舗の古本屋、見影堂の値段交渉用のソファで退屈そうに寝転がって漫画を読んでいた。一応元々その漫画は売り物ではあるが、乱暴に扱わない限り読むことは許されている。

 

「杏子ちゃん、お客さん来たらしゃきーんとしてよね?」

 

 入り口前のレジ番をしていた見影麻弓は文庫本を読みながら、だらりとした恰好の杏子に軽く釘を刺した。

 

「へいへい」

 

 若干ぞんざいな返事をしながらも、杏子はちゃんとした格好で座り直す。その姿に、結構躾はちゃんとされてるんだと麻弓は心の中で杏子を評した。

 杏子が見影家に居候を始めて数か月。ハルトは一年。よく杏子やハルトは外出していて話す機会があまり無いのだが、時々こんな風に杏子が漫画読んでいて、麻弓がレジ番しながら文庫本読んで居て、そして……

 

「只今戻りましたっと……」

 

 鍵真ハルトがみたらし団子を買って何処からか帰ってきて、杏子の向かいのソファに座って団子を食べかける。

 

「ここで喰うな甘党一号」

 

「アッハイ」

 

 そして麻弓がハルトの暴挙を止める。因みにどうでもいい話だが杏子が甘党2号である。3号は募集中、いや、3号も出て来るな。

 

 何はともあれ……こういう風に昼下がりにて3人集まるのは久しぶりだった。

 よく二人とも深夜に居なくなったりする事もあるけれど、父親であり家主の律人(りつと)に訴えても何もしないのでどうしようもない。それどころかハルトが居なくなる時に律人も居ない時もある。

 もう何が何だか分からない。

 

 問い詰めたい気持ちもあったが、矢張り聞いてもはぐらかされるだけで……半ば諦め掛けている。後を付けても、例に漏れず確実に撒かれてしまう。

 でも、ちょっと落ち込んでいる所を見た事もあるけれど、今の所二人は元気だ。このまま日々を過ごしていくのも良いのかもしれないなんて思う時もあるけれど。杏子の実家の事を少しは知っている身からすれば放っては置けない自分が居る。

 それに保護者として、家主の一人として、杏子が夜遅くに徘徊しているのを放っておくわけにはいかないという気持ちもあった。

 

 だが、どうすればいいのか考えても思いつく訳も無く、そして追っても撒かれるだけで。みたらし団子を賭けてじゃんけんをやっている二人を見ながら、麻弓は途方に暮れるのだった……

 

 

 

 

 

 日曜日故の空いた時間を利用して、さやかは恭介の居る総合病院へと足を運んだ。正直、その前に和哉に色々問い詰めたい気分でもあったが、呼び出そうとしても電話には出てくれなかった。今日は忙しいのか、それとも逃げたのか……

 受付室をやり過ごし、エレベーターに乗って数階上がってから数室通り過ぎた場所にある恭介の病室。そのドアの取っ手を掴み、スライド式の扉を開けると――その部屋は人っ子ひとり居らずもぬけの殻であった。

 いつもそこに恭介が居る筈のベッドの上には布団しか無く、カーテンが風に煽られ虚しく揺らめいている。夕暮れと病院特有の静けさもあって虚しさ倍増である。

 

――あれ? 恭介は……

 

 今の時間ならまだ病室で音楽でも聴いているものではないかと思っていたのだが、チェックのミスか? それとも――お手洗いなうか。

 

「~~~~~~~~~っ!?」

 

 勝手に妄想して勝手に赤面したさやかは扉を若干乱暴に締めて、一気に息を吐き出した。

 

――変態かあたしは……!

 

 少し待ってから、再び扉を開けても恭介の姿は見当たらず、お手洗いなうという推測がハズレであるという事をさやかは自ずと察した。

 それでは彼は一体何処へ行ったのだろうか?

 

 再び開けた扉を閉めて、長い長い廊下へと目を向けていると20代くらいの若い看護婦がさやかを見つけて、「あら」と言い、さやかのもとへ歩み寄った。

 

「上条君のお見舞い?」

 

「あ、はい」

 

「御免なさいね、診察の予定が繰り上がっちゃって今丁度リハビリ室なの」

 

 看護婦の言葉に、さやかは落胆した。和哉といい恭介といい最近の男どもは忙しいのがトレンドらしい。……和哉は忙しいのでなく逃げた可能性も有るが。

 

「あぁ、そうでしたか……どうも」

 

 軽くお辞儀して、さやかは踵を返しエレベーターへと向かって歩いた。彼のリハビリの邪魔は出来ない。歩いているとふと二人の看護婦の声が耳に入った。一人は先ほど恭介がリハビリ室に居ると教えた人だ。

 

「よく来てくれるわよね。あの娘」

「助かるわ、難しい患者さんだしね」

「励ましになってくれてるといいんだけど……」

 

 二人はさやか自身の事を話していた、別に悪口では無いようだが聴かないでいるのはさやか本人にとってそれは出来なかった。気付かれないように歩の速度をさり気なく落とし、二人の看護婦の話に耳を傾ける。

 

「事故に遭うまでは天才少年だったんでしょう? バイオリンの」

「歩けるようになったとしても、指の方はね……もう二度と楽器を弾くなんて出来ないしょうね……」

 

――えっ

 

 さやかは己の耳を疑った。だが、現にその看護婦の言葉が自分の脳裏に深く焼き付いて離れない。

『ニドトガッキヲヒクナンテデキナイデショウネ』

 脳内で繰り返すたびに異国の言葉のように思えてくる。……それぐらいに脳が事実を受け入れる事を拒否していた。冷静になればそれは紛れも無く日本語で、人間の言語の一つだと言うのに。

 

 今、看護婦は二度と楽器を弾くなんてできないと言っていた。一瞬嘘ではないかと思いもしたが、一応プロの人間が嘘なんて吐くのか? という考えに至る。……いや吐かない筈だ。医者が分かりやすい嘘でも吐いたらそれこそ裁判ものである。そもそも嘘なんて吐く意味なんて有りはしない。医者で有る事を度外視してもさやかや恭介本人が聴いている事前提では無いのだから。

 頭が漸く現実を受け入れて、エレベーターに乗り、一階のボタンを押してからドアを閉めると、さやかは力なくふらふらとガラス張りのエレベーターに凭れかかった。

 何時もなら、ガラス張りという地味に怖いエレベーターの壁に凭れたりなんかしないのだが、そんな事など考えられないぐらいに、さやかの心を現実という重石がのしかかっていた。

 恭介がバイオリンに触れたのは、物心がつく前ぐらいからだ。それから十数年程。最早バイオリンは彼の人生の一部分、いや、総てだったという事はずっと幼馴染として一緒にいたさやかが一番よく知っている。

 

――なんで、恭介なの?

 

 何故、恭介がこんな目に遭わなければならないのか。何故、生き甲斐に等しいものを神様は奪ってしまうのか。何故、自分じゃなくて恭介なのか。自分の指なんて動こうが動かなかろうが困りはしないのに。

 出来るのならば自分の指を恭介に分けたい。出来るのならば恭介を事故に巻き込んだ車の運転手を力一杯にぶん殴ってやりたい。

 キュゥべえと契約でもすれば、恭介の指も治るのだろうか? ……なんて思いもするも、それと同時にマミの忠告が脳裏に過る。

 

『他人の願いを叶えるのなら尚の事、自分の願いをはっきりさせておかないと。……美樹さん、貴女はその人に夢を叶えて欲しいの? それとも、その人の恩人になりたいのか。同じようでも全然違うわよ。これ』

 

 彼女の忠告に従うのなら、恭介の完治は自分の為になるのかという疑問に突き当たった。――治った後、治した要因を恭介に伝えて振り向いて貰うとか? ……そんな事を思いついた瞬間、自分の狡さと卑しさに気付きさやかは大きく溜息を吐いた。

 

「あたし……嫌な娘だ」

 

 そう呟いた直後、エレベーターが開き、一階に降り切った事に気付いたさやかは病院の外まで出ていく。そしてそのまま帰宅しようとした所で――初めて見る私服姿の縦ロールの少女が、マミが立っていた。

 

「マミ……さん?」

 

「ここに居たのね、美樹さん」

 

 今のマミには何時もの余裕のあるような雰囲気は纏っていなかった。少し寂しげな雰囲気を纏っていると言っても過言では無い。それにさやかは不思議に思いながら、マミのもとへ、足を進めた。

 




 白い魔法使い、登場。QBが彼の計画にて発生する莫大なエネルギーに目を付けているようですが……彼の計画は一体。
 環境上の問題で杏子が若干丸くなってます。飽くまで若干ですが。

 
―補足・ハルトの居た世界の末路―
 一種の平行世界(パラレルワールド)
 簡単に言うと、原作ウィザードの夏の劇場版にてソーサラーが作り上げた魔法世界に非常に似たり寄ったりな世界で、9割以上の人間が身体にファントムを宿し、専用装置を利用して魔法を使っていた。魔法が使える事が前提の社会システムで、魔法が使えない者への迫害は少なからずあった。
 何者かの儀式により、魔法が使える者(ファントムを身に宿している者)が殆ど死亡し、今ではかつての魔法で栄えた面影も無くファントムたちの巣となっている。
 何故魔法が使えなかったハルトが魔法(ファントム)を手に入れたのかは不明。
 魔力さえあれば、本作の舞台となっている『科学世界』と『魔法世界』との行き来は可能だが、その為には莫大な魔力を要する。
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